2011年Jリーグディビジョン2第16節
FC岐阜 1-3 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/宮澤、オウン・ゴール、横野
岐阜/染谷
前節室蘭でこみっともない試合をした札幌は、今節は現在20チーム中20位と最下位にあえぐFC岐阜とアウェイでの対戦となります。2008年にJリーグに参入した岐阜は今季で4シーズン目のJ2となりますが、経営基盤の弱さから思うように強化策が取れず、今季はここまでのところ勝った試合が1試合だけ(1勝1分8敗)。赤字を出さないために人件費を思い切り削っていることが大きいのだろうと、かつて同じ道を歩んで最下位に終わったチームのサポーターとして同情を禁じ得ないわけですが、とはいえ人件費圧縮に加えて禁じ手(減資)を使ってまで封印したはずの「債務超過」という名の魔物が再び目覚めつつある札幌もあんまり余裕はありませんので、申し訳ないがギッフギフにしてやりたいところ。
とはいえ、重度のシュート欠乏症に見舞われている札幌もたいがいそんな余裕ないのですけどね。シュートを打つとか打たないとか鬱だ死のうとかよりもそもそもそこまで辿り着けないのが大きな原因であり、それをなんとかするにはいい加減メンバーを大幅入れ替えする必要があるかもしれない、ということなのかどうかはわかりませんが、今回だいぶメンバーをいじってきました。ケガで引き続き欠場している芳賀のポジションに宮澤裕樹と岩沼俊介を並べ、ケガから復帰した日高が右サイドバック、左サイドバックには高木純平を、そして古田がスタメン落ちで代わりに上原慎也が入り、アンドレジーニョではなく砂川誠が久しぶりのスタメン。この辺はピッチ状態が悪く彼らの持ち味であるドリブルが行かせないと判断してのことでしょう。そしてワントップには横野純貴が入りました。フィールドプレイヤーの半分が変わったことになります。
岐阜は6月になってから加入したブルーノ選手が登録3試合目にして初スタメン。紛らわしいので札幌のブルーノをブルーノ(眉)と表記しようと思ったのに、残念ながらこの試合ブルーノ(眉)は帯同しませんでした。あとチアゴさんも今回いません。
さてこの大胆というか若干やぶれかぶれ気味なメンバー変更が思いの外奏功したのか、試合は立ち上がりから札幌が攻め込む展開。いつもシュート少ない少ない言われ、それでも毎回最小記録を更新していくのは完全に意地になってるんじゃねぇかと思ったりもしましたが、攻めようと思えば攻められる…というよりは岐阜が攻めさせてくれてるといったほうがいいかもしれません。開始早々に上原がサイドでキープしたボールにオーバーラップしてきた日高がクロスを上げ、宮澤がヘディングシュート。このボールはいったんポストに嫌われますが、跳ね返ってきたボールを再び宮澤が押し込み先制します。試合開始わずか数分で前節のシュート数を上回りました。別にちっともすごくはないですけどね。
その後も札幌が攻め続けます。いつもなら中盤で相手の強烈なプレッシャーを受け、囲まれて奪われるか焦ってパスミスを披露するか、それともサイドに逃げてにっちもさっちもいかなくなるかってのがパターンですが、岐阜はほとんどプレスをかけてきません。これじゃ最下位にもなるよなという感じなのですが、そんなゆるゆるな状況ですらキッチリと肝心なところでミスを繰り出すのが俺たちのコンサドーレ札幌。中には先制点の時よりもいい形を作ったりもしてたんですが、横野が空振りしたり近藤や砂さんが至近距離から枠を外したりと相変わらずの拒点力を発揮します。早い時間に先制したと言っても、実際のところ90分のうちに1つ入るかもしれないものがたまたま最初に来ただけで、こりゃ「スミ1」かもしれないね、などと思っていたら、そうは問屋が卸さなかったのが岐阜のほう。相手が取ろうとしないのならこっちが取らせてやる! とばかりに、34分に伝説の助っ人オウン・ゴール選手を召還すると、その5分後には終了間際には岐阜DFが札幌FW横野へ愛情こもったパスを送りプロ初ゴールをプレゼント。3点ものリードで前半を折り返します。
前半だけで思いもよらない点差が付きましたが、そのうち2点は相手にもらったようなもの。何しろ札幌というチームは、強いチームには自ら進んでサンドバッグとなることでその強さを存分に味わってもらい、そして下位のチームには(前節のように)相手の良さを引き出して自信をつけさせてあげることから、ちまたでは「コンサドーレの半分は優しさで出来ている」と言われている(かもしれない)ほどです。ある意味、よそに気を遣うあまりに「会費制披露宴」や「香典返し即渡し」など、「お互い気を遣わないで済む方法」を具現化してしまった北海道を本拠地とするチームらしいとも言えますが、あまりの岐阜の酷さに気の毒になったのか、後半はすっかりおつきあいモード。「やっぱお前らも攻めないと面白くないよな! 遠慮はいらないから来いよ!」とどっかの小学生のクラスリーダーみたいなさわやかな感じで、よせばいいのに守勢に回ります。あれだけ一方的に攻めていた前半の姿はどこへやら、すっかりいつもの札幌に戻ってしまい、実際のところは前半は守備に回るシーンが少なくて目立ってなかっただけの、芳賀さん不在によるバイタルエリアの広大なスペース提供はいかんともしがたい状態に。
ノブリンが櫛引を入れて河合をボランチに上げたのは、まずそこをなんとかしたかったというのが大きかったのでしょう。もともとマリノスではその豊富な運動量と対人の強さでボランチをメインに務めていた選手で、本来なら芳賀の穴埋めとしても十二分すぎるほどの人材です。彼がボランチに入ってくれれば、ただでさえ満身創痍の身体にむち打ってる芳賀さんの負担を減らすことが出来ます。後ろ向きでボールを受けたら相手を背負ってなくても自動的にポストプレイをしてしまう宮澤くんをあえてボランチで使う必要もなくなります。しかしながら、今の札幌は彼にボランチをさせることを許さないほどセンターバックが絶滅危惧種なのもまた事実。河合をボランチで使うためには、計算できるセンターバックがせめてあと1人欲しいところ。チアゴがまともに使えてればこんなことで悩まんでもよかったのでしょうけど、ノブリンとしてはチアゴをどげんかするよりかは櫛引を育てたほうがいいということなんでしょうね。
とはいえ、いくら育てるためとはいっても、ミスが失点に繋がりやすいDFというポジションは無闇に試合に出せばいいってものでもありません。もちろんミスは誰にでもあるものですし、ルーキーの頃いきなり3バックの真ん中任されて5失点食らって涙目になってたというか実際泣いてた今野が今や日本代表のレギュラーセンターバックにまでなった例もありますから、失敗を克服するのもまたプロには必要なことですけど、プロ2年目のリーグ開幕戦でデビューし、時の監督に「なんか俺に似てるし」という単なるノリでセンターバックを任され5失点して4バック恐怖症のまま消えていった吉川とか、プロデビュー戦で追い上げムードの中交代出場した途端にペナルティエリアの外で平瀬のちんこ掴んで倒したらPKにされちゃって人間不信になってしまった吉瀬とかの例(一部誇張)もありますんで、あまり切羽詰まった場面で起用するのは危険です。
幸いにしろ試合は3点リードという思ってもない余裕のある状況。櫛引に実戦での経験を積ませるにはまたとない機会です。多少ミスして、万一失点に繋がったとしてもダメージは大きくないので、思いっきりやれるでしょうからね。
さすがに入ったばっかりでペナルティエリアの中でハンドしちゃうとは思わなかったですけど!
「北海道では手じゃなくて前足なんです」というおきまりの主張はやっぱり早川主審には通じなかったようで、岐阜にPKを献上。これを染谷に決められて1点を返されます。
まぁ1失点は仕方がないとしても、結局3点取って1失点とは、どうしても得失点差をプラスには持って行きたくないみたいですね。PKはしょうがないけど、せめてあと1点は取ろうよと思いましたし、そうしなければいけない試合内容だったと思うんですけど。普通そうしますよ。そうしましょうよ。ねえ。いいじゃない減るもんじゃないし。むしろ増えるし。いろいろと。