2009年Jリーグディビジョン2第1節
コンサドーレ札幌 0-1 ベガルタ仙台
得点者:札幌/なし
仙台/菅井
いよいよ開幕した2009年のJリーグ、コンサドーレ札幌は2004年以来5シーズンぶりとなるホームでの開幕戦。相手は昇格候補の最右翼といわれるベガルタ仙台と、いきなり難敵を迎えての試合となりました。昨季入れ替え戦で涙を呑んだ悔しさを晴らすべく、手倉森監督体制2年目となる今季は昨季からのメンバーを中心に、アジア枠として韓国Kリーグの水原三星から朴柱成を、ポンチ・プレッタからFWソアレスを、横浜FCからエリゼウを獲得。上積みという意味では理想的な戦力で開幕を迎えました。
迎え撃つ札幌はご存じの通りエースストライカーのダヴィが名古屋グランパスに移籍したものの、その際に発生した3億円ともいわれる「D資金」で大黒柱クライトンの残留に成功しただけでなく、元U-20ブラジル代表FW紀梨乃と元コロンビア代表MFダニルソン、さらにはアジア枠で元韓国代表DF趙晟桓を獲得。昨季川崎フロンターレから期限付き移籍となっていた箕輪義信も完全移籍となり、札幌がJリーグに参入してから初めてレンタル選手なしの陣容となりました。日本人は若手主体で未知数な部分が多いながらも、経験豊富な石崎・ノブリン・信弘監督を迎え入れた札幌を昇格レースのダークホースとして挙げる声も少なくなく、これからのシーズンを占う上でもこの札幌対仙台は重要な一戦です。
その注目の試合にスターティングメンバーとして名を連ねたのは、GK佐藤優也、DFは右から西大伍、趙晟桓、吉弘充志、西嶋弘之。MFはボランチにダニルソンと上里一将、紀梨乃の1トップにやや下がり目で左に岡本賢明、右に石井謙伍と並び、そしてトップ下でピッチを支配するのはもちろんクライトン。平均年齢は23.64歳というもぎたてフレッシュな布陣を象徴するかのように、キャプテンマークを巻くのは史上最年少で主将となった22歳の上里一将です。
その上里がコイントスをすっかり忘れてレフェリー全員から苦笑されるほほえましいアクシデントで始まったこの試合、立ち上がりの1分にセンターサークル付近で得意の尻技で相手からボールをふんだくったクライトンがすぐさまオープンスペースにパス、そのパスに自慢の快足を生かして追いついた紀梨乃が絶妙なクロスを上げるとニアサイドに飛び込んだ謙伍が頭で合わせます。惜しくもサイドネットになったものの、1人がニアに飛び込むという形はキャンプでもやっていましたので、石崎サッカーの一つの形ということなんでしょう。
その後もクライトンを中心に何度も仙台ゴールを脅かしますが、枠を捉えきることができず。序盤ペースを握られていた仙台も、中を固めながらも高いラインを保ち、ボールを奪ったら一気にカウンターを狙うシーンが出てくるようになります。それでもペースとしては札幌ながらも、エリゼウを中心とした堅い守備で仙台もゴールを許しません。クライトンがJ2で反則クラスなら、このエリゼウも充分J1でやっていけるレベルでしょう。そんな助っ人たちのプレイを中心にして、まさにがっぷり四つといった感じの攻防が繰り広げられます。第三者視点で見ればきっと楽しい試合じゃないでしょうか。J2だって捨てたもんじゃない。
その一方で、大伍のポカから生まれたピンチをファインセーブで救った優也がそのCKでかぶって斎藤にどフリーで合わせられるという、忘れた頃にやってくる札幌らしさも見られ、危なく失点は免れたもののこればっかりはそうそう治るもんじゃないんだなぁと思わせられもしたわけで。点が取れそうで取れない中前半はスコアレスのまま終了。
両者のこの試合にかける気合からすれば、おそらく1点が勝負になるだろうと思われた後半、それだけに先制点こそが重要というのは札幌もわかっており、現時点でさほど多いとは言えないものの、それでも持てるあの手この手で仙台ゴールをこじ開けようとしますが、やはりここでも立ちはだかったのが仙台のエリゼウ。ちなみに仙台エリはミルキィローズの中の人であり、そのミルキィローズは主人公のはずのプリキュアが5人揃ってなんとか倒すような敵を1人でひねり潰すようなキャラでしたが、そんなミルキィローズのごとく紀梨乃とのマッチアップを制しつつサイドからのクロスもことごとく跳ね返し続けます。
前半以上にじりじりとした展開が続くなか、先に点を取ったのはアウェイの仙台でした。66分、札幌の右サイドでのペナルティエリアやや外からの直接フリーキック、梁勇基が蹴ったボールは逆サイドに流れたそのボールにピンポイントで菅井に合わせられ、ついに均衡が破れてしまいました。
ビハインドを負ったノブリンは立て続けに選手交代を行い、ノブリン信者のオレから見ればこれがもういちいち納得できる素敵采配。しかし選手もどうにかして点を取ろうとはしているのですが、「大事にいこう」という気持ちが強すぎるのか打ってもいい場面でパスを選択してしまうことが多く、逆にそれで手詰まりになってから無理目のシュートを打たされるという悪循環。林の弱点はアゴが汚れたら力が出ないことなのですが、結局攻めてはいるもののその弱点を突くことすらできず、慌てさせるようなシーンはほとんど作ることができないまま試合は終了。開幕白星スタートを飾ることはできませんでした。
さて、全体としてはやっぱりチームの熟成と経験の差が出たのかな、という感じでしたね。そういった面をひっくるめた完成度でいえばやっぱり仙台のほうが上といわざるを得ません。まぁ新チームとなってからまだ2ヶ月も経っていませんから、逆にいえばその状態で仙台を相手にあそこまで(ホームアドバンテージもあるにせよ)やれたというのは決して悲観することではないと思います。まだまだ課題も多いですが、楽しみなシーズンになりそうだな、という予感はありますね。2004年の開幕戦でも同じことを感じたというのはなるべく考えないことにして。
というわけで新戦力についての感想ですが、紀梨乃はこれまでのテストマッチでもまだ得点を挙げていないこと、そしてこの試合を見てもどうやら純粋なストライカーという感じではなさそうですが、それでも67分の決定的なシュートは紀梨乃ならではのものではないかと思います。入らなかったのは林を褒めるしかないでしょう。うちにいた時やってくれよというのはまぁおいとくとして、ダヴィのようななんか人じゃない感じの強さはないものの、ダヴィと同じように前線から積極的にプレスをかける様は、ワントップというよりはワンワントップ。そういえば走り方が何となくビジュに似ています。でもポストは結構うまかったですね。
ダニルソンは攻撃面に関してはイマイチなところが多かったものの、守備に関してはほぼ合格点と言えるでしょう。得意のミドルシュートも不発…いや厳密に言えば正確に紀梨乃をヒットしたのがありましたが、まだその実力の全てを見せているわけではない感じです。こちらも日本のサッカーに慣れてくればもっといいパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
最後に趙晟桓は、落ち着いていましたね。鹿児島での清水エスパルスとのテストマッチの時は戦術的なトレーニングをあまりしていなかったせいもあるのかあまり感じなかったのですが、最終ラインからのビルドアップの意識がとても高く、ただ単にクリアするのではなくなるべくいい形で味方に繋げようというプレイが随所に見られました。しかし、それでも最終ラインでボールを持っているととても怖く感じるのはきっとオレがコンサドーレに慣れすぎているせいだと思います。元韓国代表というのは伊達じゃないということですね。
ところで、ゴールのあと看板を超えてホヴァリングステージから落ちてしまった仙台の菅井選手は本当に大丈夫だったのでしょうか。下はコンクリートだしけっこうな高さはあるし、コンサドーレ札幌が札幌ドームを使用し始めた2001年夏から、同スタジアムで行われたコンサドーレの試合はほとんど見てきましたけど、看板超えて落ちていった人は初めて見ましたね。ケガがなくて何よりだったと思いますが、ひとまず今後コンサドーレがやるべきこととしては、安全対策という観点から「札幌ドームでは看板を飛び越えないでください」ということを徹底してもらうと同時に、「ゴールを決めて喜びのあまり看板を飛び越えて札幌ドームの奈落の底に落ちていく菅井さん」を罰ゲームのネタとして取り入れることが重要だと思います。