気がつけば開幕まであと3日。チームは現在北海道に戻り、開幕戦となる鹿島アントラーズとのアウェイゲームに向けて調整を続けています。当初の予定では3月8日の鹿島戦まで熊本で過ごし、鹿嶋へは熊本から直接乗り込む予定でしたが、「選手のストレスが限界にきている」という判断で急遽3月2日のロアッソ熊本戦を最後に熊本を脱出してきました。日本代表の岡田武史監督も、かつて札幌を率いていた頃の苦労話として長期キャンプを余儀なくされることを挙げていまして、曰く「長いこと同じメンバーで合宿をやっていると、だんだんおかしくなってきてわけの分からないことを言い出したりするのが出てくる」とのことですが、実際同じツラつきあわせて毎日毎日サッカーサッカーってのも、いくらそれが仕事とはいえ、というかむしろ仕事だからこそストレスも溜まるでしょうね。
しかも札幌の宿舎はKKウィングから走って帰れるくらいの近い場所だったのですが、KKウィングそのものが熊本市街からかなり離れておりますゆえ、つまりは息抜きにちょっと街まで、ということもできません。まぁ毎日毎日「俺にだってつきあいはあるんだよぉ」なんて言いつつ夜の街に繰り出されても困るわけなんですが、オフの前日くらいしか外出もできず、そのオフも滅多にないと来れば、実質マグロ漁船に乗ってるようなもんですよね。自分だったら精神崩壊するかもしれません。アニメ見れなくて。熊本じゃハヤテもやってないし。
というわけでチームは既に札幌に戻ってきているのですが、3月始めの札幌なんてまだ雪ばっかりです。融雪設備を持つ宮の沢のグラウンドですらどうにもならないほどですから、比較的雪の少ない苫小牧まで練習場所を求めて出張している状況です。札幌~苫小牧間の距離はKKウィングと熊本中心部よりもあると思いますが、それでも自分の家から通うのは全く違うんでしょうね。
そんな感じで何かと裏目に出がちであんまり順調とは言えない我らがコンサドーレ札幌なわけですが、そもそもケチのつき始めは補強の目玉と目された助っ人ボランチがいきなりいなくなったことでしょう。「守備力を落とさずに攻撃力を上げる」という相反する命題を解決するために、「ガッツリ守れてつなぎもできるセントラルMF」はどうしても必要な人材でした。かといってそんなハイレベルな選手を出すようなチームがあるはずもなく、そうすると助っ人に頼るほかないのですが、かといってハイレベルな選手は助っ人だって高いわけで、結局「能力あるけどクセもあるのでお買い得」という選手くらいしか札幌は獲れないのです。で、今回は気性難には目をつぶって能力と日本での実績を持つ選手を獲ってみたはいいけど、まさか「おらこんなチームイヤだ」と言ってすぐ帰ってしまったのです。
もともと替えの効かないポジションだっただけに、根本から戦い方を見直すことを余儀なくされ、それが少なからずテストマッチの不調に響いていたと思いますが、開幕直前になってようやくそこに当てはまるピースを手に入れることができました。アトレチコ・パラナエンセからクライトン選手の獲得が発表されています。
クライトンは守備的なMFで、2004年途中から2005年の1シーズン半名古屋グランパスエイトでプレイし、リーグ戦44試合に出場して7ゴールと日本サッカーへの適性と実績は申し分ありません。キープ力・守備力に優れ長い距離のパスも得意とまさにうってつけの人材で、そうなるとこの貧乏クラブを長いこと応援してきたものとしては「なんか裏があるんじゃねぇか」と勘ぐったりもして、まぁやっぱり当然のようにネックだったのは金銭面だったらしいのですけど、クライトン自身が日本でのプレイを望んだことと、アルセウ側からふんだくった違約金も突っ込んだことで合意に至った模様です。
ブラジルではその特徴的な風貌から「プレデター」と呼ばれていたようです。「マタドール」ノナト、「カバーロ」ダヴィにプレデターが加わることになりました。まぁ闘牛士と馬と人狩り異星人では何がなにやらという感じではありますが、そんなクライトンも合流したばかりで、いくら能力の高い選手とはいえ、川三番地と七三太朗くらいの熟成したコンビを築くにはそれなりの時間が必要なのも事実。ただ、とにもかくにも一番必要だったポジションに適した選手が加わることになったのは、不安材料ばかりのシーズンに向けて少なからぬ巧妙となったのもまた事実でしょう。コンサドーレの救世主となれるでしょうか。