2012年Jユースカップ決勝戦
ガンバ大阪ユース 1-5 コンサドーレ札幌U-18
得点者:札幌/中原彰吾 x 3、下田康太、國分将
ガンバ/出岡大輝
電光石火のJ2降格とぶっちぎりのJ1最下位のあおりを受けて強化費も激減、主力選手も大量放出を余儀なくされた上に、天皇杯もとっくのとうに敗退済で過去類を見ないほどのがっかりなオフシーズンとなっていたコンサドーレ札幌ですが、いいことなんてなかったシーズンの終わりに、どでかいクリスマスプレゼントが用意されていました。12月24日に行われたJユースカップ決勝で、コンサドーレ札幌U-18が、ガンバ大阪ユースを5-1で破り、初優勝を果たしました。全国大会での優勝は、2001年に全日本ユースフットサル選手権大会でコンサドーレ札幌ユースU-15が経験していますが、フルコートのサッカーではチーム史上初の快挙となります。
これまで札幌ユースは何度か、日本の頂点に「あと1歩」まで迫りました。「あんにゃろ」こと新居辰基(現サガン鳥栖や鈴木智樹(現・S木T樹さん)を擁したU-18が、2001年のアディダスカップU-18で札幌として初めて決勝まで進出し、FC東京に敗れ準優勝(この時の東京に梶山陽平や馬場憂太らがいた)。翌2002年には西大伍(現鹿島アントラーズ)やハーフナーマイク(現フィテッセ:オランダ)を擁したU-15が高円宮杯(U-15)で決勝進出し、鹿島アントラーズジュニアユースに敗れ準優勝、翌2003年も同じ大会で決勝進出し、ヴェルディジュニアユースにVゴールで敗れて涙を呑んでいます。2005年には西大伍と藤田征也(現アルビレックス新潟)を中心としたU-18チームが高円宮杯(U-18)で決勝に進んだものの、ここでもヴェルディユースに大敗を喫し準優勝。2009年にも高円宮杯(U-15)で決勝進出を果たしましたが、岩波拓也を擁するヴィッセル神戸ジュニアユースに阻まれ優勝を果たせず。そして昨年から始まったプレミアリーグU-18ではEAST王者に輝いたものの、日本一を決めるチャンピオンシップでWEST王者サンフレッチェ広島ユースの前に力尽き、頂点の座を逃しています。この他にも何かあったかもしれませんが、ここに挙げただけで少なくとも6回、決勝の壁にはじき返されてきました。
そして7回目の全国挑戦にしてようやくその壁を突破したわけですが…。勝つときはこういうもんなんだなぁと思えるくらいの圧勝。しかも、上記の通り何度も決勝にまで駒を進めている高円宮杯ではなく、これまでは2011年のベスト8が最高成績、グループリーグ敗退や決勝トーナメント1回戦負けが多く、どちらかといわなくても相性が悪かったJユースカップでの優勝でした。
準決勝で「宿敵」サンフレッチェ広島ユースと対戦し、延長戦にまでもつれ込みながらも、その延長戦だけで5得点を奪い大勝したコンサドーレ札幌U-18、その勢いそのままに、過去4度という最多優勝記録を誇るガンバユースを開始から圧倒。過去見てきたユースの決勝戦では、テクニックはともかくフィジカル面で相手との差を感じることが多かったのですが、この試合は堂々たる戦いっぷり。フィジカルコンタクトで負けるシーンはほとんど見られません。相手のボールホルダーに1人目が当たってカバーの2人目が奪うという連携で相手にまったく攻撃の形を作らせず。攻撃では狭いところでもボールを回せる技術がある上に、きちんと味方にフォローが来てるので囲まれてもそうそう簡単にボールを失わない上に、囲みを突破したらすぐさま手薄な逆サイドに展開。ああ、これこれ。これこそが人もボールも動くサッカーですよ。トップチームでも今年よく見られた光景ですよね。逆の立場で。
そんな感じで相手にまったくサッカーをさせない展開だったのですが、しかし肝心のゴールが入りません。惜しいチャンスはあるものの、最後の詰めが甘く得点には至らず。ああ、これちょっとまずい流れだなぁと思っていた矢先の前半31分、案の定セットプレイからのゴール前の混戦で、ガンバのFW出岡大輝くんに左足でミドルシュートを決められ失点。初めてのシュートで先制を許してしまいます。
とりあえず内容的には悲観する状況でもないのですが、流れとしてはちょっとイヤな感じです。札幌はまだFW下田康太くんを切り札としてベンチに残しているフリーザ様状態だったとは言え、
サッカーには圧倒的に攻めていたのに決められずにいるうちに失点し、そのままズルズルと流れを渡してしまうことがままありますからね。実際、前半40分くらいのコーナーキックからの波状攻撃で、入ってもおかしくないシュートを2本立て続けに、GKじゃなくフィールドプレイヤーにはじかれたときは、正直言ってマズいかもと思いましたね。そのはじかれたボールがどフリーになってたMF堀米悠斗くんの元に渡っても、入るイメージが沸かなかったですもの。ところが、その堀米くんがあまりにもフリーになっていたことに焦ったのか、ガンバDF内田くんが猛烈なスライディングタックルを敢行。スライディング自体はボールに行っているように見えましたが、足の裏を見せた危険なタックルと判断したか、吉田哲朗主審はこのプレイをファウルと宣告。加えて、このプレイで内田くんが一発レッドとなり退場。札幌側から見ても厳しい判定に思えましたが…ともあれこのPKをMF中原彰吾くんがきっちり確実に決めて(それはそれは見事な落ち着きっぷり)、同点に追いつきました。
前半で追いついた上に数的優位を得た札幌は、後半頭からリーサルウェポン下田くんを投入。ただでさえ人数が多いのに、キープ力のある下田くんが入ったことで、ますます札幌のペースに。逆転も時間の問題だろうと思っていた矢先の後半5分、中央突破からFW國分くんが相手と競ったこぼれ球を中原くんが再び決めて逆転します。こうなると札幌はイケイケムード…というかやりたい放題。相手より1人多いこともありますが、選手同士の距離感がいいので、セカンドボールも面白いように札幌のところに転がっています。守備面でも技術の高いガンバの前線に対して集中を切らさず守り、戦前はレギュラーCBの永坂勇人くんが出場停止で不安視されていたのが、既に「そういえば永坂くんいないんだっけ」というレベル。ガンバこりゃやってらんねぇだろうなぁと思っていたら、後半22分には相手陣内深くで中原くんが相手からボールをふんだくってペナルティエリア内に侵入。折り返しのパスを下田くんがキッチリ合わせて追加点。これで相手も意気消沈したか、その2分後にはオフサイドギリギリで抜け出した國分くんがGKとの1対1を冷静に決めて4点目をゲット。後半40分には右サイドを突破した小野くんのクロスから下田くんが落としたボールを中原くんが技ありのループシュートを決めてハットトリックを達成。準決勝に続いて2試合連続の5得点の大勝で、初優勝に花を添えました。
いやすごいですよね。2試合で10得点ですよ。トップチームでもそうそう見たことないというか、2試合で10失点なら去年2回くらい見ましたけど、もっとすごいのはトーナメントにありがちな「強さではやや劣るものの、勢いを生かして突き進む」ようなパターンではなく、試合内容も優勝チームにふさわしいものだったことですね。ガンバは退場者が出なければ…という感じではありますが、それでも10回やればおそらく9回は札幌が勝つんじゃないですかね。
もちろん、彼らがトップチームに上がってそのまま活躍できるかといえば、J2であってもそこまでプロは甘いところではないでしょう。とはいえ、「日本のてっぺんを取った」という自信はこの先きっと生きるはずです。もちろん彼らの先輩もみっともないところは見せられませんよね。貧乏ではあるし、なかなか勝てないかもしれないけど、応援しがいのあるチームになるんじゃないか。そんな気がしています。いやカネは何とかして欲しいですけど。
思い起こせば、コンサドーレユースのJユースカップ初参加は1997年。1年生だけのチームで臨んだこの大会では、予選リーグ全敗、1得点37失点という成績に終わっています。あれから15年、北海道のサッカーはここまで来ました。ここに至るまでには、様々な人たちの多大な努力があったことは想像に難くありません。全ての人たちへおめでとうとともに、やはりこの言葉を捧げたいと思います。
「サッカーで、優勝したよ」