中位の中位たるゆえん
2010年Jリーグディビジョン2第26節
コンサドーレ札幌 0-1 サガン鳥栖
得点者:札幌/いませんね
鳥栖/豊田
生きてます。
大分とのアウェイ戦で苦しみながらも勝点3をゲットした札幌は、今節はホーム厚別に戻ってサガン鳥栖との試合です。毎年昇格レースのダークホース的な存在に挙げられる鳥栖は、今季も地味ながら確実な補強で前半戦では昇格圏内を充分に狙える位置に付けていたものの、ここ数戦は勝ちきれない試合が続き徐々に順位も後退、この試合時点で3位のアビスパ福岡と勝点10の差がついてしまっています。「J2オリジナル10」と呼ばれる1999年J2開始時の10チームのうち、唯一J1の味を知らない鳥栖にとって、悲願のJ1昇格へ向けてこれ以上は負けられない試合が続きます。
その鳥栖と勝点3差の札幌は、3点差以上で勝てば鳥栖を逆転できます。ただ鳥栖の消化試合数が1試合少ないためあくまで暫定ではありますが、鳥栖を抜けば1桁順位が見えてきますから、札幌にとってもここは重要な試合。
しかしそれにしても厚別の芝はかなりボロボロ。自分がコンサドーレの試合を観るようになって10年以上が経過しまして、そういえばこのサイトも満10周年をとっくに過ぎていたわけですが、ここまでひどい状態は今まで見た記憶がないですね。春先のまだ雪融けしたばかりの頃などは部分的に多少荒れているようなことはありましたけど、それでも今の状態に比べれば「ごく普通」におさまる程度。ピッチが荒れているとボールがイレギュラーしたり、ボールを蹴る際にダフって思った通りに蹴れなかったりコントロールにかなり苦労するため、どうしてもミスが増えてしまうもの。そして「サッカーにならない」以上に心配なのが、ピッチが荒れていると思わぬところで足を取られてしまい、大きな怪我に繋がりかねないことです。かつて同じようにひどい状態だった日本平で酒井直樹が、小瀬で俺王様が負傷して、両者ともその後ほとんど試合に出ることなく札幌を去っていきました。まぁ俺王様が札幌を去ったのは怪我が直接の原因じゃなかったですけど。
まぁそれはさておき、とにかく荒れ放題のピッチでのこの試合、大分戦で負傷した藤田征也や出場停止の内村らを欠く札幌は、1トップに近藤祐介(180cm)、両サイドに上原慎也(186cm)、横野純貴(183cm)とタッパのあるFW選手をずらりと並べ、「ボールがきちんと転がらないなら転がさなければいいじゃない作戦」を採ってきました。その大胆というか完全に割り切った作戦が奏功したのか、試合開始から札幌がペースを握り、前半13分には横野の落としから上原がシュートを放つ狙い通りの展開を見せます。ベストアメニティスタジアム(鳥栖スタジアム)という、日本でも有数のピッチを誇るスタジアムをホームにしているサガン鳥栖にとってはこの荒れたピッチはかなり手強かったのでしょうか。メインスタンド・アウェイ側の芝が特に荒れていて、前半アウェイ側に向かって攻める鳥栖の使いたい右サイドにモロに影響が出ていた格好です。それでも札幌がペースを握っていたのは前半30分くらいまで。鳥栖が豊田のポストを中心に攻撃を作り出してからは次第にペースを奪われ、シュートを許すようになってしまいます。危ないシーンもいくつかあったものの、鳥栖のフィニッシュの精度の悪さと高原のセーブに助けられ前半は0-0で終了。
ここ最近の札幌の傾向として、前後半とも立ち上がりはけっこう調子がいいというかペースに乗れることが多く、前後半とも比較的早い時間帯で得点を取れていることが多いのですが、反面時間帯別だと残り15分(76分以降)での失点の多い札幌にとっては、この時間帯で点を取れないと詰み状態になってしまいがちで、実際この試合でも後半開始からしばらくは札幌が押し気味に試合を進めるのですが、「シュートが枠に飛ばない病」は深刻。加えて札幌のもうひとつの弱点は「セットプレイで点が取れない」こと。2007年に昇格した時はとにかくセットプレイに異常な強さを発揮し、試合内容自体はしょぼくてもセットプレイでちゃっかり点を取っていたものでしたが…。まぁあの時と今では監督もメンバーも違うんですけど、「これといったストロングポイントがない」というのは勝てない原因のひとつではあるでしょうね。得点に結びつきやすい得意な形があるというのは、逆に言えばその形に持ち込めれば得点の可能性が上がるということですし。といっても「ストロングポイント」はたいてい個人の能力とイコールである、たとえば過去の札幌ではエメルソンや俺王様のようなスーパーなストライカーだったり、ビジュのような貴重なオモシロ人間だったりすることが多く、2007年みたいに「セットプレイで誰かを抑えても別の人が点を取る」ってのは実はけっこう希有なパターンではあるのですがね。今の札幌では「1人で勝手に点を取ってくるストライカー」とか「意味不明な動きで敵味方はおろか観客までもを翻弄するオモシロ人間」はいませんしね。強いて挙げれば古田あたりがボールを持てば何かやってくれそうな予感がするんですけど、1人でなんとかしてしまうというレベルでは今のところないですし。であればセットプレイがあんまりチャンスとならない今の状況はどうにかならないものかと思ったりもします。
そんなわけで、結果としては「自分たちの時間帯で点を取れず、終了間際に失点する」といういつもの流れでした。PKについては…吉弘が倒したのはギリギリPAの外だったようにも見えますが、かぶって入れ替わられて引きずり倒した、というのはかなり印象悪いので、しかたないかなという気がします。再三の好判断でピンチを救ってきた高原にとっては気の毒でした。ここから追いついたり逆転できたりすればとってもとっても見直しちゃうんですけど、そんな底力があるならそもそもこの順位にはいませんよね。そんなわけで0-1で試合終了。すっかり注意が板についた感のする試合でした。