2012年Jリーグディビジョン1第6節
名古屋グランパス 3-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/古田
名古屋/金崎、オウン・ゴール、玉田
「なかなか勝てない病」を患ったまま…というかまぁいわゆる世間の予想通りの感じに進んでいる札幌は、今節は名古屋グランパスとのアウェイ戦です。2010年に悲願のリーグ戦優勝を果たした名古屋ですが、昨季はわずか勝点1の差で柏レイソルの後塵を拝してしまいました。何しろJリーグでは浦和レッズ、鹿島アントラーズに次ぐ第3位の経営規模を誇るチーム。ヨーロッパとのパイプも太く、今季も捲土重来を期して大補強を敢行し、汚いなさすが名古屋きたないと言わせてくれるかと思ってたら、今季の新加入5人のうち移籍加入はヴィッセル神戸から移籍の石なんとか選手のみで、あとは高卒の新人選手と、極めて地味な補強にとどまっています。
対する札幌は、FW内村が腰痛で欠場。ここまではボランチに入っていた宮澤をトップに上げ、空いたボランチにはルーキーの前貴之がリーグ戦初スタメンとなりました。ようやく怪我の癒えた古田寛幸もスタメンに入ります。センターバックの奈良竜樹、ベンチの横野純貴、三上陽輔とユース出身が5人、宮澤、櫛引一紀の室蘭大谷コンビを入れると道産子7人、岩沼俊介、岡本賢明を加えて生え抜き選手が9人。レンタル選手ばっかだった頃もあったことを考えると、とても感慨深いものがありますね。強いか弱いかは別として。
今ではすっかりJ2が主な戦場となり、たまにJ1にいることもあるという弱小チームな札幌にとっては、どのJ1チームとも対戦成績としては分が悪いわけですけど、その中でも名古屋は「比較的」相性がいい相手で、2008年は2戦2敗ながらも、同じく異次元の弱さを誇っていた2002年でもシーズン初勝利は名古屋が相手でした。今年もリーグでのシーズン初勝利をプレゼントしてくれたらいいなーなんて思っていたんですけど…。結果として、今季の名古屋の補強がやけに地味だったのは、補強に失敗したのではなく、単に「補強する必要がなかった」からだ、ということを思い知ることになったわけです。
開始3分、ペナルティエリア手前でボールをゆっくりと回していたかと思いきや、藤本淳吾が札幌センターバックのどまんなかに向けてカミソリのようなスルーパス。どっちがクリアに行くか迷ったのか一瞬の隙が生まれ、そこに合わせてトップスピードで飛び込んできた金崎にうまく流し込まれてしまいました。「そこにパスが来る」と信じて走った金崎、「そこに走り込んでくる」と信じてピンポイントのパスを出した藤本、敵ながら超あっぱれです。
先制後も攻撃の手を緩めない名古屋は、流れるようなパス回しで札幌を攻め立てます。前半15分、細かいパス回しにマークが引きつけられ、永井がダイレクトのヒールパスでサイドに流したところにどフリーの阿部がすっ飛んできて折り返すと、クリアしようとした奈良さんの足に当たってゴールに入ってしまいます。いわゆる魅惑の助っ人オウン・ゴール選手の降臨です。まぁあそこで奈良さんが触ってなかったらファーに入っていた金崎に合わせられていたでしょうから、あそこでどフリーで折り返された時点でほぼ失点は決まってたと思います。敵ながら超オレ好みの攻撃でズバッとやられてしまいました。快傑ズバットなんて今の若いもんはしらねぇだろうなぁ。まぁ知っててどうなるもんでもないですけど。
まだ前半も半分終わってないのに2点のビハインド。Jリーグ2年連続得点王のケネディを欠いていながらなんつー攻撃力だ、ケネディいないのハンデにすらなってないじゃないかと厳重に抗議をしたいところなんですが、ただその反面、守備については決して強いわけではなくて、両センターバックやGKなどの個人能力だけで守ってる感じで、サイドバックが上がった後とか、DFラインとボランチのスペースはけっこう使わせてくれてたんですけどね。札幌の攻撃はそれでも破れない程度のものしかないらしく、チャンスらしいチャンスといえばマエシュンのパスに抜け出した古田がシュートを放ったシーンと、コーナーキックから宮澤が頭で合わせたボールをはじかれ、こぼれ球をプッシュしようとして枠を外したシーンくらいでしょうか。どっちか1つでも決まっていれば…という感じでしたが、これを決めきれないのが今の札幌なんでしょうね。
後半も基本的にはペースは変わらず。相変わらず名古屋のパス回しに翻弄されながらもいくつかチャンスは作り出すのですが、やっぱりシュートは入りません。というかそれ以前にシュートが打てません。なんでしょうね、やっぱりJ1だと相手の寄せも速いのでしょうか…とも思いましたけどそういえば去年からあんまりシュート打ってなかった気もする。ただ去年はそれでも昇格できるくらいに勝てたのは、数少ないチャンスを確実に決めていたからであって、それがそのままJ1でやれるかと言えば微妙な話です。シュート精度だってプレッシャーの有無によって影響されるわけで、そうそう簡単にやらせてくれるわけではありません。であれば下手な鉄砲も数打ちゃ当たるというように、チャンスの数を増やせばいいのですけど、それが出来てりゃ苦労はしてないわけで。今の状態は、弾ごめにもたついて引き金を引くまでに至ってないって感じですもんね。
そうこうしているうちに後半32分、またしても細かいつなぎから玉田に3点目を決められてしまいました。この試合の3日前(4月11日)に32歳の誕生日を迎えた彼にバースデーゴールを献上。ちなみに以前も書きましたが、彼のJリーグ初ゴールの相手はコンサドーレ札幌です。どんだけ玉田好きなんだって感じですね。
残り15分を切った段階での3失点目というのは、サッカーのセオリーから見ればほぼ「試合が決まった」状態です。ましてや勝ってるほうが力量的に上の合はなおさら。サポーター目線であってもここからの逆転は無理だろうという状況ですが、しかしここで無得点で終わるのと1点でも取って終わるのでは大違い。J1きっての豆鉄砲チームであるコンサドーレ札幌ではありますが、せめて1点は取って終わりたい。しかしそんなサポーターの願いとは裏腹に、41分に自らドリブル突破でチャンスを作った古田のシュートがゴール・ポスト選手の出現によってクリア。オウン・ゴール選手に続く魅惑の助っ人の登場に、もうこれはどうやっても点が取れないんじゃないかと本気で思いました。
その割には、後半終了間際に一番積極的に攻撃してたのに打っても打っても入らなかった古田がやけになって(推定)打ったシュートが、相手DFに当たってコースが変わってゴールインするあたり、なんかうまくいかないもんだなぁと思ったりもしました。入らない時は徹底的に入らないのに、入るときってこんなもんですよね。困ったもんです。とりあえず、古田寛幸J1初ゴールです。おめでとう。
そんなわけで今節もまた勝てず、これでついに5連敗となってしまったわけですが、札幌が決して強いチームじゃない、というかむしろ弱いのは充分承知の上でそれでも敢えて言わせてもらえば、ゴール前であのパス回しをやられたら、たいていのチームは失点すると思いますよ。まぁ、最終的に名古屋の左サイドがフリーになるシーンがけっこうあったことからも、試合を通じて札幌の右サイド(純平)を徹底的に狙ってた感じでしたけど、いずれにしても3人目以降の動き出し…というかどういう風に動けばどこにスペースが出来て、そこに誰が入るかというのがきっちりとチームとして出来ているんでしょうね。ヒールなんかも織り交ぜてるので一見トリッキーに見えながら、計算し尽くされた攻撃、という印象を受けました。プリキュアで言えば「狙いきったあざとさ」のキュアミューズといったところですね。あざといは褒め言葉です。
まぁ開始早々に失点したとき、「今日もダメか」みたいな空気がちょっと見受けられたのはいくない傾向だと思います。こういう状況だけになかなか気持ちのコントロールは難しいかとは思いますが、「カラ元気でも元気」という偉人の言葉もありますから、無理矢理にでも前向きに行くのがいいと思います。