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2010年5月18日

魅惑のあの人登場

2010年Jリーグディビジョン2第13節
コンサドーレ札幌 2-2 大分トリニータ
得点者:札幌/魅惑の助っ人紀梨乃、魅惑の助っ人オウン・ゴール
     大分/森島、崔

 年に1度の室蘭開催は、8位につける大分トリニータとの対戦。2003年にJ1昇格を果たして以来昨季まで上のカテゴリで戦い、その間2008年にはナビスコカップを制覇。Jリーグが誕生してから、日本の三大サッカータイトル(リーグ、ナビスコカップ、天皇杯)で九州勢が優勝するのは初めてで、リーグ戦でも4位という好成績を残したことで当時はもてはやされたものですが、決して安定しているわけではなかった経営基盤はこの頃には既に病魔のようにチームを蝕んでおり、ナビスコ制覇の翌年には主要スポンサーであったマルハンが撤退、大きな収入源を失ったチームは成績の低迷とともに財政事情の悪化も表面化し、チームは11億円を超える債務超過を抱えてJ2に降格しました。大分はこの債務超過分の半額以上にあたる6億円をJリーグからの融資で充当しており、この融資の完済及び債務超過の解消を果たすまで、J1昇格は認められません。つまり、その間大分が仮にJ2で3位以内に入ったとしても昇格ができないことになります(その場合、大分を除く3位までの2チームがJ1昇格となる)。
 再建のために圧縮を余儀なくされたとはいえ、それでもその運営費は9億円と言われ、J2では豊富な部類に入ります。ジェフ千葉や柏レイソルあたりとは比べようもないですが、それでも札幌も含めた他のクラブよりは強化費も多いわけなのに、戦い振りは安定せず、ここ3試合は3連敗。どんなに頑張っても上へは行けない、というのは多少なりとも影響があるのでしょうか。前節もエースFWチェジョンハンがハットトリックの活躍を見せながらもサガン鳥栖に逆転負け、5勝5敗1分の8位に留まっています。確かに長いシーズンを勝ち抜いたとしても、その先にあるはずの栄光がないことがわかってしまっている上でモチベーションを保つというのは、人間心理として難しいのは無理もないことなのかもしれません。オレだって今からファイナルファンタジーXIIIをクリアしろって言われたらイヤですもの。

 そんな大分とは今季リーグ戦では初顔合わせですが、プレシーズンマッチで既に対戦していまして、この時は2-2の引き分けでした。この試合では石川のゴールで先制したものの、チェジョンハンのゴールで逆転され、近藤のゴールで追いつくという流れで、攻撃面ではまずまずながらも守備面の不安定さが浮き彫りとなった試合でした。あれから約3ヶ月が経ち、その課題はあんまり解消されていないような気もしますが、それでも一応ここ3試合は無失点に抑えている守備陣が、チーム総得点でリーグ4位につける大分攻撃陣をいかに抑えるかが鍵となります。その中心となっている現在得点ランキング2位のキムボギョンは、韓国代表の合宿に参加するため欠場。しかし同じく得点ランキング2位につけるチェジョンハンと、その相棒であるデカモリシこと森島康仁には当然細心の注意が必要です。
 そして札幌は近藤が怪我で欠場。腰痛で欠場していた内村がようやく復帰したもののまだ頭から行けるほどではなく、ノブリンはここ2試合採用してきた3バックではなく最初から4バックに戻してきました。おそらく岩沼が前節で靱帯を痛めて長期離脱となり、左のウィングバックを務められる選手がいなくなったことが主な理由だと思いますが、メンバー表では4-4-2となっていたものの実質は札幌のシステムは去年主に使用していた紀梨乃を1トップとする4-5-1。ただしこれまで右サイドバックを務めていた西嶋が岩沼の代わりとして左に回り、かといって李漢宰がいない以上、芳賀をボランチから動かすと悲惨なことになりかねないため、右サイドバックは藤田征也が入ることになりました。ボランチは芳賀と上里、トップ下に宮澤、左右のサイドハーフには右に古田、左に岡本となりました。3ヶ月前からどう成長したかを試されるかと思ったら、藤山以外は去年までのメンツだったでござる。

 さて、前述の通り大分はチーム総得点はリーグ4位であるものの、チームの総失点はリーグワースト4位。11試合で17と札幌(14失点)よりも多く、守備力に関しては実は札幌以上に深刻のようです。その守備陣のテコ入れのためか、この試合で大分は3バックの布陣を敷いてきました。「4失点を食らうと3バックを試してみる法則」があるのかはわかりませんが、結果としてはこれは裏目に出た形となります。前半4分、右サイドで古田が何となく前に送ったボールを菊地がトラップした瞬間、前節ようやく初ゴールを挙げて調子に乗ってきた紀梨乃が猛然と襲いかかりボールを奪取。そのままGKとの1対1を冷静に決めて先制点をゲットします。 2試合続けて早い時間に点を取った札幌はその後も札幌は3バックの弱点であるサイドのスペースを突いて大分を攻め立てます。前半24分まで大分にシュートを許さない試合運びでしたが、31分、チェが落としたロングボールを東が拾ってすかさずデカモリシにスルーパス。札幌DFは彼らのボケとツッコミが逆だったせいで一瞬対応が遅れ、デカモリシに決められて同点に追いつかれてます。
 その後札幌は4バックに戻してきた大分に盛り返され、それまでのようにセカンドボールを拾えなくなりますが、それでも紀梨乃を裏に走らせ相手のラインを下げさせる攻撃が功を奏したのが41分。中盤でボールを拾った宮澤が、紀梨乃にマークを集中していると見るやがら空きのサイドにふわりと浮かせたスルーパスを送ります。このボールに猛然と突っ込んできたヤスが思い切りシュート。決まったかに思われたシュートはカバーに入った小林宏之がはじき返しますが、おそらくシュートを決められたと思ったらしいGK清水が自分のところに跳ね返ってきたボールを見てびっくり、慌てて抑えようとしてボールを自分のゴールに押し込んでしまいました。まさかのオウン・ゴール選手降臨です。
 ちなみに、2005年の第16回高円宮杯全日本ユースサッカー選手権U-18の準決勝において、藤田征也とアルビレックス新潟に出稼ぎに行っている西大伍を擁するコンサドーレ札幌ユースU-18が、デカモリシがいた滝川二高と対戦しているのは以前も書いた通りです。そしてこの試合でトップ下として初のスタメン出場したルーキー内田昂輔も、その試合でデカモリシとともに出場していたんですけど、そしてその時滝川二高のゴールマウスを守っていたのが、この清水圭介でした。
 そんな彼にとってはほろ苦いデビュー戦となってしまいましたが、入った途端にボールに触るヒマなく失点というデビュー戦を経験したトイメンのGKに比べれば、ボールに触って失点しただけマシかもしれません。そんな高原もすっかり頼れるキーパーになりました。

 いい時間帯に追加点が入った札幌は、2-1で折り返した後半になってもペースを握ります。細かいパスを少ないタッチで繋いで相手の守備を切り裂いていくという札幌らしくない攻撃まで見られたのですが、やはりというかなんというかフィニッシュの精度が甘く追加点を奪えません。3点目が取れていればおそらく試合は決まっていたと思うのですが、そこでとどめを刺せないのが札幌の順位が上がらない要因のひとつなんですよね。結局32分に懸念のセットプレイからこぼれ球をチェに押し込まれて同点とされてしまいます。
 結果としては「注意が必要な2人」にゴールを決められてしまったんですけどね。札幌もおそらくデカモリシとチェジョンハンに入るボールのケア、彼らにいい形でボールを入れさせないことを念頭に置いた守備プランだったと思いますが、まぁチェが気をつけていりゃなんとかできる程度の選手なら得点ランク2位にはつけてないわけで、こぼれ球にいち早く反応して押し込んだのはさすがというべきでしょうかね。
 追いつかれた札幌、追いついた大分、勝敗はどっちにも転びそうな中で、両チームとも攻撃の選手を次々と投入し、めまぐるしく攻守が入れ替わるスリリングな展開となりました。今村主審のジャッジがダメすぎて後味の悪い試合になりかねなかったのですが、判定が両チームにとって平等にダメだったのが救いだったのか、互いにあと1点を獲りに行くスリリングな試合展開となりましたが、両チームともゴール前まで迫りながらも守備陣が集中力を切らさず、2-2の引き分けで終了。勝てなかったのは残念ですし、ガッカリなプレイもありましたが、まぁ全体的には悪くない試合だったと思います。上原以外は。
 まったく何をしに出てきたのでしょうか。点を取ることを期待されてピッチに出てきたのに、まったくゴールに向かおうとしないのはどういうつもりなんですか。結果論ですけど、あれならゴンを出してたほうが遙かにマシでしたよね。それでもFWですか! 軟弱者!

 そんなわけでまたしても引き分けに終わってしまった札幌は、順位を一つ挙げたものの依然として下位グループのまま。今の私はJ2で14位だ。それ以上でも、それ以下でもない。

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