2009年Jリーグディビジョン2第35節
コンサドーレ札幌 3-3 サガン鳥栖
得点者:札幌/紀梨乃、ハファエル、元気
鳥栖/マイク、島田、高橋
3連勝と波に乗るコンサドーレ札幌は、昇格レースへの生き残りを賭けて6位のサガン鳥栖と対戦します。昇格圏内からはだいぶ離されているものの、気がつけば鳥栖とは勝点4差にまで詰め寄っており、この試合に勝てばその差を1にまで縮めるチャンスです。昇格レースという意味では札幌の目の前にあるものは蜘蛛の糸よりも細いですし、掴まってもいつ切れるかわからないわけですけど、だからといって「どうせ切れるんだし」などとあきらめていいものではありません。たとえ細くても極楽浄土へ行く努力を怠ってはいけないのです。もっとも、この場合糸を登っていっても上がった先は決して極楽なんかではないんですけどね。
まぁそんなわけで4連勝を賭けてのサガン鳥栖戦ですが、前節出場停止だった趙晟桓と藤田征也が戻ってきたものの、ただいま絶賛売り出し中の小ヒロこと古田寛幸がU-18日本代表のSBS杯メンバーに選ばれたため欠場。久しぶりにドナドナですが、札幌のメンバーはGK荒谷、DF大ヒロ、晟桓、石川、上里、ダニルソンのワンワンボランチにトップ下宮澤、右に征也で左に砂さん、2トップは紀梨乃と大伍。
さて試合は、3連勝の勢いそのままに札幌が宮澤のスルーパスから紀梨乃が落ち着いてゴールに流し込みとっとと先制します。試合前から生まれたばかりの娘のために「ゴールを決めてゆりかごダンスをやりたい」と公言していた紀梨乃、その言葉通りにゴールを決めてダンスを披露したわけですが、得点の取り方が人数をかけて押し込んでのものではなく、どちらかといえばカウンターに近いシンプルな攻撃だったために、みんなが集まってくるのが遅れて全然人数が揃わず、最初のゆりかごに大ヒロとカズゥが間に合わなかったのですけどね。まぁ最終的にはGK荒谷僧正とセンターバックの2人を除いた8人が集まってのゆりかごダンスはいい光景ではありましたけど。
さて幸先よく先制した札幌ですが、当然このまま手をこまねいていられない鳥栖も反撃に出ます。鳥栖の攻撃は中盤のプレスからのハーフカウンターを基本線としながらも、状況によってマイクに当ててそのこぼれ球から展開というものですが、実際のところソダンや箕輪のいないいまの札幌には194cmのマイクを相手に空中戦を渡り合える選手がそうそうおらず、前半9分にはオフサイドで事なきを得たもののこのパターンで廣瀬浩二にゴールネットを揺らされており、シンプルでも札幌にとってはかなり効く攻撃です。この試合、マイクに対するマークはポジション的に石川が務めておりましたが、高さ面ならまだ晟桓のほうが勝負になったとは思いますし、カバーリングは石川のほうがうまいですから、ポジション的には逆でも役割を変えたほうがよかったんじゃないかと思います。とはいえ、晟桓もマイクが相手じゃやっぱり分が悪かったわけですが。柴田ならマイクにも勝てるでしょうけど、それ以外の課題が多いんでしょうかね。
かといって札幌も受けに回っているわけではなく、出場停止明けの征也を中心としたサイド攻撃にカウンターを交えいい形を何度も作りますが、決めきることができません。いつものパターンだなぁという気が何となくしていると、案の定前半18分に日高拓磨からのクロスをマイクにダイビングヘッドで決められ失点。シーズン途中に移籍してきてから前節まで17試合で9得点、ほぼ2試合に1点のハイペースで得点を積み重ねるマイクを抑えきるのは難しいと思っていましたが、あまりにもいつも通りすぎる展開です。
突き放したい札幌はなんとか鳥栖ゴールをこじ開けようとしますが、GKのファインセーブにあったりで得点できず、逆に前半36分にはCKからのカウンターで晟桓が廣瀬をペナルティエリアの中で倒してしまいPKを献上。これを島田に決められ逆転を許してしまいました。さすがに島田、宮史郎に似ていてもこのあたりは外さないですね。
逆にビハインドを負う展開となった札幌は前半のうちに追いつこうと攻め込みますが、征也が作った絶好のチャンスを砂さんがブッぱずしたりして前半はこのまま終了。
勝利のためにはまずは追いつかなければいけない札幌は、後半頭から宮澤に代えハファエルを投入。大伍の位置を1列下げ4-1-4-1に変更します。ハードワークの部分でまだ足りないものがあるのか、来日してからまだスタメン出場どころか時間稼ぎ要員だったことなんてまだいいほうで、出番自体なかった試合も多かった彼でしたが、久しぶりに与えられたチャンスできっちり結果を出します。後半14分に紀梨乃の落としからミドルシュートを決め、喉から手が出るほど欲しかった同点ゴールをゲットします。
ところで、ハファエルがこのゴールの後にやってた両手の人差し指を突き上げるパフォーマンスって、紀梨乃もやってますしかつてはエメルソンやダヴィやフッキもやってたのを見たことがありますが、ブラジル人にとって何か意味のあるポーズなんでしょうかね。つーかHFCはなんでコマネチとか欽ちゃんジャンプとかアダモちゃんとか仕込んでおかなかったんですか! 職務怠慢ですよ!
それはともかく同点に追いついた札幌は遅ればせながらのイケイケモード。おまけに後半27分にはハファエルを後ろから倒した飯尾が2枚目の警告を受け退場。まぁ鳥栖にはマイク大作戦があるので、1人減ったところでさほど大きな影響があるわけでもないのですが、試合の流れとしては一気に札幌に傾きます。そして後半41分、本日絶好調で何本も絶好のクロスを上げておきながら誰もが決めてくれなかったかわいそうな征也のクロスを、交代出場の中山元気が頭で決め、ついに札幌が逆転に成功しました。
苦しい試合ながらも試合終了間際に逆転、しかも相手は1人少ないという状況と、普通だったら難なく逃げ切れていい状況です。問題があるとすれば、札幌が普通のチームではないことなのですが、まぁやっぱりというかなんというか、後半アディショナルタイムにペナルティエリア手前からのフリーキックを高橋義希に直接決められ見事に同点に追いつかれてしまいました。
結局試合は3-3で終了。「あと残り試合を全て勝ってなんとかなるかもしれない」という札幌にとって、シーズン全体の話では非常に痛い引き分けでしたし、「最後まで守りきれず勝てない」といういつものクセが出たという意味では悔やまれる試合だったわけですが、サッカーの試合という意味では、お互い攻守の切り替えも速く、意地のぶつかり合いという感じで面白い試合だったと思います。まぁあとエポックメイキング的なことといえばダニルソンがカードをもらわなかったということですね。雪が降らなければいいのですけど。