2009年Jリーグディビジョン2第2節
サガン鳥栖 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/砂川、紀梨乃
鳥栖/島田
ホームでの開幕戦を落とした札幌は、今節はアウェイでのサガン鳥栖戦。ヴァンフォーレ甲府、横浜FC、コンサドーレ札幌と2004年までに最下位を経験したチームはその後J1に行っているのですが、2002年に最下位だった鳥栖だけは2006年の4位が最高順位。モンテディオ山形がJ1昇格を果たし、1999年の2部制導入時点でのJ2、いわゆる「J2オリジナル10」の中で唯一J1未体験のチームになってしまいました。もっとも、甲府も横浜FCも札幌も結局仲良くJ2にいるのですけど、なかなか壁を突き破れない理由はやはり資金的なもの。選手の育成については定評のあるチームながら、活躍した選手はすぐに引き抜きに合ってしまい継続的な強化ができないことが大きく、今季もFW藤田祥史が大宮アルディージャに移籍となり、得点力ダウンが懸念されています。ただし守備陣は柳沢将之(セレッソ大阪)、磯崎敬太(ベガルタ仙台)、山田卓也(横浜FC)と実績のあるベテラン選手を補強、攻撃陣は大宮からマジカルレフティー島田裕介を、ブラジルのコリンチャンス・アラゴアナからトジンというアルゼンチン顔のブラジル人選手を期限付きで獲得しています。開幕戦ではセレッソ大阪を相手に1-4と大敗しましたが、相手は優勝候補の一角ということで、切り替えてホーム開幕戦のここは初勝利を挙げたいところでしょう。
そして開幕戦は終始押し気味に進めながらもセットプレイでの一発に泣いた札幌は、前節から少しスタメンをいじり、仙台戦では紀梨乃の1トップだったFWを宮澤との2トップにし、2列目には大伍とクライトン、右サイドバックに征也という布陣。ポストのうまい宮澤を紀梨乃の相方において紀梨乃になるべく前を向かせてプレイさせようという狙いがあるのでしょうが、札幌に戻っての練習はいきなり大雪に見舞われろくすっぽ練習すらできず、結局まともな練習は11日からの熊本でのミニキャンプから。泣きっ面に蜂といいますか、グラップラーに刃牙といいますか、とにかくコンディション的にも戦術的にも万全とは言い難い調子でベストアメニティスタジアムに乗り込んだ札幌は、開始からやはり何となく身体が重そうな感じ。クライトンがボールを持っていればそうそうボールを奪われることはないですし、散らしのパスも正確なのでボールキープは札幌が優勢なのですけど、じゃあどうやって鳥栖のゴールをこじ開けるのかというと何をどうしようというのがあまり見えず、2トップでの練習があまりできなかったためなのか、それとも謙伍とヤスがいないからなのか、どうにもこうにも紀梨乃ワンワントップの時よりもあまり打つ手が多くないように思います。謙伍はボールを持ってない時の動きがいいですし、ヤスはボールを持った時の動きがいいですからね。ボールを持った時の謙伍とボールを持ってない時のヤスについてはあまり詮索しない方向で。何度か惜しいシュートシーンはあったものの、鳥栖のGK室の攻守に阻まれ得点ならず。
守備のほうはさりげなく危険なスペースを埋めるポジショニングをはじめ、随所に落ち着いたプレイを見せる晟桓を中心に地味に安定。決して派手ではないですけど、そもそもDFが派手に目立つような試合運びをするほうがやばいっちゃやばいので、チームとしての守備はそれなりにしっかり出来ているということだと思いますが、前半はともに得点なく0-0で終了。
じりじりとした試合展開にノブリンは後半3バックに変更。征也を上げてより前でボールに絡ませる作戦を採りました。よっぽどまずい形のカウンターじゃなければ晟桓とミツと大ヒロでなんとかできるという目算もあるでしょうし、中盤でボールをキープできていれば征也が高い位置に張ることによって鳥栖のサイドバックを押し込むことができます。狙いとしてはわかるのですが、さりとて紀梨乃がサイドに流れることが多いため中央からの攻撃があまり迫力がなく、実質的にサイド攻撃一辺倒な札幌に対して鳥栖がケアするポイントはそう多くはないため、試合の流れを引き寄せるには至らず、逆に鳥栖の廣瀬に決定的なシュートを打たれてしまう有様。去年の清水エスパルス戦で西澤に決められたゴールを思い出しましたが、あそこで枠に行くか行かないかがJ1とJ2の差なのでしょうかね。
そんなわけで今度は選手交代で打開を図ります。まず後半23分に砂川を投入してドリブルでの仕掛けを加え、続いて31分には長いこと消えっぱなしだった宮澤に変えて石井謙伍を投入。逆に鳥栖は後半40分にDF磯崎に変えて谷田を投入したことが勝負の分かれ目だったかも知れません。仙台時代にもけっこう苦しめられた磯崎がいなくなったその1分後、征也のクロスに走り込んでいた砂川がペナルティエリアのやや外から見事なボレーシュートを突き刺します。忘れた頃にスーパーシュートを決める俺たちの砂さんの今季初ゴールでついに札幌が先制しました。
残り時間を考えればあとは守りきるだけ、というところなんですが、先制からわずか2分後の後半43分、ペナルティエリア正面すぐ外で与えたフリーキックを島田に直接決められてあっという間に同点に追いつかれてしまいます。確かに島田のフリーキックは素晴らしかったのですけど、優也としてはあえてゴールの片方を空けて揺さぶりを狙ったのが裏目に出た感じです。優也の場合は駆け引きよりも動物的勘で勝負したほうがうまく行くような気がしますね。
さて、ようやくもぎ取った1点を簡単に返されたことで苦労して大富豪になった途端に革命を起こされた気分になってしまいましたが、人一倍負けず嫌いなクライトンが無理矢理コーナーキックを奪います。何度かクリアされた後のメインスタンド側からのコーナーキック。上里の蹴ったボールに紀梨乃が頭で合わせゴールネットを揺らしました。テストマッチを含めた紀梨乃の来日後初ゴールで逆転に成功し、劇的な幕切れで今季初勝利を挙げたのでした。
ところで開幕の仙台戦でも思ったんですが、少し前まではJ2だとちょっと接触があってこけただけで笛が鳴ってたのに、今年はフィジカルコンタクトではあまり笛が鳴らない気がします。まだ2戦しか見てないですし仙台戦での田辺主審も鳥栖戦での柏原主審もJ1でもよく笛を吹いている方というのもあるかも知れませんが、そのJ1でも鋼の肉体を持つクライトンあたりはぶつかってきた相手が勝手に吹っ飛ばされてもなぜかクライトンのファウル、というなんてシーンもけっこうありましたから、全体的な基準が変わったのかもしれません。クライトン本人はもとより、何度かクライトン直伝の尻技を見せていたカズゥにとってもいい傾向ですね。