2009年Jリーグディビジョン2第7節
コンサドーレ札幌 1-1 カターレ富山
得点者:札幌/紀梨乃
富山/金

Jリーグ加盟2年目のロアッソ熊本にJの先輩としての貫禄を見せつけようと思ったらしっかり返り討ちにあったコンサドーレ札幌は、「よっしゃ、今日はこれぐらいにしといたるわ」と颯爽と熊本を後にして、今節は札幌に戻ってカターレ富山を迎えてのホームゲーム。北陸初のJリーグチームとなるこのカターレ富山もファジアーノ岡山、栃木SCと共に今季Jリーグに加盟した「新入生」ですが、この3チームの中でもチームの歴史はもっとも浅く、その誕生は2007年。今年でまだ3年目という非常に若いチームで、もちろんコンサドーレ札幌とは初対戦となります。
もともとは富山県を拠点として活動していたYKK APサッカー部とアローズ北陸という2つのチームが合併して誕生したのがこのカターレ富山なのですが、YKK APもアローズも共に長くJFLで活躍してきた実力のあるチームです。さらにその2つのチームの母体であり、現在カターレの胸スポンサーと背中スポンサーに名を連ねているのが、かたや売上高3,432億円というYKK AP株式会社、かたや売上高4,660億円という北陸電力という大企業。もちろんだからといって「うちビッグなカンパニーなんでお金なんてなんぼでも出しますよ」なんていううまい話が転がってるはずもないでしょうし、実際富山の今季の年間予算は推定5億円程度(北日本新聞の記事より)とJ2でも決して多いほうではありませんが、コンサドーレの胸スポンサーであるニトリが2,139億円、背中スポンサーの石屋製菓が59億円であることからも、少なくともスポンサー企業そのもののポテンシャルは単なる地方チームの枠を超えています。その気になれば富山出身の柳沢敦を獲るくらいのことはできるんじゃないでしょうかね。ちなみに北海道にも売上高5,433億円という大企業が一応存在するんですけど、チーム誕生時にいろいろあったせいか今のところ表立ってスポンサーになるような動きはまったくなさそうです(※数値はいずれも2008年度の単体決算のもの)。
まぁスポンサーの話はさておきここまでの富山の成績は前節終了時点で1勝2分3敗、14位と今のところは他と同様に「新規参入チーム」域を出るものではありませんが、その富山より順位が2つも下で、ここまで無失点の試合が3試合ある富山に対し、未だに無失点に抑えた試合がない上、富山と同じJリーグ1年生の岡山に引き分け、2年生の熊本に4点取られたわれらがコンサドーレ札幌が「でも富山にだったら勝てるよね♪」などとお気楽に言える理由はどこにも存在しないのであり、加えてMFクライトンが前節の一発退場によりこの試合出場停止、ダニルソンも累積警告で出場停止と、そんな札幌でも多少なりとも強気を保てる数少ない要素もまとめてあの夏の思い出と消え、残るは「俺たちJリーグ加盟11年目、J1経験もあるんだぜ」といった実績面くらいですが、人間過去の栄光にすがるようになったらおしまいだと思います。「父ちゃんはこう見えて昔はなぁ、そりゃあモテてモテて小松政夫だったんだぞ」などと言うのと同じくらいアレな気がします。
そんなわけで試合ですが、広島工業高校でノブリンの先輩にあたる楚輪博監督率いるカターレ富山は、近年の日本サッカーの潮流に違わず前線からのチェックで始まるプレッシングサッカーが基本。高校時代はその楚輪さんに同期の金田喜稔さんや木村和司さんと共にジュースやらエッチな本やらを買いに行かされたであろうノブリン率いる札幌もスタイルとしては札幌も似たような感じですが、前述したとおり札幌は中心的存在であるクライトンがいません。しかし圧倒的なキープ力を誇る反面、ややもすれば持ちすぎの批判を受けることもあるクライトンの不在は、プラスに考えれば攻めのスピードアップが期待できますし、逆にクライトン不在でどういうサッカーを見せてくれるのか、試される試合となりました。札幌のスタメンは前の試合で大チョンボをやらかしてしまった荒谷僧正が汚名挽回返上というわけでもないのでしょうが引き続きゴールマウスを任され、DFはおなじみの4人、ダニルソンが出場停止のボランチには西大伍が入り、キャプテンマークを巻く上里とコンビを組みます。サイドハーフは右に藤田征也、左に岡本ヤス、クライトンの代わりのトップ下は置かずに、紀梨乃と宮澤の2トップという布陣で、中盤より前の選手は最年長が24歳の紀梨乃という極端すぎるメンバー構成に。といってもダニルソンもまだ22歳なんで、クライトンが1人だけ年齢面でもずば抜けているだけの話なんですけど、こうして改めて見るとほんとに若いチームですね。新しい時代を作るのは老人ではない、と言っていたのは27歳のクワトロ大尉でしたが、とはいえこれだけ若い選手が多い、というか若いのばっかりなメンツじゃ、試合運びが拙かったりするのもある意味致し方ないのかな、などと思ったりもしないでもありなせん。ただそうかといってあんまりほとばしる若さというのも感じられないようにも思います。もっとこう、無断でマークIIで出撃したりオープニングラップで追突してセナを激怒させたり若さゆえのあれがあってもいいような気もするんですけどね。
まぁそれはさておき、ひとまず自動的に前線までボールを運んでくれるクライトンがいないことがどういうふうに作用したかと言えば、われらが赤黒の若武者たちは「ええと、どうやって攻めるんだっけ?」とばかりに蜘蛛の子を散らしたような騒ぎに。守備の陣形を整えた相手をかいくぐってゴールを決めるのはクライトンがいてすら難しい状態だったのに、クライトンがいないのであればなおさらですから、とりあえず相手がゴール前を固める前に前線で数的優位を作ってしまいたい、という意識は垣間見えますし、クライトンがいるいないに関わらずそのためにボールを持った選手を後ろから追い越すという動きはこれまでやってきた形のひとつではあるんで、そのこと自体はだいぶ徹底されているな、というのは感じるんですけど、惜しむらくは自分に出たパスまで追い越してってどうするということですね。まぁこれは多分にパスの出し手の問題でもあるんですが、走る味方とパスのスピードが合えばいい形ができるのに、受け手が自陣側に戻らざるを得ないようなパスが多く、どうにも攻めにスピード感が出てきません。
それでもいつもと違ったのは、クライトンがいないゆえなのか、それとも宮澤との2トップになったからなのか、はたまた攻撃陣で最年長の自覚が芽生えたからなのか(ただし24歳)、FW紀梨乃が珍しく裏への飛び出しが多くなっていたこと。そして先制点はその形から生まれました。前半30分、上里からの浮き球パスにうまく抜け出した紀梨乃が、飛び出してきたGKをしなやかに交わす技ありのゴールを決めました。久しぶりのホーム勝利に向けて是が非でも欲しかった先制点をゲットしました。
いつものことながらこうなると現金なもので、ここからはノリノリの札幌の時間帯が続きます。先制の直後には上里のミドルシュートのこぼれ球に詰めていたヤスがシュートを放ちますが相手GK中川にセーブされ得点ならず。1点リードして迎えた後半もしばらくは札幌のペース。しかしいつものことながらその自分たちの時間帯にしっかりと追加点をゲットできるようなチームであれば、今頃は新規参入組と仲良く順位表の下のほうでじゃれ合ってたりしてないわけで、確かに攻めてはいるんですが肝心なところで前半同様にパスの呼吸が合わなかったり、最後のクロスボールが雑だったりと、得点チャンス自体はさほど多くありません。早いうちに追加点を取っておかないとまた岡山戦みたいなことになるというのはおそらく多くの人が感じていたでしょうが、それをもっとも強く感じていただろうノブリンは後半24分にヤスに代えて砂川を投入します。しかし、攻撃に関してノブリンが選手交代で打てる手はこの俺たちの砂さんの投入で事実上終了であり、その砂さんの投入でもうまく行かないとき、それでも追加点が欲しいというような時間帯で投入する駒があとは石井謙伍しかない、というのが今のコンサドーレの泣き所なわけで。プレイヤーとしては純粋なストライカーではないのでしょうけど、それでも過去灼熱の西京極で見せた逆転ゴールや、昇格のかかった札幌ドームでの一時は勝ち越しとなるPKゲットなど、殺る気になれば殺れる男だと思ってはいるんですがねぇ。
あと、なんだかこの試合はよく札幌の選手が滑ってこけてるシーンが目に付きましたね。交代出場した元札幌の川崎健太郎を除いて札幌ドームでプレイしたことのある選手はいないはず(MF上園は水戸時代に来たことはありますが出場なし)の富山が全然そんなことないのに、こんなんじゃどっちのホームかわかりゃしない。そんなに滑るんならいっそのこと道民男児あこがれの的・4WDのスノトレでも履いてやがれって感じですよ実際。実際やったら札幌ドームの芝の人が泣いて止めるでしょうけど。
そんなこんなでどうにもこうにも突き放せずにいるうちに、いつものごとく徐々に相手ペースとなっていき、そしていよいよ試合は札幌ドーム名物「終了間際のラッキータイム」に突入。もちろんラッキーの対象は相手チームに限るわけですけど、今日も今日と手いやな予感をはね飛ばしてくれることなくコーナーキックから富山DF金明輝に決められ引き分けで終了。まるで岡山戦の再現を見ているかのような試合運びの拙さを見せて今季ホーム初勝利もお預けとなってしまいました。