2010年Jリーグディビジョン2第19節
コンサドーレ札幌 1-2 横浜FC
得点者:札幌/藤田
横浜FC/西田、高地
前節、ジェフユナイテッド市原千葉を相手に望外の勝点3をゲットできた札幌は、今節は札幌ドームでのホームゲームで後半戦の開始を迎えます。勝ちに不思議の勝ちありとは野村克也監督の言葉であり、「勝目有」という名前に聞き覚えのある人はごく限定された同窓生だと思いますが、どんな内容でも勝ちは勝ち。現在10位と昇格を目指すにはちょっと厳しい順位に留まっていますが、後半戦を盛り上げるためにも、前節の勝利での自信をきっかけに再浮上したいところです。
一方、札幌と勝点3差で12位につける横浜FCは、得点ランキングトップを走ってきたエースFW大黒将志のレンタル期限が切れ、FC東京へ移籍するという痛手はあったものの、前節は首位柏レイソルに2度突き放されて2度とも追いつく粘り強さを見せドロー。この試合では大黒の穴埋めとして獲得した魁皇…いやカイオがスタメンで出場。187cmの長身に加え懐の深いボールキープを得意としており、高さがあまりない上、同タイプのネット(千葉)にも手を焼いていた札幌はセンターバックにとっては、要注意選手の1人です。
さて、この試合で対戦する札幌と横浜FCには、方やワールドカップ日本人初ゴールを挙げたゴン中山、方や日本人初のセリエAプレイヤーとなったカズという、Jリーグ黎明期から日本サッカー界を牽引し続けた2人が所属しています。両雄が久方ぶりに相まみえることになったこの試合は「レジェンドマッチ」と銘打たれ、(札幌にしては)大々的なPRのもと、目標3万人という動員がかけられました。個人的には例えるなら「うしろ指さされ組再結成」くらいの今更感なんですけど、それでもさすがにビッグネーム2人の知名度は高く、折しも日本代表がベスト16という結果を残した先のワールドカップによるサッカーブーム再燃も手伝ってか、観客は目標値には届かなかったものの、26,875人という今季最高入場者数を記録しました。
とはいえ、そんな2人も既に42歳と43歳と肉体的なピークはとうに過ぎています。「使う」前提で考えた場合、スターティングメンバーとしてはもちろん、局面を変える場合の交代要員としてもなかなか使いどころの難しい選手ではあります。もちろん彼らが入ることでのチームのメンタルの部分への影響度は大きいでしょうが、後半残りわずかな時間での投入というのが現実的なところ。しかしそれでも消化試合ならまだしもバリバリのレギュラーシーズンですから、その時点で負けてるほうはもちろんのこと、勝ってるほうも1点差くらいではなかなか使いづらいでしょうね。要するに「レジェンドマッチ」を実現させるには、札幌のノブリンと横浜FCの岸野監督の両方が空気を読んでくれるかどうかにかかっています。
で、結果から言えば1番空気を読めなかったのが大西主審だったわけですけど。試合開始早々、ペナルティエリア内で西田の突破を止めた石川のプレイをファウルと判定、横浜FCにPKを与えます。ここまでわずか52秒。さらに大西主審は石川にはレッドカードを与えて退場させます。ちなみにJリーグでの最速退場は東京ヴェルディの菅原智選手で、2009年年4月15日の対サガン鳥栖戦で6秒という記録が残っています(公式記録では0分)が、石川の退場は公式記録上は2分となっています。試合を始めたら2分でレッドなんて、サトウのご飯みたいですね。この試合、これまで抜群の読みで守備を支えてきた藤山が出場停止で代わりにスタメン出場したのは吉弘。本職のCBである吉弘の怪我が治り、そして高さ面での不利であってもノブリンがこだわってきた石川と藤山のコンビに対して、吉弘がどういうプレイをするかもひとつの注目でしたが、確認するヒマすらありませんでした。
VTRで見る限りは石川はボールに行ってましたんで、PKの判定も相当怪しかったですけど、それ自体についてはまぁいいんですよ。これまで逆に札幌にとって儲けもんのPKをもらったことだってありましたから。でも、開始2分で退場させるってのはどうかと思うんですよね。もちろん故意にボールを手で止めたり、真後ろから足を狙ってタックルしたり、なんか侮辱的なことを言ったのであればいつであっても退場して然るべきですし、実際カードを出すタイミングや状況から石川がなんか言ったに違いないと思ったんですよ。でも公式記録見ると、S6(侮辱)じゃなくてS5(得点機会阻止)になってるんですよね…。GKの高原まで抜かれてゴールが無人だったり、最初から倒すつもりで手を使ったのならS5ってのもわかりますけど、そういう状況でもなかったですし。わけが分からないです。好意的な見方をするのであれば、実際石川は言っちゃいけないことを言ったけど、そうすると間違いなく出場停止試合数が上乗せされますから、微妙な判定だったのもあってせめてもの情けでS5にしたとか。逆刃刀でタコ殴りにするようなもんですけど。
何度も書いていますけど「俺がルールだ」みたいな試合のコントロールをするレフェリーには困ったものです。開始2分で1人減ってしまえばその時点で「レジェンドマッチ」もクソもなくなることがほぼ確定ですし、そうでなくても試合としても完全にぶちこわしですよね。レフェリーだって興行の一部なんですから、「いい試合にするためのコントロール」をする義務があると思うのですよ。もちろん迎合した笛を吹けと言いたいわけではないですし、レフェリーにドラマを作り出されても困るんですけどね。いずれににしても判定が覆るはずもなく、このPKを決められて札幌はビハインドを背負ったまま試合の大半を10人で戦わなければならなくなりました。
10人になったことで、ノブリンは内村に代えて高木を投入。内村はあまり守備が得意ではないですからこの交代は仕方がないですけど、結局1度もボールに触ることなくピッチを後にします。先制された後はさすがに受け身になりながらも、うーえーさーとーがミドルシュートを放ったり、高木の突破から何度かいい形のチャンスは作っていたのですが、34分に高地にクリアボールを拾われ、見事なミドルシュートを決められて突き放されてしまいました。 1人少ない状況で負けている以上、多少のリスクは覚悟の上でしたし、まぁあのシュートは高地を褒めるしかないと思うのですが、結局はこの1点が最後まで重くのしかかってしまいましたね。
後半、前節勝利の立役者だった古田に代えて近藤を投入したノブリン。しかしストライカーを1人増やしたところで、数的優位で2点のリードを得ている横浜FCの守備陣は、無理をせずに人数をかけて守り、隙を付いてカウンターを仕掛けるだけでいいわけで、なおかつ札幌の選手は横浜FCではなく大西主審と戦ってしまっており、なかなか反撃の糸口を掴めません。気持ちはわかりますけどね。よくイエロー2枚(両チーム合計では4枚)で済んだと思います。
それでも紀梨乃の単独突破で何度かチャンスを演出、15分には藤田征也が「さっきの石川がPKなら今のもPKじゃない?」という倒され方をしますが、ハーフタイムで基準が変わったようで大西主審はスルー。まぁ普通ならあれじゃPKはもらえないですけどね。普通なら。そして20分、宮澤からのクロスボールに征也が反応、新婚らしい突破(関係なし)で相手の裏を取り、頭でねじ込んでゴールをもぎ取りました。
1点を返し俄然意気の上がった札幌は、ようやくレフェリーと戦うのをやめて試合に集中できるようになりましたが、残念ながら反撃もここまで。ほぼ1試合を10人で戦った割にはよくやったほうでしょうか。まぁ11人いてもこういう試合することは今までもあったのですけどね。
さて、ゴン中山は86分に紀梨乃との交代で出場したものの、カズは出場なしで結局レジェンドマッチも実現せず。まぁそれに関しては岸野監督の考えですからどうこう言うつもりもないですし、仮に2人が同時にピッチに立ったからといって話のひとつのネタくらいにしかならないのですけど、試合の結果もこれでは「何か」を期待して集まったお客さんにとっては「予告編だけが面白かった映画」みたいな感じかもしれませんね。