2009年Jリーグディビジョン2第16節
水戸ホーリーホック 0-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/なし
水戸/なし
前節ようやく11人で完封勝利を果たしたコンサドーレ札幌は、今節はアウェイで水戸ホーリーホックとの対戦です。Jリーグ2部制がスタートした翌年の2000年からのJ2参入と現在のJ2では古株に入るチームですが、2部制スタート時にJ2にいた「J2オリジナル10」と呼ばれる10チーム(川崎フロンターレ、FC東京、大分トリニータ、アルビレックス新潟、コンサドーレ札幌、大宮アルディージャ、モンテディオ山形、サガン鳥栖、ベガルタ仙台、ヴァンフォーレ甲府)と、水戸の翌年に参入した横浜FCのうち鳥栖を除くすべてのチーム1度はJ1への昇格を果たし、残された鳥栖もシーズン終盤まで昇格を争った実績があるのに対し、水戸の過去の最高順位は2003年の7位と若干取り残された感じになっています。その理由はもちろん予算規模の問題。このサイトでも何かにつけて「コンサドーレは貧乏チーム」などというようなことを言っていますが、それでもJ2の中ではお金持ちの部類に入りますし、少なくともチームマスコットの入院・手術費にも事欠くほどではありません。4億円前後といわれる運営費では補強もままならず、そんな中でもいい選手は割と出てきてはいるものの、活躍するとすぐに他チームから引き合いが来るため、継続的な強化は札幌以上に難しい状況では、それもまた仕方がないかも知れません(つーかかつては札幌もデルリスを「強奪」しましたし)。ただ実は水戸は過去9年間で1度も最下位になったことがないんですね。J2最下位に終わった2004年のコンサドーレのトップチーム人件費(約3億円)はその年の水戸の運営費全体よりも多かったのに、大したものですね。
まぁそんな感じで長いこと文字通りの「弱小チームの代名詞」みたいな感じだった水戸ですが、かつて札幌でプレイしていた木山隆之監督が指揮を執って2年目の今季は、大宮アルディージャを昨季限りで退団していたこれまた元札幌のFW吉原宏太が加入。その吉原効果(!)か、開幕前のテストマッチでは横浜F・マリノスや浦和レッズといったJ1勢に勝利、「これは本当に水戸か」とサポーターから言われてしまうほどでしたが、シーズンに入っても開幕戦こそ愛媛FCに敗戦したものの、第2節からは4連勝を含む7試合負けなしを記録し、その勝利が決してフロックではないことを証明します。ところが、その後得点ランキング首位を走っていたエースFW荒田智之が全治3ヶ月の重傷を負ったのをはじめとして主力に怪我人が続出、それと共に勢いも失速し、順位自体はは札幌と勝点1しか違わない6位をキープしているものの、ここ2試合は湘南ベルマーレ、セレッソ大阪と首位争いを繰り広げるチームを相手に連続で5失点を喫するなど、若干調子を落としています。
そして遅ればせながら上位チームの追撃態勢に入った札幌にとっては、ここがいろいろと正念場の試合。といっても正念場じゃない試合があるのかと言われると困るのですけど、札幌が勝ってヴァンフォーレ甲府が負ければ甲府を交わして4位に浮上するチャンスがある一方で、負ければ水戸に抜かれて6位に転落してしまうだけに、踏ん張りどころとなります。
ここ5試合の成績を比較すると、4勝1分の札幌と1勝3敗1分の水戸。主力に怪我人も出場停止もおらず、箕輪やソダンは除いてほぼベストのメンバーである札幌と、怪我人が多い上にここまで全試合出場していたMF森村昂太が出場停止の水戸。勢いやチーム状態から考えれば札幌が有利となるはずの試合でしたが、どっこい開始からほぼ水戸のペース。前節まであれほど機能していたプレスがまったくかからず、簡単に水戸にアタッキングエリアに侵入を許す有様。攻撃面では逆に相手のプレスに苦しみ、ボールキープもままならない状態。札幌はここ笠松での試合は過去9試合で2勝5敗2分と負け越していますし、今季第10節のファジアーノ岡山戦で荒田がハットトリックを達成するまではチーム唯一だった水戸のハットトリックも、ここでのコンサドーレ札幌戦で記録されている(2006年5月6日のJ2第14節・アンデルソン)ように、どうにも相性が良くないスタジアムではあるんですが、それにしてもチームのパフォーマンスは最悪で、誰が悪いというのではなくむしろいい人がいません。とにかくみんな足が全然動いていない。足が動かないからプレスがかからない、プレスがかからないから守備ラインを押し上げられない、押し上げられないからボールを奪ってもパスコースがない、パスコースがないからパスも繋がらない、パスが繋がらないからボールをキープできない、キープできないから攻めきれない、攻めきれないから愛が届かない、愛が届かないから踊れない、踊れないから夢見る少女じゃいられない、そんな感じでさっぱりな試合内容。
逆に水戸の攻撃はロングボール中心の攻めで、そのこぼれ球を拾って展開していくという形。木山監督の指示ではあったみたいなんですが、水戸の中盤がクライトンやダニルソンを抑えるのに精一杯で攻撃まで手が回らなかったのか、攻撃自体は割と単調なもので、なかなかシュートまでは持っていけず。ただそれでも吉原からのスルーパスに高崎が抜け出してシュートを放ったり、村松のフリーキックに吉原が飛び込みポストに当たるなど、相手が肝を冷やすような場面はむしろ水戸のほうに多く、札幌もセットプレイなどでシュートはそこそこ打ててはいるんですが、前半の惜しいチャンスといえばクライトンの単独突破からのシュートと、前半アディショナルタイムに岡本がペナルティエリアの中で相手DFを交わして放ったシュートの2本くらい。0-0のまま前半を終えますが、なんだかいやな雰囲気です。たとえて言うなら、ホラー映画で金髪のおねいさんがシャワーを浴びてる時みたいな感じ。
んで後半。前半の内容から考えればメンバー交代もあり得るかと思いましたが、後半頭からのメンバー交代はありませんでした。まぁ確かに前半はどう見ても褒められるところなんて何一つなかったといっても、かといってじゃあどこを替えれば良くなるかと言うとどこもかしこも悪すぎていじりようがないというのが本音だと思いますし、1人や2人替えたところで焼け石に水じゃ、とノブリンが考えてもおかしくはありません。あとはハーフタイムの指示でどこまで変わるかですが、いきなり開始早々吉原の突破から遠藤にフリーでシュートを打たれる体たらくで、良くなるどころかむしろダメまってる感じ。札幌も単発ながらもチャンスを作りますが、なんですかね、どのシュートもゴールマウスにATフィールドでも展開されているかのようにことごとく枠の外。枠に飛んだシュートって征也のボッテボテシュートが本間の正面にボッテボテ飛んでいってボッテボテとキャッチされた1本くらいしか記憶にないのですが、他になんかありましたっけ?
その後もさして見所がない展開が続きます。確かにノブリンは開幕前に「アウェイではつまんないサッカーをするかも」という話をしていましたけど、曲がりなりにも5位と6位の攻防戦は掛け値なしにつまらない試合です。これで負けてたらたぶん選手もサポーターもショックとダメージのでかい試合になったかと思いますが、さりとてメンバー落ちまくりの水戸に勝てなかったことを残念に思うのか、それとも笛吹けど踊らぬようなパフォーマンスで引き分けに持ち込んだことをよしとするべきか、微妙なところではありますね。甲府も勝っちゃったし。
それにしても、吉原が札幌からガンバ大阪へ移籍した1999年暮れから10年近く経って、このような形で戦うことになるとは思ってなかったですね。まぁそんなことより今まさにピッチに入ろうとした時に試合終了のホイッスルが鳴ったコンサドーレ札幌ユースU-18出身の鶴野大貴には心底同情した次第でございます。