2012年ヤマザキナビスコカップ グループB第4節
大宮アルディージャ 1-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/マエシュン
大宮/金英權
ともすればうっかりその存在を忘れそうになってしまったり、ホームアンドアウェー2回戦で行うモンだと思ってたら7チーム1回戦単発ということをつい最近知って、レギュレーションすらよくわかってないほどナビスコカップという大会に縁遠いのは、間違いなくJ2暮らしが長かったせいだと思います。前の週まで試合があることを忘れていましたこの試合、大宮アルディージャ戦です。
ACL出場チームの4チームを除いた14チームを7チームずつの2グループに分け、それぞれの上位2チームが決勝トーナメントに進めるルールらしいのですが、現在のところ暫定ながら1位は勝点9の鹿島アントラーズで、2位と3位に清水エスパルスとアルビレックス新潟が勝点6でつけています。コンサドーレ札幌は勝点3の4位。まだ望みのある順位です。大宮はその下の5位。勝点は1ですが、とはいえまだ消化試合が少なく2試合しかしていないため、ここで勝てばまだ望みはあります。「残留職人」と言われている大宮だけに、ナビスコカップにはあまり力を入れていないものと思われますが、それでも東慶悟をこの試合で入れてきたあたり、「イヤ決してナビスコカップも軽視なんてしてませんよ?」というメッセージと思われます。
一方、この試合の3日後に鹿島とのリーグ戦(アウェイ)を控えている札幌は、それまで札幌に戻らず調整することになっています。そのため普段であれば遠征に参加するのはスターティングメンバー及びベンチメンバー、あとはあってもアクシデントのための予備メンバーくらいですが、今回の遠征ではメンバー全員が参加していますので、スタメン選びはよりどりみどり。といっても怪我人ばかりですんで、例の「ベストメンバーなんちゃら」も関係なく、「動ける人みんな連れてきても普通の遠征と変わりません」状態で、せいぜいベンチとスタメンが入れ変わる程度。GKはイ・ホスン、岩沼まで怪我してしまいいよいよもってやりくり以前の問題となったDFラインは、岩沼の穴埋めとして日高を左に持ってきて、センターバックのジェイドノースを右サイドバックに回す緊急事態。センターバックは奈良・櫛引コンビで、ボランチには前貴之と荒野拓馬のユースコンビ、ワントップは大島秀夫に、トップ下内村圭宏、左右に榊翔太と砂川誠というメンバー。二十歳以下とアラサーばっかだな。
そんなわけで怪我をしている小山内貴哉以外、ユース昇格組を全員ぶち込んできた札幌に対し、大宮は前線はほぼ主力メンバー。当然試合の流れは大宮…になるかと思いきや、当初ペースを握ったのは札幌。ジェイドノースは代表ではサイドバックをやることもありますが、それにしてもどうしたんだというくらいのあがりっぱ。そういえばセンターバックでもたまにボール持って上がっていくこともありましたから、案外に攻撃好きなのか、右サイドからけっこういいクロスを上げます。おかげで荒野がカバーに追われっぱなしでしたけど。
しかしまぁ勢いだけでガーッといけるのも最初のうちだけってのはこれまでもたくさん見てきたわけですが、案の定と言いますか、15分を過ぎたあたりから大宮に徐々に押し返されるようになります。リーグ戦の時もやられたカルリーニョスを捕まえきれず、ピンチを招きます。っていうかこの間のリーグ戦でも思いましたけど、カルリーニョスってマジでいい選手ですね。顔は痩せたダヴィのようにも見えますし、二日酔いのロナウジーニョのようにも見えますし、札幌のコールリーダーのようにも見えますが、プレイスタイルは「球離れのいいクライトン」といった感じでしょうか。とにかく細身の割に身体は強いし、キックはスピードも精度もあるし、運動量もあるし、二日酔いのロナウジーニョみたいにも見えます。
札幌も急造ラインだけに連携部分で細かいミスが出たりしました、何とかゴールを許さず前半は0-0で終了。
メンバー交代なしで臨んだ後半、しかし東京戦でもそうでしたが、どうにもここ最近は前後半の「入り方」に問題があるような感じです。後半8分、中途半端なプレイが続いて与えたコーナーキックから、金英權に頭で決められて先制を許してしまいました。
さぁ今日も今日とて先制されてしまった札幌。少し前までは「先制したのに逆転負け」という感じでしたけど、気がつけば先手をとられることが当たり前になっちゃいましたよね。もちろん相手との力関係もありますし、どちらも勝つために試合やってるんですから展開次第の部分もあるとは思うのですけど、とりわけうまくいっていない人というのは、どれだけ仕切り直しをしようとも、うまくいかなくなったら途端に「ああ、やっぱ今日もダメか」なんてマイナス思考に入っちゃうことが多いものですからね。「今日こそは」なんて意気込んで合コンに参加したのに、気がつけば端っこのほうで1人で飲んでました、みたいなことが繰り返されると、「やっぱりオレはダメなんだ」とビールがなぜかしょっぱくなったりするものですからね。やめろ! やめてくれ!
今の札幌もまぁ似たような状態ではあるのですが、それでも札幌にとってまだ幸いだったのは、普段のレギュラークラスがベンチにいたことでしょうか。まずは後半22分、中盤の運動量のテコ入れのため、疲れの見えた榊に変えて芳賀を投入。守備に追われていた荒野を前に持ってきます。25分には「ラッセル車」近藤を投入、さらに30分にマエシュンを投入してきました。相手が疲れてきたところでの投入は効果的で、ここから札幌は息を吹き返し始めます。
しかしそれでもゴールネットを揺らすことができずに残り時間も徐々に減ってきて焦りが募り始めた後半終了間際の43分、クリアボールからなぜか逃げていった大宮選手を後目に近藤が頭で繋いだボールを砂さんがマエシュンにパス、ペナルティエリアの中でこのボールを巧みにコントロールしたマエシュンが右足で放ったシュートが大宮ゴールに突き刺さり、ついに札幌が同点に追いつきました。
起死回生の同点ゴールを得た札幌は、気持ち的にもグッと前向きになったのでしょう。しかし、それが悲劇を生むことになるとはこの時はまだ思っていませんでした。4分のアディショナルタイムも最後のプレイになるだろう大宮のコーナーキックをキャッチしたホスンは、主審が笛を吹く前にすぐさま前線にパントしたのですが…。この時足首を負傷してしまいます。榊のように「アキレス腱かと思ったら肉離れでした」という不幸中の幸いを願っていたのですが…後日の診断結果は、無情にもアキレス腱断裂で全治8~10ヶ月という重傷でした。スポーツ選手に怪我はつきものですけど、カップ戦の勝点1と引換にするには大きすぎる怪我ですし、なんかこう、やりきれないですよね。
もっとも、怪我の連鎖はこれだけにとどまらなかったわけですが…(続く)