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2011年9月 アーカイブ

2011年9月10日

勝つに越したことはないのだけど

2011年Jリーグディビジョン2第4節
水戸ホーリーホック 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ジオゴ、砂川
     水戸/ロメロフランク

 前節アウェイでファジアーノ岡山に敗れて連勝が途切れ、この試合で仕切り直し…と行きたいコンサドーレ札幌はですが、今節は東日本大震災で延期となった第4節の代替試合でアウェイ連戦。相手は難敵水戸ホーリーホックとなかなかに難しい試合です。前節…といっても第26節の話ですが、終了時点で6勝11敗5分で17位と下位に低迷しているものの、徳島には1勝1分、栃木にも引き分けるなど上位陣相手の健闘も目立ちます。
 Jリーグで2部制が始まった1999年当時のJ2に所属していたクラブ、いわゆる「J2オリジナル10」の中で、唯一サガン鳥栖だけがJ1の味を知らないことは有名な話ですが、そのサガン鳥栖に続いてJ2歴が長いチームがこの水戸ホーリーホック。2部制スタートの翌2年目の2000年からJ2に参入し、今季2011年までJ2に居続けています。ホームタウンである水戸市は茨城県の県庁所在地であり、徳川光圀公ゆかりの地だったり、特産品である納豆などで、都市そのものの知名度は旧浦和市などよりよっぽど上なのですけど、近隣にJリーグ屈指の強豪である鹿島アントラーズの本拠地・鹿嶋市があるせいか、サッカー的にはいまいち地味な存在で、とかくチームの貧乏ネタには事欠かないという、声優で言えば落合祐里香(現長谷優里奈)なチームです。
 それだけに何か人を引きつけるものがあるのか、チームマスコットであるホーリーくんがボロボロになってしまい、その「入院費用」を募ったところ、あっという間に目標額の100万円を達成してしまったというエピソードもありますし、元日本代表FW吉原宏太が「水戸にとっての1億円の評価」という名言とともに年俸500万円で加入。そして今年は同じく元日本代表FW鈴木隆行(日立市出身)が、「アマチュア契約」で加入しました。

 まぁそんな感じのチームですが、今年のみとは札幌にとってはとにかく「絶対に勝ちたい」相手。それは札幌にもいたことがある吉原や岡田佑樹、札幌ユース出身の鶴野太貴の存在ではもちろんなく、今季から就任した柱谷哲二監督の存在。もはや説明する必要もないでしょうが、2002年、札幌が降格した年に
今 から思えばその前年に残留の原動力となった主力選手がほぼ丸ごといなくなってしまった上に、補強戦力が揃いも揃ってアレだったあの状態では、きっとエク トール・クーペル監督でも村西とおる監督でも残留させるのは難しかっただろうなと思います。ましてやS級ライセンスを取ったばかりの新人監督。元日本代表主将という知名度だけで、コーチ経験もなく監督に「させられ」たのは気の毒にも思います。何にせよもう10年近く前のことでもありますし、J1どころかJ2です ら最下位になった2004年や、J1でも実績のあった監督の下で優秀なストライカーがいてすら異次元の弱さだった2008年をはじめとして、ありとあらゆるガッカリシーズンを経験してきた今では、個人的には2002年 なんて「数ある残念な思い出のひとつ」でしかないのですけど、「それはそれとして、なんか知らないけどとにかく嫌い。顔が」というぐうの音も出ない理由も多く、現在でもなお「歴代ワースト監督」として名を挙げられる人物です。
 まぁそれはそれとして前節は上位陣が総コケし離されずに済みダメージは最小限。この第4節でも前日の金曜日に行われた試合で、第2位の徳島ヴォルティスがザスパ草津に敗戦し勝点を伸ばせずにいるため、この試合に勝てばさらに差を詰めることができるだけに、とにかく絶対に勝っておきたい試合です。
 そんな札幌は当然予想されるジオゴさん封じへの対策のため、1.5列目として内村を起用。砂さんをサイドに持ってきて起点を増やします。さらに前節はU-18日本代表の遠征で不在だった櫛引一紀をスタメン起用し、ボランチを組むのは河合と宮澤。GKのイホスンが怪我をしたため、ぎーさんこと高木貴弘がゴールマウスを守ります。ぎーさん、前回出場も水戸戦でしたね。実はまだ見てないんですけど。水戸も「ミスターホーリーホック」GK本間幸司も怪我で欠場で、2年目の小野博信がゴールを守っているのを見ると、ホスンが出れなくてもぎーさんクラスのGKが控えている札幌は贅沢ですね。つってもそのぶんボランチいないんですけど。

 まぁそんなわけで一切試合に触れずにここまで書いたわけですが、前節ジオゴさんを抑えられて何もできなかった反省を生かし、ジオゴさんも真ん中に張るだけでなくサイドに流れたり、真ん中のスペースにうっちーが入ったり、近藤がブルドーザーみたいだったり…はいつもですが、けっこう工夫してきました。前半5分、相手のセットプレイからカウンターで抜け出した砂さんが左サイドをえぐりクロス。そのボールに飛び込んだのは…岡山戦ではペナルティエリアに入ることすらままならなかったのですが、うまくDFの背後を突いてどフリーになったジオゴさん、あまりのフリーっぷりに「来た! 俺来た! エースの俺来た! これで勝つる!」と叫びながら放ったヘディングシュートはドンピシャでゴールに吸い込まれます。そして やはり飛んでいます。やはり羽ばたいています。
 どちらかといわずとも自分でゴリゴリ行かず、周りを生かすタイプのジオゴさんですが、あの辺のゴール前の動きはやっぱりストライカーなんでしょうね。今は周りを生かすほうが多いですが、逆にジオゴさんを生かせるようになればけっこう点も取れる気がします。これまで札幌にいたタイプで近いのは…アンドラジーニャでしょうかね。
 しかし先制したはいいものの、この後がよくありません。ここで畳みかけることができれば札幌も「なんでこのチームがこの順位にいるんだろう」とサポーターが首をひねることもなくなるんでしょうけど、まぁそれができないのが札幌の札幌たるゆえんですね。先制した後も何度かチャンスは迎えるものの決めきれず、試合が進んで行くにつれて全体的なペースとしては水戸に傾きます。それでも水際で阻止し続けてリードのまま前半終了かと思われた前半ロスタイム、ペナルティエリア奥深くに侵入してきたロメロフランクが強引に上げたクロスがDFに当たりゴールイン。不幸と言えば不幸な失点でしたが、仮に当たってなくてもファーに詰めていた選手に押し込まれていたでしょう。いずれにしてもリードで折り返すつもりだった札幌にとっては痛い失点でした。

 しかし後半6分、右サイドからジオゴさんが上げたクロスに飛び込んだ砂さんがシュートを放つと、本人曰く「狙い通りの当たり損ね」たシュートがうまいことGKのタイミングを外しゴールイン。前半同様開始早々に札幌が点を取る展開となりました。そしてその後水戸ペースになるのもやっぱり前半と同じで、札幌もたまに思い出したように反撃はしますが基本的にペースは水戸。どうも中盤のバランスが良くないんですよね。河合も持ち前の対人の強さで「縄張り」に入ってきたよそ者を駆逐するのは早いんですけど、縄張りの外のスペースのケア、要するに他の選手をアゴでこき使うまで手が回っていないというか、要するに「効いてる」感じはあまりしないんですよね。まぁ後半になったらだいたいいつも近藤さんあたりは行ったきり帰ってこないことが多いですし、砂さんもうっちーもさほどスタミナのあるほうではないので、時間が進めば進むほど中盤に広大なスペースが生まれてしまうのが後半の札幌ではあるんですけど。この試合では特に交代で入ってきた古田がまるで空気同然だったこともあって、ボランチ2人への負担は相当なものだったでしょうし、実際宮澤も守備に忙殺されるシーンが多かったですしね。守備陣が身体を張って水際でなんとか止め逃げ切ることに成功しましたが、今日も今日とて打たれたシュートは17本。正直、J2だからなんとかなってる気はしますね。「遠目からあえて打たせている」のはあるにしても、シュートは打たれないに越したことはないと思いますし、実際のところチームの被シュート数がリーグで2番目に多いってのはあまりいい傾向ではないと思うので、このあたりは改善の余地はありそうですね。

2011年9月15日

お2位ちゃんどいて!

2011年Jリーグディビジョン2第27節
コンサドーレ札幌 1-0 栃木SC
得点者:札幌/ジオゴ
     栃木/なし

 遠征祭りが終わり、久方ぶりの厚別でのホームゲーム。ここのところの好調と上位チームの足踏みによって昇格争いに名乗りを上げたコンサドーレは、同じく昇格を争う栃木SCとの対戦を迎えました。栃木は前節終了時点で第2位。首位FC東京と同じ勝点で並び、得失点差6点及ばず2位につけています。前日の試合で首位のFC東京が京都サンガFCに5点差をつけて勝っているため、この試合で栃木が首位に立つためには少なくとも12-0という、ノッてる時の近鉄並みのスコアが必要であり、まぁあまり現実的話ではないですね。
 そして3位の徳島ヴォルティスと4位のジェフユナイテッド千葉が、それぞれギラヴァンツ北九州とサガン鳥栖を相手にともに引き分けに終わり勝点1を上乗せするに留まったたため、「この試合に勝ったほうが2位」というお互いにとって重要な試合になりました。栃木の前節終了時点でのチーム総失点は19失点。18失点の札幌とほぼ変わらない守備力を持っています。ただ得点数は札幌の26得点に対して栃木は31得点と、攻撃力に関しては栃木に分があります。しかし札幌もジオゴさん加入後は5試合で10得点を挙げ、攻撃力に関してはだいぶ上向き。そんなこのところの好成績が影響したのか、それとも噂のオモシロ人間を見に来たのか、厚別公園競技場には10,110人、10進数で言えばなんと22人ものお客さんが詰めかけました。

 札幌はこのところの定番となった4-2-3-1のフォーメーション。前節欠場したイホスンと岩沼俊介が復帰し、DFラインは右から純平、櫛引、ヤマタツ、岩沼。ボランチ2枚に河合と宮澤、両サイドに砂さんと近藤、トップ下にうっちー、そして1トップはご存じジオゴさん。おそらく現時点でベストのメンバーでしょう。対して栃木は中盤の要であるパウリーニョが怪我、新助っ人のサビアも体調不良で遠征に帯同せず、苦しい状況です。サビアで思い出しましたが、道外で「サビオ」って言っても通じませんからね。
 
 さて試合。ベストメンバーではないとはいえ、パウリーニョと崔の2トップは健在で、カウンターを警戒して静かな立ち上がりになるだろうと思っていたのですが、開始早々にサイドでボールを受けた近藤が中に切り込み左足でシュート。様子見なんて俺には合わないぜ、などという感じの近藤に刺激されたか、いつもと違うワイルドさを見せ始めます。そして前半5分、札幌側から見て左サイド、相手ペナルティエリアの少し外で得たフリーキック、岩沼の蹴ったボールはドンピシャにジオゴさんの頭に当たり、今日も早い時間帯に札幌が先制ゴールをゲット。そして今日も羽ばたきます。加入後6試合で3点目。キープもできて点も取れてオモシロ人間でなおかつ羽ばたけるジオゴさん、1人だけJ1に羽ばたいていくことのないようにしてほしいものですね。最悪でも金の卵くらいは産んでもらわないと。
 先制した後も、シーズンの早い段階から熾烈な上位争いを繰り広げてきた栃木を相手につけいる隙を与えない札幌。パウリーニョが不在だったこともあって、栃木自慢の2トップにほとんどボールをたせず。攻撃も引き続き好調で、多くの時間を栃木陣内でプレイするほどの圧倒ぶり。チャンスも多く、ジオゴさんがペナルティエリアの中でシュートを打つと見せかけて切り返してどフリーの近藤にパスをしたのは俺の中で確かに何かが漏れそうになりました。近藤が決めてれば完全に漏れてたんですけどね。栃木も粘り強い守備でしたのでああいうところで点を取れるようにならないといけないルージュマジックですよね。まぁ実際シュートなんてどんなに完璧に捉えても入らないときは入らないし、入るときは当たり損ねでも入るもんですけど。取れるときに取っておかないと苦しくなるもんですからね。
 実際、後半に入って高木和正を1列後ろに下げ、つなぎ役に専念させ、前線には引っかき回し役の河原を入れてきた栃木にすっかりペースを盛り返されてしまいます。前半はシュート6本と、一般的な感覚から言えば決して多いほうではないですけど札幌的にはすっげえ打ったと言える本数を放ち、珍しく二桁シュート狙えるペースだったのですが、後半はほぼ防戦一方。結局後半のシュートはわずか2本、打たれたシュートのほうが多かったといういつもの通りの札幌。まぁ相手のシュートをゴールライン上でクリアした高木純平をはじめ文字通り身体を張る守備陣も「いつもの通り」ではあったんですけどね。コンサドーレ最強のDFと言われているクロス・バー選手の活躍もあり、栃木の反撃を封じ込め、逃げ切りに成功しました。

 しかしまぁ、2位ですか。一時は下位をうろうろするくらいに低迷し、多くのJリーグフリークが「今年も札幌は『なし』」と思った…というかサポーターもそう思っていたし、実際今でも2位ってのが信じられないというのが正直なところなんですけどね。なんか相手が裸足で逃げ出すくらい攻撃が得意なわけでもないし、かといって相手が手も足も出ないくらい守備が堅固なわけでもない、はたまたぐうの音も出ないくらいの組織的なサッカーをやってるわけでもない…まぁそんな完璧なサッカーで完璧なシーズンを過ごさなければいけないかと言われれば別にそういうわけでもないのですけど、要するに今の札幌は「やっぱ上位にいるだけあるよな!」というサッカーをしているとは思えないんですよね。「そふてにっ」の原作者あづち涼先生も首をひねる不思議なチーム・コンサドーレ札幌。

 とはいえ、まだ徳島ヴォルティスとの対戦がまるまる2試合残されていますし、今のJ2で「確実に勝てる相手」なんて存在しませんから、今が最大瞬間風速である可能性も否定できません。その一方で札幌にはまだレモスという秘密兵器が残されており、上積みが期待できるという好材料もあります。もっともその秘密兵器がひみつのまま終わってしまう可能性もないわけではないのですが、いずれにしてもあと少なくとも数試合が鍵となるでしょうか。まぁ内容はともかくここ数年札幌に希薄に見えた「勝負にかける執念」が感じられますので、昇格云々はともかくシーズンの終了の際に「あれ、そういえば札幌ってどこに行ったっけ?」みたいなだっさい結果にはならないと思いますけどね。とりあえず、オフにディフェンスの主力がほぼ軒並み引っこ抜かれ、キャンプで怪我人続出でチームを固められないまま開幕、案の定開幕ダッシュに失敗し、助っ人も全員ハズレ、若手の伸び悩みと、いつものシーズンなら今頃はとっくに円環の理に導かれていてもおかしくない状態だったのに、よく立て直したもんだと思います。ちなみに、DF岡山一成が札幌に加入しベンチに入った第20節愛媛FC戦(7月9日)以降の札幌の成績は、10試合で8勝2敗、17得点(8失点)です。それまで14試合やって10点とるのがやっとだったチームとは思えません。岡山自身は2試合しか出ていないんですけどね。「昇格請負人」というか「昇格呼込人」と言ったほうがふさわしい選手だと思います。ほんとに馬飼っちゃえ。

2011年9月25日

それでも首位は首位

2011年Jリーグディビジョン2第5節
コンサドーレ札幌 4-2 東京ヴェルディ
得点者:札幌/古田、近藤、岡本x2
     ヴェルディ/河野、小林

 前節、なんだかよくわからないまま3-0というスコアで不思議な勝利を上げた札幌は、東京ヴェルディとのホームゲームとなります。東日本大震災の影響で順延となった第5節の代替日程で、この日に行われるのはこの札幌対ヴェルディ戦のみ。首位FC東京に勝点2差まで迫っているコンサドーレ札幌がこの試合に勝つことができれば、首位に立つことができます。もちろん他チームより一試合し消化が多い上での暫定ですが、それでも東京をはじめとした上位チームにプレッシャーをかけることができるだけに、大きな意味を持つことになるに違いありません。たぶん。
 そして自分は17日から札幌に帰省しておりました。仕事の都合で21日には戻らねばならず、本来なば試合は見られなかったのですが、この日は台風15号の影響で首都圏の交通網が大混乱となった日。当然空の便が無事であるはずもなく、当日の朝には早々とスポンサーである日本航空様から「お゛め゛ぇ゛の゛飛゛行゛機゛ね゛ぇ゛がら゛あ゛!」というありがたいメールが来ており(一部捏造)、この日に帰ることをあきらめざるを得ない状況に。まぁ自然現象には逆らえませんので、それならそれでコンサドーレ見に行けるじゃん、ということで家族を引き連れて札幌ドームへ。

 さて、相手の東京ヴェルディは、昨オフ清水エスパルスに移籍した高木三兄弟の長男・俊幸の穴は大きかったのか、(順延ありとはいえ)開幕3連敗でスタートするなど勝ちきれない試合が続きました。さら次男・善朗がオランダリーグ1部のユトレヒトに移籍し、「ヴェルディはもう終わったか」と見られていましたが、そこから5連勝を記録するなどで7位にまで順位を上げています。その原動力はなんといっても爆発的な攻撃力で、第28節終了時点でチームの総得点は51得点。首位FC東京の43得点を凌駕する堂々のトップです。前節は横浜FCを相手に7得点というアホみたいなスコアで勝っており、リーグ2位の守備力を誇…ってんだかてないんだかわかりませんがとにかくリーグで2番目に失点数が少ない札幌でもロースコアに持ち込むのは難しそう。
 となればいかに相手より多く点を取るかですが、札幌は攻撃の中心であるジオゴの怪我が癒えず、ギラヴァンツ北九州戦に引き続き欠場。そればかりか、攻撃の起点になることが割と多い宮澤裕樹も怪我で欠場。北九州戦同様近藤・内村の2トップにサイドハーフが古田と砂川、ボランチ岩沼と河合、4バックは右から高木、山下、櫛引、日高という布陣です。ジオゴと宮澤がいないとなると点をたくさん取るのはちょっと難しそうなメンバーだと思っていたのですが、開始2分にはハーフウェイライン手前当たりで近藤がボールを奪って内村につなぎ、折り返したボールを古田が冷静に決めて早速札幌が先制します。これでずいぶん楽に試合を進められるな、と思ったのも束の間…というか実際はそんなことを思う余裕もなく、そのわずか1分後にはDFラインの裏に抜け出た河野に決められ、あっという間に同点にされてしまいました。
 その後は楽に進められるどころかほぼ一方的なヴェルディペース。札幌も必死にプレスをかけるのですが、ヴェルディの攻撃陣は素早いボール回しでプレスのポイントを絞らせず、ショートパスとドリブルであっという間に局面の数的優位を作り出してしまいます。これは確かに1試合4点も5点も取れる攻撃陣ですよ。札幌は押し込まれて引くに引かざるを得ず、カウンターを狙おうにも深い位置でしかボーーるを取れないため、ボールを奪っても前線に運ぶまでには至らない場面がほとんど。何度も決定的なチャンスを作られますが、ギリギリのところで守って前半は1-1のまま終了。

 やられ放題だった前半の反省を踏まえ、後半ノブリンは「何をやっても攻められるなら攻めさせればええ」とばかりに、ボランチの河合を真ん中に置く3バックに変更。サイドのスペースをある程度捨てても中央突破を食い止める狙いでしょうか。3人で守れればそのぶん中盤で増えたメンバーでボールを奪うチャンスも増えるかもしれません。ペース的には相変わらずヴェルディに分があるものの、札幌も前半よりは落ち着いて守れているようです。
 多少なりとも余裕ができればプレイの成功率も上がるもので、後半15分、右サイドからの日高のロングボールに近藤が抜け出し、GKが出かけたところをうまく左足でループシュート。ボールは美しい軌跡を描きヴェルディゴールに吸い込まれ、札幌が再び勝ち越しに成功します。
 勝ち越してしまえば、今の札幌は腹をくくってしまえばどれだけ攻められても守り切れてしまったりします。つっても以前も書いたとおり、札幌は失点数はリーグで2番目に少ないのに被シュート数はリーグで2番目に多く、たいていの試合で自チームより相手のシュート数が上回っていますので、実際のところイメージで表せば

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 こんな感じなことが多く、そんなに楽な試合運びではないのですけどね。それでもデータの上では1試合で1点取られるか取られないか、というのが札幌の守備力。しかしそれもリーグ最強の攻撃力を持つ東京ヴェルディには通用しなかったようで、後半32分、見事なパス回しから小林に綺麗なシュートを決められ同点に追いつかれてしまいました。
 完全に守る気だったゴールをこじ開けられたことでちょっとイヤな感じの空気が流れましたが、これ以降、ヴェルディも中2日での試合の影響かさすがに疲れが出てきたようで、札幌がカウンターを仕掛ける場面も増えてきました。そして後半43分、イホスンからのロングフィードを交代出場の上原が競り合います。そのこぼれたボールを待ち構えていたのが、魅惑の助っ人ゴール・ポスト選手。ポスト選手の完璧なポストプレイにより落とされたボールを、これまた交代出場の岡本が押し込んで札幌が三度勝ち越し。そしてそのわずか1分後に高い位置で相手からボールを奪った河合からのパスを受けた岡本が再びゴール右隅に決めて突き放しました。
 あれだけボールを支配し、敵ながらあっぱれと思わせるほどの見事なボール回しで堅固といわれることもあるらしい札幌の守備陣を苦労してやっとこ2回こじ開けながら、ロングボール1発とか強引に奪ってカウンターとかシンプルにもほどがある攻撃だけで4点も取られたヴェルディに多少同情しつつも、やっぱり負けるのはイヤなのでアディショナルタイムのホスン劇場に惜しみない拍手を送って札幌の勝ちを見届けることができました。

 さて、今季のホームゲーム観戦は5月のファジアーノ岡山戦に続いて2度目。10年以上もこういうサポーターサイトやっててお恥ずかしい話ですが、実は年に2度ホームゲーム行くのは初めてだったりします(道外開催のホームゲームは除く)。以前も書いたとおり自分のホームゲーム観戦時の勝率は意外に高いのですけど、前回ドームでの試合を見たのは2007年で、ご存じJ2優勝した年であるにもかかわらずその時はベガルタ仙台にさっくり負けてますからイヤな予感はしてたんですけど、勝てて良かったです。

2011年9月30日

噛み合った

2011年Jリーグディビジョン2第28節
ギラヴァンツ北九州 0-3 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/内村x2、近藤
     北九州/なし

 順番がずれてしまったのですがどうせリーグの日程もずれてるのでいいことにします。

 栃木SCとの上位対決を制した札幌は、今節は九州遠征。7位につけるギラヴァンツ北九州とのアウェイゲームとなります。Jリーグ参入2年目ながら、三浦泰年監督のもとここまで10勝7敗7分という好成績を挙げ、勝点37は3位徳島ヴォルティスの42と勝点差で5と、充分に昇格を狙える位置に付けています。札幌との差もわずかに6ですから、ここで勝てば大きくその差を詰めることができますが、逆に負けてしまった場合、得失点差がマイナスであることを考えると昇格という意味ではかなり厳しい立場に立たされることになるだけに、北九州にとっては重要な試合です。
 そして札幌もこの試合に負けると、他のカードの結果次第では6位にまで順位を落とす可能性があります。こういうのは追うほうが強いものではありますが、この試合の後には8位ながらリーグトップの得点力を誇る東京ヴェルディ、3位徳島ヴォルティスの連戦が待ち構えているため、この試合を落としてしまったりしたら、きっと何者にもなれないお前たちで終わってしまう可能性が高くなりますから、アウェイとはいえども勝点3をゲットして札幌に帰りたいところ。
 しかし札幌は攻撃の要であるFWジオゴさんが肉離れで欠場。ジオゴさんのポストプレイは他の選手で代わりが効くわけではありませんから、このオモシロ人間がいるかいないかでは戦い方を大きく変える必要があります。そんなわけで札幌は通常使用している1トップを捨てて近藤祐介と内村圭宏の2トップとし、中盤は攻撃的MFとして右に古田寛幸、左に砂川誠、ダブルボランチに河合竜二と宮澤裕樹、サイドバックは右から高木純平、山下達也、櫛引一紀、岩沼俊介。オーソドックスな4-4-2スタイルですね。ゴールキーパーはもちろん\イッホス~ン/です。アッカリーンと違ってこちらは存在感抜群の選手です。

 というわけで試合なのですが、開始早々に北九州のFW池元にシュートを打たれるなど、北九州ペースで試合が進みます。9月に入って北海道は一気に寒くなってきたものの、九州地方は相変わらず厳しい残暑に見舞われており、この試合までの平均気温は札幌が約25.1度に対して福岡の平均は約31.4度と、実に6度以上の差があります。日によっては10度以上の下がる日も珍しくなく、その寒暖の差が影響したのでしょうか。それともジオゴがいないことでボールの落ち着きどころがないからなのでしょうか。まぁそうじゃなくてもいつもこんな感じだったような気もしますが、とにかく札幌は我慢のサッカーを強いられます。とはいえ単純な攻撃なら札幌の守備陣はそうそう破られません。札幌のゴールを破るにはぐうの音も出ないほどすっげえミドルシュートか、山下や櫛引も追いつけないほどのスピードによる突破か、それともパンチラなどのお色気作戦で集中を削ぐかくらいで、いずれにしても何でもない攻撃でも危ないところで狙い澄ましたようにチョンボして涼しい顔してピンチを招いていた昨季までとはえらい違いです。
 そして、そういう流れでもぽこんと点を取ってしまうのが今の札幌。ホントに何があったんだと思うくらいぽこんと点を取ってしまうのです。この試合も前半26分、右サイドからの高木のクロスを相手DFがクリアしきれずにこぼれたボールをうっちーが素早い反応で蹴り込み先制。さらにその7分後の33分、やはり高木からのパスを砂さんがダイレクトに前線に出した浮き球のパスが相手DFラインの裏に抜け出したうっちーにドンピシャに合い、これをうっちーがニアに豪快に決めます。ウイイレでも滅多に出ないような見事な攻撃で追加点をゲットしました。そもそもうっちーはもともとこういうの得意でしたっけね。ジオゴさん経由で、または直接相手の守備の裏に出す得点パターンが確立できれば、向かうところ敵なしですよね。西岡チャンピオンズリーグも余裕で制覇できるレベルです。

 連戦となる札幌にとって、2点のリードというのは望外にありがたいものだったでしょう。無理に攻め出て行く必要もなくなった札幌は、あとは余裕をもって北九州の攻撃を受け止め、隙あらばカウンターをお見舞いすればいいだけの話。そして注文通りに後半14分、相手のクリアミスを拾った古田のクロスを近藤がニアで合わせてトドメの一撃をお見舞い。角度のないところから押し込んだ近藤も見事でしたが、あらかじめ相手のヘディングが後ろに反れることを予知していたかのような古田も見事でした。それにしても相変わらず優也はニアに弱いですね。
 今季の札幌はご存じの通り失点がとても少ないわけですが、さらにデータ上では「試合時間が深まれば深まるほど失点が少なくなっていく」傾向があり、つまりは残り30分の時点で3点リードは事実上勝利確定です。その上「こっちが攻めていたはずなのにいつのまにか点を取られている」わけですから、相手チームはやってらんないですよね。そしてその通り札幌は北九州の反撃を凌ぎ、3-0の快勝を飾りました。

 相変わらずものすごい勢いでゴールを祝福しに来る岡山さんはともかく、ジオゴさんがいなかったため特筆するようなオモシロプレイとかオモシロサッカーとかはなかったんですけど、あれだけ点が取れないといわれていた札幌が、ジオゴさんがいなくても3点取れたのは大きいですね。とはいえ、まるで別チームのように攻められるようになったのではなく、少ないチャンスでも確実に決めることが増えたという感じなのですけどね。「そんな強く見えないのになぜか勝ってる」のは2007年もそうだったですけど、それでもあの年はダヴィという点取り屋がいましたし、セットプレイという唯一無二のストロングポイントがありましたからね。まぁ当時とはチーム数も違いますし、そもそも監督もやってるサッカーも違うので比較することにあまり大した意味はないのですけど、共通点と言えば「失点が少ない」ってことでしょうかね。で、さらに共通点として「失点は少ないけどシュートは多く打たれている」ことですね。2007年も失点はリーグで一番少なかったですが、被シュート数の多さはリーグで4番目の564本で、1試合平均にすると11.8本でした。そして今年は何度も書いてる気がしますが第29節徳島ヴォルティス戦終了時点でリーグ2番目の336本。1試合平均で12.4本のシュートを打たれています。リーグ最少失点のFC東京が被シュート数わずか213本、1試合平均だと7.9本しか打たれていないことを考えると、やっぱ不思議ですね。もっとも、東京の被シュート数が少ない一番の理由は「ボールポセッションが高くて結果的に攻められることが少ない」がゆえでもあるんですけど。攻撃は最大の防御とは良く言ったものです。
 2007年と今年の違いと言えば、ファウルの数でしょうかね。お気づきの方も多いと思いますけど、今年はファウルが少ないんですよ。392はカターレ富山と並んでリーグ3位タイの少なさ。そして警告数は40でリーグで5番目に少ないです。2007年はファウル数910でリーグで2番目に多く、警告数109は堂々のリーグトップの多さでした。まぁ警告については1人で何枚も稼ぐ気性難の選手がいたりするのが原因だったりもするのですが、こういったデータを総合すると、今季の札幌は「シュートまで持って行かれちゃっても当たらなければどうということはないのであえてファウルで止めたりしないよ作戦」ってことなんでしょうか。見ててやっぱりハラハラするんですけど、まぁ守備についてはけっこうみんな自信を持ってきたみたいですし、それがいい方向に向かっているみたいなんで、このまま行って欲しいものですね。

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