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2008年7月15日

ミラー対ミウラ

2008年Jリーグディビジョン1第16節
ジェフユナイテッド市原千葉 0-3 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/元気、ダヴィ×2
     千葉/新居は決めませんでした

 前半戦のひとつの大きな山場となるであろう、「裏天王山」の決戦。17位のコンサドーレ札幌は、最下位のジェフユナイテッド市原千葉とアウェイで対戦します。両チームの勝点差はわずかに1。負ければ順位は逆転され最下位に転落する札幌と、勝たなければいよいよもって初の降格が現実味を帯びてきてしまう千葉。どちらも負けられない試合です。「だったら引き分けでいいじゃん」と生きたいところですが、ここのところなぜか16位から上のチームが仲良く手を繋いで下2チームから離れて行ってしまっている状況では、まだリーグも半分以上を残しているとはいえ引き分けは単なる共倒れ以外の何物でもありません。まさに血で血を争う対決…と書けばカッコイイ感じですけど、まぁ実際はなんつーか、はなくそのなすりつけ合いに近いです。
 ともあれ大事な試合なことは間違いないのですが、札幌はチームの要であるクライトンが累積警告で出場停止。ここまでのところでチームのアシスト王…というよりはほとんどの得点が何らかの形で彼を経由している札幌にとって、クライトンを欠くのは南葛SCが翼くんを欠くのと同じこと。相手の千葉も中断期間にイングランド・プレミアリーグの名門リバプールでヘッドコーチを務めていたアレックス・ミラー氏が監督に就任。それまでナビスコカップを含めて14試合で1勝しか出来なかったチームが、ミラー監督就任以降は8試合で負けたのはわずかに2試合。札幌もまた、5月25日に函館で行われたナビスコカップ予選でミラー監督率いる千葉と対戦し1-2で負けております。しかも相手にはこの試合でも2ゴールを挙げたように、札幌戦をやたら得意としている"King of 房総"新居辰基がいます。
 そんな札幌にとって唯一の救いは、ここフクダ電子アリーナ、通称「フクアリ」では未だ負けなしであること。ナビスコカップでの千葉とのアウェイ戦でも、勝てはしなかったもののスコアレスドローと、ここまでのところただひとつだけの無失点試合を見せているスタジアムです。というか、今まで行われたフクアリでの試合で失点したのは第86回天皇杯(2006年)のアルビレックス新潟のみ。つまり優也のチョンボでしか点を取られていないのです。
 で、この試合でも開始に2分でセットプレイからのこぼれ球を中山元気が押し込んでとっとと先制しました。普段はセットプレイのキッカーを務めるクライトンがおらず、二番手の砂川誠もベンチスタートということで、この試合でセットプレイのキッカーを務めたのはトップではほとんど記憶にない藤田征也。その最初のフリーキックで、しかも場所もゴールまでは40メートル以上という遠い位置から。もちろん征也のキック精度はユース時代を見てても決して悪くはないですし、札幌のセットプレイだけはJ1でも通用するのはわかってましたけど、それでもお世辞にもビッグチャンスとは言えない状況でしたから、まぁファーストシュートまで持っていって勢いをつけられればいいな、くらいにしか思ってなかったんですよ。相手がクリアしきれずボールが元気の前に転がってきてすら、これまで何度も見たように焦ってクロスバーの上に飛んでいくボールのイメージが自分の中にあったわけです。それが入っちゃうんだもんなぁ。
 ただ先制したとはいえその後は早めに追いつきたい千葉のペースで試合が進みます。が、フクアリの女神(メガネっ娘)は守備面でも札幌に微笑んでいたようで、フリーでボールを持った新居が狙い澄ましてアウトにかけたミドルシュートや、大きな展開から青木が放ったシュートはギリギリでゴールを逸れていきます。逆に13分、自陣からの平岡のパスを受けたダヴィがマークに突いたボスナーをワンフェイクで置き去りにして放ったグラウンダー気味のミドルシュートがゴール枠ぎりぎりに決まり、札幌が追加点を得ました。つーかこの時も自分はてっきりサイドネットに突き刺さってゴールを外れたと思ってたんですけどね。「あ~残念」とか思ってたらなんかダヴィは喜んでるし、岡田主審はなにやら書き込んでるし、アシスタントレフェリーはセンターサークルに戻っていってたので、どう見ても得点が認められたということなんですけど、この時間帯で2得点なんてぶっちゃけありえないという先入観のせいか、電光掲示板の得点表示が「0-2」と変わるまでのオレは、きっと豆が鳩鉄砲食らってたような顔をしていたと思います。
 とにかく望外のリードを得た札幌。こんな展開になるとはつゆほども思ってはいませんでしたけど、2点を追う千葉もおそらくはそうだったのでしょう。前述の通りミラー監督になってから2試合しか負けていない千葉ですが、その2敗というのはナビスコカップの準決勝名古屋グランパス戦(0-1)と、前節の東京ヴェルディ戦(0-3)。つまりここ2戦は連敗しているということです。2点リードしているとはいえ札幌が終始押しているという展開でもなかったですから、もし連敗中じゃなければ、あるいはこの展開でも「落ち着いて1点ずつ取り返そう」という心境になっていたかもしれません。しかし気持ちが後ろ向きの時はなかなかそう切り替えが出来ないもので、焦りばかりが募っているのか、攻撃にもまったく迫力がありません。札幌の「フロンターレ2000年後期型センターバック」は空中戦と肉弾戦にはめっぽう強い反面、スピードへの対応は苦手なので、新居をしつこく使われてきたらいやだったんですけど、あくまでレイナウドへのロングボールにこだわり、結果箕輪に吹っ飛ばされるだけ。その後レイナウドは箕輪のマークから逃げたら西澤画伯にぷちっとやられてあえなく途中交代となりました。
 逆にこの1点で精神的にはぐっと楽になったであろう札幌は、別段無理をせずカウンター狙いに徹します。守備の出来自体は普段より格段にいいというわけではないのですが、精神的な余裕のぶんだけ守り方にも余裕があるのに加え、千葉が攻撃に迷いがあって展開が遅いこともあるのか、インターセプトがよく決まります。リーグ戦での順位が示しているとおり、どちらもあまりうまくいっていないチーム同士の対戦ではありますが、ここまでのところ千葉のほうがよりうまくいっていないという感じで、うっかり2点をリードしてしまい、余裕どころかむしろオロオロしていたサポーター(主にオレ)もようやく落ち着いてきた頃でした。なにやら札幌のベンチで交代の準備をしているところが目に入りました。既にビブスを脱いでユニフォーム姿になっているその背番号は29番。ディビットソン純マーカスです。なんですと?
 いくら何でも前半もまだ終わってないうちから守備固めに入るとは思えませんから、きっと何かアクシデントがあったに違いはありませんが、サッカーではそういったアクシデントをきっかけに試合の流れが変わってしまうことも珍しくない上、交代準備をしているのは試合の流れを変えてしまう最も大きな要因である「やらかし度」で不動の評価を得ているマーカス。アンパンマンの予告編風にいえば「そんな時、純マーカスが現れて大変なことに!」って感じです。
 結局怪我をしたらしいアンデルソンと交代で投入されたマーカス。やらかしてしまうのは別にマーカスに限ったことではなく、この試合でも芳賀主将が一発とってもヤバいのをやらかしましたし、吉弘やぎーさんも直接失点に繋がるようなミスをやらかしてきてるんで、やらかすこと自体は別にいい(ほんとはよくないけど)し、カウンターを潰したりいい守備もあったんですけど、とりあえず出てきて早々にカードもらうのだけはやめてくんないかなぁ…。つーかあとから公式記録見てみたらC2(ラフプレイ)じゃなくてC4(繰り返しの違反)って、防げるカードじゃないですか。
 まぁそんな感じでアクシデントもあり、終了間際にはボスナーの直接FKがクロスバーを叩きましたが、元気のシュートはゴールに入れたフクアリの女神(メガネっ娘)はボスナーのシュートは外に出して事なきを得、前半は2点リードで終了します。

 後半、2点を追う千葉がいっそう前がかりになって来るでしょうから、札幌はこれまで通りしっかりディフェンスをして、そして出来れば早い時間に追加点を奪い、千葉の心を折ってしまうことがベスト…なんですけど、そんな戦い方が出来るなら今頃こんな順位にはいないよね…と思ってたらそれやっちゃうんだもんなぁ…。レイナウドのドンピシャのヘディングをぎーさんがファインセーブで何とか防いだり、画伯がやらかしたりと何度かピンチを招いたあとの後半15分、坪内がヘディングで前に送ったボールに抜け出したダヴィが右脚で決めてこの試合2ゴール目となる3点目をゲットしました。
 この得点は単なる3点目という以上に大きかったと思います。この得点の少し前、千葉が巻と米倉を2枚同時に投入し、仕切り直しと共に勝負をかけようとしたその出鼻を完全にくじいた格好になりましたからね。千葉にとってはまさに「つうこんのいちげき」といった感じでしょう。なんですかこれ。なんか強いチームみたいじゃないですか。
 まぁダヴィの個人突破があったとはいえ、クライトンなしで3点を取ったことは紛れもない事実。これは攻撃面で大きな自信となるでしょう。そうなると次に札幌に求められるのは、当然守備面での自信です。つまり「無失点」で終えること。ここまでリーグ戦全ての試合で失点してきた札幌ですが、この試合を無失点で終えると、画伯と箕輪が組んだ清水エスパルス戦の後半から、まだ失点していないということになります。フロンターレ2000年後期型センターバックはけっこういけるんじゃないかという気になれます。
 その後はやけくそになった千葉に攻め込まれる展開が続きますが、攻撃が迷走気味の千葉は巻も惜しいシュートを放った以後はすっかり試合からいなくなり、谷澤や米倉が時たまいいところを見せるのみ。
 試合の大勢は決した中、三浦監督のやるべきことはただひとつ。そう、池内友彦を投入することです。ここまで共に1勝ずつを挙げている当別王者決定戦の第3ラウンドを開催するべきなのです。そして監督はもちろん最後の交代カードとして池内を送り出し、ちゃんと空気を読んでくれたのですが、時間が短すぎてノーコンテスト。対戦成績1勝1敗のまま、勝負はいよいよ最終決戦にまで持ち越されました。会場はお互いの家族が見に来るであろう厚別競技場。これ以上ない舞台です。
 というわけで試合はこのまま注文通りに無失点で凌ぎきり、3-0で終了。試合後の会見で三浦監督が不満を口にしていたとおり、内容的には決してよくはありませんでした。シュート数19本対9本というスタッツが示すとおり、全体的に攻めていたのは千葉ですし、決定的なシーンも決してなかったわけではありませんでした。しかしそのうちの1本すら決まらなかったのに対し、それほど多くのチャンスを作ったわけでもない札幌は、9本のシュート中3本を決め勝利。サッカーではこういうことは珍しくないですが、ここまでうまく行っちゃうとやはり蘇我と蝦夷は相性がいいのではないかと思ってしまいます。ダヴィもJ1では初となる1試合2ゴールはもちろん、ミドルシュートとGKとの1対1というこれまではどちらかといえば苦手としていた形からゴールを決めたのも、蘇我馬子ってことだったんだと思います。

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コメント (2)

Amigo:

>この時間帯で2得点なんてぶっちゃけありえないという

TV観戦でしたが私も最初サイドネットかと思いました。先入観とは恐ろしいものです(笑)。

maru:

蘇我馬子のサゲ。最高です。
「そがのうまこ」が一発変換できるMS-IMEも最高です。

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