2007年Jリーグディビジョン2第30節
ベガルタ仙台 0-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/元気、ダヴィ
仙台/いません
前節東京ヴェルディ1969との壮絶な死闘っぽい試合を痛み分けで終えた札幌は、今節はベガルタ仙台とのアウェイゲーム。会場のユアテックスタジアム仙台は、昨季の天皇杯でヴァンフォーレ甲府を破ってベスト4進出を果たした場所だけにイメージ的には悪くはありませんが、2000年の最終節で勝利(2-0)して以来、昨季の22節で勝利を挙げるまでは5年半もの間勝てなかったスタジアムですし、その後も今季の第1クールでの試合を含めて2試合やって2引き分けと、そんなに相性がいいわけではありません。ただし、仙台とは2005年の15節(アウェイ)で4-0で負けて以来約2年間負けておらず、対戦成績としては分がいい相手です。
仙台は現在3位。自動昇格となる2位の京都サンガFCとは勝点6差で、これ以上離されるわけにもいかない上、すぐ背後に東京ヴェルディ1969が忍び寄ってきています。まさに前門の虎、後門の狼。わかりやすくいえば、「マリオブラザーズ(無印)」において相方が明らかな敵性行動を示す中グリーンボールが発生してしまったような感じ。
とはいえ、状況としては札幌も似たようなもんで、足踏みしつつもなんとか首位をキープし続けていますが2位との勝点差はわずかに1。台風で順延され札幌の消化試合数が1試合少ないとはいえ、追ってきているのが実力のあるチームだけに、ドラゴンバスターのケイブシャークに追いかけられている気分です。まぁケイブシャークはハメられますけどね。それはともかく、現時点では首位がどうのよりは3位との差を縮められるほうがキツくなるため、ここは何とか勝利で仙台を突き放したいところです。その札幌は、ワールドユースから帰ってきた征也が久しぶりにスタメンに復帰し、久しぶりにベストメンバーが出揃いました。カウエがベンチに行っちゃいましたけど。
仙台といえば第29節終了時点で47得点と、リーグトップの攻撃力を誇るチーム。昨季得点王のボルジェスを放出して連れてきたウィリアンはわずか2試合の出場に留まり得点なしで解雇と、穴を埋めるどころか傷口を広げただけだったにも関わらず、フッキのいるヴェルディやパウリーニョのいる京都より多い得点を挙げているのですから、現在リーグ6位の得点数のチームサポーターから見ればうらやましい話というか、お金の問題もあるんでしょうけどボルジェス残しておけば無敵だったんじゃないのなんてちょっと思ったりもしますね。まぁとにかくリーグナンバーワンの攻撃力対リーグナンバーワンの守備力のチームという、要するにいつもの仙台戦。
というわけで試合ですが、そんな仙台を相手に最初から守勢に回っては分が悪いと思ったか、開始直後に西谷が相手GK小針が前に出ていたのを見逃さずロングシュートを放ちます。これは惜しくもバーを叩いてゴールなりませんでしたが、まずはこのプレイでリズムを掴んだ札幌が攻め込む立ち上がり。仙台戦になると妙に張り切る西谷を中心にサイドから攻撃を仕掛け、何度か惜しいチャンスを作り出します。しかし先制点は西谷ではなく右サイドの征也のクロスから。前半19分、敵陣深くでダヴィが奪い返したボールを受けた征也がライナー性のクロスを入れると、中で待っていた元気が技ありのボレーを叩き込んでゴール。西谷で行くぞ行くぞと思わせておいて、実は手薄となった逆サイドから狙うという戦法ですね。実際狙ってやってたかどうかはわかりませんが。
アクションサッカーを標榜していたヤンツーこと柳下正明が指揮を執っていた昨季の札幌は、チーム得点は77点とリーグで3番目に多かった反面失点の数も多く、JFLから初参入の愛媛FC(63失点)よりも多い67失点。13チーム中8位という成績でした。ジョエル・サンタナ監督が指揮を執っていた昨季の仙台は1シーズン通して43失点と、2番目に少ない失点数を誇っていた(1位は横浜FCの32失点)のに、今季が前節までの33失点もリーグ7位という数字となっており、去年の札幌と極めてよく似た感じで、やはり同じ磐田系の指導者である仙台の望月監督の作るチームもそんな感じなのでしょうか。ゴール自体はクロスも含めて見事なものではありましたが、この時の仙台は中に人数は揃っていましたし、元気にもマークはついていたにもかかわらず失点。なにやら他人事の気がしません。
そういえばかつて、なかなか失点が減らないチームに対してヤンツーが「殴られて初めて『あ、痛いんだ』とわかる」とコメントしていたことがあります。相手に完全に崩されたわけでもないのにポカンと失点するのは去年の札幌でもよく見られた光景ですが、仙台もよりによって元気に殴られたことでようやく目が覚めたか、ここから攻勢に出ます。
現在の札幌の守備対策として各チームがやってくるのは、「札幌のラインとラインの間に入ってボールを動かし、ゾーンを崩す」というもので、最近はそれに加えてザスパ草津の植木監督が暴露した「最終ラインの2人のCB、具体的にはソダンとブルーノの間にFWを配置する」というやりかたがもっともトレンディーでポップでキュートでノルマンディーひみつ倶楽部のようですが、仙台のやりかたはこれのさらに強化版といった感じで、草津式だと「2トップをどちらかを」札幌のDFの間に配置していたのを、仙台式の場合は「2トップ両方」ともを札幌のDFのポジションの間に置く形。で、ラインの間に潜り込んでフリーダムに動きパスを配球するロペスがうまいので、ここで札幌はボールの出所を捉えきれずラインはずるずると後退、そこからサイドに展開されるとマークの受け渡しがずれ、守備が後手後手となってしまいます。仙台のシュートミスにも助けられ、何とか踏み止まり前半は1-0で終了。
そんな感じでしたので、結果論ではありますが後半開始直後のダヴィの1点はかなり重要なゴールでしたね。ゴールはこれまた理想的なもので、持ち前のスピードで磯崎を抜いた征也が上げたクロスに元気がニアで飛び込み、潰れた後ろからダヴィが詰めてのもの。オレはこういうゴールが一番好きなんですが、意味合い自体も後半追い上げをしようという仙台の出鼻をくじいた格好にもなりましたし、またこの得点以降、ということはつまり後半はほとんどの時間、ほぼ一方的に仙台に攻め込まれましたが、この得点があったからある程度は余裕を持って守れたというのもあったでしょうから。
とはいえ、もうあとがない仙台の攻撃はまさに「猛攻」と言っていいもので、前半のやり方に加えてさらに梁勇基までゴール前に入ることが多くなり、DFの意識が中央に集中したところで、後顧を憂うことなくオーバーラップしてきたボールサイドの逆側のサイドバックが飛び込むという、ここまで来ると策というよりはかなり力技に近い攻撃を繰り返します。実際、上がってきた菅井にフリーで合わせられるシーンも何度かあり、肝を冷やすシーンも多くなります。相手が前がかりになってくるということは後ろが手薄になっているということで、つまりカウンターのチャンスが増えると言うことでもありますが、ただでさえ自陣内に黄色のユニフォームがわらわらといる上に、中盤の底のジョニウソンがあっちこっちでボールを拾っているので、クリアするのが精一杯で、とてもカウンターを見舞っちゃいなYOとかそんなこと言ってられるような余裕はこれっぽっちもない状況。
そんないつ失点してもおかしくない流れで結局無失点に抑えることができたのは、高木のファインセーブや最後の最後でDFが身体を張って守っていたこともありますが、仙台が自分たちの「札幌崩し」にこだわって、陣形が整うまで攻めてこなかったことも大きな要因かも知れません。早く攻めるチャンスはいくらでもあったように見えましたが、このあたりもなんだか去年までの札幌によく似ているような気がします。
まぁそんなわけで、何とか危ないシーンを迎えながらも札幌が2点のリードを守りきってアウェイで勝利を飾った分けなんですが、前後半合わせた両チームのシュートは、札幌のわずか6本に対して仙台は打ちも打ったり22本。たった6本で2点を取った札幌の攻撃がよかったのかシュート6本に抑えておきながら2点を取られた仙台の守備がまずいのか、はたまた22本のシュートを浴びながらゴールを守り抜いた札幌の守備がよかったのか、22本もシュートを打って1本も決められなかった仙台の攻撃がまずかったのか、正直どっちかは判断しかねる試合ではありましたが、札幌にとっては貴重な勝点3、仙台にとってはもったいない勝点のロスという試合でしたね。今年の仙台と去年の札幌が対戦したら、どんな試合になってたんでしょう。ドリフのバカ兄弟コントみたいになってたんじゃないでしょうか。つーかドリフ大爆笑のDVDにバカ兄弟入ってないとはどういうことですか。