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サッカー百鬼夜行

第9節 対浦和レッドダイヤモンズ
2002.7.20(SAT) 国立霞ヶ丘競技場

浦和レッドダイヤモンズ 2v-1 コンサドーレ札幌
エメルソン【28分】
田中【104分】
1-1
0-0
1-0
小倉【8分】
スターティングメンバー
山岸 GK 洋平
坪井
井原
室井
DF ゴンザレス
先生
三沢
山田
内舘
路木
大将
アリソン
MF ナオキ
ナメック星人
板長
ジャジ
山瀬
トゥット
俺王子
FW オグ
バッキー
路木→平川【73分】
トゥット→田中【96分】
交代 ビジュ→コマネチ【66分】
ナオキ→田渕【70分】
オグ→ンダ【98分】

試合の感想
 ナショナルスタジアム。過去幾多の名勝負を産んできたスタジアムですが、チーム創設以来、札幌はこのスタジアムで試合をしたことがありませんでした。基本的にどのチームのホームでもない国立競技場は関東のJチームがホームスタジアムとして使用することも多いですが、その場合大抵が観客動員の見込めそうな人気カードとなることが多いため、これまでローカルチームである札幌にそのお鉢が回ってくることはありませんでした。もちろん、カップ戦か天皇杯で決勝まで進めば自力で国立での試合を勝ち取ることが出来るわけですが、基本的にはコンサドーレには関係ないイベントですから、札幌のサポーターにとっての国立競技場というのは高校サッカー部員みたいな憧れのスタジアムだったわけです。
 しかし今回、浦和レッズの本来のホームである駒場スタジアムがお祭りで使えないため、その恩恵に授かった形の国立なわけですが、相手はあのコンサドーレ札幌ということで、一般のサッカーファンも大挙して押しかけました。東京スタジアムに。いくら浦和レッズサポーターといえども、コアなファンだけでは国立を埋めることは出来なかった模様で、客入りとしては6割程度といったところ。

 さて浦和ですが、元日本代表監督のハンス・オフトを監督に迎え入れたものの、中断前までは勝点4と低迷。Jリーグトップクラスの予算規模を誇り、熱心なサポーターも多く、エメルソンとトゥットという、かかったオカネで札幌の選手ほぼ全員を賄える2トップを擁しながら、闘将札幌とほぼ変わらない成績というのはJリーグの七不思議ともいわれています。その浦和はU-21代表の鈴木啓太が累積警告で出場停止、内舘が守備的MFに入りました。
 そして今節こそ勝点が欲しい札幌は、ビジュがケガから戻ってきたものの、健作が出場停止ということで、イバンチェビッチ監督が俺王子のマーカーに指名したのはなんと和波。「目には目を、歯には歯を、スピードにはスピードを」ということらしいですが、とりあえず和波が左のストッパーに入ったことによりJリーグでも希有な黒髪3バックが完成。空いた左サイドにはジャジが入り、ビジュと板長がボランチで、右サイドのナオキは変わらず山瀬がトップ下、バッキーとオグの2トップ。
 ところで試合前の選手コールの時、今までリアクションを見せることがなかった今野が多分初めてスタンドのコールに応えたのが印象的でした。しかも、大抵の選手は両手を挙げるくらいなのに(中には先生のように頭上で拍手する選手もいますが)、今野の場合は申し訳程度に手を挙げた後にペコリと頭を下げるという、幕之内一歩のような極めて今野らしいリアクション。よく見ないとわからないくらい慎ましやかな今野のリアクションに心温めながら、国立も気温も30度という温まりすぎの中キックオフ。

 札幌は試合開始からエメとトゥットという厄介な2トップを警戒してか、神戸戦よりは若干引き気味のライン。それでもやはり俺王子のアホみたいなスピードには手を焼き、いきなりシュートを許してしまいます。とはいえ、それ以外では中盤でも負けておらず、徐々にペースを掴んでいった前半8分、中盤でボールを奪った山瀬からの鬼パスに追いついたナオキが、タメにタメて上げたクロスにオグがドンピシャリのタイミングでヘディングシュート。これが決まって先制ゴールとなります。今季初めてのまともな先制点です。
 先制した後も本当に手術したのかと疑問に思うほど元気なビジュを中心にたたみかける札幌は、オフサイドトラップをかいくぐってナオキやバッキーどフリーとなりましたが、いずれもトラップミスで自滅。山瀬やジャジもドリブルで何度も相手ペナルティエリアに侵入しますが、最後の最後でシュートを打たずにパスを選択、折り返しを読んでいた井原にカットされ得点なりません。結果的に、このイケイケの時間帯に突き放せなかったことが明暗を分けることになります。
 浦和の攻撃は、いつもの通りの「エメとりあえず行ってきて何とかしてくれ頼むから攻撃」。そう、エメがいた時代の札幌が見せていた攻撃です。といいますか、どんなに戦術を練ったところで、俺王子という選手はボールを渡すと1人で勝手に行ってしまって2度と戻ってこないという、ある意味ブラックホールにも等しいので、必然的にそうならざるを得ないわけなんですが。そんなわけで前半28分、コーナーキックからのクリアボールを拾った俺王子。和波をうっちゃってが猛突進し、カバーに来た今野のスライディングより一瞬早く右足を振り抜くと、ボールは逆サイドのポストに当たってゴールイン。札幌は同点に追いつかれてしまいました。
 しかしまぁ、体がキレている時のエメは誰だって止められないので、はっきり言って1点は仕方がありません。この後も俺王子には苦しめられますが、和波が何とか抑えます。とりあえず俺王子と和波との壮絶な追いかけっこはさながらトムとジェリーを見ているようでなかなか楽しめました。結局前半は1-1のまま終了。

 後半、やはり30度というアホみたいな気温が影響したのか、札幌の運動量がガッツリ落ちてきます。中盤でのルーズボールが拾えなくなり、仮に拾うことが出来ても周りの動き出しが鈍いため、苦し紛れのパスやドリブルがことごとくカットされて再びピンチを招く悪循環。流れとしては完全に浦和のペースなのですが、浦和のほうも数多いコーナーキックを得るものの精度が悪く、アリソンの左足がおもちゃであることを証明したり、また久しぶりに洋平が神モードに入ってきたこともあって、チャンスをモノにすることが出来ません。
 札幌のほうは前半に比べてまったくチャンスらしいチャンスも作れず、カウンターから抜け出したバッキーがペナルティエリアで倒されるも、上川主審はシミュレーションとしてPKは与えてくれず。ワールドカップで笛を吹いた国際主審には、後ろからのタックルがボールに行ってなくてもファウルではないようです。アウェイはツラいよ。

 そんな感じで終盤になると俺王子が走れなくなったこともあって、双方得点を決められないまま延長戦に突入しますが、もうヘロヘロの両チームの選手は走ることすらままならずに何となく時間を浪費。「もう引き分けでいいや」と思っていた延長前半終了間際、スローインから福田にヘッドでつながれ、交代で入ってきて元気な田中達也に頭で決められVゴール負け。
 相変わらずプレイが止まると集中が切れるという悪癖を突かれた格好で負けてしまいましたが、まぁ今野のお辞儀と黒髪3バック、そして岡ちゃん以上に休日のお父さんだったイバンチェを見られただけでも良かったと思うことにします。

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