2010年Jリーグディビジョン2第18節
ジェフユナイテッド市原千葉 0-3 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/古田x2、岡本
千葉/いなかった
日本代表ベスト16進出、スペインの優勝という結果となったワールドカップも終了し、Jリーグもめでたく再開となりました。J1は既に7月14日にAFCチャンピオンズリーグによって未消化だった4試合が行われていますが、今週末からJ1、J2ともに本格的にリーグ戦が再開されています。1ヶ月以上も期間が空いたのでなんか中途半端な感じはしますが、J2はこの試合が前半戦の最終戦。中断時点で12位のコンサドーレ札幌は、現在3位につけるジェフユナイテッド市原千葉との試合に臨みました。
昨季J1で最下位となりJ2降格となった千葉。あの参入決定戦を含めれば既に3回も降格を経験している札幌にとっては、J2は落ちるところではなく帰るところと言ってもいいレベルなのですが、千葉にとってはチーム史上初めての降格となるだけに、さぞ無念だったでしょう。J1で5勝しか挙げられなかったチームが1年でJ1返り咲くためには戦力補強は必須ですが、そうでなくともJ1では運営予算の少ないことで有名だった千葉。J2降格によってスポンサー料も減額があったでしょうから、大きな補強も難しい状況だったに違いありません。そんな千葉のピンチに颯爽とやってきたのが、オシム監督時代の千葉躍進期を支えた佐藤勇人や村井慎二、茶野隆行、林丈統といったメンバーたち。キン肉マンや男塾で言えば「お、おまえたち、生きていたのかーーーー!!」といった感じでしょうか。そんな感じで千葉はJ2降格初年度チームにありがちな「上から目線サッカー」の罠に陥ることもなく、未だ無敗で首位を独走する柏レイソルには若干差をつけられたものの、2位のヴァンフォーレ甲府とは勝点3差で昇格圏内をキープしています。
札幌のメンバーは、前節怪我で欠場した藤田征也が右サイドバックとして復活。前節右サイドバックを務めていた芳賀がボランチに戻り、前節ボランチの宮澤をトップ下に、前節トップ下の古田を右サイドに持ってきました。そして中断期間中に清水エスパルスから期限付きで加入したばかりのDF高木純平もベンチ入り。高木琢也、高木貴弘に続くチーム史上3人目の高木さん…と思っていたら、実は「たか"ぎ"」ではなく「たか"き"」さんだったんですね。ユニフォーム見て初めて気づきました。でも、砂さんが毎回「すな"が"わ」と呼ばれちゃうのと同じように、どこへ行っても必ず「たかぎさん」と呼ばれちゃうんでしょうね。茨城県民は「いばらぎ」と言われると怒ります(ネタじゃなくて本当に怒る人が多い)けど、高木の場合たぶんもう毎回説明するのが面倒だからそのままスルーしてるでしょうね。素直に読んでもらえない名前を持つと苦労しますよね。
そんな感じで中断前よりは状況は多少良くなってきたことで、後半戦に向けて巻き返しを図りたい札幌ですが、それでももともとの戦力に差のある千葉はやはり厳しい相手であることは間違いありません。つけいるスキがあるとすれば、試合会場であるフクダ電子アリーナです。球技専用スタジアムでの成績はあまりよくない中で、フクダ電子アリーナでの成績だけは異常なほど良く、2006年の第86回天皇杯ではここで行われた千葉戦とアルビレックス新潟戦に勝利(新潟戦はPK勝利)し、場違いなほどの弱さで降格を果たした2008年ですら、ナビスコカップでは1-1の引き分け、リーグ戦でも3-0で勝利と、ここでの試合は1度も負けていないという相性のいいスタジアム。
とはいえ、実際問題スタジアムの相性なんてあるんでしょうかね。プロスポーツの世界では「ホームスタジアムではホームチームが有利」というのは定説なんですけど、それはスタジアムでのファンの数や声援の多さ、スタジアムへの慣れ、移動に伴う疲労の少なさなど複合的な要因があってのことですし、それが試合の行方に多少影響を及ぼすことはあっても、それそのものが試合の結果を左右するなんてことはない…ハズなんですけど。どうもこの試合を観てたらなんかそういうオカルト的な何かがあるような気がしてきます。
試合の立ち上がりこそどちらペースともつかない静かな立ち上がり。しかしそう思ったのも束の間、開始5分に早々と新たな「フクアリ伝説」の幕が開きます。コーナーキックを得た札幌がショートコーナーからのクロスのこぼれ球に詰めた古田が右足でミドルシュートを決め、大方の予想に反して札幌が先制点を挙げます。
札幌にとっては喉から触手が出るほど欲しかった先制点ですが、この先制点が千葉の選手に火を着けてしまいます。先制以降の札幌はほぼ完全に防戦一方。セカンドボールも拾われまくりで押し込まれまくり、札幌はどういう方向性のコンセプトなのか、頭に海苔をくっつけたような近未来なヘアスタイルで試合に出てきた1トップの紀梨乃まで守備に戻らざるを得なくなるシーンも多々ある有様。それでもたまに前がかりになっている千葉の守備の裏を突いてカウンターを繰り出しますが、前がかかってるくせにしっかり戻ってくる千葉の運動量と集中力はさすがに伊達ではありません。最初のうちはなんとかついて行けていた札幌も徐々についていけなくなり、ピンチを招くシーンが増え始めてきました。それでも高原のファインセーブやDF陣の頑張りで前半をリードのまま終了します。
後半も内容は変わらずほぼ一方的な千葉ペース。追いつかれるのも時間の問題かと覚悟を決めつつ試合の行方を見守っていましたが、ここからが不思議空間の恐るべき本領発揮となります。千葉に何度も崩され、そして何度もシュートを打たれているのに、これが全然入りません。もちろん選手たちが身体を張って守ったことも大きいのですけど、普通だったら決められていてもおかしくないところでもボールは枠の外へ飛ぶばかり。かといって札幌もセットプレイ以外ではほとんどチャンスも作れていなかったので、ノブリンも途中から追加点をあきらめたのか、後半15分には守備と体力に不安のある内村を下げて高木を投入。この選手をじっくり見たのは初めてだと思いますが、なるほど、久しぶりのワンワンディフェンスが持ち味の選手っぽいですね。けっこう危なっかしい気もしますけど。
とはいえほころびは既にあっちこっちに見受けられる札幌、体力稼ぎのために少しでもドリブルでキープしてもらおうという目論見か、上里を下げて岡本を入れたりしますが千葉を押し戻すほどの流れには持って行けるはずもなく、それでもなぜかゴールに結びつかない千葉の攻撃をかわし続けて試合はあと数分を残すのみ、というところで思わぬ形で2点目が入りました。後半44分、右サイドでボールを受けた古田がドリブルでアレックスをかわし中に切れ込み得意の左足を振り抜くと、ボールは美しい軌道を描き逆サイドのゴールネットに突き刺さりました。古田のプロ入り初の1試合2得点で札幌が突き放しに成功します。
この時間での2点差、普通のチームならほぼ試合の結果は決まりということになりますが、どっこい我々の応援しているチームは「普通のチーム」ではなくコンサドーレ札幌です。ロスタイムで3失点できる希有な才能を持ったチームです。つまり2点はとても安心できる点差ではないのです。しかしここでもフクアリはやはりフクアリでした。失点するどころか逆にロスタイムには千葉の守備陣の緩慢なプレイからボールをかっさらった岡本がゴールを決めて完全にダメ押しに成功。意外や意外の3対0という大差で札幌が勝利したのでした。
試合を支配していたチームが必ずしも勝つわけではない、というのはサッカーでは常識ではありますから、勝ったことについてはまぁ特に不思議ではないのですけど、それでも不可解なのは、この内容で失点をしなかったことですよね。これでフクアリでは5試合やって失点はわずかに1。統計の母体数が少ないとはいえ、ここで対戦してきた相手との力関係を考えれば、単に負けてないだけじゃなく5試合のうち勝利が4つ(そのうち1つはPK戦ですが、蹴った人全員が決めた)、そして依然として優也のチョンボでしか失点してないというのは本当に謎レベルです。今後は札幌戦だけ臨海競技場にさせられるかもしれません。
ちなみにどうでもいい話ですが、フクダ電子アリーナの冠スポンサーであるフクダ電子の本社と、千葉の胸スポンサーである富士電機グループのひとつ富士エレクトロニクスの本社は徒歩5分程度の距離にあります。本当にどうでもいい話ですね。