2007年Jリーグディビジョン2第12節
コンサドーレ札幌1-0愛媛FC
得点者:札幌/謙伍
愛媛/なし
前節休みで2週連続のホームゲーム。万全の状態で迎え撃つのは、11位の愛媛FCです。JFLからの参入1年目の昨季は9位というまずまずの成績を残すことに成功した愛媛ですが、今季はこれまでのところまだ2勝と思うように勝ち点を伸ばせずにいます。レンタル選手が多いというのがその要因のひとつで、昨季11ゴールを挙げた菅沼実や、44試合に出場した高萩洋二郎といったレンタル選手が所属元に復帰してしまい、チーム強化もすんなりとはいかないようです。とはいえ、性急にJリーグ参入を目指さずにまずはユースチームの強化から始めたこのチームのコンセプトは変わっておらず、ヤマハ出身で協会のコーチングスタッフやジュビロ磐田のユースコーチや監督などを歴任するという、コンサドーレ前監督のヤンツーとよく似た経歴を持つ望月一仁監督の下、手っ取り早い結果を求めて守備一辺倒のサッカーをするのではなく、若い選手の多いチームに磐田式アクションサッカーを植え付けています。Jリーグに参入してまだ2年目。資金面でも実績面でも現段階ではサポーターやスポンサーがJ1昇格を絶対の目標としているわけではないでしょうから、結果よりも内容を求めることに対し比較的理解されやすい環境にあると言えるだけに、ただなんとなくリーグを戦うのではなく、まずは土台を築こうという目的が見えます。そういう意味では、レンタル選手は多くても継続的な強化をしているとも言えます。まぁ要するにコンサドーレが8年かかってようやく気づいたことを最初からやっているわけで、こういうチームには成功して欲しいなぁと思うわけです。
だからといって試合となれば話は別でして、一応首位のチームである以上11位のチームにホームで負けるわけにもいきません。菅沼が抜けたとはいえ、昨季14ゴールを挙げたエース田中俊也は健在。その田中と2トップを組むのは、第9節福岡戦で負傷した大木勉と交代での出場となった藤井貴。名前だけを見ると乙葉と結婚した吉本興業のお笑いタレントを思い出しますが、よく見ればこの2トップ「タカ&トシ」です。ちなみにタカ&トシは札幌ドームからほど近い西岡北中出身でしたっけ。
で、札幌はイエロー累積で出場停止の西澤画伯に替わって池内が登場した以外はいつものメンバー。中2日で北海道まで遠征してきた愛媛に対し、中5日で移動なしの札幌。コンディション的には圧倒的に札幌が有利…なはずですが、キックオフからわずか1本のパスで赤井にシュートを打たれる不安な立ち上がり。序盤は劣勢に立たされます。
とはいえ、愛媛としては堅守を誇る札幌…という表現には未だに「慈愛に満ちあふれたフリーザ」くらいの違和感があるのですが、とにかくリーグ1失点の少ない札幌に対し、コンディションに差があるのは百も承知の上でまだ動けるうちに勝負をかけようという意図があったと思われ、とにかくガンガン攻めてくるものの、ミスが多く札幌ゴールを脅かすまでには至らず。そうこうしているうちに札幌も次第に落ち着きを取り戻しますが、チャンスメーカーである西谷の調子がいまいち。もともと西谷はドリブラーでもパサーでもなく、ひらめきやイメージで勝負するタイプのプレイヤーであり、要するに自身の頭の中のイメージと実際のプレイの「シンクロ率」がその出来不出来に大きく影響してくるのですが、この試合のシンクロ率はだいぶ低かったようで、やりたいプレイはわかるんですけどボールはあさっての方向に行ってしまう始末。そんなわけで札幌もシュートまでなかなか持っていけず、芳賀の超精密ボトル直撃シュートや、ダヴィの変なドリブルからの馬シュートがクロスバーを叩いたシーンが惜しいと言える程度で、前半は0-0で終了します。
後半は、やはり運動量の落ち始めた愛媛を札幌が少しずつ追い詰め始めます。試合中様々な表情を見せるダヴィと対照的に何食わぬ顔度で言えば西澤画伯にも優るとも劣らないカウエも何食わぬ顔で前に出てくることが多くなり、惜しいシーンも増えてきました。普段はあまり早めの選手交代を行わない三浦監督も、後半5分に早くも征也に替えて砂川を投入。疲れてくる頃にドリブルの得意な砂川が出てくるというのは相手にとってすごくイヤでしょうし、スペースの生まれやすい状況であれば砂川自身のプレイも生きてきます。もともと前目のポジションならどこでもこなせる器用さを持っている選手ですから、こういう選手がベンチに控えているというのは強みです。テレビ番組でいうなら「懐メロ特集」とか「アニメ名場面集」くらいの便利さです。その砂川を中心に攻め込む札幌は、画伯に替わって出場している右サイドバックの池内も果敢なオーバーラップを見せるようになりますが、あと1歩が足りず得点を奪えません。
勝ち点3が欲しい札幌は、後半17分に元気に替え謙伍を投入。この交代策がずばりとハマります。23分、西谷からのサイドチェンジのロングパスがワンバウンドしたところを、謙伍がダイレクトでシュート。強烈な回転のかかったボールはキャッチした愛媛GK佐藤の手をはじきゴールの中へ飛び込みました。謙伍は今シーズン初ゴール。当然のように「芳賀ラッシュ」の洗礼を浴び、ついに均衡が破れました。「確実なプレイをしよう」という意識が強かったのか、去年あたりから無難なプレイをしようとして小さくまとまりかけて、まぁ要するにオレ個人の好みから言えば「つまんない選手」になってしまいつつあった謙伍が、ちょっと無理な体勢ながらも迷いなくシュートを打ったことはちょっといい感じです。まぁ確かに相手GKのキャッチミスとも言えるゴールでしたけど、そういう積極的なプレイが得点に繋がったのだと思います。
欲を言えば2点目を取って欲しかったですし、実際取れるチャンスもなかったわけではないですが、今の札幌にとっては1点を守りきるのはそんなに難しい話ではありません。といっても、無失点に抑えるというのはそう簡単なことではないでしょうし、実際ゼロに抑えることができたのは、フィールドを縦横無尽に走り回っていた芳賀の獅子奮迅の活躍によるところが大きかったのですけどね。そういえば、かつてそれなりに結果を残していた頃は、山瀬(現横浜F・マリノス)や今野(現FC東京)のような、犬のように駆けずり回る選手がいたものですけど、やはりこういう選手はチームに1人はいて欲しいものです。まぁ芳賀の場合は、相手を追いかけてさらに噛みついて食いちぎるという表現がよく似合うので、犬と言うよりは狼っぽいような気もしますけどね。
まぁそんなわけで、試合終了間際には危ないシーンもあったものの、アディショナルタイムの愛媛の猛攻を凌いで、今季8試合目の無失点試合で3連勝。勝ち点を24に伸ばし首位をキープしました。
コメント (1)
>狼っぽいような気もしますけどね
なるほど「北の狼」ですか。確かにそんなイメージ。
ということは、やけどの痕が残る生き別れの兄弟が
やはりJリーガーとして、どこかにいるわけですね。
他人に語れない過去を持つ点も「北の狼」のイメージと
重なるな<こら
投稿者: はかたん1号 | 2007年5月 2日 10:30
日時: 2007年5月 2日 10:30