力負けでも
2013年J2第5節
コンサドーレ札幌 1-3 ガンバ大阪
得点者:札幌/宮澤
ガンバ/レアンドロ、家長、岩下
前節アウェイでアビスパ福岡を下し、ようやく連敗街道を脱出した札幌。開幕戦以来の今季2勝目を挙げたものの、まだホームでは勝ちがありません。ホーム初勝利を賭けて迎えるのは、優勝候補の筆頭、ガンバ大阪。昨季、通算67得点というリーグトップの得点を叩き出しながらも、まさかの17位に沈み降格。チーム総得点1位のチームが降格するのは前段未聞の珍事で、総得点2位のチームが優勝したサンフレッチェ広島だった(63点)ということからも、どれだけすごいかがおわかりいただけると思います。これだけの得点を挙げておきながら降格したのは、やはりリーグワースト2位の失点数(65点)が大きな原因でしょうか。いくら得点をしても同じだけ取られるために勝ち星を伸ばせず、シーズンわずか9勝という結果に終わっています。ちなみにこのガンバの65失点というのは、リーグワースト3位のセレッソ大阪(14位)とジュビロ磐田(12位)の53点よりも12点も多い数字です。そう考えると、失点数ワースト1位のコンサドーレ札幌の88失点というのがどれほどすごい数字かがおわかりいただけると思います。
現役日本代表のレギュラー2人をはじめ、元日本代表選手を多数抱える、どうやっても落ちるはずのないチームが落ちたため、「磐田の前田遼一がリーグ戦で最初にゴールを挙げたチームが降格する」、いわゆる「前田の呪い」の存在が改めて取り沙汰される原因となった(2007年以降5年連続で前田初ゴールの相手が降格しており、2013年のリーグ戦初ゴールの相手はガンバだった)わけですが、それ以外にも「デスブログ」として有名なタレントの東原亜希さんのブログで「1年に1回は大阪やら神戸やら関西に行けるようにこれからもがんばります!!!!!」と書かれていたことも注目を集めました(ガンバとともにヴィッセル神戸も降格)。ちなみに、コンサドーレ札幌は他の誰の力も借りずに自力で降格したと思われがちですが、降格が決まったのは東原さんが「特命バイヤー」として任命されていた「イトーヨーカドー北海道収穫祭」の開催期間中でした(Jリーグ史上初の9月降格決定)。
降格したとはいえ、代表主力の遠藤保仁や今野泰幸らが残留、ほとんど戦力を落とすことなくJ2では反則とも言える陣容で臨んだガンバですが、不安定な戦いぶりはあまり変わらず、ここまで黒星こそないもの白星も1つだけ、1勝4分という当初の予想とは程遠い成績となっています。
そして前節苦しみながらも福岡に競り勝った札幌ですが、試合中に足を痛めて交代したチョソンジンが全治1ヶ月という重症であることが判明、さらにはイエローカード2枚で退場したDF奈良竜樹が出場停止と、厳しい状況が予想されましたが、ちょうどタイミング良くケガで開幕前から戦線を離脱していたDFパウロンらが戦列に復帰。あれですね、男塾でピンチになると仲間が現れるパターンですね。冨樫とか虎丸とか。あと松尾とか田沢とか。まだ本調子ではないようですが、札幌のひみつ兵器がいよいよベールを脱ぐことになります。ひみつ兵器で思い出しましたけどかつて札幌でひみつ兵器のままで終わったレモスさんは、現所属先の岐阜でも相変わらずひみつ兵器のままみたいです。
札幌のスターティングメンバーはGK杉山、DFは右から上原、パウロン、櫛引、松本、中盤は河合、深井、上里、宮澤の例のクワトロ・ボランチシステム、トップ下に内村、ワントップにマエシュンという布陣。ベンチには小山内貴哉、堀米悠斗の2人が今季初めて名を連ねています。
ガンバは3月26日に行われたワールドカップ最終予選・アウェイでのヨルダン戦に日本代表として出場した遠藤、今野の2人も元気に出場。加地亮、家長昭博、岩下敬輔、二川孝広らの元日本代表もずらりと顔を並べ、倉田秋にレアンドロなどまぁ豪華なメンツ。というか容赦のないメンバー。これはアレですね。小学生のケンカに高校生を出してくるみたいなアレ。大阪では普通のことなんでしょうかね。怖いですね。
そんなわけで劣勢の予想される試合でしたが、札幌は意外な健闘を見せます。「高い位置で奪ってショートカウンター」はノブリン時代からのお家芸ではあるのですが、開始早々に内村がシュートを放つと、5分にはシュートには結びつかなかったものの深井くんのいろいろおかしいパスが上原に渡り、24分には上里のアホみたいな弾道のシュートがクロスバーを叩くなど、惜しいシーンを何度も見せます。まぁクロスバーを叩くのが惜しいか惜しくないかと言われれば、どっちかというと惜しくないんですけど。つーか今年は1試合に1回は当ててませんかね。たまにはクロスバーに当たって跳ね返ったボールがGKの背中に当たってゴールインとかなればいいのに。藤ヶ谷なんてまさしくそれにふさわしいGKだと思うんですけど。
狙い通りに試合を運べていた札幌に暗雲が立ちこめたのは、前半25分過ぎのことでした。ピッチ中央付近で相手選手と競り合った松本くんが足首を痛めてプレイ続行が不可能となってしまいます。松本くんは28分に交代。前節に引き続き、またしても前半のうちにサイドバックをケガで失ってしまう事態になりました。
交代で入ってきたのはこれが初出場となる堀米くん。「ゴメス」の愛称で親しまれ、ルーキーながら副主将にも抜擢されたハートの強い選手。別の言い方をすれば心臓に毛が生えている選手。いきなりの出番にも物怖じせずピッチに入ります…が、さすがにガンバを相手というのは厳しかったようで、前半終了間際、その彼の左サイドを崩されて倉田の突破を許し、上げられたクロスをレアンドロにうまく頭で合わせられ失点を許してしまいました。あそこでゴメスが間に合わずにくっしーが対応に出なければならなかった時点で詰んでたのでしょう。もっとも、相手のスピードも速かったですし、クロスにしてもシュートにしてもさすがに相手がうまかったんですけどね。
いやな時間にビハインドを負ってしまった札幌は、後半立ち上がりからいまいちピリッときません。何か気が抜けたように易々と相手の突破を許し、易々とシュートを許してしまいます。こういう時間帯がたまにあるのはいただけないですね。12分にはまだ万全ではないのか上里に替えて古田を投入。反撃ムードが高まったと思ったら、その直後にあっさりとDFの裏を取られて家長に決められてしまいます。むーん。さらに悪いことに、交代で入ってきた古田がレアンドロのシュートをブロックした際に足を痛め、無念の負傷退場。またしてもケガで選手を失ってしまうことになりました。
古田と交代で入ってきた砂さんを中心に少しは持ち直しますが、実質的にケガで交代枠を使い切ってしまったわけで、劣勢を跳ね返すほどの展開には持ち込めず。36分には相手FKからのクリアミスを岩下に決められ3点目を献上してしまいます。ふんぎゃー。
ちなみにこの時のプレイ、木村博之主審がオフサイドの判定を覆してゴールを認めたように見えましたけど、実際はボールがゴールネットを揺らした時点ではゴールの判定はしておらず、(ルール上はオンサイドにもかかわらず)旗を揚げた副審に確認しに行っただけのようですので、極めて正当なジャッジだったようです。アンジャッシュ児嶋とか言ってごめんなさい。だって似てるんだもん。
そんなわけで事実上敗戦を決定づける3点リード。いくらガンバの守備が弱いと言っても、残り10分で3点取れる攻撃力は札幌にはないわけで、テレあたりを投入してゴリゴリやろうにも交代枠はとっくに使い切っている状況では上原を上げるしかなくて、実際そうしてたのですけど、そもそも相手がガンバに限らず単純な放り込みがそうそう通用するもんではないですし。ただ、それでも最後の最後に1点取ったのは大きいんじゃないかと思います。同じ負けでも完封負けとはだいぶ変わりますから。試合の負けはほぼ決定という中で、バンザイ特攻ができる状況ではあったとは言え、ペナルティエリアにあれだけの人数が殺到していたのは、何が何でも1点を返そうという意地の現れだったと思います。ああいう姿勢は重要ですよね。あとゴール決まった後にボールを取りに言った宮澤に藤ヶ谷がさくっと札幌にボールを返してくれたのは、藤ヶ谷さんなりの恩返しなんでしょうか。
それと、この試合がデビュー戦となったパウロンですが、キャンプはほぼリハビリに費やして実践でのトレーニングもほとんどできず、連携面での不安を抱える中、J2最強のガンバを相手ということを考えれば、及第点以上の働きは出来ていたんではないでしょうか。「デカいのに速い」のは深井くんとは違う意味でおかしいですし、相手からのロングボールをヘディングでクリアした際、ペナルティエリア手前あたりではじき返したボールがハーフウェーラインを越えて行ったのを見たときは、笑い死ぬかと思いました。あとはオモシロ人間であれば完璧なんですが。ただこの試合の解説を務めていたゴン中山氏によれば、「テーピングがすごいことになってる」らしく、足の状態はまだ万全ではないみたいです。奈良くんの出場停止がなければ財前監督もまだ使うつもりはなかったのではないかと思いますが、とりあえず何事もなくて良かったです。違う意味での巨神兵状態になっていたかもしれませんからね。