第86回天皇杯全日本サッカー選手権大会第5回戦
コンサドーレ札幌(J2)2-2アルビレックス新潟(J1)
PK(8-7)
得点者:札幌/スナマコ×2
千葉/エジミウソン、矢野
今回の天皇杯におけるコンサドーレの、「J2勢唯一の生き残り」という決まり文句がうれしくもあり哀しくもある今日この頃、それでもまだ少しだけこのチームが見られることに素直な喜びを感じている、そんな12月の土曜、ベスト8進出を賭けたアルビレックス新潟戦がフクダ電子アリーナで行われました。J2暮らしが長いと、「札幌対新潟」なんてカードには多少のノスタルジィを感じますが、今でこそすっかり立場は逆転したものの、過去の対戦成績は12戦で7勝3敗2分、新潟が昇格を果たした2003年ですら2勝1敗1分と、割と相性のいいチームです。まぁその1敗が「伝説のビッグスワンギロチン試合」なんで、そのダークイメージが強すぎてあんまり相性がいいという実感はないんですけどね。まぁとにかく過去の実績の上ではベスト16に残ったチームの中では比較的与しやすい相手であるですが、まがりなりにも新潟は3シーズンJ1の波にもまれてきたわけで、かたやこっちはその間J2で最下位や中位。過去の実績なんてあんまりアテになるものでもありません。そんなわけで試合はのっけから矢野にシュートを許す前途多難な立ち上がり。降雪の影響で満足な練習が出来なかったことが影響していたのか選手の出足は鈍く、内容的には前回のジェフ戦とは比べようもありません。特にボランチの大塚の出来が悪く、ここでボールが落ち着かないと札幌はサイドにも展開できないし中央でも勝負できません。かといって新潟もその立ち上がりの矢野のシュート以降はこれといったチャンスも作れず、正直どっちもどっちといった試合内容。開始10分くらいには「これPK戦まで行きそうだな…」という予感が頭をよぎりました。
…当たってうれしくない予感ほど当たるもんですね。
前半13分にシルビーニョのコーナーキックに飛び出したGK佐藤優也が目測を誤ったのかそれとも滑ったのかはわかりませんが、とにかく不十分な体制でパンチングに行ったためクリアが中途半端となり、パンチしたボールがエジミウソンに当たってゴールイン。ピタゴラスイッチみたいなオモシロアシストでリードを許しますが、前半34分には逆に新潟のクリアがピンボールみたいに転がってきた来たのを砂川が落ち着いて決めて同点。後半6分にはセットプレイからのクリアボールを拾った芳賀がゴール前に上げたクロスをソダンが競ってこぼれたボールを、再び砂川が反転しながらの難しいシュートを決めて逆転に成功します。ところが、このまま逃げ切るかと思われた後半38分、この試合ある意味最大の見せ場がやってきました。右サイドからのクロスボールを難なくキャッチした優也は、ボールを保持して前線へフィードするため、その手にしていたボールを足もとに転がしました。GKはキャッチしたボールを6秒までか保持できない(実際は厳密な6秒ではなく、プロレス並の「6カウント」ですが)ため、試合時間も残すところ10分を切った状況でリードしているチームのGKとしては決して間違った行動ではなかったと思います。むしろ、状況を鑑みれば彼のプレイは正しかったのではないでしょうか。このクロスの際に走り込んできて空振りに終わり、自分だけがゴールネットを揺らした相手FW矢野貴章がまだ後ろに残っていたことを除けば。
結局、優也が転がしたボールを後ろからかっさらって矢野が無人のゴールに決めて同点となり、前後半15分ずつの延長でも決着が付かずにPK戦に突入。優也のあれがなければ「やらんでもいいPK戦」だったわけですけど、前述の通り優也のプレイだけを見ればあれは当然のプレイですし、後ろから気配を消してスキを狙っていた矢野の忍者っぷりも褒めるべきだと思います。確かに脇が甘かったと言われればそれまでですが、あの場面では周りも声をかけなければいけないでしょう。この場合、やっぱり「志村~! 後ろ、後ろ!」と叫ぶべきだと思います。
つーか、そもそも同点ゴールの直前の決定的チャンスを相川が決めて3-1にしていれば、優也も殊更に時間稼ぎをしようとは思わずに済んだとはずなんですがね。あれを相川が外した瞬間に同点にされるのを覚悟しましたし、現場で見ててもあのシーンで優也に対しての怒りは全くなかったですね。「ありえないミス」というのであれば優也ではなく相川じゃないかと。あの位置からあれを外せるのは北海道には石井謙伍くらいしかいないと思ってたのに(´・ω・`)
ということで試合はしなくてもいい延長戦に突入。勝負事には「流れ」というものがありまして、科学的には説明できないんですけど、とにかくこの「流れ」をモノにできるかどうかが勝負の分かれ目となることが多くあります。この試合の場合、追加点のチャンスをフイにし逃げ切れずに同点とされた札幌と、絶体絶命のピンチで命拾いし予想外のゴールで同点に追いついた新潟、通常であれば流れは「新潟勝利」に傾いてもおかしくありません。現在天皇杯のレギュレーションは延長Vゴール方式ではないため、点を取られたとしても挽回のチャンスはあるわけですが、札幌はエース・フッキが後半海本のえげつないスライディングタックルを受けて負傷退場しており、先に点を取られたら非常にきつい展開となることは間違いありません。こういうせっぱ詰まった状況で意外と頼りになるのが元気なんですが、元気のジョブ能力が発動するには「速いクロスとニアサイド」という限定条件が必要です。征也は既に交代しており、その征也の交代後に右サイドに入った芳賀も守備に奔走して攻撃に絡めず、左サイドもここのところは「成らない香車」どころか「成らない歩」にまでなってしまった和波さんと来れば、中山元気もその名の通りながらも誰も力をくれない元気玉でしかありません。
そんなわけでお互いチャンスはそれなりにありながらも決めきれずにPK戦までもつれ込んだわけですが、ここまで来れば「優也は失地挽回できる男だ」と思っていたものの、まさか両チームとも出てくる選手出てくる選手誰も失敗せずに決め続けるとは思いませんでした。結局8巡目で札幌は西嶋がゴール左隅にキッチリ決めたのに対し、新潟は矢野のシュートが優也に止められ札幌が勝利となったわけですけど、「フットボウラーズ・ロシアンルーレット」という異名もあるPK戦において、一番の敵は「プレッシャー」です。プロレベルの選手になれば、あの位置からゴールマウスにボールを蹴り込むのは造作もないことです。しかし、プロゴルファーがたった1mのパットを外すこともあるように、それにプレッシャーという要素が加わると、途端にその成功率は下がるもの。俺王様が11人というのならまだしも、技術よりもプレッシャーに打ち勝つ精神力があるかどうかが重要なのがPK戦なのです。そんなPK戦で、誰も失敗しないどころかみんなえぐいところに決めるとは正直驚きました。そんなPK戦で札幌の選手にそんな胆力があったのならなんで今まで勝てる試合を落としてたんだろうと思わないでもありません。
以上、いろんな逆境を跳ね返して札幌がPKでJ1を打ち破り、ベスト8に駒を進めました。次の相手は川崎フロンターレを破ってベスト8進出を果たしたヴァンフォーレ甲府。J2となってからは未だに1度も勝ったことがない川崎よりかはやりやすい相手ではありますが、甲府はその川崎から5点もふんだくっての勝利だけに決して楽観できるわけではありません。ましてや喉から手が出るほど賞金が欲しいのは甲府も同じでしょうから、難しい試合になることは間違いなさそうです。
その準々決勝は23日。仙台のユアテックスタジアムで行われます。ここまで来たら新しい楽器を買う貯金に手をつけてでも現地に馳せ参じるべきでしょうか…。
ところでこの試合では、前の試合で負けなければ2試合連続のホームで新潟を迎え撃っていたはずのジェフの選手の皆さんが揃って観戦に訪れていました。話によればJ2チームに負けた罰として自腹でチケットを買わされたらしいですが、わざわざチケットを買って寒い中こんな試合を見せられたんじゃ罰ゲームの効果としては充分だと思いました。なぜか阿部と巻は室内のVIPルームで観戦してたみたいですけど、佐藤勇人や羽生直剛らその他の選手たちは全員寒空の下スタンドで観戦。とはいえ、ジェフの選手の皆さんはどうやら昨年までチームメイトだった芳賀の応援モードだったようで、PK戦で芳賀が出てくると一斉に「ハガー! ハガー!」と口々に応援。芳賀がPKを決めた時はいい感じの壊れっぷりでした。その一方で大塚や寺川はすっかり忘れられていましたが、さすがにかぶってる選手はいないからしょうがないですね。
そういえば、試合が終わった後、そのジェフの選手が陣取っていた席に1羽のカラスが紛れ込んできました。ご存じの通り天皇杯を主催する日本サッカー協会のエンブレムはヤタガラスで、天皇杯を制覇するとユニフォームにそのヤタガラスのエンブレムを入れることが出来ます(J1優勝しても入れられますが)。これはもう、何かの暗示としか思えません。何しろそのカラスはジェフの選手を攻撃してましたし。
コメント (4)
石原と聞けば、真理子でもなく都知事一家でもなく軍団でもなく完爾でもなく絵○子でもなく「直樹」を浮かべ悶絶する今日この頃(長い挨拶)。
さて、次は「波羅門」だとか「ゼザンの門」だとかで最終節を総括するのかと思いきや、やはりここは土曜に勝った天皇賞トライアルレース(といってもまだ1000万円以下レベルかもしれませんが…)のことを書きたいですよね。
>やっぱり「志村~! 後ろ、後ろ!」と叫ぶべきだと思います。
普段から声がなかったり、小さかったりしている賜物ですね。やはりここはリーダーが「オイッス!」のかけ声から始めないとならないでしょう。まあ、個人的には9年前にやらかした、南米のGKの珍プレーなみの失点のようなあのことを思い出しましたが。
>あの位置からあれを外せるのは
残念、そこは中山元気だ…も含まれると思う。
>PK戦で札幌の選手にそんな胆力があったのならなんで今まで勝てる試合を落としてたんだろうと思わないでもありません。
絶対○○は外すなぁ…とか思ってましたが、皆何食わぬ顔でしれっと決めていき…お前ら何でそのポテンシャルを(ryと同じように思いました。…新潟の選手達にも。
で、次は思い出、というよりトラウマ深い甲府戦ですが、新たなトラウマとか作らないようにしつつ、賞金の出るところまで行きたいものですね。そして地方競馬(J2)を代表して天皇賞を…と脳内お花畑にさせてもらいたいです。ただ「天皇賞」と「地方競馬」と聞けば「コスモバルク」ではなく「ハシルショウグン」を連想するのですが…
投稿者: じゃがバター塩辛 | 2006年12月11日 23:17
日時: 2006年12月11日 23:17
chooさんはメインに居られたのですかね?
私はバックにいたのですが、こちらにもカラスは来ていました。
同じものかどうかはともかくとしても、もしかしたら縁起物かもしれません。
投稿者: akira37 | 2006年12月12日 08:48
日時: 2006年12月12日 08:48
カラスは、国立でもそうだけど、試合後の残飯を狙いに来たんだと思いますよ。
延長とかPKまでは知らなかったと思うけど(笑)
投稿者: いそやん | 2006年12月12日 09:51
日時: 2006年12月12日 09:51
プロセスを気にしなくてよいJ1相手,というのが2試合見た後での感想ですな.アイツら,ほんとはこんなゲームがお望みなんじゃないか,と思うのですよ.スタッフやサポにも文句を言われませんから,以外な伸び伸び感を見せてくれてます.柳下体制でJ1相手の5試合これで4勝1敗,最多失点が交通事故みたいな先日のフクアリの2点,攻撃的なポーズは取っているが,先ず守備から入っています.この選手たちのホンネをどう理解したらいいのか,来年への宿題じゃないかな.
投稿者: kanpa | 2006年12月14日 18:06
日時: 2006年12月14日 18:06