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2009年4月30日

4連勝

2009年Jリーグディビジョン2第11節
コンサドーレ札幌 3-2 愛媛FC
得点者:札幌/宮澤、岡本、ダニルソン
     愛媛FC/柴小屋、ジョジマール

 結論から言うとこの試合で一番素晴らしかったのは、今村亮一主審だったと思います。ファウルの基準もほぼ一定していた上にカードも出すべき時に出し、それ以外は出さないという見事な仕切りでした。

 ゴールデンウィーク連戦のスタートとなるこの試合。普段から過密日程のJ2にはあまり関係ないような気もしますが、コンサドーレ札幌は愛媛FCをホームに迎えました。2006年のJリーグ参入から今年で4シーズン目となる愛媛は、過去3シーズンの戦績自体はお世辞にもいい結果だったとは言えないものの、それでも目先の結果よりもJFL時代から指揮を執り続けている望月一仁監督のもと、少ない予算の中で地道に「愛媛スタイル」を築くことを優先しています。今季は開幕から3連勝とそれが実を結びつつあるかと思われましたが、その後は勝利がなくここ最近は3連敗中。連勝時は3試合で8得点を挙げていた攻撃陣が、その後の7試合ではわずか2点しか取れていないという深刻な得点力不足に悩まされています。

 そんな愛媛とは対照的に、シーズン開幕時はもがいていたのがここに来てようやくエンジンが掛かり始めた札幌。前節は前半で西嶋弘之が退場する苦しい展開の中、クライトンの挙げた虎の子の1点を守りきって勝点3をゲットし連勝を3に伸ばしていますが、その代償は意外と大きく、退場した西嶋に加えて累積4枚目となるイエローカードを受けた上里一将の2人が出場停止。欠場が西嶋だけであれば西大伍を左サイドバックに入れて芳賀博信を右サイドバックにすれば特に問題はなかったと思いますし、上里だけなら大伍をボランチに持ってきて右サイドバックに芳賀を入れればよかったのですけど、2人同時となるとどこかに必ず穴が空きますから、ノブリンにとっても頭の痛い問題だったでしょう。そんな難しい状況でノブリンが打った手は、自身「苦肉の策」というFW宮澤裕樹のボランチ起用。キャンプでの練習では何度かボランチでプレイしていたことはありますが、試合ではもちろん初めて。ただワントップだとどうしてもポストにならざるを得ないですが、ボランチであれば逆に前を向いてボールを持つ機会が増えますし、視野の広さやボールを持った時の落ち着きはありますから、確かにありかなしかで言えばありかもしれません。問題があるとすれば守備面でどれだけやれるかで、ダニルソンの肉食獣的な守備に目が行きがちですが、上里も守備面での成長著しく、貢献も高かっただけにどこまで守備でがんばれるか、というのがひとつのポイントとなりました。

 そんなわけで試合は、現在の両チームの状態を示すかのような感じで進みます。連敗を止めたい愛媛も高い位置からプレスを仕掛けてなんとか主導権を握ろうとするのですが、もともとノブリンサッカーの基本であるプレスの勝負なら札幌も望むところですし、多少のマークなんて蚊に刺されたほども感じない横綱がいるぶんサッポロが有利です。そんなわけで部分的横綱サッカーを繰り広げる札幌は開始早々、右サイドからの攻撃で空いたスペースに攻め上がってきた宮澤がシュート。迷いなく振り抜いた右脚のシュートはわずかにゴール右に外れましたが、早速宮澤をボランチに入れた効果が出ます。その後もほぼ一方的に札幌が攻め続け、点の取れそうな予感がぷんぷんする中で生まれたゴールは前半27分。この日取った最初のコーナーキックにニアの宮澤が頭で合わせてゴール。これまでFWで結果のでなかった宮澤が、ボランチに入った試合でいきなり今季初ゴール。でもゴールしたのはあんまりポジション関係ないセットプレイだったりもするのですが、まぁ西嶋がいればターゲットは宮澤ではなく西嶋になっていたでしょうし、上里がいれば宮澤はそもそもベンチにいたでしょうから、その2人がいなかったことによってこのゴールが生まれた、と考えれば間接的にはボランチに入ったおかげ、とも言えなくもないような気がしないでもないかもしれません。いずれにしても、後ろに下がりながらの難しい体勢でしっかり枠に飛ばすあたり、やはり非凡なセンスの持ち主だと思います。
 先制した後は若干落ち着いた展開になりましたが、それでも攻守の切り替えの早い札幌は愛媛に攻撃らしい攻撃をさせず、内村の個人突破からシュートを2本許した以外はまったく危なげなく前半は1点リードで終了します。

 札幌にしては珍しく安心して見ていられる内容の前半でしたが、さりとてあまり堅守とは言えない札幌にとって1点のリードというのはどこが相手でも心許ないのは事実。先制しながら追加点が奪えず追いつかれて終了、というのはこれまで何度もありましたから、次の1点を早めに奪うことが何よりも求められます。そんなわけで後半10分、宮澤がヘディングで前に送ったボールをクライトンが相手DFを背負いながら紀梨乃へ落とすと、紀梨乃が左サイドのオープンスペースにパス。そこへ走り込んできた岡本賢明がダイレクトでキーパーの股間を抜くシュートを決めて追加点をゲットしました。ヤスがシュートしやすい丁寧なパスを出した紀梨乃、そのボールをきっちりと決めたヤスも見事だったのですが、やっぱりここでも目立ったのがクライトン。何しろ自由にさせまいと必死に身体を寄せる相手DFを自慢の尻で完璧に封じ込めていたのですから。存在自体が反則です。素敵すぎます。
 とにかくこの時間帯に追加点を取れるようになったのは成長の証。こうなると札幌はもう完全にガンガン行こうぜモード。「どこからでも点取りますよ?」とばかりに次から次へといろんな選手が愛媛ゴール前に顔を出していきます。宮澤もゴールを決めてだいぶ吹っ切れたようで、1人で持ち込んでシュートを打つなどだいぶ積極性が出てきた感じ。どうでもいいですけど宮澤がシュート打つと、カレイドスターでロゼッタが笑った時と同じ気分になりますね。わかる人少ないでしょうけど。
 そして後半23分、自らがクリアしたボールをクライトンが拾ったのを確認したダニルソンが猛然と前線にダッシュ。それを見ていた紀梨乃もゴールへ向かってランニングを開始します。得意の横綱ドリブルで突き進むクライトンを中心に左右に開いた紀梨乃とダニルソンという、札幌の「黒い三連星」によるジェットストリームアタックが繰り出されました。正直、オレが愛媛のDFだったらたぶん泣いて謝っていたと思いますが、クライトンから出たパスにダニルソンが追いつきシュートすると、GK山本がのニアを抜いてゴールに突き刺さりました。まぁ山本のミスといえばミスなんでしょうけど、あの位置からあの足の振り抜きであのスピードのシュートが来るとは思わなかったでしょうしねぇ。
 試合時間も残り20分あまりという段階で3点リードというのは、サッカーにおいてはほぼセーフティーリードと言っても過言ではありません。まぁ中にはロスタイムの3分間で3点取られる希有なチームも存在しますが、それでもこの日の試合内容からすれば、もうすっかり楽勝ムードといっても過言ではなかったと思います。それが楽勝どころかあわや同点にまでされそうになるとは思ってもいませんでした。試合の趨勢が決したことで札幌の選手が微妙に集中力を欠いたというよりは、こんな状況に慣れていないゆえたぶんどうしていいかわからなくなったんじゃないでしょうかね。セレッソ大阪戦でも3点差で勝利していますが、あの試合ではJ2最強の攻撃力を持つセレッソをいかに抑えるかという意識が統一されていたと思います。しかしこの試合では3点目が入った時点で、このまま逃げ切るべきか、それともさらなる追加点を狙うべきか、そのあたりの意識が統一されていなかったように思います。セオリーからいえば、セーフティーリードを得た時点で「追加点」よりも「無失点」を優先させるべきですし、選手たちもそう考えていたと思います。2試合続けて無失点に抑えれば、チームとしての自信にも繋がりますしね。
 しかし、ノブリンが打った手は岡本に代えて上原慎也の投入。「若い選手に経験を積ませるつもりだった」ことと「怪我をしている砂川にあまり無理をさせたくなかった」とのことですが、MFに代えてFWを投入するということは紛れもなく「もう1点取ってこい」というメッセージに他ならず、会場の雰囲気もまたそうだったと思います。まぁ砂さんが万全だったとしても、どっちみちベンチにいる守備型の選手は岩沼俊介しかいなかったんで、経験を積ませるのであればまだ試合出場のない岩沼を入れてもよかったかも知れませんが、さすがにそこまでのリスクは犯したくなかったのかも知れません。もちろん上原が追加点を決めていればドンピシャの采配となっていたでしょうし、それが現実になるチャンスは何度かあったのですから、あくまで結果論に過ぎないわけですが、上原投入の直後になんでもないロングボールの処理を誤り柴小屋にゴールを許すと、後半35分にDF三上が退場して数的有利になったあとは、逆に開き直った愛媛にメダパニでも食らったようにさらに混乱。疲れもあったのでしょうがどこからプレスに行くのかもはっきりせず、またしてもロングボールからジョジマールにうまくシュートを決められてついに1点差にまで詰め寄られてしまいました。完全に流れが愛媛に行ってしまった中でそれでもなんとか踏み止まったあたりもまぁ成長したと言えるかもしれませんが、楽勝ムードのはずがなんともすっきりしない4連勝目となってしまいました。
 そんな感じで課題はいろいろあったとは思いますが、そのあたりはノブリンがまたしっかりネジを巻き直すはずなのでいいとして、ひとまずようやく試合が終わった後に順位表が気になるようになってきましたね。札幌はこれで順位を1つ上げて7位に浮上。3位のヴァンフォーレ甲府との勝点差は7のまま変わりませんが、得失点差もようやくプラマイゼロとしました。

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