? チャンリンシャン
サッカー百鬼夜行

第7節 対清水エスパルス
2002.10.5(SAT) 日本平スタジアム

清水エスパルス 3-0 コンサドーレ札幌
ペツェル【8分】
三都主【11分】
ペツェル【85分】
2-0
1-0
 
スターティングメンバー
羽田 GK 洋平
市川
ペツェル
斉藤
高木
DF
ナメック星人
健作
平松
大榎
吉田
アレックス
MF ナオキ
板長
三沢
オグ

バロン
FW 岳也
ンダ
コマネチ
安→横山【65分】
平松→ノボリ【71分】
アレックス→村松【89分】
交代 ナオキ→タブチ【25分】
コマネチ→イソヤマン【25分】
健作→ゴリ【71分】

試合の感想
 水中に潜ったまま上がってこないことにかけてはジャック・マイヨール以上の札幌は、今節は清水エスパルスとのアウェイ戦です。日本有数のサッカーどころである清水市の土壌を背景に多くの日本代表を抱え、強豪として挙げられるクラブです。しかしチームで一番稼いでいるのがマスコットのパルちゃんという噂の通り経営規模は大きくなく選手の層は決して厚くないため、陽の当たる道を進んだかと思えば主力が複数欠けると一気にチーム力が落ち、数年に1度皆既日食が起こるチームでもあります。今季もワールドカップを境に徐々に成績が落ち始め、気がつけば今節はステージ15位と16位の対戦となっています。そんな低迷からの脱出を図る清水はバロンとコンビを組むFWとして韓国の英雄・安貞桓を獲得というカンフル剤を注入しました。
 清水はその安貞桓がスタメン出場。ワールドカップ後約2ヶ月の間試合に出ていない上、チームに韓国人のいない清水にまだ馴染んでおらずまだ本調子ではないとはいえ、相手チームの助っ人選手に来日初ゴールを献上するのが得意な上、韓国人選手に滅法弱い札幌にとっては警戒すべき選手なのは間違いありません。しかし、去年今年と札幌ドームには放送禁止のため出場できなかった日本代表ボランチの戸田が、ホームゲームの今節も「『ときめきトゥナイト』を読破中」という理由で欠場。伊東や森岡もケガで欠場している上、黒河と成長著しい池田もU-21代表にドナドナされる苦しい台所事情。戸田の代わりにベテラン大榎が、池田の代わりにボスニア人のペツェルがスタメン出場します。

 さて札幌にとって日本平スタジアムは、Jリーグに初昇格した98年は開幕戦で4失点を喰らい、スタートダッシュに成功して2位にまで順位を上げて意気揚々としていた昨年は5失点を喰らい、行くたびに現実に引き戻されるという魔境の一つです。昨季は札幌ドームで初勝利を挙げたものの、「アウェイの洗礼」という言葉を思い出させる相手のホームスタジアムで清水エスパルスを破ってこそ今までのリベンジがなるというものです。
 そのリベンジを担う札幌のスターティングメンバーが日本平の電光掲示板に映し出されました。我らが赤黒の勇者たち、その名もGK山本浩正、DF鈴木秀人、DF田中誠、DF山西尊裕…。って、それ赤黒違うじゃん。確かにそれなら勝てそうですけど。「大変失礼しました」とあまり失礼そうではなさそうなおねいさんの明るいアナウンスの後、ようよう待たされてようやく出てきた札幌のメンバーは、スタメンは登録上の表記が変わっただけで実質は前節磐田戦とまったく同じ。違うのはサブメンバーにバッキーではなくゴリがいること、ナオキの苗字が「坂井」だったことくらいです。まぁ多少は寂しいメンバー構成とはいえ、王者に冷や汗を掻かせた前節磐田戦の前半くらいのイメージを持っていればアウェイとはいえ勝負にはなるはず。

 などと思っていたら、開始からなんかもう柱谷時代に戻ったかのようなサッカーを繰り広げます。ゾーンで守るのかマンツーマンで守るのかまったくはっきりせずスペースを与え放題で、それだけならまだしも、味方同士でお互い声を掛け合うような雰囲気が全然ありません。ちょうちょうサンバやジグザグサンバは出来ずとも、声を出すことは誰にだって出来るはず。にもかかわらず、そういったコーチングもなく相手のハイボールに2人同時に競りに行って同士討ちに終わるわ、ボールを持っている相手選手を2人で慈しむように見守るわ、そうかと思えば2人でボールに同時に殺到するわ見事な中学生サッカーです。
 と思ったら、電光掲示板に表示された札幌のメンバーは、洋平、田渕、森、今野、マクサンドロ、健作、酒井、ビジュ、ロブソン、山瀬、小島。メンバーまで柱谷時代に戻ってるし。つうか、この中でピッチにいるのって4人だけなんですけど。
 もうとにかくそんな感じでヤバイ雰囲気がゆんゆんしていたわけですが、バロンが競ったヘディングシュートをアレックスが折り返し、詰めていたペツェルに決められ開始から10分も経たないうちに先制を許してしまいます。バロンのシュートがゴール枠から外れていったのを札幌の選手が誰一人追わず、易々と折り返されてがら空きのゴールに蹴り込まれたわけですから、これはもう中学生の失点の仕方です。んで、2失点目も同じようなパターン。市川のクロスボールに洋平が飛び出しをミス、バロンに頭で折り返され、これまた詰めていたアレックスに決められる中学生レベルの失点の仕方。誰ですか? 中学生を連れてきたのは。

 5連敗中の清水に2点をプレゼントする形となった札幌は早めに1点を返したいところですが、いつもの如く曽田にロングボールを当てる作戦ではあるものの、その曽田はマーカーであるペツェルに抑えられている、というよりはそもそも曽田にいいボールが行きません。安貞桓が前線から積極的にプレスに来ているせいか、それなりに精度のいいボールを蹴ることが出来る健作や尽も思うようなボールが蹴れず、ビジュはいつもの通りとりあえずフルパワーで蹴るだけ。ビジュの蹴ったボールに合わせるには身長が7メートルくらい必要でしょう。
 磐田戦では抜群の動きを見せていた平間も、ほとんどボールが回ってこないため持ち味を出す以前の問題で、さらに悪いことに頼みのナオキまでもが直前に後ろからタックルを見舞ったアレックスによる報復で重傷を負いピッチを退きました。張監督は負傷したナオキに代えて田渕を入れ、平間に代えて磯山を投入、ここに来てようやくバロン対策として曽田をDFに下げ、健作を左ウィングバックに、和波をまた中盤に放り込みました。ただ、中盤でも前線でもまったくボールをキープできない状況なのに、現在の札幌では唯一中盤でボールの持てるジャジの投入はなぜかなし。確かに日本平の劣悪なピッチではドリブラーの本領を発揮できないのはわかりますが、それならなぜ平間を頭から使ったのか理解に苦しみます。
 曽田がDFに入り当面バロンを抑えることには成功しましたが、肝心の攻撃のほうは状況が良くなるどころか悪くなる一方。特に板長は目を覆うほどの出来で、全てのパスが長短問わず正確に敵に通る有様。イヤ、もともと板長自身組み立ての出来るボランチではなく(つうかそもそも本職はボランチではない)、ここのところは専守防衛的な役割をしていて目立たなかっただけなのですが、今野がアジアユースにドナドナされている上、ダブルボランチの片割れの和波は本職じゃないのを通り越してクロマティがショートを守るようなものなので、必然的に板長を経由せざるを得ず、その分だけ余計に目立ってしまいます。これなら先生がボランチやったほうがまだまだあきらめがつくような気もしますが、そんな感じですから状況が変わるわけもなく、前半はこのまま終了。

 後半になると、2日前にナビスコカップで鹿島アントラーズと延長まで戦っている清水の皆さんはすっかり流しに入ります。その分だけ札幌のボールキープ率が若干上がりますが、相も変わらず自滅の連続でチャンスを作り出すことが出来ません。かといって清水も留めを刺すような気配も見せないどころか、後半20分には安貞桓を下げて左うちわモードで、両チームともゴールキーパーの出番がほとんどない蹴鞠合戦に終始。
 しびれを切らした張監督は健作を下げてついにゴリを投入、和波をウィングバックに戻しました。ピッチの真ん中でまごまごしていた和波が本来のポジションに戻り、さらに生粋のストライカーが入ったことによりようやく3トップが形になり、ここからしばらく札幌ペースの時間が続きます。しかし、岳也がGKとの1対1を外したり、絶好のタイミングでシュートを空振るなど数少ない決定的なチャンスをモノにできずにいるうちに、後半40分には何となくCKからまたペツェルに決められダメ押し点を献上しジ・エンド。今季1試合に3点以上獲ったことがない札幌が残り5分で3点を返すことが出来るはずもなく、連敗をまた一つ伸ばしたのでした。

 とりあえず予想された安貞桓の来日初ゴールは許さなかったものの、調べてみたらペツェルが来日初ゴールですね。そう来るとは思わなかったよセバスチャン。

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