? ヤンツー烈風隊
サッカー百鬼夜行

第1節 対ヴァンフォーレ甲府
2004.3.13(SAT) 札幌ドーム

コンサドーレ札幌 2-2 ヴァンフォーレ甲府
清野【11分】
新居【54分】
1-0
1-2
水越【52分】
バロン【89分】
スターティングメンバー
フジ GK 松下
ソダン
リーダー
パパ
DF 杉山
池端
富永
奈須
岡ちゃん
直太朗
タバタリアン
シャチョー
スナマコ
MF 倉貫
オグ
水越
石原
清野
King of Sapporo
FW 藤田
アミバ
リーダー→イチ【63分】
清野→岳也【73分】
King of Sapporo→もんじゃ【77分】
交代 杉山→千野【45分】
アミバ→バロン【60分】
藤田→山崎【69分】
フジ【75分】
フジ【76分】
パパ【88分】
警告 富永【35分】
フジ【76分】 退場  

試合の感想
 2004シーズンのJ2開幕戦。コンサドーレ札幌は2年連続となるホームでの開幕戦です。相手はヴァンフォーレ甲府。J2となってからチーム史上最高となる5位で2003年シーズンを終了した甲府は、最大で3チームがJ1昇格の切符を掴むことが出来るボーナスシーズンの今季は昇格候補のひとつにまで名を挙げられいますが、その甲府躍進の立役者・松永監督は「目標は(1つ上の)4位」と空くまで謙虚です。しかし、昨シーズンの主力もほぼ残留しただけでなく、かつて甲府で活躍したバロンまで復帰したことからも、チーム力は昨年以上のものを持っていると見て間違いないでしょう。
 かつて札幌は甲府に一度も負けなかった、というか甲府が勝てるチームはJ2に存在しなかったのですけど、逆に昨年は札幌が一度も勝てなかったチームのひとつがこの甲府(2分2敗)。天敵・バロンはスタメンではなくベンチですが、やりにくい相手であることに差異はありません。まぁどこが相手だとしても今年の札幌はチャレンジャーですし、逆に甲府といい勝負が出来ればある程度の先行きは見えてくるでしょうから、札幌にとっては試金石と言ってもいいかもしれません。

 で、その札幌のシステムは3-5-2。大きな手駒のないヤンツーが選んだスターティングメンバーは、GKバリトンボイス藤ヶ谷、「パパは雪だるま」西澤、佐藤リーダー、もっとも神に近いと言われる男・ソダンの3バック、田畑と智樹のダブルボランチに、左に三原、右に岡田の行ったれウィングバック、注目の2トップはご存じ"King of Sapporo"新居とご存じ「地獄(いろんな意味で)から帰ってきた男」清野というメンバーです。暴れん坊将軍・中尾はまだコンディションが戻っていないのかベンチからのスタートとなりました。
 チケットが売れてねぇ売れてねぇと言われていましたが、それでも1万8千人が集まった期待と不安が入り交じる中キックオフ。

 緊張のためか不安もあるのか、試合開始から多少バタバタする札幌。ヒップアップのコントのようなバタバタ加減を突かれて甲府にチャンスを与えてしまいますが、次第に落ち着きを取り戻すと徐々にヤンツーサッカーの本領を発揮しはじめます。相手がボールを持ったらまず1人がボール保持者へプレッシャーをかけ、後ろの味方が縦と中へのパスコースを消してサイドライン際まで追い込むという守備を徹底する札幌に、甲府はたまらず通る確率の低いロングボールを前線へ送らざるを得ず、試合は徐々に札幌ペースに。こういった守備のやり方は基本的に甲府も同じハズなのですが、昨季一度も負けなかったことで札幌をナメてかかっていたのか、高い位置でボールを奪おうという札幌の守備にタジタジとなります。
 攻撃面でもボールを奪ったらすぐにトップに当て、FWからのリターンをすぐさまサイドに展開するというパターンが確立しているようで、去年よりもパスのテンポに格段のスピードアップが見られます。そして前半11分、やはり高い位置で奪ったボールを岡田がドリブルでキープして、フォローに入った砂川にパス。砂川がダイレクトで中に折り返したボールをゴール正面でっていた清野がヘッドで叩き込んで先制点をゲットします。練習生から正式契約を勝ち取り、開幕戦ですぐさま結果を出した清野。おそらく彼の脳裏には磐田をクビになってからの1年半の様々なことが去来していたでしょうが、その余韻は画面外からマッハで飛びついてきた新居によってかき消されたのでした。
 その後も先制点を奪った清野と、「新・犬」を襲名したかの如く走り回る砂川を中心に攻撃を展開、ブラジル留学で一皮剥けたか新居も積極的にボールに絡み、両サイドも持ち味を十分に発揮しています。札幌サポーターの期待を背負う智樹はあまりボールに絡めず、思ったよりも消えている時間が長かったものの、前線にいいパスを何本か通すなどデビュー戦と言うことを考えればまぁ及第点といったところ。
 そんな感じで危なっかしい場面も多少はあったものの、結局甲府にただの一本のシュートも許さないという見事な内容で前半終了。あんなにバラバラだった札幌がここまで出来るようになったもんです。ヤンツーにとってはちびた石けんをひとまとめにするような地道な作業だったと思いますが、このサッカーをやっていればまず負けることはないでしょう。90分持てばの話だけどな

 というわけで後半、やはりというか何というか徐々に札幌の動きが鈍り始め、ハーフタイムに松永監督からカミナリでも喰らったか、ようやく目の覚めた甲府に押し込まれ始めます。ちょっと雲行きが怪しくなってきた後半7分にスローインのリスタートから水越にゴールを決められ追いつかれてしまいました。
 ちょっと集中が途切れたスキを突かれるという、悔やまれる形での失点を喫してしまった札幌。若いチームだけにイケイケの時はイケイケでバリバリでそこんとこ世露死苦となりますけど、それが何かのきっかけで一気に「大人は何もわかってくれない」とグレてしまったりもしかねません。もともとアクションサッカーならば、動かないオグを中盤に置くことをやめた甲府に一日の長があります。ずるずる行ってしまう危険もあったわけですが、どっこい札幌はそんな状況を跳ね返すだけの精神力は身につけていたのでした。同点ゴールから2分後、三原からのクロスに新居がニアに飛び込みコースを変え、コロコロと転がったボールはファーサイドのポストに当たりゴールイン。あっという間に突き放してしまいました。
 相変わらずジャストミートのシュートはポストに当たって入らないのに、当たり損ねのシュートは入るという新居らしいゴールで、相手に傾きかけた流れを一気に払拭したかに見えましたが、その喜びは長くは続きませんでした。それまで「必殺リーダーコーチング」や「必殺リーダー走り」、「必殺リーダークリア」はたまた「必殺リーダーちょっとそこで変なパスしないでお願い」などの得意のリーダーディフェンスで守備陣を統率していた尽が、「必殺リーダーブロック」の際に勢い余って膝を痛めて負傷退場してしまうアクシデントが発生。いったんピッチには戻ったものの、プレイ続行は不可能となってしまいました。
 ヤンツーは急遽市村を投入します。心の準備が完全には出来ていなかったであろう市村も気の毒ですが、気の毒だったのはヤンツーでしょう。この時点で中尾を投入するという選択肢もあったはずですが、コンディションが完全ではない彼を長い時間使いたくなかったのではないかと思いますし、中尾を投入するのであれば既に消えかけていた智樹を交代させたかったでしょう。まぁ市村も高校時代はボランチをやっていましたが、少なくともヤンツーの元ではそのポジションで練習をしていたわけではありません。結果、ボランチの田畑を最終ラインに下げ、左サイドの三原をボランチに、空いた左サイドに市村を入れるという策となったのだと思います。市村以外は言ってみればそもそもの本職ですが、三原もボランチとはいえあまり運動量の多いほうではありません。それまで思った以上に中盤での潰し役を完遂していた田畑が最終ラインに下がったことにより、中盤にはぽっかりとスペースが空くようになります。前半飛ばしすぎたツケもあって、札幌はますます防戦一方となってしまいます。
 前線からの守備が効かなくなってきたため、ヤンツーは疲れの見えた清野に代えて岳也を投入。しかしその岳也は相変わらずフィジカル勝負には弱く、せっかく前線にボールを送ってもキープもままならない状態。髪を切ったらニワトリみたいな頭になってしまったため、鳥インフルエンザにかかったとしか思えません。しかも悪いことは続くもので、後半30分に藤ヶ谷が2枚イエローで退場してしまいます。当然替わりのゴールキーパーはもんじゃ阿部。初めてベンチ入りを果たしたその日にいきなり出番が回ってきてしまいました。
 3つしかない交代枠をやむを得ない理由で2つも使ってしまったヤンツー。あとはもう彼にはテクニカルエリアで見守ることしか残されていません。この頃にはもう出足の一歩目がおぼつかなくなっていた札幌はヘロヘロ。新橋周辺のおっさんみたいな千鳥足の選手も見受けられます(←三原←しかも元から)。それでも甲府のシュートミスにも助けられ、何とかかんとか甲府の攻撃を跳ね返し続けていました。

 そして迎えたロスタイム、札幌がようやくカウンターのチャンスを掴み、久しぶりに甲府のペナルティエリア近くまで攻め込みました。ここでボールを受けたのは、この日まったくいいところがなかった市村。よせばいいのにキープせずにペナルティエリアに切れ込んでいってしまい、ボールを奪われてそのまま甲府のお家芸である電光石火のカウンターを喰らってしまいます。それまでは何とかゴールを守っていた阿部ですが、この時点で既に試合出場してから15分も経っていたために空腹が限界を超えていたようで、一瞬クロスへの反応が遅れバロンに決められてしまいました。
 結局試合はそのまま終了。勝てなかったのは残念ですけど、去年までとはだいぶん違うという印象を受けました。それだけに、チームは変わっても怪我人・ロスタイム失点というドームパターンだけは変わっていなかったというのも何だかナァという気もしますが、とりあえずはおおむね納得の行く内容で、しみじみと今日札幌が初めて木星に着いたんだと思いました。ピテカントロプスになる日も近づいたんですね。監督がピテカントロプス顔だからでしょうか。

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