? チャンリンシャン
サッカー百鬼夜行

第28節 対ヴァンフォーレ甲府
2003.8.16(SAT) 山梨県小瀬スポーツ公園陸上競技場

ヴァンフォーレ甲府 1-1 コンサドーレ札幌
水越【36分】 1-0
0-1
堀井【77分】
スターティングメンバー
阿部 GK フジ
アライール
トニー谷
青葉
奈須
DF ソダン
川ロ
倉貫
外池
水越
石原
MF 板長
尾藤
ゴンザレス
瓜田
砂川
藤田
須藤
FW 岳也
偽俺王
倉貫→山本【61分】
アライール→オグ【72分】
水越→山崎【87分】
交代 砂川→中尾【27分】
岳也→King of Sapporo【89分】
尽→西澤【89分】
石原【70分】
奈須【79分】
警告 尽【27分】
尾藤【30分】
砂川【65分】
岳也【67分】

試合の感想
 前節川崎フロンターレと引き分けに終わり、第二次張政権初勝利を狙う今節は、ヴァンフォーレ甲府とのアウェイゲーム。第1クールは負け、第2クールは終盤に追いつかれ3-3の引き分けと今季甲府にはまだ一度も勝っていません。オマケに、前にも言ったように甲府のせいではないとはいえこの小瀬が結局はケチのつき始め。これまでの試合でも小瀬での成績は通算で3勝3敗1分と決して分がいいわけではなく、特に高温多湿となる夏場は札幌サポーターのみならず他のチームのサポーターからも「魔の甲府盆地」と恐れられる特殊なスタジアムでもあります。
 その甲府はDF池端が2試合の出場停止中で、その代役は仲田健二。トニー谷ばりのゴーグル? フェイスガード? がおしゃれなセンターバックです。そろばん持って欲しいですっつっても今の若い人にはわかるはずもないか。その他ではオグが身内の不幸で前節欠場した影響で今節はベンチからのスタートとなり、須藤と「変態ストライカー」藤田の2トップとなっています。

 対する札幌は前節出場停止だったビタウが戻ってきました。システムは前節と同じく3-5-2で、そのビタウは中尾と入れ替わりボランチに入ります。ベンチからは西ポンが外れて中尾が入り、前節はスタッフのチョンボでベンチ入りできなかった西澤も今節は無事ベンチ入り出来ました。現在6位の札幌は、4位の甲府との勝点差はわずかに3。まぁ今更順位はどうでもいいとはいえ、ここで勝てば大宮の結果次第では得失点差で上回る札幌が一気に4位浮上となる可能性もあり、見た目的にはなんか上位だと勘違い出来るだけに、ここはひとつ勝っておきたいところです。

 ところが、キックオフからホームの甲府のバランスがとてもよく、もはやお家芸と言ってもいい組織だった素早いプレッシャーの前に札幌はタジタジ。ビタウが戻ってきて助っ人トリオが出揃い、「考えられ得るベストメンバー」となった割にはまったくボールが繋がりません。戦前に張監督が「省エネ戦法を採る」とコメントしていましたが、それは真夏の甲府盆地の蒸し暑さを考慮してのもの。しかしながら、ニュースでも再三触れられているように今年は極端な冷夏です。この日も雨模様で湿度こそあったものの、気温自体は公式発表で22.6度と、北海道とそう変わらない気温です。単純に考えれば前提からして既に吹っ飛んでいるわけですが、そこはコンピュータのような札幌の選手達。といっても、それは「ものすごく計算が速い」とか、「正確無比な能力を持つ」とかそういうのではなく、単に素直でマジメで融通が利かないという意味でのコンピュータです。プログラムを組んだことがある人ならおわかりでしょうが、コンピュータというのは仮にプログラムが間違っていたとしても気を利かせて指摘してくれるなんてことはなく、絶対に言われたことしかやらないものです。
 そんなわけで頑なに省エネ指令を貫く札幌選手達。まぁ敢えて選手達を擁護するとすれば、悪評高い小瀬の芝に足を取られる選手が多く、特に札幌は第1クールで砂川と俺王様がここで負傷退場しているだけに、選手の側とすればやっぱり「怖い」というのがあったのだろうと思います。ただ、セーブしても点が取れるくらいの力の差があるならまだしも、そんなサッカーで勝てるほど今の甲府は甘い相手ではありません。2試合目となるウリダも積極的に顔を出そうという意図は見られるのですが、もともと豊富な運動量と広い視野が持ち味の選手だけに、動きと視野が限定されるサイドは不向きなようで、なかなかうまく攻撃に絡むことが出来ません。
 そんなわけで結局札幌は空中戦のあまり得意ではないアンドラに向けてロングボールを蹴り込むだけのなんのひねりも見られない攻撃を繰り返すだけ。ジョアン時代のワンタッチ、ツータッチのパス回しはもはや影も形もなく、ワンツーもなければサイドをえぐることもなく、麻雀で言えばひたすらツモ切りの状態が続きます。

 それでも百歩譲って「アウェイの戦い方を貫いている」と考えられなくもないですが、それはあくまで相手を無得点に抑えて初めて成立するもの。少なくとも前半は無失点で行かねばならないと思うのですが、いかんせん札幌には致命的なセキュリティーホールがあるのが心配されるところです。というわけで前半36分、相手のスローインからのこぼれ球を水越に決められ先制点を許してしまいました。
 リードされた後も特に札幌の状況は変わらず。札幌的にはビタウがイエローを受けて復帰したてで累積警告の有給ゲットという見所があった程度で、ゴールはおろか枠に飛んだシュートすらなく前半を終了します。

 追いつきたい後半もメンバー交代はないながらも、張監督は4バックに変更するという修正パッチを当てます。といっても、それが効く効かない以前に、すっ飛ばしまくっていた甲府がこっちはなんにもしてないのに勝手に疲れてくれたというほうが正しいような気がしますが、とりあえず若干札幌がペースを取り戻し始めます。
 少しずつその表情にも疲労が色濃く映り始めた甲府に対し、結果的には前半の手抜…いやセーブが奏功してまだ元気のある札幌。前半に比べて攻め込む場面が多くなりましたが、それでも決定的なチャンスを迎えながらもシュートが枠を捉えることが出来ません。点を獲るためにはあと少し、あと少しだけの「プラスα」が必要となってきます。そのプラスαを得るには、札幌が選手交代で打開を試みるか、もしくは甲府が選手交代でバランスを崩してくれるかのどちらかですが、張監督は後半21分に砂川に代えて中尾を投入したのに続き、甲府の松永監督が後半27分にアライールに代えて小倉を投入。

 よし、勝った!

 サイドをやられまくっていたアライールがいなくなっただけでなく、一番疲労の大きかった中盤の選手ではなく、前線の、しかも動かない選手を投入したことによって甲府のバランスが崩れ、あれほど緻密だったプレスにほころびが見えてきました。

 そして、札幌が追いつくまでその交代からわずか5分ほどしかかかりませんでした。後半32分、フリーとなったビタウのミドルシュートをGKが弾いたところを岳也が蹴り込み、ようやく同点に追いつきました。自分の故郷でゴールを決め、サポーターに向かって力一杯喜びを表現する岳也。その気持ちはわかります。でもさ。
 喜んでるヒマがあったらボール取りにいかんかい。極めて薄いながらもチーム的にはまだ昇格の可能性が残る状況で、まだ同点になっただけであって勝ち越したわけではないんですけど。
 同点に追いつかれた甲府はもはやいっぱいいっぱい。たたみかけるなら今しかないと思っていたのですが、張監督はその後は一向に動く気配なし。既にピヨッている甲府ならば新居や和波といった足のある選手を入れてみるのもオモシロいかと思うのですが、得点に絡んだもののそのほかのシーンではなぜかボールと逆の方向に動いてしまう岳也や、休み明けはいつも身体の重いビタウをピッチに残したまま残り時間は少なくなっていきます。
 結局新居が投入されたのは試合ももうロスタイムを残すだけといった頃合い。その新居は前節の川崎戦の汚名返上とばかりにわずかな時間の中で俺ドリブルなどを見せましたが、やはり短い時間ではいかんともしがたく、さらにロスタイムには意味不明な尽と西澤の交代によってまた時間がなくなり、突き放すことが出来ずにドロー。これで今季の引き分け数は11となり、川崎との壮絶なデッドヒートはまだまだ予断を許さない状況になりました。

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