? そんなタケシに騙されて
サッカー百鬼夜行

第3回戦 対川崎フロンターレ
2001.12.9(SUN) 富山県総合運動公園陸上競技場

コンサドーレ札幌 2-3v 川崎フロンターレ
今野【67分】
黄川田【76分】
0-0
2-2
0-1
阿部【52分】
桂【83分】
阿部【99分】
スターティングメンバー
藤ヶ谷 GK 浦上
殿
先生
ゴンザレス
DF 伊藤宏樹
飯島
土居
森川
三平
板長
三沢
山瀬
MF 塩川
鬼木達
ベティ
高田
アキラ
バンバン
曽田
FW ガナピー
阿部
曽田→黄川田【54分】
殿→健作【54分】
三沢→優津樹【90分】
交代 アキラ→桂【54分】
ガナピー→モリツァ【75分】
高田→浅野【83分】

試合の感想
 J1シードという妙に居心地の悪い特権で3回戦からの登場となったコンサドーレ札幌は、J2の川崎フロンターレとの対戦となります。思えばこの両チーム、J2がスタートした99年にJ1昇格争いのライバルになると思いきや札幌は全然それどころではなく低迷、その年にJ2優勝を果たした川崎は翌2000年に意気揚々とJ1に乗り込んだものの、ナビスコカップ準優勝を置きみやげに1年で出戻り、方や札幌は2000年にJ2で優勝を飾りJ1昇格して入れ違いとなったために、公式戦での両チームの対戦は実に2年ぶりとなります。
 さて、J1チーム初登場となる3回戦はJ1側のホームスタジアムを使うのが通例なのですが、今回はいろいろな事情が重なって北海道のスタジアムも川崎のホームスタジアムである等々力陸上競技場も使えず、やむなく富山県総合運動公園陸上競技場(正式名称:柳沢敦スタジアム)にて行われることになりました。そんなわけでガキの頃に来て以来20年ぶりくらいに足を運んだ富山は、市内に路面電車が走っていることや駅から試合会場までバス以外の交通手段がないことなど、何となくホーム開幕戦で行った高知と似たような印象を受けていたのですが、まさか競技場そのものまで同じ構造(1階席が芝生で2階席が椅子席)だとは思わなかったです。しかも高知の時と同じような雨模様の天気まで同じで、なおかつ客が全然入ってねぇところまで高知の再現。地元出身の選手でもいれば少しは違ったのかもしれませんけど、ただ1人それに該当していた瀬戸は誰よりも先にいなくなってしまっています。この試合のボールボーイを務めたのが水橋高校サッカー部の皆さん。瀬戸の母校です。悲しいけど、これがプロの世界なのよね。
 それでも客層のメインは地元のサッカー少年とおぼしき集団で、富山ではあまり見られないプロチーム同士の試合に期待を膨らませているのがよくわかります。しかし、地元のエース・柳沢を擁する鹿島の試合くらいしかやったことがないスタジアム側にとっては札幌対川崎なんてかなりどうでもいいらしく、大型ビジョンには最初から延長用のスコア表示をするというとっても余計なお世話をしてくれたり、メンバーリストの板長のポジションがFWだったりビジェという選手がいたりとすがすがしいほど投げやりな仕事っぷりを見せてくれます。

 とはいえ、かなりどうでもいいのは両チームとも同じなようで、1.5軍クラスのメンバー構成。川崎は日本人だけでメンバーを組み、札幌もGKが藤ヶ谷、健作がなぜかベンチで3バックは殿、先生、今野、ビジュと板長と山瀬が真ん中、左が和波に右が森川、バンバンと曽田の2トップというスタメンなんですが、解せないのは本職であるはずの板長を右サイドで使わずに、本職ではない、と言うよりは右サイドではまったく役に立たないことを柏戦で証明した森川を懲りずに使ってきたこと。本気で勝ちに行くなら健作を入れて今野をボランチに上げ、板長を右サイドで使うのが現時点でベストだと思うんですが、何か他の理由でもあったんでしょうかね。

 というわけでキックオフとなりましたが、曲がりなりにも今年1年J1で揉まれてきただけはあるのか、開始早々から札幌がペースを握ります。山瀬もまだ本調子ではなさそうですがだいぶ犬っぽさが戻ってきているし、和波もそれほどよくはないピッチで持ち味を出し続け、ビジェビジュも攻守両面で存在感をアッピール、今日もただ1人だけ半袖の板長も持ち前の運動量を発揮しています。
 しかし、監督の指示なのかカズになったつもりなのかはわかりませんけど、バンバンがさして得意でもないポストプレイに終始してことごとくボールを奪われ、曽田は曽田でいるんだかいないんだかわからないし、森川は消えっぱなしだし、中盤ではボールをキープ出来るのに放つシュートがことごとく枠を外れるというなんともな内容。見に来たサッカー少年にはまるでお手本にならないプレイの連続に「子供たちにプロの真髄を見せる!」と使命感を発揮した先生の藤ヶ谷へのスーパースルーという先生スペクタクルはあったものの、そのまま前半は0-0で終了。

 後半になると川崎が開始からペースを握り、7分に我那覇からパス受けた阿部のシュートが決まり先制を許してしまいました。先制された札幌はその直後に一気に2枚取っ替え。曽田に代わって来季は構想外となっている黄川田が、殿に代わって健作が入りました。自他共に認める岡田シンパである健作は、これをラストゲームにはしまいとばかりに鬼気迫る表情で積極的に攻め上がります。他の選手も先制を許してようやく目が覚めたのか、いい形の攻めも見せるようになりました。追いつくのも時間の問題と思わせましたが、相も変わらずチャンスを潰し続けるバンバンと森川のおかげでなかなかシュートまで持っていけません。それでも今年最大の掘り出し物であり、今日も素晴らしいパフォーマンスを見せていた今野がコーナーキックからの混戦を無理矢理押し込み同点としました。集中するために普段はサポーターのコールに応えることの少ない今野ですが、プロ初ゴールを決めたこの時ばかりはサポーターに向かって控えめなガッツポーズ。ホントに札幌の宝ですよ。
 同点に追いついて俄然動きの良くなった札幌は、その後も一方的に川崎を攻め立てる展開。この感じなら逆転は出来そうだなと思っていた矢先、健作からのロングボールを胸トラップした黄川田がダイレクトで左足ボレー。これが決まってついに逆転に成功します。「利き足は頭」と言い続けてきたナイスガイが最後の最後に見せたスーパープレイは、自らの命を引き替えにするメガンテでした。
 しかし、柄にもなく立て続けに得点を決めてしまったのが災いしたのか、札幌はここから変にイケイケモードに突入してしまいます。確かにもう1点取ればトドメとなりますから決して間違ってるというわけではないのですが、勝っているのだからちんたらやっていれば問題なかったはず。しかし1点を奪うことを優先とした札幌は、前がかりになっていたところを森川(前川崎所属)がざっくり抜かれ、折り返しを桂に頭で決められ同点とされてしまいました。

 そして試合は予言通りに延長戦へ突入。岡ちゃんは頭から和波に代えて優津樹を投入しますが、大型ビジョンに表示されたのは「19 MF 伊藤 彰」。確かにMFだし背番号も同じだけど、それフロンターレの選手だって。
 そんなマジックが影響したのか、ミスがらみで捧げたコーナーキックからなぜかどフリーで待ちかまえていた阿部に見事なボレーを決められ撃沈、何かにつけて高知を思い出させてくれたこの富山開催は、違ったのは試合だけというオチを以て終了。岡ちゃんの札幌でのラストゲームは、かつてJ2でジャージストの覇権を争った石崎監督に引導を渡されるというある意味大往生とも言える幕切れとなりました。

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