だいぶ前の話になりますが、地元メディアにコンサドーレ札幌が女子チームを創設するプランを明らかにした、という話が載っておりました。その後はこれについて具体的な話はこれといって伝わってこなかったのですが、先日の日刊スポォツに矢萩社長が改めて前向きな姿勢を示したという記事が載っていました。
女子のカテゴリについてはご存じの方も多いと思いますが、現在Jリーグのチームでもいくつか女子チームを持っているところもあり、浦和レッドダイヤモンズやジェフユナイテッド市原千葉、アルビレックス新潟、東京ヴェルディといったチームが女子チームを保有しなでしこリーグに参加しています。これらのチームと同じように、コンサドーレ札幌も女子チーム創設ということになれば、これまでの第一種から第四種のカテゴリに加え、新たに女子のカテゴリが加わることになります。ただし札幌の場合はいきなりなでしこリーグへの参加を行うわけではありません。その計画はこうです。まずは中学1年生の女子を募集してU-15チームを作ります。最初は1年生のみのチームとなりますが、彼女たち一期生が中学3年生になった頃、全学年が揃うことになります。そして一期生が中学を卒業し、高校生になるとまた彼女たちを中心にU-18チームが誕生します。これまた1年生のみのチームとなるでしょうが、一期生が高校3年生になることにはまた全学年が揃います。そこから先は他のチームと同じようになでしこリーグへの参加も視野に入れていくそうです。決して簡単ではないでしょうし、すんなりといったとしても最低で6年はかかる計算。6年といえば札幌がJ2に落ちて再びJ1に上がるのと同じくらいですから、壮大な計画と言えるでしょう。名付けて「逆光源氏計画」とでも言いましょうか。
個人的にはいよいよ…というよりは「ようやく」といった感があるのですが、問題があるとすれば今の札幌に女子チームを運営していけるだけの体力はあるのか、ということでしょうか。来年は再びJ2に舞い戻ることが確定しており、スポンサー料の減額などで緊縮財政となることが予想されます。加えて、先だっての北京五輪で、サッカー日本女子代表チームがベスト4に進出するという快挙を達成したにも関わらず、西の強豪として知られた田崎ペルーレが休部を発表と日本の女子サッカー界を取り巻く環境は決して順調とは言えません。
ただ、逆にそうであるからこそ、なおのことJリーグのクラブチームが女子チームを持つことの意義があるのではないでしょうか。田崎ペルーレはその名を関している親会社の田崎真珠の部活チームです。企業チームに所属している選手は社員としての身分が保障される反面、親会社の業績の影響を受けやすくもあります。ペルーレの休部もまさに田崎真珠の経営悪化による煽りをモロに受けた格好ですし、サッカーに限らず過去の業績悪化によって解散した企業チームは枚挙にいとまがありません。とはいえクラブチームには練習場所や運営費の問題など程度の差はあってもクラブチームなりの悩みがあります。そんな中で、「サッカーをする」という点においてはしっかりした環境の整っているJリーグのクラブが女子のチームを持てば、万事解決とは行かないまでも多くの問題をクリアすることができるでしょう。
で、残る問題はといえばまぁそのJリーグチームの体力的な部分。トップチームへの人材供給というお題目があるユースチームとは違って、女子チームは直接的にトップチームの強化に通じる要素はほぼありません。そうでなくても貧乏暮らしなコンサドーレにおいて、そんなものが必要なのか、という議論は少なからずあると思います。ただ、Jクラブはチームの強化に繋がることだけをやっていればいいかというと決してそうではないと思うのですよね。ホームタウンを構える地域に対し、サッカーを通じてクラブやサッカーというスポーツそのものの価値を高めていく必要はあると思うわけです。その一環として、地域の「サッカーをやりたい」という女の子達に対し、コンサドーレの名前においてその場を提供する、そこで育っていった女の子達はやがていろんなところでサッカーを教えるようになる、そしてその子供達がまたコンサドーレの名前を背負っていく、そこまでうまく行くかどうかは別として、そんな流れもできるでしょう。既にユースにおいてはそうなりつつありますよね。育成部のU-12にいる相川GKコーチはユース出身です。
そもそもユースにしても、チームの強化という面において、それをユースの強化に求めるのは実はあまり効率的ではありません。コンサドーレが1年にかけるユースチームの費用はだいたい1億5千万円程度。某執事の借金と同じくらいの金額です。極めて単純な計算をするなら、ユースチームの一世代が入団してから高校を卒業するまで、U-15から数えれば約9億円、U-12から数えると約12億円となります。しかし、それだけのお金をかけても、ユースからトップチームに昇格できるのは良くて1世代に1人か2人、年によってはゼロという場合も少なくありません。昇格した選手が最終的にレギュラーを勝ち取って活躍できる率はもっと下がるでしょう。収入が30億くらいあるチームなら1.5億なんてへのへのかっぱなんでしょうけど、去年の実績で12億ちょいの営業収入しかなかった札幌にとって、その1割以上に当たる1.5億という金額は決して小さい数字ではありません。1.5億もあればレンタルならそれなりの実績のある助っ人を少なくとも1人は引っ張ってこれるだけの金額ですから、単純にトップチームのこと「だけ」を考えれば、「投資」としてはかなり非効率であると言えるでしょう。
しかしそうであっても、ユースで育った人材が北海道のサッカーの全体的なレベルアップに貢献できれば、またその中から優秀な人材が数多く出てくることになると思います。ものすごく長い目で見る必要はありますけど、「裾野を広げる」ことはとても大事なことですし、そうするだけの価値が北海道にはあると思うのですよ。2007年度の日本サッカー協会の登録選手数を都道府県別で見た場合、北海道が何番目かというと、実は第3位です。第1位は東京都で、80,183人となっています。第2位は58,107人の埼玉県。北海道は47,328人で、サッカーどころとして知られる静岡県(46,917人)より上なんですよ。ちなみに登録チーム数では全国2位(1位は東京都)。北海道でサッカーをやってる人は意外に多いということになりますが、ところがこれを人口に対する登録者の割合に直すと、1位はさすがの静岡県で1.24%、以下熊本県、佐賀県、島根県、大分県、沖縄県、鹿児島県、徳島県、山梨県、栃木県、長崎県、滋賀県と、割と九州地方が強く、北海道は0.84%で13位に留まっています。ざっくばらんなデータではありますが、乱暴にいえば登録者が多い割にはまだまだ一般的ではない、ということでしょうか。しかし同時にそれはまだまだ開拓の余地があるということも言えると思います。そしてそれが、市や道から金銭的な支援を受けているコンサドーレにとって義務とも言えるもの。逆に「自治体からの補助金でユースチームやレディースチームを運営する」と割り切っちゃっえば、堂々と補助金をもらえると思うんですけどね。要するに、「サッカーを通じた青少年育成事業を自治体から委託されてます」と考えれば、あら不思議、税金泥棒が一転して地域貢献の担い手に。ばんざーい。
なんにせよ、「ただ単にプロチームがある」というだけで終わってはいけない、と思う今日この頃。それが私がここにいる理由、あなたがここにいる理由。
ところで、フットサルの個人登録者数は24,875人は北海道が全国トップであります。2位の東京が6,913人ですから、その3倍以上というダントツの数字です。にもかかわらず、全日本フットサル選手権での北海道代表チームの成績は、2006年の第11回大会で道リーグのアルーサがベスト4まで進んだのが最高で、13回中半分近い6回もの優勝回数を占める東京に大きく水を空けられています。フットサルのプロ化が行われる以前は、「東京都大会決勝が事実上の全国大会決勝」と言われるほどのレベル格差が大きかった日本のフットサル界で、フットサル中心地として名を馳せていた府中市なんか、日本代表選手がフットサルの市民大会に出てたこともありましたからね。つーか、オレみたいな超がつくド素人が当時現役の日本代表だった相根澄(さがねきよし)とマッチアップして、何が起こったのかわからないほど一瞬で抜かれて大笑いしたのもいい思い出です。
まぁそれはそれとして、フットサルが盛んなブラジルでは、フルコートのサッカー選手でも小さい頃にフットサルをやっていたという選手は多いです。北海道でのフットサル人口の多さは、冬の間は外でサッカーができないことも関係しているのでしょうが、狭いコートで行われるフットサルはテクニックや判断力を磨くのに有効ですし、スライディングタックルやショルダーチャージもフットサルでは禁止されているため、女子も比較的プレイしやすい競技でもありますので、その競技人口の多さをうまく北海道サッカー界全体の発展に繋げていければいいと思います。
幸い、ナマーラ…じゃなかったエスポラーダ北海道がFリーグに加盟することになり、北海道にも待望のプロのフットサルクラブが誕生しました。フットサルで鍛えた子供たちがそのままフットサルのプロを目指すもよし、外のサッカーで技を生かすのもよし、いろいろな道筋ができることはいいことだと思います。
もっとも、エスポラーダは奥大介が関わっている限りオレは絶対に応援しませんけど、だからといって活動そのものに文句をつける気はまったくありませんので、是非とも「フットサル王国」の名を冠するための活躍をしてほしいと思います。
コメント (2)
やっぱりあれですか。
奥大介は「おのれ、俺王さまの敵!」ですかw
ユース出身選手を含む元コンサ選手の積み重ねは、今でもじわじわと厚みを増してきていると思いますが、今後はますます楽しみですよね。
岩教大にたくさん進んでいる元ユースっ子たちが軒並み道内のサッカー指導者になるかと思うと、ほんとワクワクします。
睦史がコンサに再びかかわってくれているのも嬉しいことでした。
訓ちゃんも最近はすっかりユース担当スタッフの度を強めているみたいに見えます。
投稿者: あきっく | 2008年11月18日 23:31
日時: 2008年11月18日 23:31
読み応えのある話ですね。
そういえば最近、スカパーでFCバルセロナの野球チームの話をやってました。
総合スポーツクラブという道は国内では浦和や新潟が先を行ってますが、札幌でも地道に進めていければいいですね。
さすがに今の段階でコンサドーレがファイターズと野球の試合をするというのは想像の斜め上ですけれど。
投稿者: m.ku | 2008年11月20日 23:32
日時: 2008年11月20日 23:32