? チャンリンシャン
サッカー百鬼夜行

第12節 対東京ヴェルディ1969
2002.11.9(SAT) 東京スタジアム

東京ヴェルディ1969 3v-2 コンサドーレ札幌
エジムンド【26分】
ロペス【37分】
羽山【113分】
2-0
0-2
0-0
1-0
相川【49分】
西田【65分】
スターティングメンバー
高木 GK 洋平
相馬
ロペス
米山
柳沢
DF
先生
健作
ヤマタク
ボランチ(美白)
桜井
小林大
MF ゴンザレス
板長
吉川
西田
三沢
エヂムンド
平本
FW コマネチ
オグ
桜井→永井【72分】
平本→佐野【75分】
小林大→羽山【98分】
交代 吉川→ンダ【45分】
コマネチ→アイカー【45分】
健作→タブチ【83分】

試合の感想
 前節ハイスピードでJ2降格を決めたコンサドーレ札幌は、今節東京ヴェルディとのアウェイゲームです。「残留争い仲間」だったはずのヴェルディもロリ・サンドリ監督が就任してからは好調で、早々と若手選手を主体にしたチームで気がつけば前節でJ1残留を確定、2ndステージは6位と数字上は優勝の可能性も残しており、数字上も残留の可能性はないチームから見るとずいぶん差をつけられてしまいました。
 この時期になるとどこのチームも多くのケガ人を抱えているものですが、ヴェルディもご多分に漏れずマルキーニョスや富澤、三浦淳宏、玉乃らがケガ。U-21代表の田中隼磨もケガでもしたのかベンチにもいません。4バックの右には柳沢が入り、左サイドバックは相馬、CBに米山とロペス、中盤は後ろ2人が林と山田、前2人が桜井とU-19代表の小林大悟、2トップは平本と「アニマウ」エヂムンドという布陣です。
 さてもう失うものは全くなくなった、というよりは身ぐるみはがされたと言ったほうが近い気もする札幌のスタメンは、前節出場停止だった板長とカタールでのドナドナ期間を終えた今野が復帰したものの、一発レッドを受けたビジュがいつもの有給休暇という相変わらず入れ替わりの激しい布陣。オマケに"King of Sapporo"新居辰基が練習中にケガをしてしまい欠場となり、GK洋平、3バックはいつもの通り健作、先生、尽、ウィングバックに西田と和波、ここのところ定番となっているトリプルボランチは吉川、今野、板長というメンツで、2トップはオグと岳也…ではなくなぜか平間という、あんまり点の取れなさそうなメンバー構成。ケガをした新居の代わりにベンチ入りしたルーキーの相川に期待したいところです。というか、試合が始まる前からベンチメンバーに期待というのもどうかと思いますが。

 しかし、そんな間違った期待を何一つ裏切ることをしてくれないのが走れ正直者な札幌の札幌たるゆえん。試合は開始からヴェルディペースが続きます。札幌は中盤に復帰した今野が久しぶりのワンワンディフェンスを披露し、DFも先生と尽がエヂムンドをよってたかって潰しにいく作戦で何とか凌ぎますが、攻撃のほうは見事なまでにショボショボ。オグと平間は本当にひどいコンビネーションで、磁石のS極とS極のようにどんどん離れていく一方で、左サイドの健作と和波はお互い爆弾ゲームの爆弾のようにボールを押しつけ合うほほえましい仲の良さを見せつけ、板長も守備はともかく攻撃は相変わらず正確に敵にパスを送り続ける有様で、シュートに持っていくことすら出来ません。人に無責任な愛称を付けるのが得意な健作から「三沢」と名付けられた和波は、ヴェルディが招待した本家三沢光晴の登場にビビったのか守備も後追いとなるシーンが見られることも多く、もともとそんなに堅くはない札幌守備陣が崩されるのも時間の問題です。
 そして前半26分、ペナルティエリア手前からのフリーキックを与えます。エヂムンドが蹴ったボールに走り込んだロペスと吉川がブラインドになってしまったのか、蛍光オレンジの洋平は正面に飛んできたボールに触れることが出来ずにゴールイン。イヤな予感を裏切ることなく先制点を献上します。早々と1点のビハインドを負った札幌ですが、やはりまったくシュート打とうとはせず、純国産メンバーらしい必殺たらい回し攻撃に終始するのみで、アタッキングエリアで細かくパスをしてはカットされるシーンが続きます。反面ヴェルディの攻撃はますます鋭さを増し、先制点からわずか10分後にはコーナーキックからなぜかどフリーになっていたエヂムンドに合わせられます。このシュートはDFが何とか身体に当てて防いだものの、その跳ね返りをロペスに決められ2点目を許してしまいました。

 札幌の出来から言えば絶望的とも言える2点の差にほぼゲームの趨勢は決したかと思われた後半、吉川とすっかり「量産型」に戻ってしまっていた平間を引っ込め、曽田とリーグでは初出場となる相川を入れた途端ゲームの流れは一変します。ここのところ消極的なプレイが目立った曽田ですが、この日は開始早々に角度のないところから迷わずシュートを打つなど見違えるようなプレイを見せます。つうか、ボールを受けて前を向こうとする曽田を初めて見たのも初めてなら、そこから無理矢理シュートを打つのも初めて見ました。誰かに催眠術でもかけられたのでしょうか。そして4分。その曽田が健作のクロススルーすると、このボールをなぜかフリーで待ちかまえていた相川が落ち着いてトラップ、左足でシュートを放つと、ボールは相手GKから逃げるようにネットに吸い込まれ、相川のデビュー戦初ゴールで1点を返します。
 こうなると俄然札幌選手の動きが良くなります。現金なものです。クラブに現金はありませんけどね。前半やる気なさげに見えた健作も積極的な攻撃参加が目立ちつようになり、前半はほとんど見せ場のなかった西田と前半は平間にスペースを潰されていた和波もガンガン上がっていくようになります。和波が突破して上げたクロスを今野がヘディングシュートを放ったシーンなどは、ペナルティエリアの中に今野と相川、曽田、西田となんと4人が飛び込んで行っており、ヘタレだった前半と比べて「これが本当に札幌?」と思うことしきりです。つうか、これをなぜ最初からやれないのでしょうか。
 そして後半20分、板長のクロスを相川が落とし、オグがシュートを放ちます。このボールは相手DFに当たりますが、こぼれたボールに走り込んできた西田が左足を振り抜くと、ボールはまっすぐゴールの中へ。西田の移籍後初ゴールでついに札幌が同点に追いつきました。今季戦力外同然で追い出された古巣相手に恩返しのゴールを叩き込んだ西田はヴェルディベンチに向けてどうだと言わんばかりのガッツポーズ。つっても西田の籍はまだヴェルディのままなんですけどね。
 今季、これまで2点のリードを追いつかれたことは何度もあれど、2点リードを追いついた試合は皆無だった札幌はもうイケイケ状態。右から左から真ん中から多彩な攻撃でヴェルディゴールを脅かします。前がかりになっている分カウンターを喰らう危険も合ったのですが、2トップが積極的に前線からプレッシャーをかけていたこと、そして今野がピンチの芽をことごとく摘み、それによって最終ラインも高い位置に保つことが出来たためオフサイドも多く取れるようになりました。鬼神のような活躍を見せていた今野ですが、それでもやはり今野は今野で、先生とのピンボールのような超高速びっくりどっきりパス交換はスペクタクル師弟コンビと言える見事さでした。洋平にとっては四次元殺法コンビかも知れませんが。
 しかし、何しろチームの総得点が高原1人の得点数と同じという札幌。今季3点以上取れないお約束はこんな流れでも重くのしかかっていたようで、攻め込みながらもあと1点を奪うことが出来ません。そうこうしているうちにいい感じで攻撃に参加していた健作が足を痛めて田渕と交代してしまいました。左のストッパーという不慣れなポジションにいきなり放り込まれた田渕に健作と同じ仕事を求めるのは酷というもの。結局足の止まっていたヴェルディにトドメを刺すことが出来ず、2-2のまま試合は延長に突入。

 圧倒的に攻め込んでいた札幌ですが、しかし札幌には数ある伝統芸の中の一つに「延長に滅法弱い」というのもあります。延長戦も札幌ペースで進み、相川がディフェンスラインの裏に抜け出したり、曽田がやけっぱち気味のドリブル突破を見せるなど決定的なチャンスは何度もあったもののどうしても得点を決めることが出来ず、延長後半8分に一瞬の隙を突かれて羽山にVゴールを決められ撃沈。延長の呪縛、2点の呪縛、そして洋平の蛍光オレンジの呪縛から逃れられずに敗戦となったのでした。

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