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サッカー百鬼夜行

第27節 対川崎フロンターレ(テレビ観戦)
2003.8.10(SUN) 札幌ドーム

コンサドーレ札幌 1-1 川崎フロンターレ
アンドラジーニャ【28分】 1-1
0-0
アウグスト【10分】
スターティングメンバー
フジ GK 吉原
ソダン
川ロ
DF 伊藤宏
渡辺
箕輪
板長
ゴンザレス
中尾
瓜田
砂川
MF アウグスト
鬼木達
今野
長橋
中村
岳也
偽俺王
FW ジュニーニョ
ホベルチ
中尾→西ポン【65分】
岳也→King of sapporo【80分】
交代 中村→ガナピー【45分】
ホベルチ→小林【78分】
川ロ【72分】 警告 鬼木達【74分】
ジュニーニョ【89分】

試合の感想
 前節新潟戦での大敗を受けてジョアン・カルロス・トシキ監督が辞任した後の試合は、よりによって一番相性の悪い川崎フロンターレを札幌ドームに迎えての一戦。J2になってから公式戦では1度も勝ったことがない川崎戦、今季もここまで1分1敗と分が悪く、どうにもこうにも苦手としか言いようがないチームですが、逆に川崎の石崎監督にとっても、札幌は一度も勝ったことがない鬼門の場所でもあります。
 3年越しのJ1返り咲きに向けて上位2チームをいつでもマクれる位置に付けている川崎は、ここに来てケガで長らく戦線離脱をしていた伊藤宏樹や鬼木達が復帰。さらには五体満足でも怪我人より動かない男・デリーバルデスを解雇し、ブラジルユース代表経験を持つ22歳のホベルチを獲得し、上位追い落としへ万全の体制を整えています。ちなみにこのホベルチ、札幌にいたホベルっちとはもちろん別人ですが、前所属チームがスパルタク・モスクワ。そう、あのロブソンがいたチームです。名前といい経歴といい、札幌的には責任を取ってもらう選手にしか見えないのですが、デビュー戦となった前節でいきなり先制ゴールを挙げています。

 そして札幌は張外龍新監督となってから初めての試合。就任してから今までの4バックから3バックに変更。川口をスイーパーに置き、ストッパーは尽とソダンという道産子3バックで臨みます。彼らを生んだ大いなる北海道と同じく、3人とも不景気な顔をしているのが気になりますが、ケガで戦列を離れていた藤ヶ谷もようやく復帰して何とか戦える状況にはなっているようです。そして前節一発退場となったビタウが出場停止ですが、新加入のウリダがデビュー。久しぶりに見た長く名古屋を支え続けた彼は、ちょっと横に大きくなったような気もしますが、とりあえずまぁお手並み拝見といった感じでしょうか。登録上はそのウリダは左ウィングバックに入ったようで、右ウィングに板長、ダブルボランチに中尾と今野、トップ下砂川となっていますが、この辺はまぁ流動的にポジションを替えてくると思われます。
 2トップはいつもの通りアンドラと岳也。そういえば第一次張政権において最後の試合となった天皇杯でハットトリックを喰らったのがアンドラジーニャでした。だからなんだということもないのですけど、とりあえず5点喰らうことはないだろうてなことで今節の主審は上川徹さん。ちなみに第2クールの対戦では恩氏主審でした。安心してもいいですか

 さて先述の通りこの試合から3バックに戻した格好の札幌。岡田監督の「4バックはとても難しい」発言以来、札幌のサポーターには3バックを好む人が多いのですが、3バックは3バックでも札幌のそれは早い話が5バックのワンワンシステム。4-4-2よりも一人多いはずの中盤は、練習時間が余り取れなかったこともあってあまり機能しているようには見えません。それでも開始早々に砂川が川崎DFの裏に抜け出してシュートを打ち、なんとか主導権を握ろうという意図は見えます。
 しかし、川崎もお家芸である素早いプレッシャーからジュニーニョを中心にカウンターで札幌ゴールに襲いかかります。前半9分、ペナルティエリアの少し手前、ゴール正面の位置でそのジュニーニョを今野が倒してしまい、直接フリーキックを与えてしまいました。このフリーキックを蹴るのは、札幌にとっての「天敵」アウグスト。つってもサンパイオ(広島)、柳相鐵(現横浜F・マリノス)、大野(現京都)など札幌にはやたら天敵が多く、これが自然界だった場合こんなに天敵が多いのでは種として生存できないと思うのですが、このアウグストにも鹿島時代の2001年にデビュー戦で直接フリーキックを決められたイヤな思い出があります。で、イヤな予感は得てして的中するもの。アウグストの左足から放たれたフリーキックは、懸命に伸ばした藤ヶ谷の手がかすりもしないほどえぐいカーブでゴールネットに突き刺さります。3バックも4バックも関係ない形で先制を許してしまいました。

 早くもビハインドを負ってしまった札幌は早めに追いつこうとしますが、ビタウを欠く中盤はボールの収まりどころがありません。新加入のウリダはさすがにそうそういきなりチームにフィットするはずもなく、もともとが黒髪なこともあって別の意味で札幌の中盤に溶け込んでしまっており、今のところは割と上手い今野といったレベルを脱せず。仕方がないのでアンドラが下がってボールを受ける形になりますが、そのアンドラを追い越す選手がいない上、数少ない絶好のチャンスも岳也がヘタを打って、逆に川崎のカウンターを受ける状態となっています。
 どっちかというと中盤でも劣勢を強いられている札幌ですが、川崎の追加点をひたすら阻んでいたのが今野。板長が終始行方不明だったこともあって、まさに鬼神のような形相で相手選手を追いかけ回します。さながら「怒りモードのアシュラマン」となった時の今野に勝てるヤツはJリーグにはそうおらず、川崎選手をちぎっては投げちぎっては投げし、もっとも危険な男・ジュニーニョにもなかなか仕事をさせません。失点に繋がるファウルを犯してしまった責任を感じていたのか、それともワンワンシステムがよっぽど今野に合っているのか、逆に言えばあれこれ考えないといけない4バックは今野には不向きなのでしょうか。この日のドームに「ジーコ代表監督が(暇つぶしに)来ていた」こととは、多分関係ないとは思いますけど。
 熾烈なせめぎ合いが続き、同点に追いつくのもしんどそうだと思っていた矢先、その機会は突然訪れました。前半28分、ウリダの絶妙なパスからうまくDFの裏に抜け出したアンドラジーニャが左足で強烈なシュートを決めて同点に追いつきました。その後はお互いチャンスは迎えながらも決めることが出来ず、試合は1-1のまま後半を迎えます。

 この試合に勝つと広島の結果次第では2位に浮上する川崎、翻ってまだ昇格の可能性がわずかに残っている、というよりかは厳しい現実から目を背けたい札幌と、ともに負けられない両チームだけに、後半は試合も激しさを増します。お互いプレッシャーを掛け合い、攻守がめまぐるしく入れ替わってなかなかに見応えはあると見せかけて冷静に見ると実は何をやっているのかあんまりよくわからないサッカー、言うなれば騎馬戦サッカーが続きます。
 まぁそれでも前日同じ場所で行われた、ススキノに呑みに来た人たちによるディフェンスユルユル祭りよりかはよっぽどオモシロいのですが、前半と同じように中盤でのつぶし合いが続きます。復帰した藤ヶ谷もいくつかファインセーブを見せケガもすっかり大丈夫のようで、川崎のGK吉原(くどいようだが碁打ちの奥さんが美人)も一歩も譲らずどちらも追加点を奪えぬまま時間が過ぎていきます。
 どっちも優勢とも劣勢とも言えない状況だけに張監督、石崎監督とも選手交代には慎重だったようで、石崎監督は後半頭からガナピーを投入し、張監督が後半20分に中尾に代えて久々出場の西ポンを投入した後は2人とも交代枠をフルに使おうとせず、その2人目の交代も残り15分を切ってから。しかもどちらもバランスを崩してまで点を獲りに行くという交代ではなく、岳也とホベルチという割と消えていた選手を引っ込めただけの話ですので、選手交代が劇的な効果をもたらしたかと言えばそういうわけでもなく。
 結局試合はそのまま淡々と進み、終了間際に新居がGKと1対1になるビッグチャンスはあったものの決めることが出来ずタイムアップ。試合は1-1のまま終了。プロになってから1度も川崎に勝っていない札幌、札幌で1度も勝っていない石崎監督、どっちのジンクスも破らないという見事なご丁寧っぷりの試合でした。

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