ゴールも、勝利も、ないんだよ
2011年Jリーグディビジョン2第9節
FC東京 0-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/相変わらずおりません
東京/おりません
実質的に開幕連敗、未だに無得点と、狙っていた開幕からロケットスタートどころかホイールスピンでタイヤだけ減らしてる状態で、ここんとこ毎年同じようなことを言っている気がしますが今年も例年通り絶賛出遅れまくりのコンサドーレ札幌は、アウェイでFC東京との対戦を迎えます。1999年に2位となりJ1昇格を果たしたFC東京は、その後ナビスコカップ制覇2回(2004年、2009年)、多くのシーズンで1桁順位をキープし、日本代表にも多くの選手を供給するなど、完全にJ1チームとして定着したかに見えましたが、2010年にJ1で16位となりJ2に陥落しました。
東京にとって1999年以来実に12年振りに戦うことになったJ2の舞台。かつては東京ガス(前身)、東京電力、新日本石油(ENEOS)と、エネルギーの固まりみたいなチームだったのが、いろいろあってENEOSは2009年いっぱいでユニフォームスポンサーから撤退、東京電力もご存じの通りのご覧の有様で、おそらく来季以降スポンサーを続けることがさまざまな意味で難しそうな状況。スポンサー収入の減少を食い止めるためには、1年でのJ1復帰は至上命題でしょう。その覚悟が間違った方面に発揮されたのか、村林裕前社長がよせばいいのに「J2全勝でJ1昇格」と余計なことを言ったり、サポーターはサポーターで「1年間お世話になります」「J2なめてません」という横断幕を出したりと挑発に余念がありません。まぁ別に挑発ダンマクなんてどこのチームにもあったりするわけですけど、昔の東京サポーターなら同じことするにももっとシャレの効いたメッセージを用意してた気がします。そんな東京だってかつてはJ2だった時代があったわけで、一応1999年1シーズンでJ1昇格を果たしているものの、最終節で逆転2位を勝ち取ってギリギリに昇格(当時は2位までの2チームがJ1昇格)を果たしたとおり、その時も決して楽なシーズンではなかったはず。もう10年以上前のこととはいえ「J2の怖さ」も知っているはずなんですし、その年J2ながらベスト4に入ったナビスコカップ(当時はJ1、J2混成の大会)で「J2なめんなよ」と言っていたのは当の東京サポーターたちだったはず。なんかあれですね。上京していった友達と10年ぶりに再会したら、昔は一緒になってバカやってたのにすっかり他人のような扱いをされた時の感じですね。「俺はもうお前とは同じ人種じゃないから」みたいな。
ちなみにその1999年、最終節でモンテディオ山形に敗れて昇格を逃した大分トリニータを率いていたのが、現在札幌の指揮を執る石崎信弘監督でした。
そんなわけで今野泰幸や梶山陽平ら代表クラスを含む主力選手の残留に加え、補強にも余念なくJ2上位どころかJ1でも充分に通用するくらいの戦力を揃えることに成功した東京。つってもそれでJ1で通用しなかったからこそここにいるんだろうけどな、と珍しく百鬼夜行も悪態モードになるように、そんな挑発していればどこのチームだって「東京にだけは負けるな」となるのは当然の成り行きなわけで、開幕戦こそサガン鳥栖を相手に1-0で競り勝ったものの、前節はジェフユナイテッド千葉に叩きのめされ敗戦。早くも「全勝」が途切れています。
で、いくら優勝候補が相手のアウェイ戦とはいえ、開幕3連敗は避けたい札幌に味スタでのFC東京戦といえば、「曽田さんのディフェンス緊急回避行動」や、「ノナトの伝説のクロス」などの心温まるエピソードを思い出す縁起の悪いスタジアムですが、逆にこの試合に勝てればと思えるような気もするので、勝負所と言えるでしょう。敗れはしたものの全体としてはそこそこやれていた湘南戦と同じメンバーで臨んだ札幌。一方東京もやたらと怪我人が多く、平山相太、米本拓司、ホベルトといったレギュラークラスの選手が相次いで離脱。昨年大怪我をした石川直宏もまだリハビリ中ですし、あれだけ選手層の厚いチームで上里がベンチ入り出来るくらいなんですから相当なんでしょうね。
で、それが影響してるのかしてないのかはわかりませんが、前半は地力に勝る東京を相手に受け身の時間帯が続くものの、驚くべきことに札幌の守備も割と機能しており、ピンチを未然に防いでいます。東京の攻撃が単調だったのも救いでしたが、これまでよりはカバーの意識も高く、いわゆる「連携して守る」という意思統一ができていたように思います。プロならできて当たり前のことで感心するのもおかしな話ですが。野球に例えればキャッチャーが1塁ベースカバーに走って褒められるようなもん。
とはいえ、それでも多くの時間帯で押し込まれ反撃の糸口は掴めず、たまに前にボールを運べても今野・森重のセンターバックを中心とする東京の守備陣はやはり強力で、ワントップの三上陽輔は文字通り子供扱いされる有様。梶山陽平ってあんまり守備は得意でないようなイメージでしたけど、さすがにJ2ではその存在感は異様ですね。もっと異様なのはあの雰囲気をユースの頃から身に纏っていたことなんですが。三上や古田もそうですが札幌のユース出身の選手たちが良くも悪くもハウス栽培っぽい雰囲気を持っているのとは対照的です(※ただしあんにゃろを除く)。
そんな感じで前半は0-0。同じ前半0-0でも前節よりかは見た目通りの0-0。平たく言えば「ザ・J2」という感じの、わりかしまったりした試合内容。東京ペースではあるものの、前半もいくつか見られた「とんでもないミスで試合にカツを入れる」無駄衝動さえなければ、札幌にも勝つチャンスはありそうです。
で、後半。前半と同じような流れが続くのかと思っていたら、札幌も思いの外盛り返すようになります。ディフェンス面でも後半10分くらいの大きなピンチをGKイホスンがファインセーブで防いでからは特に大きな破綻も見られず、点を取られる気はほとんどしません。
しかしかといって点が取れるかどうかはまた別の話なのであり、アンドレから砂さんへの交代はよかったのですが、近藤から横野への交代はちょっと疑問。替えるべきはボランチに下げたら「クライトン2世」はおろか「飛び道具のない上里」になってしまった宮澤(のポジション)だと思うのですがね。さらに33分に三上に代えてチアゴを投入、チアゴ大作戦の発動となるわけですが、これも実際機能したとは言いがたく、なんか正攻法で行ったほうがチャンスはあったんじゃないかと思いました。チアゴだってこんな使い方をするために獲ったんじゃないでしょうし。まぁ結果論であることは重々承知なのですがね。
そんなわけですっごく惜しいチャンスもいくつかあったものの、そういうときにキッチリ決められないのもまた実力なのでしょうか。「連続無得点試合が3試合に伸びた」のは残念極まりないのですが、それ以上に難敵を相手のアウェイ戦で勝点1を得たことは大きいとは思うべきでしょうかね。得点が取れてても1-2とかで負けていた場合、「得点が取れたからよし」とはたぶん思えないと思うので。昔どうやっても1試合で1点しか取れず、1-2で負けることが続いた時期がありましたけど、その後ようやく2点取れたと思ったら4点取られて負けた試合では、やっぱり2得点より4失点のほうがガッカリでしたし。引き分けはさんで14連敗という中でも、点が取れてただけ当時はまだマシだったんでしょうか。