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サッカー百鬼夜行

第41節 対アルビレックス新潟
2003.11.1(SAT) 札幌厚別公園競技場

コンサドーレ札幌 2-2 アルビレックス新潟
アンドラジーニャ【10分】
今野【53分】
1-1
1-1
上野【30分】
上野【89分】
スターティングメンバー
フジ GK 野澤
吉川
川ロ
田畑
DF 三田

円山
新井
板長
ゴンザレス
三原
三沢
MF 秋葉
ヤマロ
栗原
ファビーニョ
偽俺王
砂川
岳也
FW マルクス
上野
板長→ソダン【75分】
三原→市村【80分】
交代 新井→宮沢【59分】
栗原→末岡【69分】
ヤマロ→森田【83分】
偽俺王【32分】
偽俺王【38分】
ゴンザレス【84分】
警告 ファビーニョ【55分】
偽俺王【38分】 退場  

試合の感想
 今季厚別最終戦となる第41節は、首位アルビレックス新潟との試合です。前回の対戦は、マルクスの4ゴールを含む5失点と惨敗を喫し、わずかに残っていたJ1昇格への可能性が事実上潰えたと同時に、この試合後にジョアン・カルロス・トシキ監督が辞任を表明したという、ある意味でターニングポイントとなった試合です。まぁターニングポイントつっても、泥船が完璧に沈没というターンなんですけどね。
 現在サンフレッチェ広島、川崎フロンターレと共に激しい昇格争いを続けている新潟は、首位とはいえ3位との勝点差はたったの4しかなく、残り4試合となった時点でもまったく予断を許さない状況です。それでも自力昇格はできますから、とにかく勝ち続ければいいわけです。DFの要であるアンデルソンが出場停止中ですが、前節はホームで難敵・甲府を2-0で下し、勢いに乗って今回のアウェイ戦に乗り込んできました。

 迎え撃つ札幌は、前節ようやく復帰を果たした中尾が、靱帯を痛めて再びリタイアと相変わらずの状況。そんな状況でも戦わなければならない張監督はビタウとウリダをベンチからも外すという荒療治を施し、システム的には3-4-3。3バックは田畑、川口、吉川と就任から初めて2試合連続で同じメンバーを並べ、ダブルボランチに板長と今野、2列目に和波と三原を並べ、砂川がFW登録となりアンドラ、岳也と3トップを組みました。

 というわけで試合です。現在首位の新潟ですが中盤でのプレッシャーはさほどキツくありません。もしかしたら「王者の戦い方」でもしてみたくなったのでしょうか。しかし前回の対戦で大勝したとはいえ、新潟は今シーズン昇格争いをしている3チームの中で唯一札幌に負けたことがあるチーム。相性的にはそんなによくない上、珍しく気合充分の札幌が試合を支配しにかかります。
 特に動きが目立っていたのがアンドラジーニャと、ドナドナから帰ってきたばかりのゴンザレス今野。特にアンドラは絶好調で、がっちりとキープしてタメを作ったり、そこからうまくボールを散らしてチャンスを演出。挙げ句ラボーナまで繰り出すノリノリっぷり。「アンドラってこんなうまかったっけ?」と思えるほどのプレイは、ほうれん草摂取後のポパイか、はたまたニンニク補給後のキン肉マンといった感じでしょうが、今回は「メカの素を喰ったヤッターワン」と言うべきかも知れません。「どんな理屈で動いているのか不明」という意味で。
 そして今野も、だいたいいつも代表から戻るとなぜかいいプレイを見せるのですが、今日のプレイは今シーズン最高とも言えるもの。久しぶりに鋭い出足と執拗なプレスでことごとくボールを奪います。そういえば今野の最大の特徴は、フィジカルの強さでも一対一の強さでもなく、その守備範囲の広さだったはず。ルーキーイヤーの2001年はもちろん、降格した昨シーズンと比較してすら、今シーズンはプレイのスケールが小さくなってしまったような気がしていたのですが、ここにきてようやく今野らしいプレイが復活しました。つまりは犬です
 そのアンドラや今野に引っ張られるように、他の選手も今までとは見違えたプレイを見せてくれます。そして10分、右サイドに走り込む板長に合わせて三原がロングパスを送ります。ラインを割るかと思われたボールに食らいついた板長がぎりぎりで残し、ペナルティエリアの中で待ちかまえていたアンドラにパス。このボールをアンドラが冷静に決めてなんと札幌が先制しました。

 先制後も札幌は異常な出足で新潟にペースを譲りません。さすがにマルクスだけは完璧に抑えるのは難しいのですけど、それでも守備陣が体を張って水際で阻止し、岳也や砂川も前線から厳しいフォアチェックで新潟にプレッシャーをかけ続けます。久しぶりに見るチーム一体のプレイですが、しかし新潟も手をこまねいているわけではなく、前半30分に左サイドを破られ、フリーでクロスを上げられてしまいます。そのクロスをダイレクトで打ったマルクスのシュートはいったんフジがセーブしたものの、そのこぼれ球を上野に決められ同点に追いつかれてしまいました。
 さらに悪いことは重なるもので、絶好調だったアンドラが32分、38分と立て続けにカードをもらってしまい退場。戦闘中に電池が切れるオモッチャマの如くまたしてもいなくなってしまいました。
 流れとしてはこのままずるずる行ってしまいそうな感じでしたが、「10人の札幌は11人より強い」という定説はまだ生きているのか、それまであまり目立たなかった和波が積極的な飛び出しを見せるようになり、岳也とのダイレクトによるパス交換で完璧に崩してシュートを放つなど、それでも新潟と互角の試合を展開し、前半は1-1で終了。

 後半も札幌は一歩も引きません。退場になったのがアンドラなので中盤より後ろのバランスにはそれほど影響しないのですけど、それでも今野がまるで2人いるかのような働きで新潟の攻撃を潰しまくります。かつての鬼神っぷりが戻ってきました。何があったのかは知らないけど
 ただ、守備は何とかなっているものの攻撃に限ってはやはりアンドラ不在は大きく、岳也も守備に忙殺される時間が長く負担が大きすぎます。そんな感じですからこれは良くてもこのまま引き分けかなぁと思っていたら、後半8分、高い位置で鬼カットを見せた今野が砂川へパスします。砂川は相手のマークが寄せてきたところでフリーになった岳也へパス。ボールを受けた岳也はシュートを打つのが遅れ相手にブロックされてしまい、チャンスは潰えたかに思えました。
 しかし、札幌の「勝ちたい」という珍しい選手の気持ちと、「もういい加減勝ってくれ!」といういつものサポーターの気持ちと、手稲区在住の佐藤タヱさん(73)の気持ちが乗り移ったボールは、変なバウンドをして野澤の頭上を越えてゴールへ向かっていきました。慌ててクリアに入る新潟選手ですが、詰めていた今野が無理矢理押し込んでゴール。再び突き放すことに成功しました。

 さぁ大変なのはアルビレックス新潟の反町監督。このまま終われば他の試合の結果如何では首位から陥落してしまうだけでなく、潜航しすぎて沈んだ札幌に負け越したばかりか、1度ならず2度までも10人の札幌に負けてしまうことになります。次々と選手を入れて打開を試みますが、選手も焦っているのかマルクスのシュートもオフサイドとなるなど点が取れません。
 とはいえ、札幌もさすがに疲れから運動量の低下目立ち始めます。しかしこういう流れの時は選手の交代はしにくいもの。張監督も行けるところまで行こうという心づもりだったようですが、戦術的な交代をする前にどうやら板長がケガをしてしまったようです。張監督はその板長に代えてケガから復活したソダンを入れ、さらに板長が抜けて薄くなった中盤には、もともと運動量の多いほうではない三原に代えて市村を投入。板長がケガをしてしまった以上交代としては妥当だと思いますが、市村があっという間に消えることまでは予測出来なかった模様。
 そんなわけで最後のほうは札幌もいっぱいいっぱい。ロスタイムには森田を投入してなりふり構わず点を獲りに来た新潟についに屈した格好で上野に2点目を取られて追いつかれてしまいましたが、それでもその直後に今野が惜しいシュートを放つなど気合は最後まで衰えず、同点で終わったものの満足出来る試合内容でした。まぁそうは言っても、もうここまで来たら「やれば出来るじゃん?」というよりはなんで最初からやらんのじゃという気持ちのほうが強いのは少し悲しいですけど。

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