? ヤンツー烈風隊
サッカー百鬼夜行

第5節 対モンテディオ山形
2004.4.11(SAT) 室蘭市入江運動公園陸上競技場

コンサドーレ札幌 0-1 モンテディオ山形
  0-0
1-0
大島【22分】
スターティングメンバー
フジ GK 桜井
ソダン
パパ
キチ
DF 太田
先生
小林
井上
岡ちゃん
直太朗
タバタリアン
シャチョー
スナマコ
MF
大塚
永井
高橋
清野
King of Sapporo
FW 大島
デーニ
直太朗→中尾【45分】
イチ→King of Sapporo【71分】
タバタリアン→アイカー【79分】
交代 高橋→秋葉【68分】
デーニ→レオナル【75分】
☆→林【89分】
  警告 大塚【43分】
桜井【58分】

試合の感想
 J2リーグ第5節はモンテディオ山形戦。室蘭は入江運動公園競技場でのホームゲームです。山形は昨シーズンまで3年間指揮を執り、モンテディオの象徴とも言えるほどの重要人物だった柱谷幸一監督がいろいろあって退任。後任に鈴木淳氏が就任しました。Jリーグの監督経験こそないものの、U-15やU-17など各世代の代表の監督やコーチを歴任し、まだ42歳と若い監督ですが、その風貌はパッと見ぜってえ錬金術とかやってるよこの人と思わずにはいられません。
 毎年主力選手を他チームに引き抜かれている山形は、昨オフも羽地、鷲田の2選手がジェフユナイテッド市原に移籍。その割にはめぼしい移籍加入もなく、チーム力の低下が懸念されていました。そのためか前節まででまだ勝ち星がなく、3分1敗で9位という成績で札幌戦を迎えています。そんな山形ですが、先生は元気です。札幌サポーターから今でも愛され続けている先生は、キャプテンマークを腕に巻いて颯爽と室蘭のピッチに登場。

 迎え撃つ札幌は、三原が前節湘南戦で重傷を負い今季絶望。その代わりのスタメンは予想通りというかもはやこれしか残されていない市村が先発します。それはいいのですが、開幕戦でリーダーを失い、第4節で三原を失うという、今季から大幅な若返りを図ったチームにおいて、数少ないベテランの、それも重要な人物からケガに見舞われるのを見ていると、サッカーの貧乏神はまだ北海道にいると思わざるを得ません。
 さらに「動き出しが遅い」という理由で新居がスタメンから外れ、代わりのスタメンは岳也。正直オレはそうは思わないのですが、スタメンを決めるのはヤンツーですから致し方ありません。とはいえ、ヤンツーの言葉通りであるとするならば、動き出しが遅くてもここまで2点取ってる人と、動き出しは速いかも知れないが倒されるのも速い人では、どっちがいいんでしょうね母さん。

 というわけでキックオフなのですが、試合は予想通りに山形が札幌の左サイド、つまり市村のサイドを執拗に攻めてくる作戦です。オレが相手チームの監督なら、イヤ誰が監督でも間違いなくここを突くと思いますし、そうでなくても3バックを攻めるにはウィングバックの後ろのスペースを狙うのは定石です。そんなわけで序盤から山形の星に市村が翻弄されるシーンが続きます。
 ただでさえ経験の浅い選手ばかりなのに、早速試合のペースを相手に握られてしまった札幌は、すぐにてんやわんやの状態になります。何度も言うようですがこれといった攻撃パターンのない札幌にとって、ゴールへの一番の近道はヤンツーが繰り返し言っている「高い位置でボールを奪い、手数をかけずにシュートまで持っていく」方法。しかし山形に押し込まれている状況では高い位置でボールを奪うこともままなりません。そうなると自陣からビルドアップをしていくしかないわけですが、中盤の運動量が少ないためDFがボールを持ってもパスコースがありません。サイドに振ろうにもいつもなら左サイドでタメを作ってくれる三原もいませんし、岡ちゃんは高い位置でボールを持ってなんぼの選手です。たまに中盤を経由してトップに当てようにも、岳也と清野の2トップがまったくキープできずにあっさりボールを奪われてしまうのでは、ビルドアップしようにも周りは怖くて押し上げられません。そうじゃなくても山形のプレッシャーが異常に速いため、もたもたしていたらすぐに詰められてしまいます。となると、残された手は…ロングボール。ソダンも吉瀬も前線に向けてドッカンドッカン蹴り込むだけのある意味ケレン味のないサッカーが繰り広げられます。
 とはいえ、山形に押し込まれてすっかり自陣に釘付けになった状態で前にボールを送っているわけですから、当然ラインは間延びしセカンドボールはことごとく山形に奪われます。そんなわけで札幌はほとんど攻め込まれモード。いくつか危ないピンチを招き、そのたびに藤ヶ谷が「入らなければどうということはない!」とばかりに何とかセーブを見せますが、旗色は相当悪そうです。
 そんなこんなで前半22分。やはり左サイドを崩され、市村が星にさくっと抜かれます。市村は思わず「オレを踏み台にしたぁ!?」と叫んだかどうかは定かではありませんが、フリーの星が入れたクロスに走り込んできた大島が頭で合わせて先制されてしまいます。

 早めに追いつきたい札幌ですが、相変わらず攻め手がありません。2トップはアテにならないし、左サイドの市村はいいようにやられてすっかり自信を失ってしまったようで、パスをするにもドリブルをするにも迷いがあるため判断が一つ二つ遅く、そこでボールを取られてはさらに意気消沈する悪循環。右サイドの岡田は決して悪くはないのですが、彼を山形守備陣が野放しにするはずもなく、ボールを持っても3人ぐらいに寄せられてしまいます。そこで突破できるようであれば東京の石川のような選手になれると思うのですが、さすがにそこまでを望むのは酷というものです。
 まぁそんな感じでいくつかチャンスはあったものの、クロスの精度がアレな上にシュートを打つタイミングが遅く、先生率いる山形守備陣を崩すことが出来ません。そんな感じで進んだ前半は、よっぽど札幌との相性がよくないのか名古屋戦での負傷交代に続いて「コーナーフラッグの土埋め」という土木作業までやるハメになった辺見主審とかの妙な小ネタ以外には、これといった見所もないまま前半終了。

 後半、疲れがたまっているという智樹に代えて中尾を交代したものの、ゲームの趨勢はさほど替わらず。どこからどう攻めていいのかわからないのでパスは繋がらないし、ボールの取られ方が悪いので守備陣形が整う前に山形に攻め込まれてしまいます。やはりまだ声が出ていないためか、こういう状況になると自主的に修正するのは難しいようです。「これが…若さか…」と思わず呟いてしまうほどの混乱っぷり。ここのところ少しずつ安定感がついてきただけでなく、前半は鋭いパスカットからのオーバーラップも見せるなど積極性も出てきた吉瀬ですが、文字通り星に子供扱いされる市村のフォローに追われてあれだけ守備機会が多ければ集中が切れることもあろうもの。次第にいっぱいいっぱいになってきはじめます。信じられないことに、試合が進むごとに寝癖が立っていっています。これぞ東洋の神秘。
 まぁそんな感じで全てにおいて後手後手に回ってしまっている札幌。選手がアクションサッカーをやろうとしてないのではなく、山形がさせていないという印象です。よく考えてみれば、山形は柱谷監督時代から所属している選手がほとんどです。柱谷監督が掲げていたサッカーのコンセプトは、ヤンツーのアクションサッカーとほぼ同じでした。そしてその柱谷監督が3年間で築き上げていたものをベースにしているのですから、今年からの札幌とは身につけてきたものが違うのか、後半になっても山形選手の運動量はほとんど落ちていません。

 そうこうしているうちにヤンツーは後半26分に市村に代え新居を、34分に田畑に代えて相川を投入、FW4人を並べる采配を見せます。そういえば開幕前の「ヤンツーを語る会」で、三光鳥の話のご夫妻から「(ヤンツーは)あまり選手交代はうまくないよ」という話を聞いたような気がします。酔っ払っててあんまり憶えていないのですが、確かに捨て鉢とも言える選手交代策です。「よんとっぷ」はオレもかなりポカーンな感じだったのですが、冷静に考えてみればベンチにはもうDFの河端しか残っていないし、この試合通常のやり方では点が取れそうにないのはもうイヤと言うほど見せられてきましたから、試合後のヤンツーの「ゴール前で何が起こるか分からないから」というコメントも確かに頷けなくもない話。
 というわけで、名付けて「入学試験で鉛筆転がし作戦」となったわけですが、はっきり言って人生そんな甘いもんじゃありません。結局FWの人数を増やそうともその分減った中盤を山形に支配され、ゴールはおろか先生にスペクタクルの隙すら与えない顛末で試合終了。今季初黒星となったのでした。

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