2013年J2第1節
ジェフユナイテッド市原・千葉 0-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/内村
千葉/なし
J1に上がるたびに史上最速降格を更新し続けているコンサドーレ札幌は、2013年の今年も「やっぱりここがいいのだに」とばかりにJ2に帰ってきました。コンサドーレ札幌というチームができて18年目となるシーズン、クラブスローガンを「北海道とともに、世界へ」と、大胆というか割とおおざっぱなものにしましたが、コーチングスタッフや選手の多くが地元出身というクラブにとっては、「北海道」を全面に押し出したスローガンにしたかったのだと思います。
チームが生まれた頃、「Jリーグに行って、そしていつかは優勝したいなぁ」なんて思い描いていたあの頃から17年が経ち、現実は優勝どころか後発チームに予算も負けているJ2常連ではありますが、それでも北海道のチームとして地域に根を下ろし、そこで育った選手やスタッフがチームに多く関わっているというのは、胸を張っていいと思うのです。たとえ胸がなくてもだ。
そんなわけで、財前恵一新監督率いるコンサドーレ札幌の開幕戦の相手は、昨季5位、プレーオフで涙を呑んだジェフユナイテッド市原・千葉。5位とはいえ2位の湘南ベルマーレとの勝点差はわずか3、「引き分けでも昇格」だった大分トリニータとのプレーオフ決勝でも圧倒的に試合を支配しながらアディショナルタイムの1発に泣いています。2009年に降格して以来、毎年昇格の有力候補に挙げられながらも、毎年惜しいところでJ1昇格を逃し続け、気づけばJ2も4シーズン目。実際J1でも充分に戦える戦力を保持しているのに、先んじて昇格したアビスパ福岡やコンサドーレ札幌が圧倒的な弱さで1年でJ2帰ってくるのを見てもさぞ悔しい思いをしているのではないかと思いますがこっちだって落ちたくて落ちたわけじゃないし。
ホームの千葉は、今年こそはのJ1昇格に向けて経験豊富な鈴木淳氏を招聘、昨季J2最少失点の守備陣はそのままに、攻撃陣を強化。韓国Kリーグで大暴れしたブラジル人MFジャイール(済州)や、セレッソ大阪で活躍したケンペスらを獲得。どう割り引いたってJ2トップクラスの陣容です。
一方札幌は昨季J1で最多失点した守備陣から、補強するどころかむしろ人が減り、J1最少得点した攻撃陣から、補強するどころかむしろ人が減り、監督はトップチームの指導はこれが初めてという新米さん。世界3大カップのひとつに数えられるちばぎんカップで、天皇杯覇者の柏レイソルを3-0で一蹴する強さを見せた千葉を相手のアウェイ戦というのは、ちーとばかしハードルが高いです。
とはいえ、コンサドーレの関東での開幕戦は2008年以来(対鹿島アントラーズ)。フクダ電子アリーナという素晴らしいスタジアムでの試合なのですから、これは見に行かない手はないと参戦。キックオフの1時間ほど前に蘇我駅に到着、買い物などを済ませてスタジアムに到着した頃、千葉の開幕セレモニーに被せてチャントを歌う札幌サポーターと、それにブーイングする千葉サポーターの声が聞こえてきました。ずいぶん元気がいいねぇ。何かいいことでもあったのかい?
さて、札幌のスターティングメンバーは、テレの1トップに内村圭宏がシャドウストライカー、右のMFに古田寛幸、左のMFにはルーキー神田夢実(西岡出身)、ダブルボランチに上里一将とキャプテン河合竜二、DFは左から東洋大卒(自主)の松本怜大、センターバックに奈良竜樹と櫛引一紀、右のサイドバックはチョソンジン、GKに杉山哲というメンバー。雁ノ巣で見た福岡とのTMと同じメンバー、同じフォーメーションです。
その福岡戦の時にも書いたとおり、その時は出来としてはあまりいいわけではなかったのですけど、攻撃はともかく守備に関しては全体的にできてたところは多かったので、千葉相手でもまぁそこそこは守れるだろうと思ってはいました。で、実際その通りに立ち上がりから積極的なプレスで千葉の攻撃陣を自由にさせず、また相手の個人技に対してはカバーを怠らず、こぼれ球にも集中して反応し、いい形を作らせません。攻撃面でも、前線の選手たちがどのくらいできるかが鍵を握るだろうと思っていたら、こちらも案外やれています。古田はまぁあれくらいは普通にやれるとして、内村もだいぶ復調してきているようですし、テレも不器用なのは仕様として「前線で身体を張る」というタスクを忠実にこなしてはいます。そして神田もルーキーとは思えない度胸でボールによく絡んでいます。連携ミスも目立つものの、それでも2回ほど決定的チャンスを作り、昇格候補相手としては上々の内容。
後半はさすがに前半ほどプレスに行けなくなったためか、千葉に押し込まれる時間が長くなります。去年までなら中盤が踏ん張りきれずにDFが常に攻撃に晒され、そして失点するのがお決まりのパターンでしたが、ここで河合、上里の両ボランチが奮闘します。特に上里は非常に「効いて」おり、中盤どまんなかで相手のプレスを受けながらもボールをキープし、その上でさらに味方に繋ぐというとてもボランチらしいボランチの姿を披露。「あの上里は誰だ!」という声も飛ぶほどでした(嘘)。こちらのファウルでプレイが切れた際に、千葉の選手がセットしたボールが足もとに転がってきた時、このまま足に当てたらイエローカードを出されかねないと思ったか、「邪魔してないよ!邪魔してないよ!」とアピールしながらボールを蹴らないように不思議なステップを見せるなど、修行に出てた2年間は決して無駄ではなかったということでしょうか。いや福岡戦でもけっこう効いてたんですよ、上里。
また、昨季はどこか自信なさげに守っていた若いセンターバックコンビも、だいぶ吹っ切れたのか本来の粘り強さを発揮。それでもさすがに何度かは危ないシーンを作られますが、相手のシュートミスにも助けられゴールを許しません。
両チームともゴールを奪えないままスペースが空き始めた頃、財前監督は神田に代えて岡本を、テレに代わってマエシュンを投入。福岡戦でも同じ交代の仕方をしていましたのでこれが予定通りの交代策ではあるのでしょうが、多少守備のリスクを負ってでも点を取るための布陣です。さらに41分には最後のカードとしてベテラン砂川を投入。この采配がずばり当たります。4分のアディショナルタイムに突入し、試合は完全なるカウンター合戦に突入。自陣ペナルティエリアでボールを奪った千葉がそのままカウンターを仕掛けます。ボールを奪われたのはマエシュン。自らのミスを取り返すべく、ドリブルで突き進む兵藤を必死に追いかけるマエシュンですが、まるでついて行けず…というかあまりついていく気もなさそうにどんどん置いて行かれるばかり。そして右サイドのオープンスペースにいた米倉にパスが繋がりますが、ここの1対1で奈良がさっくりとストップ。このこぼれ球が、とぼとぼとそれでも自陣に帰ってきていたマエシュンに渡りました。120%(当社比)の全力で走ってきたマエシュンはすぐさま戻ってきていたヤスにボールを預けて楽をしようとしますが、それでも上がらないわけには行かずとぼとぼと上がっていったところで、ヤスはマエシュンの前方に広がるスペースに容赦のないパスを出すと、マエシュンはすぐさまダイレクトで右サイドの砂さんへ丸投げパス。自分で決める気はすでになかった模様です。
その砂さんは、DFの裏に抜けた内村にドンピシャのパスを出すと、内村はこれをダイレクトで決めてゴール。そのままの勢いでゴール裏に陣取るサポーターの元へ駆け出します。歓喜の輪に包まれる札幌と対照的に、千葉の選手たちが崩れ落ちるピッチ上には、同じようにへたり込むマエシュンの姿がありました。