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2009年9月10日

伊予の花嫁

2009年Jリーグディビジョン2第38節
コンサドーレ札幌 3-2 愛媛FC
得点者:札幌/助っ人1号、助っ人3号、助っ人2号
     愛媛/赤井、大山

 試合内容から見れば前節水戸ホーリーホックと引き分けたのは、まぁまぁ妥当だったと言えるものですが、勝てていれば上位進出に少しの光明が見えてくる試合に引き分け、逆に立場が苦しくなった札幌。ノッてる時はイケイケだけどいったん落ち込むととことん落ち込んでしまうのは、コンサドーレが若いチームだからなのかそれとも古来からの伝統なのか、とにかく躁鬱が激しいのが札幌の特徴のようです。前々節の大量5得点という躁状態から再び鬱状態に突入したのか、14位の愛媛FCを相手にしたこの日はまったくひどい出来でした。前節と同じメンバーで臨んだ札幌は開始からまったく動きの量がありません。
 一口に「動きの量」と言いますが、だからといってただ動けばいいというわけではありません。選手全員がその場で延々反復横跳びをやったりしても確かに動きはものすごくあるでしょうが、たぶん何の意味もないと思います。サッカーにおいて「動く」のは多くの場合「パスコースを作るため」か「スペースを作るため」に他なりません。パスを受ける相手がまったく動かなければ、当然パスのコースもそのボールが行き着く先もわかってしまうわけですから、守る側にとってはやりやすいことこの上ないでしょう。積極的にプレスをかけてくる愛媛の格好の餌食となるのは当然で、その鋭いプレスに札幌はまったく攻撃の形を作ることができません。愛媛も愛媛で攻撃の際にミスが多く、さほど札幌が不利という感じでもなかったのですが、それでもろくすっぽボールもキープできない上、プレスを交わすことを意識する余りにイージーなパスミスで相手にボールをプレゼントしてばかりいれば、そりゃ失点するのも当たり前。前半30分、中途半端なマークでフリーで上げられたクロスを赤井秀一に決められ先制を許します。先制されても札幌の動きは相変わらず良くなく、たまに上里の左からのクロスが多少の可能性を感じさせるくらいで、さりとてそれが続くわけでもなく、得点の匂いがまったくしないまま、前半の札幌のシュートはわずか2本。たった2本で1点取られるのはせいぜいコンサドーレ札幌くらいです。

 そんな感じで全体的にダメだったのですが、その中でもよりいっそうダメだった宮澤に代えて後半頭から砂川を投入。こういう時に流れを変えるのがベテランの役目で、これまでもその期待通り流れを変えてくれたことも多々あるのですが、これだけひどいといかに砂さんといえどもたった1人ではいかんともしがたいところ。後半2分にセットプレイのチャンスから大ヒロが折り返したボールをほぼフリーで紀梨乃がぶっぱずし、逆に7分に大山にラインの裏を突かれループシュートを決められ、リードが2点に広がった時点でゲームはほぼ決まったかと思われました。
 しかしその4分後、再びセットプレイの素早いリスタートから大ヒロが頭でゴール前に送ったボールを紀梨乃がつま先でコースを変えたボールがゴールネットを揺らし1点を返すと、流れはがらっと変わります。前半の出来にすっかりおかんむりだったノブリンが中山元気とハファエルを一気に投入、残り30分以上を残した段階で交代枠を使い切るやけっぱち采配に出ます。
 この交代が功を奏し、あまりポストプレイが得意じゃない紀梨乃に代わってポストになることによって前線での収まりどころができ、結果全体の押し上げができてセカンドボールも拾えるようになってきます。まぁ元気ももともと得意だったわけではないですし、俺王様みたいにどんな愛のないボールでも優しく包み込めるような技術があるわけでもないのですが、それでも彼の場合は「そのでかい体はそのためにあるんだ!」とばかりに相手に身体を預けながらなんとかマイボールにしようと体を張れるので、簡単にボールを失うことが少なくなりました。紀梨乃もそういうプレイをすればもう少しポストもできると思うんですけど、背後からDFに当たられるとバランスを崩して奪われるか、その前にボールをさばこうとして確実な落としができないことが多いんですよね。この試合でのゴールを含めて目下のところ15得点と、J2の外国籍選手ではトップの得点数を上げているとおり(全体では6位タイ)、得点能力は及第点以上のものを持っているのですから(イージーなシュートを外すことも多いですが)、そのあたりの一次的接触を極端に避けるのが改善されれば、3億くらいで売れ…いや絶対的エースとして君臨できると思うんですけどね。怖いのかい? 人と触れ合うのが。
 1点を返して息を吹き返した札幌は、後半25分に紀梨乃がスピードで振り切って折り返したボールに走り込んできたハファエルが右足で決めて同点に追いつきます。こうなると前半から飛ばしてきた愛媛の運動量がすっかり落ちたこともあり、勢いは完全に札幌となります。その要因は間違いなく元気のプレイだったでしょう。それだけに後半15分に彼が放った、いったんトラップして浮かせたボールを振り向きざまに叩いたボレーシュートは、決まっていればソロモンを突破した連邦軍に匹敵する勢いをもたらしたかもしれないだけに、決めさせてあげたかったですね。止められたのは相手GKを褒めるしかないファインセーブだったとはいえ、どうにも元気って意外と…と言ったら失礼ですがけっこうすごいシュートを打つことが多いのに、そういうシュートは決まって入らないですよね。少佐なら「当たらなければどうということはない」という感じなんでしょうけど、ああいうゴールをいつも決められるような選手だったら…そもそも札幌には来てないか。
 それだけに、後半28分のダニルソンの逆転ゴールは、決まった瞬間爆笑してしまったくらいすごいシュートでしたね。あのスピードであのコースに飛んで来たら、止められるゴールキーパーは世界中探しても若林源三くんくらいでしょう。ああいうゴールをいつも決められるような選手だったら…そもそも札幌には来てないか。加えて、前半のダメっぷりも前半限りで交代させられた宮澤に劣らずダメだったのですけど、4-1-4-1のシステムは彼あってこそですし、その前提であるアホみたいに広い守備範囲とボール奪取能力を発揮した上でなお、試合が終わっても平気な顔をしているというのは、かつて1ボランチを務めたら目に見えてやつれていったタバタンと比べるとやっぱり日本人とは違うんだな、と思う次第です。あとはせっかく奪ったボールを惜しげもなく相手にパスするのが減れば、もっとすごい選手になれると思います。
 その後もチャンスこそあったものの、紀梨乃のヘディングシュートやボレーシュートが相手GKのファインセーブにあったり、カウンターから抜け出したハファエルが、あとは決めるだけという場面でボッテボテのシュートを放ち、左足ならばクライトンのレベルに達していることを証明したりで追加点は奪えず。決めるべき時に決めないと今度はサガン鳥栖戦の悪夢がよみがえってくるわけですが、愛媛のシュートミスにも助けられなんとか逃げ切り、結果オーライの勝点3をゲットしました。

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