2009年Jリーグディビジョン2第8節
ザスパ草津 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/紀梨乃x2
草津/都倉
負けなしのまま快調に首位を突っ走る姿をセレッソ大阪から約5勝ぶんとなる14もの勝点差の16位に沈み、浮上のきっかけすら掴めてないコンサドーレ札幌は、もはやお約束とも言えるロスタイムの失点によって追いつかれたカターレ富山戦から中2日でアウェイのザスパ草津戦に臨みます。ファジアーノ岡山、ロアッソ熊本、そして富山と、ここ3戦はせっかくJ2に帰ってきたというのに知らない顔ばかりとの対戦が続いて心細かったのですが、久しぶりに慣れ親しんだ昔懐かしい相手との対戦…と思ったらそんな草津もいつの間にやら鳥居塚は引退してコーチになってるし熊林親吾はいるわ都倉賢はいるわ廣山望はいるわ玉乃淳はいるわ。怪我でこの試合は欠場していますが崔成勇もいるんですね。わずか1年しか離れていなかったのにすっかり様変わりしていました。
「何もかも、変わらずにはいられないです。それでもあなたはこの場所が好きでいられますか?」
いやまぁ、別に好きでJ2にいるわけじゃないんですけどね。かといって嫌いでもないですけど。
ところで草津も今季のトップチーム登録メンバーは26人と、札幌とほとんど変わらない少人数でやりくりしていますが、GK常澤聡、DF佐田聡太郎、DF三澤慶一、MF佐藤穣、MF松下裕樹、FW後藤涼と、その26人が前橋育英高校出身という前育OBチームの様相を呈してきていますが、そのうち3人がスタメン出場、GK常澤も後半から出場しているのですから大したもの。ところで「後藤涼」って名前は声優ヲタ的にはちょっと萌える名前ですね。どうでもいい話ですが。
そして札幌は前節出場停止だったクライトンとダニルソンが復帰。紀梨乃、趙晟桓と合わせて助っ人が全員揃いました。前節ボランチに入っていた大伍は右サイドバックに回り、宮澤との2トップだったFWも紀梨乃のワントップに戻ってフォーメーションは4-2-3-1。怪我人を除けばほぼベストと言っていい布陣…だったはずなのですが、開始からどうにも札幌の動きがよくありません。さすがに中2日のアウェイ戦、しかも羽田空港から150kmくらい離れている前橋までの移動はしんどくないはずもないでしょうから致し方ないのかも知れませんが、前節休みだったはずのクライトンやダニルソンまでイマイチな感じ。まぁダニルソンはいつもあんな調子かも知れませんが、全体的に選手の出足も鈍い上に距離も良くないのでセカンドボールが拾えず、今まではなんだかんだで相手ゴール近くまではボールを運べていたのにそんなチャンスすらろくすっぽ作れない状態です。
しかしじゃあ草津に一方的に押し込まれていたかというとそんなこともなくて、もちろんペースは草津に握られていたのですけど、肝を冷やすようなシーンはあまりなくて攻撃の精度についてはどっちもどっちといった感じ。草津は前節終了時点で順位は9位ながらも、チームの総得点は10得点と、12得点で並ぶセレッソ、湘南ベルマーレ、水戸ホーリーホック(!)に次ぐ攻撃力を持っているのですが、その原動力である4得点の都倉はさすがという動きを見せるものの、相手がリーグワースト2位の11失点という札幌ということを考えれば草津もコンディション的にはあまりいいほうではなかったのかも知れません。
そんなわけでサッカーとしてはあまり盛り上がらない「ザ・J2」といった感じの時間が続く中、主役に躍り出たのはリーグ得点王都倉でもキングオブコンサドーレ・クライトンでもなく、本日の主審ジョージ柏原先生。前半32分、吉弘がペナルティエリアの中で都倉を倒したのをファウルと判断しPKを宣告します。ミツは都倉を引っ張っていたのでファウルかファウルじゃないかと言えばまぁ、ファウルだとは思いますし、それがペナルティエリアの中である以上はPKなのでしょうけど、逆に都倉もミツを思いっきり引っ張っていましたからね。DFとしてはあそこは踏ん張らないといけないでしょうし、正直お互い様といえばお互い様のような気もしますが、ともかくこのPKを都倉自身が決め先制は草津。
ほとんどシュートらしいシュートも打てていなかった札幌にとってはかなり重くのしかかる先制点。しかし同時に、あれをPKをしちゃった以上、たぶんバランス取りに来るだろうなぁとも思っていたら、案の定その7分後にペナルティエリアの中で上里が倒されたプレイが札幌のPKとなり、このPKを紀梨乃が決めて同点に追いつきました。追いついたことは素直にうれしいですし、それまでは「あれ、今日は上里欠場してたっけ?」と素で思ってしまうくらいまるっきり存在感のなかった上里がようやく見つかったこともうれしかったのですけど、こういう試合主審のさじ加減が大きく関わる内容の試合は好きじゃないですね。もちろんレフェリーがいなければ試合は成り立ちませんから、常に敬意は持たなければいけないのはわかってるんですけど。
とにかくなんとか同点で折り返した後半、追いついたのはよしとしてもそれ以外はあまり褒められたものでもない内容に、ノブリンは開始からメンバーをいじってきました。ヤスに代えて宮澤を投入し紀梨乃との2トップに。ついでに右サイドバックの大伍を上げて3バック気味にして臨みます。ヤスのプレイはそれほど悪くはなかったですし、ドリブルで勝負を仕掛けられるヤスを外すのはちょっともったいない気もしましたが、いざとなれば砂さんがいますからこれは戦術的な交代でしょうね。で、この采配がずばり的中。後半12分、大伍のクロスのこぼれ球をペナルティエリアの中にいた宮澤が拾い、近くにいたクライトンにパス。クライトンはこのパスにダイレクトでシュートを放ちますが、この負傷した本田に代わり後半から出場したGK常澤が、その至近距離からのシュートをあり得ない反応でセーブ。
またこのパターンか!
これまでの試合でも「これ普通入るだろ!」というような完璧な形のシュートが相手GKのびっくりセーブで防がれることが多かった札幌、そのくせこっちのGKは別の意味でびっくりセーブだったりするのは置いとくとして、よっぽど運が悪いのかそれとも日頃の行いが悪いのかはわかりませんが、とにかく完璧な手応えだったのに仕留めきれなかったこちらは相当のガッカリ感があるでしょうし、九死に一生を得た相手は逆に勢いづきますから、こういうのは相手に流れを引き渡してしまう要因にもなり得ますし、これまでも実際そうでしたから、今日もそんな悪寒したのですが、それも一瞬の話でした。そのはじいたボールにいち早く反応したのがFW紀梨乃でした。見事なジャンピングボレーでこのこぼれ球を押し込んでついに札幌が逆転に成功しました。
これまで何度か書いてきたように、紀梨乃自身は過去札幌に在籍してリーグ得点王やそれに準ずる結果を残してきた助っ人ストライカーたちのような俺様タイプではないですが、それでもあのシュートは自分のところにこぼれて来ることまで予測していなければうまく枠に入れることは難しかったでしょう。自分でゴリゴリ行くタイプではなくても本質的にはストライカーなんでしょうね。極端な例だと「敵のクリアはもちろん、味方のシュートも全部こぼれて俺のところにこい」などと常日頃から念じているストライカーもいるそうですから。そこまではいかなくても、去年の西京極で同じくペナルティエリアの中での宮澤のヒールパスにびっくりして空振りした石井謙伍くんはもう少し傲慢になってもいいと思います。
そういう意味ではその前のプレイ、相手のクリアボールを予測していたかのようにあの位置にポジションを移していた宮澤と、その宮澤のパスに窮屈な体勢でも最低限の振り抜きで確実にミートしたクライトンも大したものだと思います。
ところが逆転には成功したはいいんですが、いつもなら点が入れば調子に乗って動きが良くなるはずの札幌なのに、この日はいまいち。やはりコンディション的にしんどいのか、それともうまく行ってないチームの性なのか、あるいはその両方かも知れませんが、とにかくここからなんとなく腰が引けた状態に。前半からどうもうまくいかないな、というのは選手たち自身も感じていたでしょうから、ここでまた失点して追いつかれてしまえば再び突き放すには相当の無理をしなければいけなくなります。日曜日に首位のセレッソとの試合があることも意識の中にはあったでしょうから、「勝ちたい」というよりも「負けたくない」という感じでリスクを冒す勇気があまり持てなかったのも心情的には理解できます。フラレるのが怖いから告白しない、みたいな。踏ん切りつけるために100%勝算がないのにぶつかっていって玉砕、というパターンもありますけどわかっちゃいてもダメージでかいですからね。オレはそんなのばかりでした。キモヲタだから。
まぁそんなことはどうでもいいとして、逆転した時点で試合時間はまだ30分以上残されており、守り切るにも少し長すぎる時間帯。判断が難しいところだったのは確かで、ノブリンもその後ダニルソンを外して砂さんを投入し、「守りに入るな」というメッセージを選手交代に込めました。しかし劣勢は変わらず、何度かチャンスは作つものの単発で終わり、相手を押し込むまでには至らず。ただそれでも最終ラインの踏ん張りと草津のフィニッシュの精度の悪さに助けられ得点を許さず、最後のほうは紀梨乃を下げて芳賀を右サイドバックに入れて宮澤の1トップに戻し、明確な守り切りを指示したノブリンの意志に応えた札幌がなんとか逃げ切って、第2節サガン鳥栖戦以来の勝点3をゲットだよ。