2009年Jリーグディビジョン2第17節
コンサドーレ札幌 1-1 東京ヴェルディ
得点者:札幌/岡本
ヴェルディ/大黒
「ホーム開幕が2度ある」と言われるコンサドーレのサポーターにとっては、待ち望んだ厚別での開幕戦。複数のスタジアムをホームとして使用するチームはコンサドーレに限ったことではありませんが、厚別はチームの歴史共にあり続け、その過程でいくつもの名勝負が繰り広げられたスタジアムであるのと同時に、屋外競技場である厚別で試合ができるということは、すなわち北国札幌にようやく遅めの春がやってきたことを告げるひとつの風物詩となっています。冬の終わり、すなわち春の訪れは広瀬香美以外の誰にとってもうれしいものだと思いますが、こと長い間深い雪に閉ざされる地に住む人たちにとってはきっと、そうじゃない土地の人たちよりもその気持ちが強いかも知れません。逆に言えばそれだけ雪国の冬は厳しいということであり、その辺は住んだことのある人じゃないとわからないでしょうね。軽々しく秋春制を唱える人が後を絶たないことを見ても。
もっとも、少し前まではゴールデンウィークでの厚別開幕が恒例だったのですが、天候に左右されず立地的に集客の見込める札幌ドームが優先されるようになったのか、去年は中断期間やナビスコカップでの地方開催との絡みもあって、厚別での初試合は7月でした。そこまで来ると開幕気分はもちろん、いくら北海道でもそこまでいけば春すら通り越して既に夏になってるわけですが、今年も第1クール最後の試合と、タイミングとしてはが良くない時期での厚別開幕戦。どうせならもう1試合ずれて第2クールの初戦というのだったらよかったんですけど、こればっかりは「日程くん」のさじ加減ですからしかたないですね。
さてそんな第1クール最後の試合の相手は東京ヴェルディ。一昨年にコンサドーレ札幌と共にJ1昇格を果たしたものの、昨季は16位のジュビロ磐田に得失点差で4点及ばない17位であえなく1年で降格。前回の昇格時はフッキやディエゴといった反則的な陣容を揃えていましたが、これまでその巨額の資金を捻出してきたヴェルディの親会社である日本テレビが、チームの経営権譲渡を検討しているという記事も出るなど経営状態は思わしくなく、今季は例年に比べればおとなしすぎるほどの補強。日本テレビ自体も広告収入の減少などで赤字となっている上、観客動員数も伸び悩んでいることから、今後も事態が大きく好転する見通しも少なく、他のJ2チームと同様、若手中心のチーム作りへの方針転換を迫られています。
とはいえ、他のチームと大きく違うのは、ヴェルディには過去数多くのJリーガーを生み出してきた極めて優秀なユースチームがあることです。今季も全登録メンバーのうち3人に1人がヴェルディユース出身、この日のスタメンにも富澤清太郎、高橋祥平、富所悠、林陵平と4人のユース出身選手が名を連ねています(※高橋は二種登録)。ところで富所悠って昔バーモントカップ(フットサルの小学生大会)決勝で見たことがあるんですが、小学生とは思えないテクニックでしたね。確か大会優秀選手にもなっていたはずです。ちなみにこの時のヴェルディジュニアと優勝を争った横浜F・マリノスプライマリーには、今季マリノスユースからトップに昇格した斉藤学(同じく優秀選手)がいました。彼もやっぱりうまかったですね。ちなみにこのバーモントカップの優秀選手からは多くのプロ選手が誕生していまして、新しいところでは浦和レッズの高校生Jリーガー・原口元気や古くは小野伸二(現ボーフム)、山瀬功治(現横浜F・マリノス)もそうでした。他にも菅野孝憲(現柏レイソル)や森本貴幸(現カターニャ)といった面々も。
話がそれてしまいましたが、そういった厳しい情勢の中でヴェルディは、横浜FCを昇格させたOBの高木琢也監督を迎えてシーズンに突入しました。開幕当初は怪我人の多さもあり出遅れてしまったものの、5月に入ってからは負けなしと徐々に調子を上げてきており、その間5試合で喫した失点はわずかに1と、横浜FC時代にも守備構築には定評のあった高木監督の戦術も浸透してきているようです。
そして札幌のメンバーは、前節累積4枚目のイエローを受けた趙晟桓が出場停止。たまにミスもありますが今の札幌にはクライトンと同じくらい欠かせない選手なだけにその穴をどう埋めるか…といってもあと残ってる出動可能なセンターバックって、今季まだ出場のない柴田とまだトップでの出場がないほっちゃんくらいしかいないので、たぶん前節晟桓がカードを出された瞬間に大多数のサポーターが思った通りに、センターバックは吉弘と西嶋。ただし、それで空いたサイドバックには芳賀が入ると思ってたのですが、ノブリンが打った手はここ最近左サイドバックに入っていた大伍が右に回り、左に上里を置くというものでした。上里のサイドバックは確か三浦監督時代の2007年にサテライトリーグでやってた記憶はありますが、適正よりも消去法でそうなったという印象が強かったですし、トップチームではもちろん初めて。まぁ空いたボランチには宮澤が入っているので、この試合も攻撃を優先したら消去法でこうなったという感じですけどね。
まぁそんなわけでこの試合の前日に湘南ベルマーレ、セレッソ大阪、ベガルタ仙台、ヴァンフォーレ甲府の上位陣が揃って勝点3を上積みしている上、相手のヴェルディも順位こそ8位でも札幌との勝点差は2しかないため、ヴェルディに負けると他の試合の結果如何では7位にまで順位を落とす可能性もあるだけに、いつも言ってるような気がしますけど踏ん張り所です。
さて試合は、前節まったく動けずに相手ペースのまま90分を終えたのが嘘のようにこの日は開始から札幌がヴェルディ陣内に攻め込みます。ところが、一見景気よく攻め込んでいるように見えてもその実あまり決定的なチャンスはありません。風の影響もあったのかも知れませんが、それにしてもなんか違和感があります。ヴェルディにほとんど攻めるチャンスを与えないほどボールを支配していた割には、前半記録したシュートは5本。決して悪い数字ではないですけど、試合内容から考えればもう少しいい形でフィニッシュに持って行くシーンがあってもいいはず。上里も頑張ってはいたのですがやはり本来は真ん中の選手のようで、もともと攻め上がって勝負を仕掛けるタイプではないですし、サイドバックと言うよりはどちらかといえばトレスボランチの左の人というか、今までのチームのやり方からは若干浮いた感じで、少女隊で言えば引田智子のポジション。そのためか左サイドの前目にいる岡本とのコンビネーションがほぼ死んだ状態になり、そうなると札幌の攻め手としては右サイドの征也しかなくなるわけですが、現状征也の場合縦に行ってクロスのパターンがほとんどのため、ヴェルディとしてはクロスボールにだけ気をつけていればいいため、対応としては比較的やりやすかったのではないでしょうか。相手の人数と体勢が揃っているところになんぼ放り込んでも、そうそう得点に結びつくものではありません。ただヴェルディにしても守備はともかく攻撃のほうは惨憺たるもので、せっかくボールを奪ってもパスミスでフイにする様はかつてのコンサドーレを見ているようです。いや今もあんま変わらないかもしれないですけど。別に守備的な戦い方をしているわけでもないのに、前節時点で得点数17はリーグ10位、そのうち約半分が大黒将志1人の得点というのも、そのあたりに理由があるような気がします。まぁそんな感じで前半は0-0で終了。
後半も流れはだいたい前半と似たような感じで、取れそうな気はするけどでもやっぱり取れそうな気もしない、という複雑な乙女心サッカーが繰り広げられます。それでも先制したのは札幌でした。後半18分、右サイドを突破した紀梨乃がペナルティエリアの中でクライトンにパス。この時ヴェルディのDFも人数は揃ってはいたんですが、あそこでクライトンにボールを持たれてしまったら、うかつに飛び込んでも交わされるだけでしょうし、下手すればPKを与える危険もあります。なのでシュートコースを塞ぐのがまず最優先となるのも致し方ないところだとは思いますが、そんなヴェルディDFをあざ笑うかのように、クライトンがちょいと出した短いパスに逆サイドから走り込んできた岡本が豪快に蹴り込んでゴール。前半は余り目立たなかった岡本ですが、ここはキッチリ仕事をします。岡本はこれで紀梨乃に次ぐチーム2位タイとなる4ゴール目。相変わらずゴールパフォーマンスはかっこよくないですが、これからもゴールを決め続けてほしいものです。
さて前節こそ無得点に終わったものの、それまでは3試合連続で3得点ずつの荒稼ぎを続けていました。かといって札幌が寝た子も起きるほどのグンバツの攻撃力を持っているかと言われればそういうわけでもなく、どちらかといえば1点取れば調子に乗って2点3点取る、みたいな感じなのですけど、その1点がようやく入ったことによって追加点も期待できます。そしてそのチャンスは意外に早く訪れました。先制から6分後の後半24分、相手ペナルティエリアやや手前でのロングボールに、相手DFと競り合った紀梨乃がうまいこと身体をぬるっと入れてにょろっと奪い、あっという間にべろっとGK土肥と1対1に。よっしゃこれで2点目ゲットだぜ、と思ったその瞬間、狙い澄まして右足を振り抜いた紀梨乃のシュートは、絶妙にゴールの外へ。おそらくスタジアムやテレビで一部始終を見守っていたサポーターの全員が、この瞬間天を仰ぐかずっこけるかがっくり来るかタマゴを生んだかいずれかの行動を取ったかと思います。こういう場面で確実に百発百中で仕留められるような選手だったらきっと札幌には来てないでしょうし、ダヴィだったら豪快にGKにぶち当ててたでしょうし、俺王様だってどフリーをぶっぱずしたこともありましたからしょうがないと言えばしょうがないのでしょうけど、こうやって決めるべき時に決めないとどうなるかは今更改めて言うまでもないこと。しかしそれでもヴェルディはほとんど攻撃らしい攻撃はできず、試合の流れが大きく変わったようには見えませんでしたし、おまけに後半38分には富澤が2枚目のイエローで退場。常識的に考えれば、数的不利に陥ったヴェルディにもはやチャンスは残されていません。
ところがどっこい、我々の応援するコンサドーレ札幌というチームは、そんなささいな常識にとらわれないスケールの大きさが自慢です。アディショナルタイムに突入しもう試合時間も残りわずかという時に、中盤でボールを抑えたはずの宮澤とダニルソンが、何かとても大切なものを見つけたかのように慈愛に満ちた目でボールを見守っているスキにかっさらわれます。そしてゴール前に送られたボールをクリアしようとした西嶋が、何かとてもイヤなものがやってきたかのようにキックミス。こぼれたボールに詰めていた大黒に決められ、同点に追いつかれてしまいました。
結局そのまま試合は1-1のドローで終了。「家に帰るまでが試合です」という言葉がリフレインする厚別開幕戦でした。
コメント (1)
カズゥの左SBは途中出場なら去年もありましたよ。
ただし左SHの元気よりも前に張ってることが多かったですが
投稿者: 2年後輩 | 2009年5月28日 10:22
日時: 2009年5月28日 10:22