勝つに越したことはないのだけど
2011年Jリーグディビジョン2第4節
水戸ホーリーホック 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ジオゴ、砂川
水戸/ロメロフランク
前節アウェイでファジアーノ岡山に敗れて連勝が途切れ、この試合で仕切り直し…と行きたいコンサドーレ札幌はですが、今節は東日本大震災で延期となった第4節の代替試合でアウェイ連戦。相手は難敵水戸ホーリーホックとなかなかに難しい試合です。前節…といっても第26節の話ですが、終了時点で6勝11敗5分で17位と下位に低迷しているものの、徳島には1勝1分、栃木にも引き分けるなど上位陣相手の健闘も目立ちます。
Jリーグで2部制が始まった1999年当時のJ2に所属していたクラブ、いわゆる「J2オリジナル10」の中で、唯一サガン鳥栖だけがJ1の味を知らないことは有名な話ですが、そのサガン鳥栖に続いてJ2歴が長いチームがこの水戸ホーリーホック。2部制スタートの翌2年目の2000年からJ2に参入し、今季2011年までJ2に居続けています。ホームタウンである水戸市は茨城県の県庁所在地であり、徳川光圀公ゆかりの地だったり、特産品である納豆などで、都市そのものの知名度は旧浦和市などよりよっぽど上なのですけど、近隣にJリーグ屈指の強豪である鹿島アントラーズの本拠地・鹿嶋市があるせいか、サッカー的にはいまいち地味な存在で、とかくチームの貧乏ネタには事欠かないという、声優で言えば落合祐里香(現長谷優里奈)なチームです。
それだけに何か人を引きつけるものがあるのか、チームマスコットであるホーリーくんがボロボロになってしまい、その「入院費用」を募ったところ、あっという間に目標額の100万円を達成してしまったというエピソードもありますし、元日本代表FW吉原宏太が「水戸にとっての1億円の評価」という名言とともに年俸500万円で加入。そして今年は同じく元日本代表FW鈴木隆行(日立市出身)が、「アマチュア契約」で加入しました。
まぁそんな感じのチームですが、今年のみとは札幌にとってはとにかく「絶対に勝ちたい」相手。それは札幌にもいたことがある吉原や岡田佑樹、札幌ユース出身の鶴野太貴の存在ではもちろんなく、今季から就任した柱谷哲二監督の存在。もはや説明する必要もないでしょうが、2002年、札幌が降格した年に
今 から思えばその前年に残留の原動力となった主力選手がほぼ丸ごといなくなってしまった上に、補強戦力が揃いも揃ってアレだったあの状態では、きっとエク トール・クーペル監督でも村西とおる監督でも残留させるのは難しかっただろうなと思います。ましてやS級ライセンスを取ったばかりの新人監督。元日本代表主将という知名度だけで、コーチ経験もなく監督に「させられ」たのは気の毒にも思います。何にせよもう10年近く前のことでもありますし、J1どころかJ2です ら最下位になった2004年や、J1でも実績のあった監督の下で優秀なストライカーがいてすら異次元の弱さだった2008年をはじめとして、ありとあらゆるガッカリシーズンを経験してきた今では、個人的には2002年 なんて「数ある残念な思い出のひとつ」でしかないのですけど、「それはそれとして、なんか知らないけどとにかく嫌い。顔が」というぐうの音も出ない理由も多く、現在でもなお「歴代ワースト監督」として名を挙げられる人物です。
まぁそれはそれとして前節は上位陣が総コケし離されずに済みダメージは最小限。この第4節でも前日の金曜日に行われた試合で、第2位の徳島ヴォルティスがザスパ草津に敗戦し勝点を伸ばせずにいるため、この試合に勝てばさらに差を詰めることができるだけに、とにかく絶対に勝っておきたい試合です。
そんな札幌は当然予想されるジオゴさん封じへの対策のため、1.5列目として内村を起用。砂さんをサイドに持ってきて起点を増やします。さらに前節はU-18日本代表の遠征で不在だった櫛引一紀をスタメン起用し、ボランチを組むのは河合と宮澤。GKのイホスンが怪我をしたため、ぎーさんこと高木貴弘がゴールマウスを守ります。ぎーさん、前回出場も水戸戦でしたね。実はまだ見てないんですけど。水戸も「ミスターホーリーホック」GK本間幸司も怪我で欠場で、2年目の小野博信がゴールを守っているのを見ると、ホスンが出れなくてもぎーさんクラスのGKが控えている札幌は贅沢ですね。つってもそのぶんボランチいないんですけど。
まぁそんなわけで一切試合に触れずにここまで書いたわけですが、前節ジオゴさんを抑えられて何もできなかった反省を生かし、ジオゴさんも真ん中に張るだけでなくサイドに流れたり、真ん中のスペースにうっちーが入ったり、近藤がブルドーザーみたいだったり…はいつもですが、けっこう工夫してきました。前半5分、相手のセットプレイからカウンターで抜け出した砂さんが左サイドをえぐりクロス。そのボールに飛び込んだのは…岡山戦ではペナルティエリアに入ることすらままならなかったのですが、うまくDFの背後を突いてどフリーになったジオゴさん、あまりのフリーっぷりに「来た! 俺来た! エースの俺来た! これで勝つる!」と叫びながら放ったヘディングシュートはドンピシャでゴールに吸い込まれます。そして やはり飛んでいます。やはり羽ばたいています。
どちらかといわずとも自分でゴリゴリ行かず、周りを生かすタイプのジオゴさんですが、あの辺のゴール前の動きはやっぱりストライカーなんでしょうね。今は周りを生かすほうが多いですが、逆にジオゴさんを生かせるようになればけっこう点も取れる気がします。これまで札幌にいたタイプで近いのは…アンドラジーニャでしょうかね。
しかし先制したはいいものの、この後がよくありません。ここで畳みかけることができれば札幌も「なんでこのチームがこの順位にいるんだろう」とサポーターが首をひねることもなくなるんでしょうけど、まぁそれができないのが札幌の札幌たるゆえんですね。先制した後も何度かチャンスは迎えるものの決めきれず、試合が進んで行くにつれて全体的なペースとしては水戸に傾きます。それでも水際で阻止し続けてリードのまま前半終了かと思われた前半ロスタイム、ペナルティエリア奥深くに侵入してきたロメロフランクが強引に上げたクロスがDFに当たりゴールイン。不幸と言えば不幸な失点でしたが、仮に当たってなくてもファーに詰めていた選手に押し込まれていたでしょう。いずれにしてもリードで折り返すつもりだった札幌にとっては痛い失点でした。
しかし後半6分、右サイドからジオゴさんが上げたクロスに飛び込んだ砂さんがシュートを放つと、本人曰く「狙い通りの当たり損ね」たシュートがうまいことGKのタイミングを外しゴールイン。前半同様開始早々に札幌が点を取る展開となりました。そしてその後水戸ペースになるのもやっぱり前半と同じで、札幌もたまに思い出したように反撃はしますが基本的にペースは水戸。どうも中盤のバランスが良くないんですよね。河合も持ち前の対人の強さで「縄張り」に入ってきたよそ者を駆逐するのは早いんですけど、縄張りの外のスペースのケア、要するに他の選手をアゴでこき使うまで手が回っていないというか、要するに「効いてる」感じはあまりしないんですよね。まぁ後半になったらだいたいいつも近藤さんあたりは行ったきり帰ってこないことが多いですし、砂さんもうっちーもさほどスタミナのあるほうではないので、時間が進めば進むほど中盤に広大なスペースが生まれてしまうのが後半の札幌ではあるんですけど。この試合では特に交代で入ってきた古田がまるで空気同然だったこともあって、ボランチ2人への負担は相当なものだったでしょうし、実際宮澤も守備に忙殺されるシーンが多かったですしね。守備陣が身体を張って水際でなんとか止め逃げ切ることに成功しましたが、今日も今日とて打たれたシュートは17本。正直、J2だからなんとかなってる気はしますね。「遠目からあえて打たせている」のはあるにしても、シュートは打たれないに越したことはないと思いますし、実際のところチームの被シュート数がリーグで2番目に多いってのはあまりいい傾向ではないと思うので、このあたりは改善の余地はありそうですね。