2007年Jリーグディビジョン2第18節
アビスパ福岡1-2コンサドーレ札幌
得点者:札幌/西谷、謙伍
福岡/リンコン
「強いものが勝つんじゃない、勝ったものが強いんだ」と言ったのは、かつて「皇帝」と呼ばれた西ドイツ(当時)代表キャプテン、フランツ・ベッケンバウアーでした。ロッテンマイヤーさんではありません。意味は言葉通りですが、個々の力量は決して高くないし、層が厚いわけでもない、そんなチームが第17節までで11もの勝ち星を挙げて首位を守っているのですから、上の理論で言えばコンサドーレ札幌というチームは「勝ってるんだから強いんだ」となるでしょう。しかし、そうは言ってもやはり「強い」というのは退かぬ、媚びぬ、省みぬ人みたいなのを言うのであって、首位といえども半信半疑、というのが多くのサポーターの率直な印象だと思います。
しかし、前節から中3日でのアウェイ連戦、北海道から遠く離れた九州まで遠征し、30度近い気温の中での真昼の試合、そのまま言葉通りスペクタクルなディフェンスで堅守を支えるブルーノが負傷離脱する中、そのブルーノとのコンビでファンタジックなディフェンスを見せている唯一神ソダンが、遠征には加わっていたはずなのに当日になっていきなり欠場。どうやら風邪による発熱だそうで、つまりは神風邪で神隠しということですが、とにかくこれでもかと言わんばかりの逆境の中、3連敗中の福岡を相手に前半で先制を許す展開。以前の札幌であればなんの疑いもなく連敗ストッパーの実力を遺憾なく発揮していたことでしょう。加えて言うなら、決勝ゴールはこの試合がJリーグデビュー戦となったハファエルに決められてというのが札幌の役目だったはず。それが後半に追いついてさらにアディショナルタイムで見事にうっちゃってしまったのですから、これはもう素直に「強い」と言ってもいいのではないでしょうか。こういう勝ち方をしてしまうと、思わず「あの言葉」を言ってしまいそうになりますが、三浦監督が禁句にしていますんでとりあえずこれで。わっかるかなぁ~、わかんねぇだろうなぁ~。
しかし試合は本当に厳しいものでした。DFラインは西澤画伯が戻ってきたのでソダンに変わって西嶋とセンターバックを組み、右サイドバックは池内、そして左サイドバックは前節割と良かったカウエが入り、ボランチに大塚という布陣だったのですが、10度以上もの気温差のある北海道からやってきた選手たちがいきなり30度もの環境に放り込まれて無事でいられるはずもなく、そのためか前半は湘南戦以上に動きが悪く、リンコンを中心に小刻みにパスを繋ぐ福岡に好きなようにやられる展開となります。前半15分には中盤のマークミスを突かれ、うまく札幌守備陣のギャップに入り込んだリンコンが、ボールを受けて素早く反転して放ったシュートがゴール右に決まり、先制を許してしまいました。だいたい上背のある選手は総じて足もとは巧いほうではない、というのがうちのダヴィを例に出すまでもなく一般的に言われていることですが、このリンコン、185cmという長身ながら足もとの技術があり、シュートもうまい好選手です。まぁそれでも試合を見ている間、リンコンがボールを持つと「リンコンリンコンゆかいなリンコン楽しいリンコン♪」というフレーズが頭の中をグルグル回ってしまうほうが困っていたんですけど。
その後も試合は福岡ペース。とりあえず湘南戦がそうだったように、これから夏場を迎えるにあたり、アウェイでの試合は前半抑え気味に、という目論見があるにせよ、それにしてもちょっと心配になるくらいの出来で、前半の見せ場はフライングボディアタックを噛ました芳賀主将が一悶着を起こした(注:逆ギレ)シーンくらいでしたが、それでも何とか1失点に抑えました。
結果論ではありますが、ここで1失点で終えることが出来たことが逆転勝利に結びついたと言えるでしょう。もちろん無失点に終えられるのであればそれに越したことはなかったのでしょうけど、たらればの話をするならば、もし0-0で終わっていた場合は、三浦監督が砂川を後半頭から出してはこなかったと思うのです。実際、前節同じように後半開始から2枚替えてきたことについて「0-0だったらできなかった」と監督自身が言っていましたし。こういう「勝負をかける」のタイミングというのは意外と難しいもので、早ければいいってもんでもありませんが、だからといってあとにとっておいたらそのタイミングを逃してしまったというのはよくある話。昔好きなおかずをあとで食べようととっておいたら横からかっさらわれたということがありましたけど、それと同じではないけど似ています。
で、この試合でも前節同様ビハインドと言うことで、同じように後半の頭から砂川を投入してきた三浦監督。今回は1枚だけでしたが、それがトップギヤに入れる合図となりました。始まって早々の後半2分、砂川からのパスをペナルティエリア近くで受けた大塚がエリア内に侵入しシュート。このボールは相手DFに当たってしまいますが、こぼれたところを詰めていた西谷が落ち着いて蹴り込んで同点としました。ここで特筆すべきは、「流れの中で中盤の選手がFWを追い越して得点した」ことでしょうか。なんだかんだ言って攻撃のパターンも着実に増えてきているんですね。
この時点で既に足の止まっていた福岡に、元気な砂川を捕まえられるはずもなく、試合はほぼ札幌ペースで進みます。まぁチャンスはあれどもなかなか決められないのも札幌でして、いくつかあったチャンスを逃し続けてスコアは1-1のまま時間が過ぎていきます。まぁ札幌は前節湘南戦での勝点3が効いていますから、このまま終わっても上出来レベル。ところが、ご存じの通り実際のところはアディショナルタイムに交代出場の石井謙伍が砂川からのクロスをニアで落ち着いて蹴り込み、貴重な勝点3をもぎ取る値千金のゴールで逆転しました。
結果だけを見れば、「これ以上連敗できない福岡が攻めに出てきたところに札幌がカウンターを仕掛け、足が止まっていた福岡の守備陣が戻りきれず謙伍がゴールを決めた」という感じになると思います。しかし劇的なゴールで見落としがちですが、ここでも実は「三浦サッカーの変化」が見えてきます。このゴールまでの一連のプレイの起点となったのは、その直前に福岡DF川嶋のミドルシュートをキャッチした高木のフィードからでした。ここまで書いてきたような様々な不利の中、試合時間は残りわずか。このような状況で、もし本当に選手が「引き分けでいい」と考えていたのであれば、高木はGKがボールを保持できる6秒ギリギリまで粘り、なるべく高いパントキックで時間と距離を稼ぐプレイを選択したはず。確かに福岡が前がかりになってカウンターを狙いやすい状況だったとはいえ、逆に言えばそれは札幌陣内に福岡選手が多く残っているということであり、そこでボールを奪われればあっという間に大ピンチを招きかねません。三浦サッカーが巷で言われている通りの「リスク回避最優先型」だったとしたら、そういったプレイの選択はまずあり得なかったと思うのです。少なくとも、アウェイチームのセオリーではありません。
にもかかわらず、高木はボールをキャッチしてすぐにすぐ近くにいたカウエに繋ぎました。ボールを受けたカウエにはタッチライン際でキープをする選択肢もあったはずですが、そのようなそぶりは全く見せずすぐさま砂川にパスしそのまま前線にダッシュ。砂川はヒールでカウエに戻し、カウエは再び砂川の走る前方のスペースへダイレクトパス、そのボールに追いついた砂川が入れたアーリークロスを謙伍が決めたわけですが、この時謙伍を含めてダヴィ、西谷と3人もの選手がゴール前に詰めていました。つまり、このゴールはリスクを怖れず最後まで勝ちに行った結果必然的に生まれたゴールと言えるのではないでしょうか。三浦サッカーは選手と共に変化していってます。もう星泥棒じゃなくて星強盗になったかもしれません。
ところで、試合後に「第1クールなら自分たちが勝っていた」と言っていた福岡の監督は「勝ったものが強いんだ」と言っていた人が監督だった1990年のワールドカップイタリア大会のメンバーでしたっけ。
コメント (1)
博多は神風が吹くと外敵を撃退できる土地柄なんですが、
ネ申風邪には弱かったようで。
禁句・・・よくこんなマニアな船舶引っ張り出しましたねw
ワタシも三国志の武将で探してみましたが、見つかりません
でした。
>このリンコン、185cmという長身ながら足もとの技術が
>あり、シュートもうまい好選手です
リンコンの最たる長所は、いつの間にかDFの間に
入り込んでいるポジショニングだと思います。実は
競り合いそのものは苦手じゃないかなと。とはいえ
ポルトガル語で「エイブラハム・リンカーン」の名前を
持つだけに、札幌戦では「ドーレ解放宣言」(苦しい)
福岡戦の2点はよく考えると、どれもカウエのフィードから
始まっているんですよね。現地では田中にチンチンにされた
印象しかありませんでしたが、京都戦の出場停止は案外痛い
のかもしれません。
投稿者: はかたん1号 | 2007年5月31日 12:41
日時: 2007年5月31日 12:41