J1チーム「僕たちのリーグは、代表選手を海外リーグに変換するテクノロジーを発明した。ところがあいにく、当の僕らが育成というものを持ち合わせていなかった。そこでこのJ2の様々なチームを調査し、君たちコンサドーレを見出したんだ。コンサドーレの切羽詰まり気味とそこそこの実力を鑑みれば、1シーズン選手が試合に出ることで得られる経験値は、高卒選手が加入し成長するまでに要する時間と労力を凌駕する。君たちのチームは自家栽培の手間を省く育成手段足りうるんだよ。とりわけ最も効率が良いのは、昇格争いまっただ中の緊張感だ。立派な戦力になった君たちの選手は自信を得て、より上のレベルでプレイする欲求へと変わるその瞬間に、膨大な移籍欲を発生させる。それを回収するのが僕たちJ1チームの役割だ。」
札幌「私たち、消耗品なの? あなたたちのために…黙って育てろって言うの…?」
J1チーム「このリーグにどれだけのチームがひしめきあい、1年ごとにどれだけの選手が退団しているのか分かるかい? 君たちコンサドーレだっていずれは予算的にこのJ2を離れて僕たちの仲間入りを果たすだろう。その時になって枯れ果てたリーグを引き渡されても困るよね? 長い目で見ればこれは君たちにとっても得になる取引のはずだよ。」
札幌「バカ言わないで。そんなわけのわからない理由で山下が移籍して、征也くんがあんな出て行き方して…。あんまりだよ…ひど過ぎるよ」
J1チーム「僕たちはあくまで君たちの合意を前提に契約しているんだよ。それだけでも十分に良心的なはずなんだが…」
札幌「みんな騙されてただけじゃない!!」
J1チーム「騙すと言う行為自体僕たちには理解出来ない。認識の相違から生じた移籍を後悔する時、何故かサポーターは相手チームを憎悪するんだよね。」
札幌「あなたの言ってる事付いていけない。全然納得出来ない…」
J1チーム「君たちコンサドーレの価値基準こそ僕らは理解に苦しむなぁ。今現在で二十数人。しかも1年に数人ずつ引き抜かれ続けている君たちが、どうして1人の選手の移籍にそこまで大騒ぎするんだい?」
札幌「そんな風に思っているなら、やっぱりあなた私たちの敵なんだね…」
J1チーム「これでも弁解に来たつもりだったんだよ? 君たちの犠牲が、どれだけ素晴らしいものをもたらすか、理解してもらいたかったんだが、どうやら無理みたいだね」
札幌「当たり前でしょ…」
というわけで、各Jクラブの仕事納めも目前に迫る中、駆け込みで選手の移籍に関わるニュースが立て続けに正式リリースされました。まとめて発表されたのでとりあえず分けて触れていこうかと思いますが、ひとまずDF山下達也のセレッソ大阪への完全移籍から。
山下は今季セレッソ大阪から完全移籍してきて、昨季までのレギュラーが軒並み抜け、助っ人としてやってきたチアゴも激太りで稼働不能という中で、不動のセンターバックとして38試合中37試合に出場。その欠場した1試合も不整脈による精密検査によるものですから、ほぼフル稼働で昇格に貢献しました。さらに特筆すべきは、3,330分に出場してリーグ2位の失点数を支えながらも、受けたイエローカードはわずかに2枚ということ。センターバックという「いざとなればカードも覚悟のプレイ」が求められるポジションとしては驚異的な少なさです。ちなみにうちと違ってあんまり攻め込まれることのなかったFC東京のレギュラーセンターバックである今野泰幸と森重真人でも、それぞれ33試合、37試合出場でともにカード4枚もらってますからね。大したもんです。
1対1の対応にはまだ改善の余地はあるものの、速さと高さと強さを兼ね備え守備範囲も広い上にまだ若くて伸びしろもある選手だけに、「ん~札幌さんまたいい選手掘り出してきたね? ちょっと見せてご覧? 大丈夫ちょっと借りるだけだから」とアルビレックス新潟あたりが石川直樹で満足できずに言いだしてきそうだと思ってはいたんですけど、まさか古巣のセレッソが来るとは思ってませんでしたねぇ。
セレッソは伝統的に攻撃偏重というか、前線にまばゆいばかりのタレントを擁しながらも時にはJ2降格するくらい後ろのほうが弱いチームですから、そりゃがっつり守れる系の選手はそりゃ喉から触手が出るほど欲しいのは間違いないんでしょうけど、移籍した選手に1年後に再オファーっていうのは考えの外でした。その辺、出ていったら帰ってこないモンだというのが無意識に根底にある自分がけっこう残念だったりします。
もちろんどこが誰にオファーを出そうがルール的にはまったく問題はないわけで、さすが経営母体が間接的に原辰徳監督の甥を強行指名した某プロ野球チームと同じだけあるなぁと思ったりもしましたが、冷静に考えてみたら去年山下もセレッソから0円提示を受けて札幌に来たわけではなかったはずなので、もともとセレッソがいらないと言ったわけではないんですよね。むしろセレッソとしても山下は必要な人材だったのに、契約の合間を突いて札幌がうまいことかすめ取ったのかもしれません。山下は札幌と複数年契約を結んでいたようですが、セレッソにとって山下は、お金を払っても買い戻したい選手だったということでしょう。
その辺の正確なところは当事者じゃないのでわかりませんけど、少なくとも移籍というのはまず「選手の意志」が最重要なわけで、彼が今季札幌に来たのも、彼が求めていたもの(たぶん出場機会)を札幌が提供することができたからだと思います。そして今回の移籍では、彼が今求めているものを札幌は提供できず、セレッソが提供できたから、ということなんでしょうね。それが彼のコメントの通りにチーム(セレッソ)への愛着なのか、それとも別の理由なのかまでは知る由もありませんし、別に知りたいとも思いませんけど、これまでの例から言っても「関西人は関西に帰る」のは基本なんでしょうね。
そうは言ってもやっぱりモヤモヤしたものが残りますけど、うだうだ言っても始まりませんので、ここは山下は円環の理に導かれたってことにしておけばいいですね。
で、まぁ引き抜かれた引き抜かれた言ってますけどじゃあ札幌が他チームの主力を引き抜かないのかといえばそういうわけでもなくて、ついでに言えばJ1チームが引き抜かれないかと言えばそういうこともなく、せっかく育てた選手を「海外挑戦」などといううさんくさい美辞麗句で固められて二束三文で手放さざるを得なかったりするわけで、まさに弱い者たちが夕暮れさらに弱いものを叩く、というなんともトレイントレインな状態が今の日本サッカーではあるんですが、大分トリニータからFW前田俊介選手の移籍加入が発表されています。
サンフレッチェ広島ユースに所属していた2004年にトップチームで試合に出て、トップチームへの昇格後も年代別代表で中心となっていましたが、類い希なる才能を持ちながらサッカーに取り組む姿勢に難があり、期待ほどの実績を残せないまま2007年途中から大分トリニータに移籍。大分でもあまりパッとしないシーズンが続きましたが、今季ようやく8得点という実績を挙げ、復活の兆しが出てきたところで札幌がさくっと引き抜いたわけです。
真面目にサッカーに向き合えばこんなところにいるような選手ではないはずなんですけど、だからこそ札幌でも獲れたわけですので、ノブリンの再生手腕に期待と言うことでしょうか。
そしてもう1人、サンフレッチェ広島のMF高柳一誠選手の完全移籍加入も発表されています。こちらも前田と同じく広島ユース出身、というか同期ですね。前田とともにユース時代から活躍し、トップチームでも主力として活躍してきましたが、昨年膝に大怪我をしてしまい、今季は出場機会を得られないまま退団となっていました。正確なキックを持ち、複数ポジションをこなせる選手です。
最後に鹿島アントラーズのGK杉山哲選手も完全移籍での加入。来季はこれでGK5人となりますが、うち高原寿康が再手術で来季もほぼ絶望、曵地裕哉も膝の怪我で長期離脱となっており、実質イホスンと高木貴弘の2人体制。そのぎーさんもケガがちで、ホスンも来年は韓国代表に選出される可能性がありますから、GK補強は必須とされてきました。得意技である「必殺学徒動員」にも限度がありますし、いざという時にちゃんと試合に出ることができる選手、ということで今季限りで鹿島を退団した杉山選手に白羽の矢が立ったようです。
杉山選手は福岡大から2004年に鹿島に加入して以来、鹿島一筋でプレイ。2005年にナビスコカップに1試合出たのみ。大学時代もユニバーシアード代表では高原の控えだったようですが、ゴールキーパーを見る目が高い鹿島に誘われ、そこでずっとやってきたのですから、実力的にも決して見劣りするものではないと思います。どうせなら正GKの座を奪うくらいの勢いでやってもらいたいですね。
コメント (4)
>さすが経営母体が間接的に原辰徳監督の甥を強行指名した某プロ野球チームと同じだけあるなぁと思ったりもしましたが
この1行だけが残念です(兼任サポーターより)。
投稿者: SN | 2011年12月28日 10:43
日時: 2011年12月28日 10:43
一応、褒めてるつもりなんですけどねぇ
投稿者: choo
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2011年12月28日 10:56
日時: 2011年12月28日 10:56
山下の事はグチグチ言ってるのに前田についてはノブリンに期待ってどういうこっちゃ
投稿者: 匿名 | 2011年12月28日 12:39
日時: 2011年12月28日 12:39
>さすが経営母体が間接的に原辰徳監督の甥を強行指名した某プロ野球チームと同じだけあるなぁと思ったりもしましたが
後からそう考えると不思議と納得。今度は山下以上のセンターバックを補強してくれればいいだけです。(原辰徳監督の甥を強行指名した某プロ野球チームにも付けたい注文はありますが・・)
投稿者: 大麻の風の旅人 | 2011年12月29日 01:32
日時: 2011年12月29日 01:32