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2008年5月 アーカイブ

2008年5月 2日

赤いシリーズ

2008年Jリーグディビジョン1第9節
浦和レッドダイヤモンズ 4-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/砂川、柴田
     浦和/阿部、闘莉王、エジミウソン×2

 ホームで新潟を相手に痛い負けを喫してしまった札幌は、今節は中2日で強豪浦和レッズとのアウェイゲームです。お互いがJ2に所属してた2000年、未だ伝説と並び称される2000年7月29日の厚別での逆転劇を含む4度に渡る死闘を繰り返したことも今は昔。共にJ1に昇格したその後、わずか2年でJ2に降格してからは、財政難や不祥事などで観客動員数も減少、J2最下位も経験するなど低迷を存分に満喫した札幌とは対照的に、浦和は潤沢な資金を背景に多くの有力選手を獲得、2003年にナビスコカップを制覇すると、それ以降は2004年にステージ優勝(当時は2ステージ制)、2005年に天皇杯制覇、2006年は天皇杯連覇と待望のリーグ優勝、2007年はAFCチャンピオンズリーグ優勝と毎年のようにタイトルを獲得し続けています。ちなみに浦和が初タイトルをゲットした札幌がJ2優勝を果たした昨季のJ1王者・鹿島アントラーズは、札幌がJ2に降格した2002年以降あらゆるタイトルから見放されていましたが、浦和の場合は札幌が札幌が再びJ2を戦うことになった2003年を境に、まるで憑き物が落ちたかのような我が世の春です。まさにJリーグの藤原道長とでも言いましょうか、そんな浦和に比べれば我々なんてミッドガルのプレート下層の住民なわけですが、その浦和も怪我や病気には勝てないようで、この日のスターティングメンバーには永井雄一郎、田中達也、鈴木啓太、坪井慶介、ポンテ、三都主アレサンドロといった、レッズと言えばまず名前が思いつく選手たちがいません。しかし札幌も選手事情は似たようなもの、というよりは選手層の薄い札幌だけに状況は浦和以上に深刻で、特にFWはエースのダヴィが前節新潟戦での一発退場で2試合の出場停止中、中山元気も怪我、石井謙伍は大スランプ、ノナトに至ってはスランプというより腐乱中といったほうがよさげな感じ。今年度のFW登録の選手はあと宮澤裕樹と横野純貴のルーキーコンビしかおらず、さすがにこの状態で彼らを出すのは、学徒動員してザクで出撃させるようなもの。というわけで三浦監督の採った策は「いないならいないでいいや」というもので、メンバー表上の2トップはクライトンと西大伍という選手登録上はMFコンビ。

 この日の試合会場である浦和のホームスタジアム・埼玉スタジアム2002では、札幌はかつて2004年の大宮アルディージャ戦で使用したことがありますが(その他にも西大伍と怪我で戦線離脱中の藤田征也が高円宮杯U-18の決勝戦で経験)、その時の観客数はわずか8,009人。この日の観客数は48,031人ですから、実に4万人以上の差があるわけで、もちろんこれだけの大観衆でプレイするのは札幌にとっては初めてのこと。選手たちにとってはこの大アウェイの中で平常心のプレイができるかどうかがひとつの鍵でした。右サイドバックに平岡ではなく池内を今季初めてスタメンで起用したのも、経験値を優先したからでしょう。が、むしろホームの浦和のほうがなんとなくやりにくそうです。現在首位の名古屋グランパスから勝点3差の3位につける浦和は、首位を伺うためにも勝利が欲しいところですし、ましてや相手は降格候補筆頭の札幌。「勝って当たり前」な空気に却って硬くなったのかも知れません。試合開始からパスを繋ごうとしては札幌にボールを奪われカウンターを許すというシーンが何度か続き、そして前半6分、中盤で坪内からのパスを受けた芳賀主将が、トラップの間際でボールをかっさらおうと襲撃してきた闘莉王をすんでの所で交わし、さらにそのルーズボールをスライディングで奪おうとした梅崎もぎりぎりのところで先に触って交わすという結果オーライドリブルを見せます。フリーで前を向いた芳賀は大伍とダイレクトでパスを繋ぎ、相手のラインの裏に飛び出した砂川へ浮き球のパス。このパスを受けた砂川が落ち着いてゴールを決め、なんと札幌が先制します。
 しかし先制したとはいえ、札幌が浦和を相手に1点を守りきるような芸当ができるチームであるはずもないですから、ここからのポイントはこのリードを1分でも長く保ちつつ、いかに前に出てこざるを得ない浦和のスキを突いてのカウンターで追加点を奪うかです。で、その通り「やれば出来る子」大伍とクライトンを中心に先制後もカウンターからいい形を何度か作り出し、少なくとも大アウェイに萎縮している様子は、少なくともフィールドプレイヤーからは見られなかったのですが、ただ1人どうにもおかしかったのがGKぎーさん。ゴールエリアの近辺でフィールドプレイヤーたちがヘディングでぽんぽん争ってるのを温かい目で見守っていたり、新潟戦でもあったような柴田が呼んでいるのに出てくるのが遅れたり、普段からあまり前に出るタイプのキーパーではないことを差し引いても何となくおかしい。その不安が的中したのが前半の24分、阿部のミドルシュートをファンブル気味に後ろに反らしてしまい、あっさりと同点ゴールを許してしまいました。シュートに変な回転がかかっており、ぎーさんの手前でイレギュラーなバウンドをしていたのは確かなのですが、ぎーさんにしてはちょっとお粗末なプレイだったと言わざるを得ません。ああいう変態的なシュートは変態的なGK、つまり優也なら止めていたかも知れませんが、しかし優也だったらきっと別のところで面白いことをしでかしてたと思うので、そのあたりは微妙ですね。
 そんなわけでリードが20分持たなかった札幌ですが、そのわずか1分後にセットプレイのチャンスからルーキー柴田がドンピシャのヘディングを決めあっさり突き放しに成功します。前半をこのまま折り返すことができれば勝利の目はぐっと近づく、と思っていたのですが、そのわずか3分後、今度は浦和のセットプレイから闘莉王に頭で決められ、またしてもあっさり同点に追いつかれてしまいました。まぁ相手をフリーにさせて決められたのならもったいないと思いますが、この場合は吉弘がちゃんとマークについてしっかり身体も寄せていたにもかかわらずゴールの隅に決められたもの。その前にも、オフサイドでノーゴールにはなったものの阿部からのフリーキックを高原に繋いだヘディングも頭1つ抜けてましたし、やっぱり闘莉王の強さは半端ないですね。
 そんなわけで浦和のわずかなスキにつけいることはできたものの、つけいってもつけいっても赤い人、という感じで前半は同点のまま終了します。

 ただまぁ、目論見が崩れたとはいえまだ同点。マンマークが基本の浦和のマークをうまくずらして、1点目のような形に持っていくことができれば、もしくはセットプレイ、できればペナルティエリア右手前の札幌(というかクライトン)が一番得意とする「聖域」でのフリーキックのチャンスを多く作れれば、後半も1点くらいなら取れるチャンスはあるはず。あとはそれまで同点のままどれだけ我慢ができるかというところだったのですが…後半が始まってわずか5分、右サイドから崩されフリーのエジミウソンにゴールを決められてしまいました。
 一転して追う展開となった札幌ですが、わずか3日前に試合の半分以上の時間を10人で戦わざるを得なかった影響もあるのか、次第に相手のパス回しについて行けなくなり、反撃を試みるどころか防戦一方の展開になっていきます。それでも何度かゴール前まで迫るシーンも見せるのですが、攻撃参加を自重し始めた闘莉王を中心に守りに徹する浦和の壁をこじ開けることができず、逆に試合終了間際にはミスからカウンターを許し、再びフリーのエジミウソンに決められ4失点目を喫してジ・エンド。不利の予想される中2度リードを奪ったものの、結局は力負けとなってしまいました。

 さて試合終了後、浦和のゴール裏に「札幌、お前はもう死んでいる」横断幕が登場。

 もうずいぶんと時間が経っててご存じない方もいるでしょうからかいつまんで説明しますと、これはもともと札幌のサポーターが浦和を煽るために作ったもので、最初の文章は「田北 お前はもう死んでいる byエメルソン」というものでした。「田北」は当時浦和の正ゴールキーパーだった田北雄気(現横浜FCゴールキーパーコーチ)で、エメルソンは言うまでもなく当時の札幌のエースストライカー。で、それを見た浦和サポーターは当然のように激怒し、まぁいろいろあって結局その横断幕を浦和サポーターに渡すことで手打ちとなったのですが、その後この横断幕をゲットした浦和サポーターは、「田北」の部分を「洋平(当時札幌の守護神だったGK佐藤洋平)」に変えて、札幌戦のたびに持ってきていたというわけです(ちなみに「by エメルソン」の部分は、エメが札幌から川崎フロンターレを経て浦和に加入する以前からそのままでした)。そして2002年に札幌がJ2に降格して以降は浦和との対戦はなかったのですが、今回札幌がJ1に昇格して再び相まみえたこの試合でこの横断幕も再登場した、というわけです。要するに6年間もの間後生大事に取っておいてくれたってわけですね。今はもう札幌にいない「洋平」を何に変えるか考えて、多分誰も知らなかったから「札幌」にしちゃったんだと思いますが、現在のクラブとしての格から言えば、札幌なんて屁のつっぱりにもならないようなチームのサポーターが、この横断幕を出す日を心待ちにしていたんでしょうね。ちょっとうれしかったです。

2008年5月 5日

京都といえば

2008年Jリーグディビジョン1第10節
京都サンガFC 1-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/いませんでした
     京都/あたりば

 いろいろあるけどもう9番に期待するのはやめました。前向かない、勝負しない、裏を取ろうともしない、挙げ句空振りなんてストライカーじゃありません。


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 むしゃくしゃして行った。祝日で休みでもよかった。別に反省していない。

2008年5月 8日

だめすぎ

2008年Jリーグディビジョン1第11節
コンサドーレ札幌 1-3 東京ヴェルディ
得点者:札幌/助っ人
     ヴェルディ/助っ人×3

ゴールデンウィークシリーズを3連敗と全くいいところなしの札幌は、そのGWシリーズ最終戦、ホームでの東京ヴェルディ戦を迎えます。昨年ヴェルディでプレイしてJ2得点王に輝き、川崎フロンターレに復帰したものの関塚監督との確執から同監督の心労を置き土産(時限爆弾)に川崎を退団して再びヴェルディに移籍した元札幌のフッキを擁し、札幌サポーターにとっては忘れたいのに忘れられない柱谷哲二監督が率いるヴェルディは、目下3勝5敗2分の勝点11で15位。現在勝点7の札幌が勝ったとしても逆転できるわけではないとはいえ、15位というのは当面札幌が目指すべき順位ですから、哲二監督とかフッキとか関係なくホームのここは是非とも勝っておかなければいけない試合。
 …だったハズなんですが、結果は1-3と逆に差を広げられる結果となりました。結論としては前半が全てという感じでしたね。サッカーにおいて3点のリードというのはほぼ安全圏と言われています。キン肉バスター返しみたいに相手の10倍のパワーがあればひっくり返せるでしょうが、人一倍残念な攻撃力を誇る札幌が3点のビハインドを負うということは、イコール負け確定と言っても過言ではなく、軽井沢にある滝は華厳ではないわけで、確かに昨季のドームでのヴェルディ戦では確かに札幌が4点取って勝ってますけど(最終的なスコアは4-3)、その時は逆のパターンで札幌が前半の早い時間に3点のリードを得たことが大きいですし、しかもそれは相手のミス絡みからのもの。ヴェルディのディフェンスが比較的脆いとはいえ、そうそうリスクを冒してこない相手を無理矢理こじ開けて3点4点をぶち込むような芸当ができるチームであれば今頃こんな順位には沈んでないわけで、実際その通りに後半1点を返すのが精一杯。しかし落としてはいけない試合を落としたこと以上に、前半の壊滅的な内容は糸色先生ならずとも絶望させるに充分でした。
 元気がケガ、謙伍が大不調、ノナト大銀杏な現状のFW陣において、ダヴィが出場停止を喰らっていた浦和レッズや京都サンガFC戦は、本来はFWではない大伍とクライトンを2トップに並べたのはまぁわかるとしても、浦和戦では2点入りましたが得点者はMF砂川とDF柴田。全体でもシュートはわずか6本に終わっており、京都戦に至っては最初のシュートが試合開始から1時間後というゆっくりしまくりの攻撃を見せ合計シュート4本と、はっきり言えばこの2トップはぜんぜん機能していません。実際クライトンが中盤に下がった京都戦の後半およびこの試合の後半は、まがりなりにもチャンスが作れていたことからも、クライトンはやっぱり中盤で使うべきではないかと、素人目から見ても思うのですけど、この日もやっぱりダヴィとクライトンの2トップで試合スタート。

 チームで一番テクニックとキープ力のあるクライトンをゴールに近い位置に持ってきて前でのポイントを作りたいからなのか、それともボランチとしては攻撃的なタイプであるがゆえに、守備面を考えると中盤に置いておくのはリスクが高いからなのかはわかりませんが、前者が理由だとしても、そもそも中盤でボールをキープできないため前線にすらボールが行かず、結局クライトンが中盤に下がってくることが多いので逆に前線が薄くなって、結局攻撃できないことが多かったですし、後者だとしても、それで守れていればいいですけど、その代わりに入っている選手、具体的にはマーカスとかマーカスとかマーカスとか、あとマーカスが現状まったく守れていないどころか確実に失点の起点になっているようじゃ本末転倒どころの騒ぎじゃないですし。
 まぁマーカスだけが悪いというわけではもちろんないんですが、とはいえダブルボランチのファーストチョイスが芳賀主将である以上、合い方として「クライトンボランチ」を捨ててまで起用されている期待に応えていると言えるレベルではないマーカスをスタメンで起用したこと、及び強靱な体躯を誇るフッキやディエゴのいるヴェルディの攻撃陣を相手に、DFラインから柴田を外して平岡を起用なんて、まごまご以前にミドル級のボクサーにライト級の選手をぶつけるようなものというか、キング・ザ・100トン対ミートくんみたいなもんと思うんですけどね。で、結果前半だけで3失点。こちらのシュートはゼロ。まぁ見事なだだすべり。
 マーカスと容臺を外して宮澤と柴田を入れ、クライトンを中盤に下げ、宮澤とダヴィの2トップ、平岡を右サイドバックにした後半はいい形をそれなりに作れていました。最初からそうやってろよと思ったのは自分だけじゃないんじゃないかと思います。むろん後半に攻めることができたのはヴェルディが流し気味だったこともあるでしょうし、終始ペースを握っていてもゴールは結局はクライトンの1発だけだったように、最初からこの布陣であれば勝てていたとは言いませんけど、少なくともただの1本もシュートを打てないような無残な状況にはなってなかったように思います。そういう意味ではつくづく残念極まりない試合だったと思います。少なくともヤンツーや去年の三浦さんの采配や選手起用に関してはそれなりにその理由を推測することはできていたんですけど、ここ数戦の起用はちょっとわからない部分が多いです。選手のコンディションなどについてはわからないことのほうが多いので、もしかしたらもっと裏の裏で何か理由があるのかも知れませんが、次の試合以降、それなりに納得できるメンバー構成を期待したいですね。

2008年5月13日

雨は吉兆

2008年Jリーグディビジョン1第12節
大宮アルディージャ 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/助っ人×2
     大宮/切り札

 4試合でできれば勝点6、せめて4は取っておきたいと思っていたゴールデンウィークシリーズは、ふたを開けてみれば勝点4はおろかただの1も獲得できないという、黄金週間ならぬ呆然週間といった感じの札幌は、中3日でアウェイでの大宮アルディージャとの試合を迎えました。相手の大宮は昨季は15位とぎりぎりで降格争いを回避したチームで、昨季のチーム総得点は札幌の持っていた最速記録を塗り替えて降格した横浜FCに次いでリーグで2番目に少ない24得点と、札幌と同様攻撃力に難を抱えるチームでした。J1に昇格した2005年、その翌年の2006年とも似たような傾向だったことを考えれば、残留争いのライバルとなるであろうと思っていたのですが、ところが札幌がキレイに黒い星を並べていくのを後目にゴールデンウィークシリーズでは鹿島に引き分け、ガンバにアウェイで競り勝ち、東京には完敗を喫したものの横浜Fマリノスにアウェイで引き分けと、強豪相手の連戦でも地道に勝点を積み重ね前節までの順位は8位。「裏切り者!」などと理不尽な罵声を浴びせたところで既にその背中は遠く…というかその前に勝手にお仲間意識を持ってんじゃねぇと言われそうですが、とにかくいつのまにかすっかりJ1チームになってしまったのですね。
 さて、大宮アルディージャのホームスタジアムはJFL時代から使用していた大宮公園サッカー場ですが、このスタジアムは収容観客数が12,500人とJ1基準である15,000人収容という条件を満たしていない上、この12,500人というのもあくまでコンクリート席などに隙間なく人間を詰め込んだ場合の「公称」です。とはいえ、実際にはぎゅうぎゅう詰めにしたとしても10,000人も入らず、アメリカ人がよくやる「電話ボックスに何人入ることができるか」という心底おバカな競技みたいにするか、あるいは昔あった清水○彦監督のFlashのネタみたいに二人羽織でもやってたこ焼きを目で食べたりしない限りは(あれオモロかったんですけどジョンランスキーさんどこに行かれちゃったんでしょうね)どうやっても12,500人は無理なのは公然の事実でしたし、そもそも施設自体オープンが1960年ともう半世紀近く前で老朽化も目立っていたため、観客席の増築を含む全面的な改修が施されることになりました。一時はスタジアムがなくなるという話もあったくらいで、それがここまでこぎ着けたのはこのあたりは大宮サポーターや旧大宮市の住民の方々、及びさいたま市の並々ならぬ努力があったのだろうと思いますが、個人的にもこのスタジアムは自分が初めてコンサドーレ札幌を生で見た(試合自体はガッカリな内容でしたけど)り、アルディ君に「リス」コールを浴びせたりといろいろ思い出深い場所ですので、こういう形で生まれ変わってくれてうれしいです。ともかく約1年半以上の工事期間を経て最大収容人数15,500人のスタジアムとして生まれ変わった大宮公園サッカー場は、同時に地元埼玉のFM局である「NACK5」がネーミングライツを獲得、「ナックファイブスタジアム大宮」という名称となっています。ちなみにスタジアムの改修が終了したのは2007年の暮れ。大宮が既にJ1だった頃、札幌はまだJ2でした。父さんは胸やけで、母さんはしもやけだった。わっかるかな~、わっかんねぇだろうな~。
 まぁそれはともかく、札幌にとって大宮とは三浦監督のもとでJ1昇格を果たした2004年以来の対戦で、もちろん今季から本格的に使用されたこのNACK5スタジアムで札幌が試合を行うのは初めて。昨季から札幌の指揮を執る三浦監督にとってもこの試合が初めての古巣との対決となり、2006年を最後に大宮の監督を退いた三浦監督も改修後初めてここを訪れます。
 その三浦監督はここ数試合FWで使っていたクライトンを中盤に下げ、ルーキー宮澤をスタメンで起用。前節ヴェルディ戦でスタメンを外れた柴田をスタメンに戻して、右サイドバックに平岡、累積警告で出場停止の坪内の替わりに池内が左サイドバックに入り、両サイドは左に大伍、右に砂川。怪我や出場停止で欠場者が多い現状ベストと思われる布陣となりました。
 さてさてそのせいか札幌は出だしから快調に攻め込みます。京都戦、ヴェルディ戦と前半まったくシュートが打てなかったのがウソのように開始早々にダヴィが右足でシュートを放つと、その後もダヴィや宮澤が次々とチャンスを作り出します。クライトンが中盤にいるとボールが落ち着くからなのか、それとも普段はスーツの三浦監督が珍しくジャージで指揮を執っていたからなのか、選手の動き出しも良くボールも良く回ります。守備面でも前線からのプレスで相手のミスを誘い、またここ数戦は特によく見られたラインの乱れもなく危ないシーンはほとんど見られません。なんか札幌じゃないみたいです。
 とはいえ、攻め込んではそれなりにチャンスを作ってはいたものの、肝心のゴールを割ることができず。うまく行っているとはいえ90分の間には大宮にペースを握られる時間も出てくるでしょうから、自分たちのペースの時に点を取っておかないとあとあとつらくなるだけに是が非でも先制しておきたいと思っていたところ、前半18分にCKからクライトンの蹴ったボールにドンピシャで合わせたのが、そう、オウン=ゴール選手でした。世界中の至る所の試合でハヤテのように現れてハヤテのように去っていく魅惑の助っ人の出現で札幌が先制します。その後も札幌の勢いは衰えず、ピンチらしいピンチといえばペナルティエリアすぐ手前で相手にフリーキックを与えた(もちろん池内が)くらいで、今季初めてと言っていいほど安心して見ていられる内容で前半を1-0で終了します。

 後半はホームの大宮が攻め込んでくる展開が予想され、相手の時間が多くなってくるであろうことからも、できれば前半のうちに追加点を取っておきたいところでした。ただ相手に攻められるのはいつものことですし、前半の出来から考えれば不測の事態、たとえばエースストライカーが相手DFに頭突きをかまして一発退場したり、右ストレートを叩き込んで一発退場したり、変なイエローをもらって肩をすくめた守護神に2枚目が出て準一発退場したり、ええいああ君からもらい泣きしたり、そんなことが起こらない限りはそう簡単に崩れることはないだろうと思っていたのですが、前半は何となく哀しそうな顔でタイミングのよい攻め上がりを見せ、また何となく哀しそうな顔で相手のサイドアタックを食い止めていた平岡が後半開始早々に足を痛めて負傷交代したのが意外なところでそのトリガーとなってしまったようで、ここから前半とはまるで逆の完全な大宮ペースとなります。ジオン軍で言えばレビルに逃げられたあたりでしょうか。まぁ平岡がいなくなったことそのものが要因というよりは、ゴールデンウィークシリーズの連戦が終わったとはいえ中3日でのアウェイ戦、前半快調に行き過ぎたことで気づかなかった「疲労」に、平岡の退場を契機にみんな気づいてしまったと言った感じでしょうかね。とにかく追いつかれるのも時間の問題かも知れないなどと思われながらも何とかはじき返してきたのですが、ついに後半24分にオフサイドのとりそこねから冨田の折り返しを交代で入ってきたばかりの森田に決められ追いつかれてしまいました。
 もはや体力はすっからかんの札幌にとって、再び突き放すチャンスを作り出せることはそう多くないでしょう。札幌は4連敗中だけに引き分けでもいいと思ってもおかしくはないですし、事実自分もせめて引き分けには持ち込みたいと思っておりました。しかし、三浦監督はそうではなかったようでした。平岡の負傷で交代枠を1つ使っている上、高卒ルーキーの宮澤をスタメンで使った以上、交代枠の1つはそこで使わざるを得ませんし、実際同点にされる5分前にその宮澤に代えて藤田征也を入れています。つまり三浦監督に残された戦術的な交代枠はたった1つしかなかったということですが、その交代枠で使ったのは守備的なマーカスではなく、どちらかといえば守備のあまり得意なほうではない西谷でした。これは紛れもなく「点を取ってこい」というメッセージでしょう。監督はコーチ時代も含め都合6シーズンを過ごした古巣に、どうしても勝ちたかったのでしょうね。
 そしてその監督の強い意志に答えるかのように、引き分け濃厚かと思われた後半40分、コーナーキックからダヴィがニアで合わせてファーに流れたボールに柴田が身体を投げ出して折り返し、そのボールを再びダヴィがぎりぎりのところでゴールに叩き込みました。後半ほとんど唯一と言ってもいいチャンスをモノにした札幌が再び大宮を突き放します。
 冷たい雨が降りしきる中、残り時間の大宮の猛攻も何とか凌いで久しぶりに勝点3を得た札幌。そういえば今季リーグ戦初勝利を上げた柏レイソル戦も雨中での試合でした。雨が降れば勝てると言うべきか、それとも雨が降らないと勝てないと言うべきかはわかりませんが、なんとか勝点を二桁に乗せることが出来ました。

2008年5月19日

ピクシーフットボール

2008年Jリーグディビジョン1第13節
コンサドーレ札幌 1-3 名古屋グランパス
得点者:札幌/宮澤
     名古屋/マギヌン、玉田、ヨンセン

 アウェイで大宮に競り勝ち3勝目を挙げた札幌は、ワールドカップ最終予選によるJ1リーグ中断前の最後の試合となる今節、名古屋グランパスを札幌ドームに迎えました。
 名古屋はJリーグ初年度からの参加チーム、いわゆる「オリジナル10」の1つ。前身はトヨタ自動車サッカー部で、プロ化以来使用してきた「名古屋グランパスエイト」の呼称を今季から「名古屋グランパス」に変更しました(運営会社名は株式会社名古屋グランパスエイトのまま)。Jリーグの発足に際し、プロ化を推進していた木之本興三専務理事(当時)が、地域密着を前面に出すためにチーム名に企業名を使用させないと主張したのに対し、賛同していたのは当時まだJSL2部の弱小チームだった住友金属のみで、他のチームの母体企業は「それでは宣伝にならない」と猛反発する中、トヨタの「ヨーロッパのチームはどこも企業名は入っていない。うちはトヨタの"ト"の字も入れない」という一声で流れが大きく変わったことは、NHKの「プロジェクトX」でも扱われたので有名な話ですし、同時に「グランパスエイト」に"ト"入ってますやんというつっこみもまた有名な話で、さらにこの「エイト」も一般に知られている名古屋市の記章"八"から取ったのではなく、実は「トヨタ」の画数8から来ているとのことなのですが、そのエイトがなくなったことでこれで名実共にトヨタの"ト"の字も入らなくなったということになります。
 親会社が世界のトヨタという豊富な資金力が背景に、世界的なプレイヤーや監督を招聘しながらもメジャータイトルの獲得は2度の天皇杯(1995年、1999年)のみ。ナビスコカップもベスト4止まりでここ3年は予選敗退、レギュラーシーズンでは1996年の2位が最高で、8位前後の中位程度をうろうろすることが多く、その予算規模や西へも東へも遠征しやすい中部地方の中心都市にホームタウンを構えていることなどを考えれば不思議な成績であることから、サポーターの間では「エイトの呪い」と言われていたのですが、そのエイトを取っ払った今季はかつて名古屋に在籍し、ファンタスティックなプレイで観客を魅了した「ピクシー」ことドラガン・ストイコビッチ氏が監督に就任した今季は、開幕戦こそ京都サンガFCと引き分けたもののその後は6連勝を達成。悲願の優勝に幸先のいいスタートを切ったかに思われましたが、その連勝を東京ヴェルディに止められた第8節を境に、6連勝がウソだったかのように3連敗を喫してしまったことから、「エイトの呪いはまだ生きていた」と嘆いたサポーターも多いとか。あれですかね。捨てたのにいつの間にか部屋に戻ってる呪い人形みたいな。オッドアイの毒舌人形なら良かったんですけど。まきますよ。まきますってば。
 まぁWikipediaによれば名古屋は伝統的にゴールデンウィークに弱いらしいのですけど、その後はFC東京に勝利してヴィッセル神戸に引き分けと持ち直し、第12節終了時点で7勝3敗2分と首位の浦和レッズと勝点3差の2位につけています。浦和に離されないためにも下位相手の取りこぼしは避けたいところでしょうが、ところがどっこいなぜか名古屋はこの取りこぼしも伝統的に多いチームで、それが上位争いできなかった所以のひとつなんでしょうが、特に札幌にはあまり分が良くありません。まぁそうは言っても、名古屋はJリーグ初年度以来の16シーズン目、ここまではリーグのタイトルとは今のところ縁がないとはいえ、かといって一度たりともJ2に落ちることなくJリーグ/J1という陽の当たる場所で過ごしてきたのに対し、札幌はクラブ創設してからの13シーズンのうち9シーズンを旧JFLやJ2で過ごしてきたため、そもそも対戦自体がそんなに多くないですし、相性がいいと言ってもここまで3勝2敗1分と特に突出した成績でもないんですが、前回対戦した2002年、そう、出てくる選択肢でことごとくバッドエンド行きの選択肢ばかりを選び続けた札幌が挙げたわずか5勝のうち2勝が名古屋から挙げたものでした。

 で、そんな名古屋の力強いアシストがあったにも関わらず異次元の弱さで当時の史上最速記録を更新して降格したコンサドーレ札幌は、それから6年かかってようやく這い出てきました。セミみたいですね。前節3勝目を挙げたとはいえ現状の成績では成虫の寿命が一年というところまで見事なセミっぷりを見せているだけに、いい気分で中断期間を迎えるためにも相性の良さを生かしておきたいところ。その札幌のメンバーは出場停止だった坪内が左サイドバックとしてスタメン復帰を果たした以外は前節勝利した大宮戦と同じ顔ぶれ。
 試合は開始から前節と同じように札幌がペースを握る展開となり、クライトンとダヴィを中心に何度かチャンスを作ったあとの前半16分、相手ペナルティエリア付近での混戦からのこぼれ球に左足を振り抜いたFW宮澤のシュートがゴール隅に突き刺さり先制します。ルーキーのプロ初ゴールで意気上がる札幌は守っても日本代表FW玉田との1対1をぎーさんが止め、柴田がノルウェー代表FWヨンセンに臆せずぶつかり、平岡は相変わらず哀しそうな顔をして相手の攻撃を抑え、前がかりになっている名古屋にカウンターを何度かお見舞いするなど理想的な展開で前半をリードしたまま折り返します。
 前節も勝ったとはいえ後半は前半のアグレッシブなサッカーが見る影もなく大宮に終始ぺースを握られる展開となり、相手の攻撃に晒され続けていったんは追いつかれてしまいましたが、この試合も後半開始早々にディフェンスラインの乱れからマギヌンにゴールを許して追いつかれてしまいます。その後は再び突き放すチャンスを得ながらも決められず、逆に後半25分にミスを連発して玉田に逆転ゴールを許すとその10分後には吉弘が与えたPKをヨンセンに決められ2点差とされてしまい、結局1-3で破れてしまいました。

 この試合の敗因はいくつか挙げられます。ひとつはもちろん名古屋の選手たちとの総合的な技術の差が上げられますが、大宮戦と同じように体力の落ちた後半に相手の攻撃をほとんど止められなくなってしまったこと。集中力の問題と片付けてしまうのは簡単ですが、集中し続けるというのはけっこう大変な作業です。特に守備というのは刻一刻と変化する状況の中、自分のマークしている選手の動き、ボールの動き、味方の動き、スペースなどを見て相手のプレイを予測しながら、チームの戦術上最適なプレイを出来るだけ早く選択して実行する必要があります。イメージとしては車の運転に近いかも知れません。オレはペーパードライバーですけど普段車を運転される方なら、交通量の多い街中を車で運転する時は集中力がいるし、その状態を保ち続けるのはけっこう難しいのがわかるのではないでしょうか。サッカーの守備も同じように、相手の攻撃をクリアしたと思ったらまたすぐ戻ってきて、何とかクリアしたらまたすぐ相手の攻撃がやってくる、というような息の抜けない状況では、車と同じように事故に遭ってしまう確率も上がっちゃいますよね。
 ということで後ろを楽にするためにも攻撃の時間を増やしたいところなんですが、そもそも札幌はポゼッションして相手を崩すという攻撃パターンはあまり持ち合わせておらず、というかやりたくても出来ないというのが正直なところなのかも知れませんが、とにかく前線からプレッシャーをかけ相手の選択肢を狭めた上で、ラインを上げてミッドフィールドの密度を上げて出来るだけ高い位置でボールを奪い、一気にゴールまで持っていくというもの。そのためにはチーム全体の連動が必要なわけで、体力が落ちて前からのチェックが効かなくなれば中盤も後手に回り、中盤が後手に回ればラインも怖くて上げられなくなり、ラインが下がればミッドフィールドで間延びしてセカンドボールも拾えなくなり、ボールを奪ってもFWまで遠いのでロングボールを蹴るしかなくなる、でもロングボールを蹴りこんだところで中盤との距離が空いてるのでセカンドボールも拾えず、結果相手ボールになってまた攻められ、集中力が切れてミスが起こり失点、という感じです。ミスが1度くらいならまだカバーできるかも知れませんが、2失点目のようにミスが2回も3回も続くとそりゃ決められますよね。玉田のシュートもうまかったですけど、取るべくして取られた失点だったと思います。
 そういう意味では、選手交代もひとつの鍵ではありました。宮澤もゴールはそれはもう美しい弾道のビューテホーなシュートでしたけど、それ以外ではむしろ大宮戦のほうがよかった感じでしたし、前半の最後のほうで既に電池が切れかかってましたから、後半頭から替えるのも手だったとは思うんですが、リードがわずか1点という状況で前節試合中に痛めた平岡の足や週中で風邪をひいた吉弘のコンディションが万全ではないこともあり、監督としてもぎりぎりまで引っ張っておきたかったのかも知れません。ともあれ、前節同様その平岡を交代させた直後に失点してしまったのですから、結果的には失敗ということになるでしょうか。まぁ1点目は平岡が小川をあっさり離してしまったのが原因だったんですけど。

 まぁそんなわけで前半の45分で力を使い果たしたという感じの試合だったわけですが、ただ逆に考えれば、前節の大宮といい今節の名古屋といい、少なくとも45分は中上位のチームを相手でも自分たちのやりたいサッカーが通用しているということでもあります。少し前までは相手にすらなっていなかったことを考えると、進歩は進歩だと思います。まぁそんなもんより勝点よこせと言いたい気持ちもないわけではないですが、この45分を少しでも長く続けられるよう、中断期間にトレーニングを行って欲しいと思います。

2008年5月27日

もしもピアノが弾けたなら/西田敏行

もしもお金があったなら
予算のすべてを補強費にして
選手を集めることだろう
点が取れなきゃアフリカ人
守備が弱けりゃイタリア人
キープしたけりゃブラジル人

だけど僕にはお金がない
話持ってくコネもない
ゴールはいつでも半開き
選手がいるのに破られる
アア アー アア…破られる

もしもお金があったなら
大きなクラブの監督呼び
チームを指揮さすことだろう
J1制覇の賞金や
ナビスコ制覇の賞金や
元日制覇の賞金や

だけど僕にはお金がない
妄想するほど余裕もない
パスはいつでも空回り
15位の夢さえ遠ざかる
アア アー アア…遠ざかる

2008年5月30日

FW探しの旅

 本題とは全く関係ありませんが、「タッチ」や「みゆき」で知られるあだち充先生の作品の単行本累計発行部数が2億冊を突破したそうで、あだち先生が主にご活躍されている「週刊少年サンデー」誌上にて、それを記念した特製トランプの応募者全員プレゼントを大々的に募集しています。サンデー誌上ではシークレット扱いの書き下ろしカード(ジョーカー)以外の全てのカードが公開されており、これまで先生が手がけてこられた数々の歴代作品のキャラクターがカードの絵柄として描かれています。自分は20年ほど前からサンデーを読み続けているので、現在連載中の「クロスゲーム」も含めてあだち作品も多く読んできましたが、こうして歴代キャラを一同に並べられると、どのカードがどの漫画のどのキャラなのかわかりませんでした。

 さて、13試合を終えた段階でコンサドーレ札幌は3勝1分9敗、勝点10でJ1全18チーム中17位でブービーとなっています。順位自体は名実共に降格レース単勝一番人気という評価から考えればまぁ妥当と言いますか、むしろ札幌より下のチームがいることに驚いているといった感じですけど、とはいえこれまでの戦いぶりが妥当だったかどうかという点については、たとえば鹿島アントラーズや浦和レッズ、名古屋グランパス戦みたいに力の差を見せつけられた試合もあった反面、アルビレックス新潟戦やFC東京戦、東京ヴェルディ戦など、勝てていたかどうかはともかく、戦い方によってはもう少し何とかなったんじゃないかという気がしないでもありません。
 もともと札幌が目指すべき順位は15位と、まぁ一見謙虚といえば謙虚な目標なんですが、これまで何度も書いてきたとおりもともとJ2でもそれなり程度だった戦力に毛が生えた程度の陣容で、15位に上がるためには現段階で少なくともあと2チームを抜かなければいけません。その札幌の真上にいる2チームは清水エスパルスとジュビロ磐田という静岡の両雄。札幌と違ってこの順位にいること自体が不思議なくらいの地力は持っていますし、最下位のジェフ千葉も大物監督を招聘してチームを立て直しつつあり、その上さらに大物ストライカーの獲得も噂されていますから、そんな中でもともとJ2でもそれなり程度だった戦力に毛が生えた程度の陣容の札幌が15位を目指すのは並大抵のことではないでしょう。
 とはいえ、かような中においてもたった1でも勝点を積み重ねて行かなければその目標達成もおぼつかないわけですから、これからの課題はいかに勝点を増やすか、というよりはいかに勝点を失わないかという、なんだか後ろ向きな感じではありますが、要するになるたけ負け試合を引き分けに、引き分け試合を勝ちに持っていくと、まぁそんな感じ。

 そのためには今よりもさらにチーム力を上げなければいけないのですが、J2でもそれなり程度だった戦力に毛が生えた程度の陣容の札幌が急にレベルアップするなんてどだい無茶な話。精神と時の部屋でみっちり修行でもすれば別でしょうが、札幌に精神と時の部屋はおろかカメハウスすらありません。コレクションハウスならありますけどあそこで修行したら多分怒られるでしょうから、そうなると一番手っ取り早いのは単純ですが「補強」ということになるでしょう。
 しかしながら、他のJ1下位チームだって当然残留のために補強なり何なり手を打ってくるでしょうから、J2でもそれなり程度だった戦力に毛が生えた程度の陣容の札幌がその上に行くためには、単に補強すればよいという類の問題でもありません。補強はあくまで目的であって手段なのですし、使い古されたネタでたとえるならヤムチャを入れてもサイバイマンと相打ちがやっとなのですから、今の札幌にはそれ相応の力を持った選手が必要です。せめてサイヤ人。
 そしてもう一つ、補強のポイントは前線なのか中盤なのか、それとも守備なのかといえば、早い話全部といいたいところなんですけど、減資後の増資で多少資金に余裕が出たとはいえ、それでも使えるお金は精一杯がんばってもせいぜい2億円に満たない額でしょう。いい選手は当然のように高いですから、この額ではあれもこれも連れてくるのは現実的に無理。なので、重要なポイントに絞って補強ということになるかと思いますが、じゃあ果たしてそれはどこなのかというと、やっぱり攻撃の選手、特にストライカーだと思います。25失点でリーグワーストタイという守備陣のテコ入れも重要だとは思いますが、怪我人もいるにせよ一応の人数は揃っていますから、そうでなくてももともと6人しか登録選手がおらず、うち2人は高卒ルーキー、そのうちの1人はU-19日本代表の常連でチームを離れることも多く、助っ人2人のうち片方は試合に出ればカードもらうし、もう片方は試合に出る以前の話だし、残る2人のうち1人は怪我中、1人は大スランプと、そんな状況。1人で点を取れる選手はいても1人で失点を防げる選手はそうそういないわけですから、優先順位はやっぱりFWとなるでしょうね。
 しかしながら、日本人でガッツリ点が取れるような選手なんてそうそういません。1人そんな選手を知ってますが諸事情により獲得は難しいでしょうし、何より所属元のチームがそんな選手を手放すハズもありません。なので結局は助っ人に頼らざるを得ないわけですが、ひとまずヴィトーリアから18歳のエジソンを半年の期限付きで獲得。181cm75kgといかにも三浦監督の好みそうな長身選手ですが、C契約ですし年齢的にも厳密には「助っ人」という扱いではないでしょうが、フッキ(東京ヴェルディ)も川崎に加入した当初はエジソンと同じく練習生からのC契約で、その年には少ない出場時間で天皇杯での2ゴールを含む3ゴールを挙げたように、若いからといって活躍できないかというとそういうわけでもありません。かつてJ2得点王を獲得したエメルソンも、札幌に来た時は18歳でした。実際は23歳だったみたいですけど。関係ないけど宮の沢に「絵地尊」って創作料理のお店があるんですね。
 とはいえフッキやエメみたいなレベルを求めるのもあまりにも酷な話ですから、やはり札幌としてはしっかり点の取ってくれるストライカーが欲しいところ。つーか本来ならバイーアのクラブ得点記録を持つノナトがその役割を担うハズだったのですけど、調整の失敗や怪我もあってデビューが遅れに遅れ、ようやく迎えたリーグ戦初試合のFC東京戦で、終了間際のわずか4分の出場ながら、素人のおっさんレベルの愉快なクロスを放つという別の意味で衝撃的なリーグデビューを飾り、それ以来ベンチからも姿が消えました。助けてくれない助っ人を雇っておく余裕のない札幌においては、早急に助けてくれる人を探さないといけないわけですが、その候補としてポルトガルの名門ベンフィカ・リスボンにも所属していたことのあるアンデルソン・ルイス選手がコンサドーレの練習に参加しています。名前だけ見ると神罰の地上代行者であり桃髪のツンデレ少女でもあるといった感じですが、実際は30歳のおっさんです。187cm80kgとこれまた三浦監督好みの長身選手。道都大学とのテストマッチではわずか45分の間に6ゴール2アシストと実力の片鱗を見せていますが、現在は所属チームがなくフリーとのこと。相手が北海道チャンピオンズスーパーリーグで90分をフルに戦ったあとの道都大学だったという点には留意する必要があるとはいえ、45分で8得点に絡むパフォーマンスを見せられる選手は少なくとも今の札幌にはいないので、実力はあるんだろうとは思いますが、欲をいえば今札幌に必要なのは、1人で局面を変えられるスーパーなストライカーだと思いますので、果たしてアンデルソンがそういうタイプかどうかってところでしょうね。「耐えていれば、アイツが点を取ってくれる」と思えるような選手であれば、守備陣もけっこう楽だと思うんですよ。
 ただ、いい選手を獲るにはお金が必要なのは当然なんですが、かといってお金をかけさえすればいい選手が獲れるわけではないですし、能力は高くても日本のサッカーやチーム戦術、そして日本の環境そのものに合うかどうかなど、いくら吟味しても最終的にはフタを開けてみないとわからない部分もありますからね。難しいところです。三上強化部長が南米へ高飛び…じゃなくて視察に行ったようですけど、うまいこと自分でキープして自分でドリブルして割と周りも使うけど最後に決めるのはやっぱり自分で、フリーキックもワンステップで決めてPKもワンステップで百発百中で、ラーメンが好きで遠征帰りの電車の中で酔っ払ってサポーターにちょっかいかけて奥さんに追いかけ回されるようなストライカーが獲れれば最高ですね。

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