? 虹と雪のテキスト
サッカー百鬼夜行

サスケハナ号、その後
2001/03/01
 2002年に開かれる韓日ワールドカップ。その大会自体もチケット問題、名称問題、フーリガン問題、大学入試問題、爆笑問題など、始まる前から不安な今日この頃ですが、それとは別に最近別の「不安」をよく目にします。その不安とは、これはあるスポォツライター氏が書いていたことなんですが、「ワールドカップの日本戦での君が代斉唱は斉藤清六では不安である」ということではもちろんなく、「ワールドカップ後のJリーグの行く末が不安」ということみたいです。
 曰く、ワールドカップで日本にやってきた強豪国の代表選手による超一流のプレイを目の当たりにした日本人が、そういう国の代表選手のいないJリーグに魅力を感じなくなるのではないか、ということみたいです。
 とりあえず、スタジアムで超一流を目の当たりに出来る日本人はごくわずかであるってことは置いといて、なかなかに面白い意見だと思いますので、今回は「Jリーグの盛り上がり」について書いてみようと思います。

 上記のスポォツライター氏は、その解決策として地域密着の重要性を踏まえつつも、言葉は悪いですが「客寄せパンダ的な選手の存在が必要」ではないかと書いておりました。確かにそれは一理あると思います。現時点で、ひいきチームの試合ならば雨が降ろうが槍が降ろうが伊勢神宮のお札が降ってこようがスタジアムに足を運ぶコアなサポーターも決して少なくはないですけど、そんな人種でスタジアムを埋め尽くせるほど多いわけではないですよね。もちろん究極的にはそんな「サポーター」を増やすのが理想ではありますけど、特にどこのクラブのサポーターでもなくサッカーに多少興味があるという程度の人が最初にスタジアムに足を運ぶには、何らかの「きっかけ」が必要になってきます。その「きっかけ」が「○○選手がいるから」となるのはある程度は仕方ないでしょう。
 たとえば普段あまり野球を見に行かない人は、どうせ見に行くのなら松坂大輔を見たいと思うでしょうし、国会中継だって森総理の答弁がない時なんて笑えなくて見る気にもならないのと同じです。「今日は大安だからサッカーを見に行こう」とか「スーパーでサンマが安かったからサッカーを見に行こう」という人はあまりいないと思いますし、「『Jリーグを見に行け』と全知全能の神・マバンヤ様からお告げがあった」という人いたら、それはそれでヤバイと思います。人として。
 そういう意味では去年のベストメンバー問題というのもあながち100%トンチキだというわけでもないと思うんですけど、ただここで疑問に思うのは、「お客さんを呼べる選手」って何なんでしょうってことなんです。「お客さんを呼べる選手」=「チメイドの高い選手」ってことですよね。何でみんな松坂や高橋尚子や三田佳子の次男を見に行きたいと思うのか? といえば、「みんな彼らを知ってる」からじゃないですか。で、みんなは彼らをどこで知るのかと言えば、全知全能の神・マバンヤ様からではなく、テレビや新聞からでしょう。我々の友人を誘ったりという草の根的な活動には限界がありますし、不特定多数に「Jリーグも面白いんだ」というすり込みをするには、やっぱりメディアの力が一番大きいのは言うまでもありません。

 ところが現状はといえば、新聞や雑誌を開けばナカタだの西澤だのカズだの小野だの俊輔だのエスパー伊東だの、海外に行った選手やごく一部の代表レギュラークラスのスター選手の一挙手一投足ばかり。高校選手権は取り上げても全日本ユース選手権はちっとも取り上げませんし、サッカー専門雑誌や「Jリーグが不況だ」と言っているライターの方々にしても、普段書くのは代表と海外サッカーのことばっかりです。なんかねぇ、すごく偏っている気がするんですよ。遅刻しそうなので駅まで走った日のお弁当くらい偏ってると思います。
 いやね、マイナーなチームや選手に無理矢理スポットを当てろとか、有名選手のことを書くなと言ってるわけではないんですよ。それがホントに必要な情報ならいいんですけど、今のメディアの報道姿勢ってあまり「J全体を盛り上げよう」という姿勢が伝わってこないといいますか、何となく「有名選手のことを書いておけば売れるだろう」なんて魂胆があるような気がします。それこそ「カズ、オナラ3発!」なんてのも平気で記事にするんじゃないかって感じです。今のJリーグがいまいち盛り上がってないのは、「見に行こうという選手が少ない」というよりは、一般の人が「有名選手以外の選手を知りようがない」ってことも関係してるんじゃないかという気がしないでもないんですよね。
 確かに欧州や南米に比べればJリーグはレベルが高いとは言えませんけど、日本人のみんながみんな高いレベルのサッカーを求めているのなら、今だってスタジアムにサポーターなんていませんよ。欧州や南米に比べてレベルが低くても、ファントムドリブルとかタイガーショットが出来なくても、借り物でもよそ物でも何でもない「俺たちのサッカーチーム」がそこにあるから、あるいは「ラブい選手」がそこにいるから、サポーターはスタジアムに通ってるんです。そういった側面がまるで無視されてしまえば、「Jリーグはレベルが低いと言うことがサッカー通の条件」などと勘違いする人も出てきてしまいますし、まだスタジアムに行ったことがない人たちの見る気までボッシュートですよ。

 幸い今季からtotoが始まって、各マスコミにはこれまでよりも幅広い情報が求められるでしょうから、サッカー関係に多くの紙面と予算を割くでしょう。少なくとも「有名選手だけ取り上げる」というのは通用しなくなると思いますので、これを機会に是非「Jリーグのすべてをギンギラギンにさりげなくフィーチャリング! 黙ってオレにストーキング!」ってな感じで行って欲しいものです。

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