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2009年12月25日

ゴンとコン

 最終的にコンサドーレ札幌とロアッソ熊本の2チームに絞り込んだと言われていたジュビロ磐田の「ゴン中山」こと元日本代表FW中山雅史の移籍先ですが、結局ゴンが新天地として選んだのは北の大地でした。23日に札幌と磐田の両チームから移籍の正式発表があり、24日には札幌市内で移籍会見が行われました。

 「ワールドカップで日本初のゴールを挙げた選手」「4試合連続ハットトリック」という実績面や、1997年のフランスワールドカップ予選のホーム・カザフスタン戦でゴールを決めたあとに、自身のユニフォームの下に着込んでいたその試合で出場停止だったカズこと三浦知良の11番のユニフォームを見せ、試合後の会見で「カズさんのユニフォームの下にはカミさんのブラジャーつけてました」と発言したり、「ドーハの悲劇」で知られる1993年のアメリカワールドカップ予選にて「僕にとってW杯は、もうDカップやEカップなんて問題じゃない大きさです。なんせWカップですからね」などと割とおっぱい絡みの逸話も多い愛されるキャラクターで、その知名度も抜群。サッカーファンはもちろんサッカーを見ない人でもゴン中山は知ってるほどです。「その筋では有名」という人は多々あれど(今年の紅白で言えば水樹奈々)、「そのジャンルにさして興味がない人にも名前が知られている」というのは実はすごいことで、そのジャンルを代表するほどのクラスにならなければ到達できない高みです。クラシックで言えばベートーベン、巨大ロボアニメで言えばガンダム、ドラゴンボールで言えばミスターサタンレベルです。ちなみにこの4試合連続ハットトリックはギネスブックにも記載されている世界記録なんですが、その4試合目をプレゼントしたのはほかでもないコンサドーレ札幌でした。
 まぁそんなビッグネームの加入だけあって注目度も高く、普段は各スポォツ紙の地域webにすら載らないことがあるのに、スポーツ誌の全国面はもちろん一般紙でも記事が載っただけでなく、各局の全国スポーツニュースでも取り上げられていました。全国ニュースで「コンサドーレ」の名前が出るなんて、DJ OZMAの「コンサドーレスッポロ」発言以来ですね。42歳とプレイヤーとしてはとうにピークを過ぎているわけですし、札幌を選んだ大きな理由に「施設面と医療体制の充実」というのがあるとおり、長年酷使してきた身体には大小様々な怪我を抱えていますから、大方の戦力としてはどうか? とする向きが多いでしょう。藤山にしても、これまでの札幌の傾向からすれば「あり得ない」補強の仕方。ミスターコンサドーレがいなくなったし、ミスターコンサドーレの後継候補筆頭が新潟に行ってしまったので、ミスター東京とミスタージュビロを獲ってみました、みたいなことにしたわけではないと思いますけど、知名度優先であればゴンはともかく藤山はなかったと思います。ではなぜか?

 かつては国内での合宿中のテストマッチで、通りすがりのおばちゃんに「赤いチーム(札幌)は声を出しちゃいけない決まりでもあるのかい?」と言われたという逸話の残る札幌。まぁほんとかどうかはわかりませんけど、「良くも悪くもおとなしすぎる札幌」は監督が替わっても選手が変わっても変わらず守り続けている伝統だけに、本当でも何ら疑問ではないエピソードです。いや実際まったく声が出ていないわけではまったくないんですけど、劣勢になってくると途端に声が文字通りトーンダウンしてしまう傾向が強く、それが結果として細かいところでの連携ミスやマークミスとして現れていたことは否めません。特に2004年以降は若返り策を採らざるを得なかったことで若手選手が多くなり、良く言えば仲がよい、悪く言えば「ヌルい」雰囲気が、土壇場での勝負弱さにも繋がっているのだと思います。
 寄せ集めのくせ者チームをまとめ上げた「野々村~名塚~高木(プラス、ミールさん)」ラインが健在だった2000年や、俺王様と黄川田が練習中に殴り合ったりしてた2001年が結果を残していたことを考えると、「リーダーシップのあるベテラン選手」の存在と「時にはぶつかり合うくらいの自己主張」は不可欠。もっとも、その頃からロスタイム失点病は普通にありましたし、俺王様の場合は自己主張と言うよりは「単に黄川田が気にくわなかったから」が理由だと思いますけど。もちろんフロントとしてもかの状況に手をこまねいていたわけではなく、これまでも「積極的に声を出せる選手」として幾人かの選手を獲得してきました。しかしその程度では太刀打ちできないほど札幌の伝統の壁は厚いのか、どの選手もいつの間にか「染まって」しまい、期待したほどの効果は現れなかったのが実情です。
 そういう意味で、もはや付け焼き刃ではチームの体質は変えられないとフロントが考え、「箕輪~藤山~ゴン」というラインを「野々村~名塚~高木ライン」に見立てている、と想定しているのであれば、この補強も納得はできます。当時の高木も度重なるケガで選手としては満足にプレイできるコンディションではなかったですが、それでもチームに残したものは大きかったですからね。今は何も残せてないですけど。
 年齢的には引退間際の1~2年限りの在籍となるかもしれません。彼の持つ知名度やキャラクターからすれば、現場はもちろんのこと、引退後は中央のテレビ局でも引く手あまたとなるでしょうから、引退後も札幌に残るという選択肢は限りなく少ないかもしれません。奥様は現役の女優ですしね。意地の悪い言い方をすれば「腰掛け」みたいな印象がないでもありません。とはいえ、仮にそうだとしても、「Jリーグの生き字引」とも言える中山雅史が何かを教えてくれるのを待つのではなく、逆にゴンがいる間に札幌がどれほどのものを彼から吸収できるか? というのが重要だと思うんですよね。ひとまずそういった点も含めて、熊本に行く楽しみが増えました。

 ところで入団会見の一問一答の中で、北海道の印象について訊かれた時の「北海道に降り立ったら氷点下ということで、思えば遠くに来たもんだ、という風に感じました(J's GOAL)」というコメントは今の若い子たちにはわからないと思います。

 さて、そんなゴンフィーバーの余韻もさめやらぬうちに、噂通りFC東京の近藤祐介の完全移籍が発表されました。今の札幌の状況を察してか、公式サイトでの「札幌ファンの皆様に一日でも早く“近藤祐介”の名前を覚えてもらえるように、早くチームに馴染んで、自分の力が発揮できるように頑張ります」というコメントが涙を誘いますが、スタメン候補では内村と並んで期待していますので、頑張ってください。

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コメント (1)

佐々木博司:

いつもいつも、このブログを読むのを楽しみにしていました。疲れたときも、このブログを見て笑い飛ばしていました。ありがとうございます。
来年のコンサは、何だかいけそうなきがするぅって感じがしています。期待しています。このブログ共々。

では、頑張って下さい。

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