? そんなタケシに騙されて
サッカー百鬼夜行

第36節 対大分トリニータ(テレビ観戦)
2000.10.1(SUN) 札幌厚別公園競技場

コンサドーレ札幌 2-1 大分トリニータ
アウミール【61分】
播戸【69分】
0-0
2-1
吉田【80分】
スターティングメンバー
洋平 GK 三枝師匠

キャプテン
健作
DF 三木
若松
吉村
小松崎
ノノ
三平
ジロー
長作
MF シジクレイ
山根
加地
加賀見
竹村
俺王子
バンバン
FW 俺王
俺王(偽)
ジロー→先生【45分】
バンバン→黄川田【86分】
俺王子→大砲(元)【89分】
交代 加賀見→庄司【68分】
シジクレイ→川崎【74分】
竹村→吉田【77分】

試合の感想
 前節ヴァンフォーレ甲府をホームで4-1と軽くひねり、2位浦和との勝ち点差を2にまで詰め寄った大分トリニータが相手です。この試合に先立って行われた新潟-浦和の試合は、浦和が新潟に4-2で敗れ去っています。よってこの試合に勝って一気に逆転してしまいたい大分と、一日も早い昇格に向けて3位の大分を叩いておきたい札幌、という図式を描いていたファンがほとんどだと思います。

 しかし、この試合には実はもう一つ大きな「対決」がありました。

 エメとウィルの「俺対決」、ではありません。播戸と竹村の「ダウンサイジング対決」、でもありません。この試合に隠された真の勝負とは、岡ちゃんと大分の石崎監督とのベストジャージスト決定戦なのです。
 試合中、じっと戦況を見守る両監督。ジャージ。交代選手に指示を与える両監督。ジャージ。テクニカルエリアでピッチに檄を飛ばす両監督。ジャージ。かつて日本代表監督として参加した栄えある日本初のW杯。ファッションの最先端を行く国・フランスに乗り込み、ジャージ姿で指揮を執り続けた岡ちゃん。方や「ジャージのズボンの中に上着を入れる」という、パリコレをも席巻しかねないマニアックな着こなしを貫く石崎監督。「男ならジャージだ」という無言のメッセージを背中に込める両監督の姿を、いったい誰が涙なしで見ることが出来ましょうか。そんな2人は言うなればジャージ界の項羽と劉邦、ジャージ界のアムロとシャア。ジャージ界のトミーとマツ。ジャージ界のケント・デリカットとデーブ・スペクター。あるいは………もういいや。
 えーと、とにかくジャージストの雌雄を決するこの対決には、全国のジャージ愛好家も特別な視線を注いでいました。しかし、「ジャージを着るために生まれてきた」と言っても過言ではないこの2人の対決、はっきりしたのは「両者の勝負付けなど無意味である」ということ。日本ジャージ協会は、この2人を殿堂入りさせるべきだと確信した第36節でした。

 終わりません。

 さて意気揚々と乗り込んでくる大分はほぼベストメンバー。甲府戦で出場停止だった偽俺王ことアンドラジーニャも戻り、俺王(ウィル)との「恐ろしい双子」も復活。ボランチのシジクレイを含めた大分の誇る「ハゲ三人衆」揃い踏みで、見た目の迫力も充分です。
 対する札幌も手ぐすね引いて待ちかまえる、と言いたいところなんですけど、まだ悪霊祓いが済んでいない優津樹に加え、浦和戦で太股の裏側を痛めた田渕も欠場。エメも浦和戦で足を痛めて万全の状態ではないといった状況の中、頼みの山瀬までU-19代表の中東遠征に拉致されてしまいました。札幌サポーターの心中いっぱいに流れるドナドナ。

 同じようにその胸にはドナドナが去来しているだろう岡ちゃん、田渕の抜けた右サイドに今季2試合目の出場となる小松崎を、山瀬のいないトップ下には初先発の清水を配置しました。攻撃力はリーグ随一の大分を迎え撃つにはいまいち不安の残るこの態勢ですから、ホームとはいえ引き分けでもよしとするのがいいのかも…などと思っていたら、なんと無難に役割をこなせば上等と思っていた小松崎が予想以上の大ブレイク。
 ロマーリオ(ブラジル代表)やバティストゥータ(アルゼンチン代表)などの超一流ストライカーは、相手DFのマークをかわし決定的な場面で仕事をするために、ゲームの流れからあえて自らの存在を消すという作戦を採ることがあります。この日の小松崎はまるで彼らワールドクラスを凌駕したかのようなプレイを見せました。0-0で迎えた前半34分のことです。

 2枚目のイエローで退場。ゲームの流れからのみならず、物理的にもオノレの存在を消すことに成功しました。岡ちゃんとサポーターの胸中に流れていたドナドナが八代亜紀の「舟唄」にとって変わる中、札幌は残り50分以上を10人で戦わねばならなくなりました。

 ここで普通ならばFWを一枚外して中盤のバランスをとる場面ですが、北のジャージスト岡ちゃんは後半からFWではなくトップ下の清水を古川と交代させ、中盤3人+4バックとします。完全に中盤省略のカウンター狙いという、ホームじゃなければまず間違いなくカミカゼ特攻と言われるだろうシステムを採用。
 ところが暑さ寒さも彼岸まで…じゃねぇや人間万事塞翁が馬とはよく言ったもので、ここから札幌は11人の大分を相手に狙い通りの展開。まず61分、エメのスルーパスで抜け出したアウミールが、キーパーの動きをよく見て今期初ゴール。オフェンシブハーフのくせに今頃初ゴールというのも寂しいものですが、そのつぶらな瞳は伊達じゃないことを証明。続いて69分にはエメのポストからのこぼれ球を播戸が突き刺しあっという間に2-0。「10人になって却ってなすべきことがはっきりした」とか「数的有利を得た大分が前掛かりになった」とか「月がとっても青いから」とかいろいろ理由は付けられますけど、いずれにしてもこの2得点は10人の札幌を非常に楽にしました。
 楽になりすぎたのか終了間際にミスがらみから1点を失ったものの、終盤の大分の猛攻を何とかしのいで2-1で逃げ切りました。浦和・大分という上位チームとの直接対決を連勝で乗り切った札幌は1部昇格に向けて大きな前進となりましたが、岡ちゃん&札幌サポーターにとっては、今日もやっぱりカードをもらったエメに喜びも半減の日曜の午後でした。

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