2009年Jリーグディビジョン2第19節
栃木SC 0-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/俺たちの砂さん
栃木/なし
前節4位ヴァンフォーレ甲府との直接対決で痛恨のドローに終わってしまったコンサドーレ札幌は、今節は中3日で栃木SCとのアウェイ戦となります。アウェイゲームとは言っても、栃木SCの「SC」とは「サッカークラブ」の略と思わせて実は「しもつかれ」の略であると教えてくれたとあるゴール裏メイトが住むと言われている栃木県ではなく、県境を越えた埼玉県は熊谷市での開催となります。第1クールの試合ではミス絡みで2点を取られてから3点を奪い返すという限りなく自作自演っぽい大逆転劇を果たしましたが、その試合以降は1勝4分けと勝点の牛歩戦術を絶賛敢行中。逆に栃木は札幌に負けた試合の後、それまでわずか1勝しかできていなかったチームが3勝1敗1分と好調です。栃木SCというチームはもともと教員チームだっただけに、うっかり「好調先生」などと口に出したら周囲に心底イヤな顔をされそうな言葉も頭に浮かんできますが、それはおいといて札幌はこの試合、前節4枚目のイエローを食らったクライトンが出場停止。ここまで大半の得点に絡んできた大黒柱の穴はかなり大きいですが、この翌日からクライトンが父親の看病でブラジルに2週間帰国することがクラブから発表されています。シーズン中での離脱は開幕前から織り込み済みでしたら、クライトンがいなければいないなりの戦い方ができるようにならないといけません。そういう意味ではこの試合は試金石とも言えます。
前回出場停止(ロアッソ熊本戦での一発退場)でクライトンがいなかった第7節カターレ富山戦では、ノブリンは紀梨乃と宮澤裕樹の2トップという布陣を敷きましたが、あまりしっくりは来なかったためか、この試合では1トップは変えずにクライトンのポジションにそのまま砂川誠を入れる形に。クライトンの代わりは無理としてもチーム内での実力を考えれば彼がスタメンに名を連ねるのはごく自然なことではあるのですけど、さりとて開幕から一貫して砂川を「交代の切り札」としてきたノブリンにとっては、その最大にして唯一のジョーカーを先に使ってしまうということですから、そうなるとベンチワークをどうするのかというのが大きなポイントになります。そうでなくてもJ1より2人少ない5人(実質4人)というJ2のベンチ枠に、なるべく多くの状況に対応できるように選手を入れるのは監督にとっても悩み所だと思いますが、その石井謙伍、横野純貴、上原慎也と3人のFW登録の選手を入れてきました。そこにどんな深謀遠慮があったのかはわかりませんが、パッと見ヤケクソとしか思えないノブリンの用兵です。
さて熊谷と言えば「日本一暑い街」として有名で、Wikipediaによれば「熱風交差点」という弘兼憲史先生の漫画みたいな名前もあるそうです。聞いたことないですけど。普段北海道で暮らすコンサドーレの選手たちにとっては暑さは天敵だけに、気温がひとつの懸念事項となっていましたが、この日はキックオフ時点で21.1℃と比較的過ごしやすい気温が幸いにしてか、概してコンディション的には難しいことの多い平日のナイトゲームの試合にしてはコンサドーレの選手の動きは悪くなく、積極的なプレスでゲームを支配します。とはいえ、やはりクライトンがいないことでボールの落ち着きどころがない上、征也をなるべくフリーにするために左サイドでボールをキープしようとする砂さんがサイドに流れると、似たようなタイプの岡本賢明が行き場を失うことが多く、ヤスにしろボランチの宮澤にしろダニルソンにしろ、砂さんが流れたスペースに誰か入っていけばもう少し厚くできたと思いますが、誰が行くかというのがいまいちはっきりせず、サイドアタックはしても中の人数が足りなかったり、足りててもわざと味方のいないところを狙ったような残念なクロスだったりと、あまり得点できそうな感じがしません。もちろんボランチが出ていけばそのぶん空いた後ろのスペースを誰かがケアしなければなりませんから、カウンターを食らうリスクを考えれば前に出てけばいいってもんでもないですけど、しかし「虎穴に入らずんば虎児を得ず」というのもまた真理なのであります。つまり、二次元に入らずんば二次元ドリームを得ずということです。
まぁ要するにそんな感じであんまり得点の匂いのしないまま時間は進み、何度かいい形は作っても、開始早々の砂さんのミドルシュートがクロスバーを叩いたり、セットプレイからの西嶋弘之のヘディングシュートがゴールポストに当たったり、オーバーラップしてきた西嶋大ヒロのドンピシャシュートがゴールポストに当たったりとツキにも見放され得点できず、前半は0-0で終了。
流れが悪いと見たノブリンは結局1トップ+トップ下をあきらめ、砂川兄弟の弟のほう(ヤス)を下げて兄を左サイドハーフに置き、ヤスとの交代で入れた西大伍をボランチに入れ、宮澤をトップに上げて2トップにしてきました。「どうせトップ下いなくなるなら最初から置かなきゃいいじゃない」といった理由なのかはわかりませんが、システムの変更で現状を打開しようと試みたものの、やはりしっくり来ない感は拭えず。後半7分に相手ペナルティエリア右サイド手前で得たいい位置でのFKも、ダニルソンの蹴ったシュートがお約束のようにポストを叩いた時点で、「今日はこういう日なのかも…」と覚悟しましたが、その3分後に相手のクリアボールに猛然と突っ込んで奪った紀梨乃からのパスを征也がダイレクトで入れたグラウンダーのクロスに走り込んだ砂さんが、相手と競りながらもスライディングでゴールに押し込み、ようやく、ほんとにようやく先制点をゲットしました。
「1点取れば調子に乗る」傾向の強い札幌だけに、待望のゴールが生まれたことで追加点への期待も膨らみましたが、どうにも肝心なところでミスが出て後に繋がりません。そうこうしているうちにだんだんと選手にも疲れが見え始め、徐々に栃木に押されるようになります。こうなると監督としては難しいところ。点の取れそうな雰囲気がますますしなくなってきているとはいえ、このまま1-0で守りきれるようなチームでもないし、そもそも既に大伍を使ってしまっている以上、後残ってるのはGKの高原を除いてはFW登録の選手ばかりしかおらず、事実上守備固めの選択肢はありません。そうなると可能性としては追加点を狙うほうに賭けるしかない、ということで後半27分、上里一将に替えて石井謙伍を投入、宮澤を再びボランチ戻してきました。あわよくば追加点という狙いの他に、前にフレッシュな選手を入れて前線からのプレスを再度徹底させる目論見もあった、と思うんですけどね。果たして、いったい何しに出てきたんでしょうか石井くんは。
確かにほとんどの選手の足が止まっている上に、こういう時に鬼キープしてくれるクライトンがいないためにボールポゼッションもままならず、なかなか前線までボールが来なかったのもありますけど、体力的には余裕があるのですから、それならそれでもっと後ろを楽にするプレイをするべきなのに、そのあまりの消えっぷりに、これまでの実績を鑑みたノブリンが、1-0で逃げ切るためにこちらの人数を合法的に10人にしたんじゃないかと思えてしまったほど。ここしばらく出番を上原に先んじられていたのも何となくわかるような気がします。
まぁそれでも攻められつつもなんとか踏ん張り、普段は自信満々に持ち場を離れ、別の意味で熱いプレイで俺たちを揺らすミツが、もう焦らさないでとばかりにクリアミスをプレゼントするものの、栃木の拙攻にも助けられ何とか逃げ切りに成功。4試合振りの勝利を手にしたのでした。