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2008年4月14日

磐田に勝った!

2008年Jリーグディビジョン1第6節
コンサドーレ札幌 2-1 ジュビロ磐田
得点者:札幌/ダヴィ、柴田
     磐田/優じゃない河村

 前節FC東京とのアウェイ戦で煮え切らない敗戦を喫した札幌は、今節はホームに戻ってジュビロ磐田との試合。2002年以来リーグ戦では6年ぶりの対戦となる(天皇杯では2004年に対戦あり)磐田はJリーグの公式戦ではまだ1度も勝ったことがない唯一のチームです。逆にいえば、磐田に勝つことができれば、2007年度までのJリーグ加盟全チームから勝利を挙げることになります。既に「2007年度までのJリーグ加盟全チームから敗戦」という偉業を成し遂げている唯一のチームである札幌にとって、このジュビロ磐田というチームは札幌に残された最後の「壁」です。また、J1残留を果たすためには1勝2敗ペースが最低ラインとなるわけですが、この試合で勝てば札幌は6試合で2勝4敗となりペースは維持できるだけに、ここは是が非でもホーム初勝利を飾りたいところ。
 で、その「壁」なんですが、過去の対戦で思い浮かぶのは、俺王様不在にもかかわらず土俵際まで追い詰めながら王者の執念の前に立ちはだかった2001年のアウェイ戦や、自らの命と引き替えに45分間だけの10倍界王拳を得た平間を以てしてすら倒すことが叶わなかった2002年のホーム戦など、持てる力全てを出し切っても勝つことを許してくれなかった、まさに越えられない壁でした。しかし時は流れ、無敵を誇った磐田も札幌がJ2に降格した2002年を最後に優勝から遠ざかり、昨季はクラブ史上ワーストとなる9位という結果に終わってしまいました。歴史を積み重ねていく上で常に強豪であり続けるのはどんなクラブでも難しいものですが、チームの陣容もかつては助っ人選手を除いて常に8~9人以上は生え抜きの選手たちで占めていたのが、この日のスタメンも前田遼一や西紀寛、田中誠ら主力選手が怪我で戦線離脱中とはいえ、茶野や萬代、駒野、川口など他のチームから獲得した選手が目に付きます。
 もっとも、それでもスタメンの半分以上はユース出身を含む生え抜き選手で占め、斜陽と言われてはいてもJリーグ参入初年度を除けばJ1で順位表の下半分でシーズンを終えたことがないのは、この日のスタメンで生え抜きは大伍とルーキー柴田のみ、J1順位表に名前があったことのほうが少ない上にJ2順位表の1番下になったこともある我がクラブから見ればやはりうらやましいと思わざるを得ません。
 札幌は前節出場停止だった守護神ぎーさんが復帰し、前走を熱発で回避したダヴィも復活。それにより前節はFWとして出場したクライトンも本職のボランチに戻りましたが、両サイドとDFラインは未だポジションを固定できておらず、前節ゴール近くで競り合ったカボレをわざわざフリーにするという、サポーターの度肝を抜く文字通りの離れワザをやらかしたソダンを下げ、センターバックは柴田と吉弘。週中の練習中に古傷を痛めて戦線離脱した西嶋のポジションには坪内が入り、空いた右サイドバックには「出るとまごまごのやっくん」こと平岡康裕が久しぶりの出場となり、両サイドは右に砂川、左に大伍という布陣。

 さて試合は3試合ぶりの出場となったダヴィと、まさしく「舵取り」というボランチそのままのクライトンを中心にうまく砂川が絡み、小気味良い攻撃を見せる札幌がペースを掴みます。3バックを相手にする時は両サイドの裏のスペースをうまく使うのがセオリーで、それは長く3バックをやってきた札幌もさんざんやられてきたわけですが、神戸時代に慣れ親しんだポジションに戻った左サイドバックの坪内や、攻撃の時はまごまごしない平岡もタイミングのよいオーバーラップを見せます。懸念とされてきた前半15分までの失点についても無事守りきることに成功。まぁ札幌の場合「15分過ぎた途端に失点」というパターンも充分に考えられたわけですが、この日吉弘と柴田のセンターバックも初めてのコンビとは思えないほどの息の合い方を見せます。
 というかこの日の磐田には札幌が前にJ1にいた当時に感じた憎らしいほどの強さは微塵も感じられず、開始から押し気味に試合を進める札幌に対し、ウィングバックを置くチームなのにサイドを使うことがほとんどなく、攻撃といえばジウシーニョの単独中央突破のみ。強かった頃の磐田しか知らない我々にとっては、これはエリック・プランクトンとかジョン・ボヴィなどのような「ビジュロ磐田」というチームなのではないか、そんな印象すら受けたほどです。
 なので早めの先取点を奪いたいところですが、前半20分過ぎに中山元気が相手との接触プレイで膝を痛め交代を余儀なくされてしまいます。三浦監督が代わりに入れたのはFW登録の石井謙伍ではなく、ディビットソン純マーカス。クライトンを上げてダヴィとの2トップという布陣に変更しました。「FWクライトン」は中盤でのゲームメイクに支障が出る危険性がありましたが、ダヴィがいるのといないのとはかなり違うようで、シフト変更の影響はさほど見られず。最近ちょっと影の薄いマーカスは、忘れられちゃいかんとばかりにびっくりどっきりパスを繰り出し、間違った方向にその存在を存分にアッピールしつつも、まずまず無難にこなしています。
 攻め込みつつもゴールが奪えず、スコアレスで終わりそうだった前半終了間際、札幌は相手ペナルティエリア右サイドやや外から直接フリーキックのチャンスを得ます。この位置は柏レイソル戦での西嶋の同点ゴールや、またゴールにこそならなかったものの東京戦での開始直後のソダンのヘッドなど、札幌の(というかクライトンの)得意としている位置のようで、クライトンの蹴ったボールにダヴィが頭で合わせたボールは、日本代表GKの川口も届かない絶妙な位置に決まります。昨年からここまで10試合で7ゴールを挙げている「ドーム馬」のゴールで札幌が先制しました。
 そして先制点の興奮もさめやらぬ前半ロスタイムには、コーナーキックからのプレイでクライトンからのクロスを相手がオフサイドトラップをかけ損なった隙を突いて再びダヴィが全盛期の欽ちゃんを彷彿とさせる見事なジャンプシュート。このボールは川口がよく反応しますが、こぼれ球を詰めていたルーキー柴田が決め追加点をゲット。柴田はもちろんプロ入り初ゴール…というか「大卒新人選手の加入初年度ゴール」で初ですかね? 河端和哉もソダンも初年度はゴールしてませんし、権東勇介は初ゴールしたとき在学中でしたし、吉川京輔は初年度は試合出てませんし、徐暁飛はぶちこんだのは味方のゴールでしたし。

 とにかく前半で一気に2点をリードする展開となった札幌は、あとはじっくり守ってカウンター、という展開に持っていくのが理想なわけですが、どっこいそんなつまんない試合なんて他の誰が望んでも選手たちが望んでおらず、後半開始早々にコーナーキックから失点して自らを追い詰める札幌。巧です。まぁ結果的には早い時間帯で失点したことが却ってプラスに働いた…なんてことはたぶんないとは思いますが、札幌としては1点差だろうが2点差だろうが特にやることは変わらず、隙をうかがってカウンターをお見舞いする、という1点。そんなわけで「北の暴れ馬」を中心に何度か鋭いカウンターを繰り出しますが、相変わらず1対1を決められないダヴィ。シュートモーションが去年に比べて明らかに小さくなり、かつシュートのスピードも上がってるのでそのぶんGKもシュートコースを読みにくくなっているはずなのですが、それでも正確にGKにぶち当てるのは何かの呪いでもかかってるのでしょうか。相手GKに。
 しかしそれにしてもクライトンはすげえ。2人くらいなら囲まれてもフットサルのようなボールコントロールで軽くいなせるし、そっちに出せるのかよ! という方向にパスが出てくるし、相手がファウルを覚悟で当たってきてもびくともしない体躯の強さ、そしてそれに頼りっきりというわけでもなく、イーブンのボールを身体の入れ方ひとつでマイボールにしてしまう使い方のうまさ。左足はあまり得意ではないみたいですが、独りよがりのプレイもなく、札幌にはもったいないくらいのレベルの選手。間違いなく歴代トップクラスの助っ人でしょう。FF7の召還獣で言えばバハムート零式。ちなみにノナトはオーディン(斬鉄剣不発)。
 ところで、磐田といえば2004年から2006年までの3シーズン指揮を執った柳下正明ヘッドコーチや、守護神としてゴールマウスを守り続けた佐藤洋平さん(チーム事情により期間限定で現役復帰中)、大伍を育てた森下仁之さん、「俺達のモリゲ」としていろいろと親しまれた森下仁志さんらユーススタッフ、強化部長を務めていた石井肇さんら、いつのまにか縁の深いチームとなりましたが、その中でも注目となるのはやはり2005~2006年に期限付きで札幌でプレイしていた加賀健一でしょう。札幌で2シーズン主力としてプレイして自信をつけた加賀は、磐田復帰後は持ち前のスピードと鋭いスライディングタックルでレギュラーの座を勝ち取り、この日も右サイドのストッパーとしてスタメン出場。今だから言いますが、2006年の開幕前のキャンプでのロッソ熊本とのテストマッチのあった夜、熊本の某有名馬刺し屋で馬刺しに舌鼓を打っていると、翌日オフだった札幌の選手たち数名もやってきたことがありまして、その中には当時札幌にいた加賀の姿もありました。せっかくなので焼酎の一本でも差し入れてあげようかと思いましたが、ただ差し入れるのでは面白くないので、お店の人にペンを借りて「白岳しろ」という熊本の米焼酎のラベルを「白岳昇格しろ」に変えて差し入れたことがあります。結果はご存じの通り、加賀一人だけラベルの通りになったことになりますが、札幌時代と同じ背番号15をつけた加賀は、当時からサポーターを沸かせた「わざと(かどうかは不明ですが)抜かせてすぐさま追いついてスライディングで止める」という桜木花道ばりの破天荒なプレイスタイルはそのまま。テクニックでも緩急でもなく行き当たりばったりで抜こうとするダヴィとの変態対決は見応えがありましたね。
 あと、今季磐田に復帰してこの試合後半から出場した名波浩ですが、今年36歳になる彼が黄金時代の磐田の象徴として、そして日本代表の主力として活躍していたのは、この日もスタメンで出場した大伍がまだ小学生だった頃。当時はまだごくごく普通のサッカー少年だった大伍は、おそらく青いユニフォームは夢のまた夢だったでしょうし、その10番を背負っていた選手なんて雲の上の存在だったに違いありません。時は流れ、共にプロとして同じピッチに立ったその大先輩を何食わぬ顔で削った大伍を見て、やっぱりただ者ではないと思いました。
 まぁそんなわけで名波を入れるのはともかくとしてもジウシーニョを下げるという札幌にとっては好都合な選手交代をしてくれたおかげで札幌はなんとか逃げ切りに成功。ジュビロ磐田から初勝利を挙げたことによって、ロアッソ熊本とFC岐阜を除く全チームから勝利を挙げることができました。もちろん、磐田に勝ったからといってJ1残留が保証されたわけではありませんが、結果としてJ1残留という夢が潰えたとしても、我々は胸を張って熊本と岐阜を倒しに行くんだと思えば少しは哀しみも紛れるかも知れません。あるいは熊本や岐阜戦で「べ、別にあんたに会いに来たわけじゃないんだからね!」と言ってみるとか。まぁそんなことは今は考えますまい。

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コメント (3)

>大卒新人選手の加入初年度ゴール


10年史などで調べたところ、96年旧JFLで
渡邉晋(駒大卒、現・仙台コーチ)が5節甲府戦で
加入初年度ゴールを決めています<延長Vゴール


Jとなると、98年を含めて柴田が初めての様子です。

すがり:

あと、三浦カズがゴールを決めていないチーム、でもありますよね、ウチ。新規参入を除いて。

赤字黒星:

はじめまして♪いつも楽しく拝見してます~
熊本、岐阜だけじゃなく今なら栃木と岡山も倒すチャンスかもですね~

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