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サッカー百鬼夜行

第1節 対柏レイソル
2002.8.31(SAT) 札幌厚別公園競技場

コンサドーレ札幌 2-2 柏レイソル
小倉【27分】
小倉【58分】
1-0
1-2
0-0
0-0
玉田【78分】
根引【89分】
スターティングメンバー
フジ GK
ゴンザレス

健作
DF 渡辺光
渡辺毅
根引
ヒマラヤ
西田
板長
ナメック星人
ジャジ
松川
MF サンパイオ
大明神
リカルジーニョ
大野
バッキー
オグ
FW 鳩胸
エヂウソン
松川→三沢【69分】
バッキー→ンダ【79分】
オグ→ゴリ【96分】
ゴリ→先生【107分】
交代 渡辺光→杉山【54分】
鳩胸→玉田【62分】
大野→のぞむ【75分】
リカルジーニョ→薩川【116分】

試合の感想
 J1残留へ向けて正念場となる2ndステージが始まりました。その開幕戦は柏レイソルを厚別に迎えてのホームゲームです。日本代表MF明神、元ブラジル代表サンパイオのダブルボランチ、韓国代表柳想鐵、黄善洪の2トップ、ファンタジスタ大野というメンバーを抱えていながら、ワールドカップが終わった後に柳が退団、また黄もワールドカップで負った怪我が長引くなどで1stステージは意外な低迷に苦しんだチームです。シーズン途中で退団した柳の後釜として、かつて「柏のサンコンさん」として鳴らした元ブラジル代表FWエジウソンを復帰させ、またペリマン監督も解任するという荒療治を行いましたが、期待のエジウソンも来て早々怪我をするなどでその後も成績は上がらず、気がつけば12位にまで順位を落としてきました。
 2ndステージでの巻き返しを図る柏はブラジルのクルゼイロからマルコ・アウレリオ監督を招聘し、退団した黄善洪に代わる助っ人としてリカルジーニョを獲得。韓国路線から再びブラジル路線に変更した形で厚別に乗り込んできました。

 そして、1stステージではそんな柏にすら虐殺を喰らった札幌は、結局1stステージを最下位で終えました。しかし一番重いのは最下位という順位よりも、獲得した勝点がたったの6という現実。加えて、名犬山瀬が十字靱帯を断裂して今季絶望とますますJ1残留は厳しくなってきていますが、とにもかくにも残留するためには出来るだけ多くの勝点を稼いでいかなければならないだけに、開幕戦であるこの試合も得意の厚別マクー空間で90分勝利を得て幸先よいスタートを切りたいところです。
 そんな札幌は山瀬のケガを受けて名古屋から森山を、京都から松川を獲得しました。注目は松川。何しろ姓が松川、名が友明ということからもわかる通り、彼は「1人でトミーとマツ」という選手です。その松川は腰痛で出場が危ぶまれていましたが、結局トップ下で出場。ということでスタメンは靱帯を痛めていた今野が復帰して、今野、尽、健作の3バックに両ウィングが西田とジャジ、板長とビジュのダブルボランチにバッキーとオグの2トップ、GKは藤ヶ谷、ベンチに洋平、先生、曽田、和波、森山という布陣です。

 札幌にとっては滅法得意な厚別、しかも相手の柏はアウェイのデイゲームには滅法苦手なチーム。さらに試合前には今月初めに47歳という若さで逝去したHFCスタッフへ贈る応援コールの収録も行われる、いわば「追悼試合」の趣もあったことから、スタンドのサポーターには必勝ムードが漂います。しかし、そのムードに氷水どころか液体窒素を浴びせるような不穏な噂が飛び交っておりました。それは…

 「電光掲示板のテストに『恩氏』という名前が浮かび上がった

 というもの。昨季の仙台対大分戦で4人の退場者を出し、今季のヴェルディ対名古屋戦でベンチの平本を退場させるなど数々の逸話を持ち、「恩氏が来たりて笛を吹く」という言葉すら生み出した伝説の審判員の突然の登場に、サポーターは一気に恐怖の世界へ。「第四(の審判員)だよな? 誰か第四と言ってくれ!」という叫びも虚しく、メンバー表にはしっかり「主審・恩氏孝夫」という名前が。1年ぶりの生ドールズの喜びも半減してしまいました。
 ところが、前半はこの恩氏主審の姿が神々しく見えるほど明らかな札幌よりのジャッジを見せてくれます。リスタートで気を抜く悪癖のある札幌ですが、柏がすぐにプレイを再開しようとしてもリスタートの位置がほんのちょっとでもズレていれば認めず、ビジュの危険なタックルもまるで見ておらず、命拾いをすること多数。まさに「ああ、タカオ…時が見える…」といった感じ。
 さらには札幌の出来もいつもと違います。これまでは攻撃といえばジャジの突破頼みという形が多かったため、相手チームにジャジを徹底的に潰しに来られると途端に攻め手がなくなることが多かったですが、この日はこれまで札幌の辞書にはなかったはずのサイドチェンジまで実践し、これによってジャジを生かすことが出来るようになりました。4バックの柏が混乱しまくっていて出来が予想以上に良くなかった側面はあるにせよ、山瀬抜きという状況を考えれば上出来とも言える試合内容。
 そして先制点はそのジャジから。自陣深くからパス交換をしながら攻め上がっていったジャジが敵陣深くまで入り込んで入れたグラウンダーのクロスを南がキャッチミス。ファンブルしたボールをオグが押し込んでゲットしました。チームにとってもサポーターにとってもノドからゼンジー北京が出るほど欲しかった先制点ですが、アウェイスタンド側でのゴールだったのでホームゴール裏からは入ったかどうかがよく見えず、喜ぶタイミングを逸したながらもとりあえず喜んでみたゴール裏。

 後半になると、より前がかりになった柏に対し、札幌がカウンターを仕掛ける展開になります。そして後半13分、健作のインターセプトから松川にボールが渡り、ロングボール一発で裏を取ったバッキーがDFを引きつけて左足でクロス、このボールがオグのヘッドにドンピシャに当たり2点目をゲットしました。ホームで前半に先制し、後半に突き放すという理想的な展開に今日こそは「何事もない勝利」を確信するゴール裏のサポーター。
 しかし、そんな楽勝モードの試合を楽勝のまま終えられるくらいなら今頃札幌は最下位にいません。バッキーが2度GKと1対1になるチャンスを立て続けに逃した辺りから雲行きが怪しくなり始めます。相変わらず1対1に弱いバッキーですが、裏をとる動きが抜群にうまいバッキーでなければあそこの場所にいなかったのもまた事実。その後腰痛の松川を下げたためにボールをキープすることも出来なくなり、この辺りからラインもずるずる下がり始め、ちり紙交換のように毎度おなじみなサンドバッグタイムに突入。いつ失点してもおかしくない流れになってしまいます。
 そしてこういう場合に期待を裏切らずに失点するのが札幌の「伝統芸」。ロングボール一発で玉田に裏をとられてしまい失点。それでもまだ勝っているのは変わらないはずなのに、途端に浮き足立ち始めてしまいます。その直後にバッキーに替えて曽田を投入しDFに入れ、ストッパーの今野をボランチに上げたはいいものの、ケガ上がりの今野が本調子でないこともあって、却ってマークが混乱してしまいます。今こそ森山の投入だろうと、スタンドのサポーターが今か今かと待っていると、イバンチェもついに動き、アップしていた選手がジャージを脱ぎました。

 先生が

 この状況でスペクタクルがセールスポイントであるDFを投入する監督の意図は一体どんなものか? ウケ狙いですね?
 そうこうしているうちに終了間際にはビジュがハンドを取られ、2枚目のイエローを受け退場してしまいました。おい、それハンドじゃねぇよ。前足だってば。さすがに恩氏主審、1試合で最低1人は葬らなければならないというマイルールがあるのかもしれませんけど、主審が恩氏さんじゃなければビジュはもっと早い時間に退場していたと思われますので、むしろ助かったと見るべきでしょうか。このFKからのボールを根引がヘッド。ヴェルディ戦と同じようにポジショニングが中途半端だったフジは触ることが出来ず、いつもの通りに終了間際に追いつかれてしまいました。
 同点に追いつかれたために先生の投入は見送られましたが、延長になってようやく森山を投入。しかし、その森山もいきなり足を痛めて10分後に先生と交代。点取り屋を失った札幌にもはや勝てる手段が残されているわけはありません。いつもならば負けの流れですが、その負けを救ってくれたのも…そう、やはり恩氏主審でした。ここまで柏のセットプレイでは必ず脅威になっていたサンパイオをたった5分の間に葬り去ってくれたおかげで、今度は柏の攻め手もなくなってしまいました。
 延長後半にペナルティエリア内でジャジが後ろから倒されるというシーンはありましたが、すぐ近くで見ていた恩氏主審は反応なし。あの、ワタクシ素人ですが、このプレイがファウルじゃないならサンパイオは退場していなかったはずですが…。そう嘆いても後の祭り。結局試合は決定的なピンチを防いだフジの活躍もあって2-2のまま終了し、勝点3を手中にしていたはずの札幌は、自滅同然の試合でたったの1つに終わってしまったのでした。

印

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