« 2008年3月 | メイン | 2008年5月 »

2008年4月 アーカイブ

2008年4月 4日

テセにびっくり

2008年Jリーグディビジョン1第4節
コンサドーレ札幌 0-2 川崎フロンターレ
得点者:札幌/おりません
     川崎/チョンテセ×2

 前節柏レイソルを相手にアウェイで今季リーグ戦初勝利を果たした札幌は、今節は中2日で川崎フロンターレを迎えてのホームゲーム。昨季J1得点王ジュニーニョと東アジア選手権得点王のチョンテセ(北朝鮮代表)に加え、昨季J2得点王フッキが加わった前線の破壊力はリーグでもトップクラスと言われ、今季の優勝候補のダークホースにも挙げられていましたが、フタを開けてみると自慢の3トップが全く機能せず、強いといってもただアクが強いだけとなってしまい開幕から低迷。関塚監督とフッキの間に不協和音も聞こえ早くも崩壊の危険性も出てきてしまっていました。
 かつては自分勝手なプレイを繰り返していた前年のJ2得点王エメルソンをわずか半年で浦和に売却したり、起用方針などをめぐってごねたマルクスとの契約を即行で解除したように、チームに不利益をもたらすと判断すればどんなに能力が高くてもあっさり手放すのが川崎というチーム(その一方で見込みがあれば我慢強く選手を育てるチームでもあります)。今回もとっととフッキを昨季期限付きで所属していた東京ヴェルディに売却。フッキの代理人側からは一昨年やはり期限付きで所属していた札幌にも獲得の打診があったらしいですが、そもそも外国籍枠は既に埋まってますし、まぁ枠が空いてたとしても4億とも5億ともいわれる移籍金を札幌が出せるはずもないですし、よしんば出せたとしてもダヴィとフッキじゃ右足の残念な2トップが出来上がるだけですので、どっちにしてもあり得ないですね。俺王様なら別ですけど。

 それはともかく、川崎とはついこの間ナビスコカップで対戦をしたばかりで、その時は容臺と西嶋のゴールで2-1の逆転勝利を飾っておりますが、この試合のエントリでも書いたように川崎は中村憲剛や山岸智といった代表組が出場していませんでした。この試合では彼らが満を持して出場。フッキがいなくなったことで団結力も高まった、というよりは川崎の選手たちにとって「フッキがいなくなって弱くなった」とは絶対に言われたくないというほうが正確かも知れませんけど、前節はフッキ抜きでジェフユナイテッド市原千葉に快勝してますから、中2日のアウェイ戦とはいえここで勝って波に乗りたいところでしょう。怪我が伝えられていたジュニーニョもスタメン出場で、チョンテセとの2トップを組みます。一応ナビスコカップでは抑えていたとはいえ、J2時代に散々いじめられたジュニーニョに加え、相方のチョンテセはうまさはないですがダヴィとは違った意味で何をしてくるのかわからない怖さがあります。もっとも、川崎で一番何をしてくるのかわからないのはクラブのフロントだったりするわけですが。
 札幌もナビスコカップから数えれば2連勝中で、だいぶ自信にはなったと思いますが、前節柏戦で足を痛めたらしいダヴィが欠場。その代役としてスタメンに名を連ねた石井謙伍がと、柏戦であまり見せ場のなかった岡本賢明をサブに回して砂川誠がスタメンに入った以外は前節柏戦と同じメンバー。そこそこはやれることがわかっているメンバーではありましたが、結果としてやっぱりダヴィの不在は思いのほか大きかったですね。まぁダヴィがいたところでどっちみちチャンスになってもシュートをGKに当てておしまい、というパターンばっかりだったとは思いますけど、それでもダヴィは勝負する意識が高いですし、体躯も強いダヴィに対して相手はファウルで止めざるを得ない場合が多いですから、彼がいるとセットプレイのチャンスは増えます。相手のゴール近くでセットプレイが獲れれば柏戦みたいにゴールの可能性もアップします。というか、現状札幌が力で上回る相手なんてほとんどいないんですから、どの試合でも流れの中での決定的なチャンスにまで持って行くなんてそうそうあるはずもありません。その数少ないチャンスを確実に決めるストライカーがいれば話は別ですけどね。その役割を期待して獲得したのがノナトなんでしょうけど、本人が試合に出られるチャンスが数少ない状態ですから、そうなるとあとはいかにセットプレイのチャンスを増やすかということになるかと思うんですが、この日の2トップはまるでそういう気配がありません。確かに札幌の戦術上、FWの役割は守備とポストの占める割合が大きいですし、チャンスが少ないからこそ大事にいきたいというのもわかるんですけど、そうは言ってもたとえ切れ味バツグンの刀でも鞘に収めたままでは何も斬れないのと同じように、前を向いて勝負することを最初から放棄しているようでは、相手DFとしては守りやすいことこの上ないと思うのです。元気や謙伍が切れ味バツグンかどうかは別として。
 そういった意味では、チョンテセなんてたとえれば抜き身のまま力任せに斬りかかってくる印象ですからね。もっとも、彼の場合は刀と言うよりはギガンテスの棍棒みたいな感じですけどね。切られるのではなく叩きつぶされる感じで、特に1失点目のシュートはトゥキック…だと思いますが、なんにせよあの振り抜きであのスピードのシュートが飛んで来たらいくらぎーさんでも止められません。というか、あれ止められるキーパーは少なくとも日本にはいないでしょうね。2点目も高木の股をこれもトゥキックで抜いて決めたものですが、前半3度あったジュニーニョとの1対1を3度とも止め、うち1回はジュニーニョが狙っていた股抜きを読み切っていたぎーさんもさすがにトゥキックは止めにくいようです。
 この得点のあと、川崎は試合間隔が短いことを考慮してか省エネモードに突入、怪我明けのジュニーニョもかなり力をセーブしてプレイしていたようで、そのためか札幌もそれなりに攻めることができるようになりましたが、いかんせんボールを運べるのがクライトンくらいしかおらず、前線での迫力不足は相変わらず。しびれを切らしたか三浦監督も後半途中からクライトンを前線に上げましたが、今度はそうなるとクライトンまでボールがいかない状態となります。交代出場した岡本もまずまず生きの良さを見せましたが、川崎GK・川島を慌てさせるような場面はほとんど作ることができず、アディショナルタイム直前に高木がペナルティエリアの外でチョンテセを止めて一発レッドをくらい、「GK曽田」というマニア垂涎のシーンが見られた以外は特にこれといった見所もありませんでした。

 結局試合は0-2のまま終了。鹿島アントラーズ戦のような「手も足も出ませんでした」というほどの力の差は感じなかっただけに、もう少しうまく守れていれば勝点1くらいは取れたかも知れないと思わないでもありませんが、まぁ足られ馬の話をしても仕方がありませんし、泣いたってしょうこお姉さんとゆうぞうお兄さんは帰ってきまませんからから、早めに切り替えてセットプレイから失点しなかったことをよしとするしかありませんね。

2008年4月 6日

ノナトにびっくり(別の意味で)

2008年Jリーグディビジョン1第5節
FC東京 1-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/おりません
     東京/カボレカボレそうカボレ

 水曜日に川崎フロンターレに完敗を喫した札幌は、再び中2日でFC東京とのアウェイゲームを戦います。2002年に札幌がJ2に降格してから公式戦での対戦はなく(ただしサテライトでは数度対戦経験あり)、この試合が実に6年ぶりの対戦となります。わずか2年で降格した札幌と異なり、東京は1999年に昇格して以来降格もなく、2004年にはナビスコカップを制するなどすっかりJ1チームとして定着した感があります。しかしその東京も昨季は12位とあまり振るわず、特にホームの味の素スタジアム(正式名称:キングアマラオスタジアム)では半年ばかり勝利がない状態。
 そして札幌は前節に引き続きエースのダヴィが欠場。熱発とも跛行ともソエとも言われていますがとにかく遠征メンバーから外れ、前節はそのダヴィの代わりにスタメンだったものの散々なプレイっぷりだった石井謙伍を下げてFWにクライトンを入れ、そして前節一発レッドで退場しこの試合出場停止の守護神高木に替わって優也がゴールマウスを守ります。DFラインは変わらず、ボランチは芳賀と容臺、右サイド岡本、左サイド大伍という布陣。
 そんなわけで試合なんですが…前半12分のカボレのゴールを守りきられ0-1で負け、という結果以外にあんまり取り立てて触れるようなこともなく。「最低でも引き分けにできる試合を落とした」というような印象でしょうか。まぁこっちもダヴィやぎーさんがおらずいい状態ではなかったとはいえ、カボレはあまり怖さを感じさせる選手じゃなかったですし(実際失点シーンも守り方に問題がありすぎ)、前節から半分スタメンを入れ替えたことからもわかるとおり、全体的に東京も手探りであまりいい状態ではなかったことを鑑みても、最低でも勝点1は取っておかないといけない試合だったと思います。それだけに開始直後のソダンのヘディングが入っていればという思いもありますが、それを含めて現状の実力なんでしょうね。まぁ東京が勝利した一番の理由はアマラオが味スタに来ていたからに違いないですけどね。
 で、リーグ戦では初出場となったノナトですが、残り5分で出てきて石井のパスをどたどたと追いかけて右足でクロスを上げた…と思ったらボールはクロスどころかアウトサイドに引っかかってあっさりゴールキックへ…というプレイを見ると、そもそもセンターフォワードであるノナトはあの位置にいてはいけない選手だとはいえ、もっと早くからノナトを使っていたとしても結果は変わらなかっただろうな、とは思います。ド素人のオレもスペースに出たボールを追いかけてクロスを上げようとすると、腰が入らずによくああいうボールを蹴ってしまいますが、プロの試合でああいうプレイを拝めるとは思ってませんでした。確かに面白人間を期待してましたけど、そういう面白さは微妙です。水原戦で見たときと1ミリたりとも変わっていないような気がしますが…。どうなんでしょうね。

 そんなわけで試合以外のことをいろいろと。先述したとおり6年ぶりの対戦となったFC東京は、浅利と藤山以外はすっかりガスくささの抜けたチームになってしまったので少し残念ではありますが、札幌サポーターにとっては東京の注目選手といえば今野とブルーノさんでしょう。共にチームの事情(主に財布面)で一緒に戦うことが叶わなくなってしまった選手で、今でこそ「敵」となってしまいましたが、札幌サポーターならその貢献度は充分すぎるほど知っている選手たちです。
 札幌に所属していた期間よりも東京に所属した期間のほうが長くなり、今やすっかり東京の「顔」とも呼べる選手になっただけでなく、日本代表にまで成長した今野ですが、その彼が移籍後初めての対戦となった古巣について訊かれ、「(コンサドーレ)サポーターの反応が薄くてちょっと残念でした(笑)」としながらも(実際はブルーノと共にけっこうな数の拍手がアウェイゴール裏から起こっていたんですが)、その後札幌時代のことを訊かれると「何も知らない高校生だった自分に、プロのなんたるかを何から何まで教えてくれたチーム。言葉では言い表せません」。そう語る彼の本当にうれしそうで、そしてちょっと寂しそうな顔は、それが社交辞令でないことを表していたと思います。コンサドーレにいたときのあどけなさはすっかり抜けて「男」の顔になっていましたが、中身は我々の知っている「コンちゃん」のまま。「(古巣のサポーターに)成長した姿を見せられたのでは?」という質問には「得点できればよかったんですけどね」と苦笑い。実際やりにくかったのかも知れません。
 そしてブルーノさん。開幕前のキャンプの練習試合で怪我をしてしまったため、この日が移籍後初出場。札幌時代と良くも悪くも変わらないプレイを見せてくれたブルーノさんとはミックスゾーンではついぞ会うことができず、あきらめて帰ろうと味スタを出たところで、家族と共に駐車場へ向かうブルーノさんに運良く会うことができました。昨年札幌に在籍していた時に生まれた娘さんを抱えたブルーノさん、オレが「道産子?」と訊くとうれしそうに「うん、道産子、道産子」と答えてくれました。その後、「がんばって。札幌(サポーター)のみんなによろしく言ってね」「(札幌のホームゲームが行われる)8月にまた会いましょう」と言ってくれました。もちろん、以上の会話は全て日本語です。もう少し一緒にやりたかった選手ですね。

 さて、またしても前半の早い時間帯に失点を喫してしまった札幌。ダヴィがおらず豆鉄砲程度の攻撃力しか持たない、いやダヴィがいたとしても豆鉄砲が銀玉鉄砲になるくらいの札幌にとって、「先に失点をする」というのは死の宣告に等しいと言っても過言ではありません。柏戦のような逆転勝利などそうそう期待できませんから、戦い方としては逆転されちゃいましたがマリノス戦のような展開をするべきなんですけど、そのゲームプランをいつも自分たちで崩してしまっている格好なんですよね。相手を褒めるしかないようなどうしようもない失点なら話は別ですけど、この試合のように早い時間にしょーもない失点を食らうのは減らしていかないと、取れる勝点も取れません。
 じゃあなんでいっつも早い時間に失点するのよ? という素朴な疑問が出てくるわけですが、試合後の会見ではクライトンや柴田は「もっと集中しなければ」という主旨のことを言っていました。その柴田自身、「集中して試合に臨んでいるつもりだけど、失点しているということはそれができていないんだと思う」と言っているように、言葉で言うのは簡単でも実際にどうすればいいのかは未だ見えていないのかもしれません。
 そんなことを考えながら味スタから帰宅する道すがら、飛田給駅前のすき家で「集中1000円」という張り紙を見つけました。意外なところで集中が安く売ってる! と思ってよく見ると、「バイト募集中1000円」でした…。

2008年4月14日

磐田に勝った!

2008年Jリーグディビジョン1第6節
コンサドーレ札幌 2-1 ジュビロ磐田
得点者:札幌/ダヴィ、柴田
     磐田/優じゃない河村

 前節FC東京とのアウェイ戦で煮え切らない敗戦を喫した札幌は、今節はホームに戻ってジュビロ磐田との試合。2002年以来リーグ戦では6年ぶりの対戦となる(天皇杯では2004年に対戦あり)磐田はJリーグの公式戦ではまだ1度も勝ったことがない唯一のチームです。逆にいえば、磐田に勝つことができれば、2007年度までのJリーグ加盟全チームから勝利を挙げることになります。既に「2007年度までのJリーグ加盟全チームから敗戦」という偉業を成し遂げている唯一のチームである札幌にとって、このジュビロ磐田というチームは札幌に残された最後の「壁」です。また、J1残留を果たすためには1勝2敗ペースが最低ラインとなるわけですが、この試合で勝てば札幌は6試合で2勝4敗となりペースは維持できるだけに、ここは是が非でもホーム初勝利を飾りたいところ。
 で、その「壁」なんですが、過去の対戦で思い浮かぶのは、俺王様不在にもかかわらず土俵際まで追い詰めながら王者の執念の前に立ちはだかった2001年のアウェイ戦や、自らの命と引き替えに45分間だけの10倍界王拳を得た平間を以てしてすら倒すことが叶わなかった2002年のホーム戦など、持てる力全てを出し切っても勝つことを許してくれなかった、まさに越えられない壁でした。しかし時は流れ、無敵を誇った磐田も札幌がJ2に降格した2002年を最後に優勝から遠ざかり、昨季はクラブ史上ワーストとなる9位という結果に終わってしまいました。歴史を積み重ねていく上で常に強豪であり続けるのはどんなクラブでも難しいものですが、チームの陣容もかつては助っ人選手を除いて常に8~9人以上は生え抜きの選手たちで占めていたのが、この日のスタメンも前田遼一や西紀寛、田中誠ら主力選手が怪我で戦線離脱中とはいえ、茶野や萬代、駒野、川口など他のチームから獲得した選手が目に付きます。
 もっとも、それでもスタメンの半分以上はユース出身を含む生え抜き選手で占め、斜陽と言われてはいてもJリーグ参入初年度を除けばJ1で順位表の下半分でシーズンを終えたことがないのは、この日のスタメンで生え抜きは大伍とルーキー柴田のみ、J1順位表に名前があったことのほうが少ない上にJ2順位表の1番下になったこともある我がクラブから見ればやはりうらやましいと思わざるを得ません。
 札幌は前節出場停止だった守護神ぎーさんが復帰し、前走を熱発で回避したダヴィも復活。それにより前節はFWとして出場したクライトンも本職のボランチに戻りましたが、両サイドとDFラインは未だポジションを固定できておらず、前節ゴール近くで競り合ったカボレをわざわざフリーにするという、サポーターの度肝を抜く文字通りの離れワザをやらかしたソダンを下げ、センターバックは柴田と吉弘。週中の練習中に古傷を痛めて戦線離脱した西嶋のポジションには坪内が入り、空いた右サイドバックには「出るとまごまごのやっくん」こと平岡康裕が久しぶりの出場となり、両サイドは右に砂川、左に大伍という布陣。

 さて試合は3試合ぶりの出場となったダヴィと、まさしく「舵取り」というボランチそのままのクライトンを中心にうまく砂川が絡み、小気味良い攻撃を見せる札幌がペースを掴みます。3バックを相手にする時は両サイドの裏のスペースをうまく使うのがセオリーで、それは長く3バックをやってきた札幌もさんざんやられてきたわけですが、神戸時代に慣れ親しんだポジションに戻った左サイドバックの坪内や、攻撃の時はまごまごしない平岡もタイミングのよいオーバーラップを見せます。懸念とされてきた前半15分までの失点についても無事守りきることに成功。まぁ札幌の場合「15分過ぎた途端に失点」というパターンも充分に考えられたわけですが、この日吉弘と柴田のセンターバックも初めてのコンビとは思えないほどの息の合い方を見せます。
 というかこの日の磐田には札幌が前にJ1にいた当時に感じた憎らしいほどの強さは微塵も感じられず、開始から押し気味に試合を進める札幌に対し、ウィングバックを置くチームなのにサイドを使うことがほとんどなく、攻撃といえばジウシーニョの単独中央突破のみ。強かった頃の磐田しか知らない我々にとっては、これはエリック・プランクトンとかジョン・ボヴィなどのような「ビジュロ磐田」というチームなのではないか、そんな印象すら受けたほどです。
 なので早めの先取点を奪いたいところですが、前半20分過ぎに中山元気が相手との接触プレイで膝を痛め交代を余儀なくされてしまいます。三浦監督が代わりに入れたのはFW登録の石井謙伍ではなく、ディビットソン純マーカス。クライトンを上げてダヴィとの2トップという布陣に変更しました。「FWクライトン」は中盤でのゲームメイクに支障が出る危険性がありましたが、ダヴィがいるのといないのとはかなり違うようで、シフト変更の影響はさほど見られず。最近ちょっと影の薄いマーカスは、忘れられちゃいかんとばかりにびっくりどっきりパスを繰り出し、間違った方向にその存在を存分にアッピールしつつも、まずまず無難にこなしています。
 攻め込みつつもゴールが奪えず、スコアレスで終わりそうだった前半終了間際、札幌は相手ペナルティエリア右サイドやや外から直接フリーキックのチャンスを得ます。この位置は柏レイソル戦での西嶋の同点ゴールや、またゴールにこそならなかったものの東京戦での開始直後のソダンのヘッドなど、札幌の(というかクライトンの)得意としている位置のようで、クライトンの蹴ったボールにダヴィが頭で合わせたボールは、日本代表GKの川口も届かない絶妙な位置に決まります。昨年からここまで10試合で7ゴールを挙げている「ドーム馬」のゴールで札幌が先制しました。
 そして先制点の興奮もさめやらぬ前半ロスタイムには、コーナーキックからのプレイでクライトンからのクロスを相手がオフサイドトラップをかけ損なった隙を突いて再びダヴィが全盛期の欽ちゃんを彷彿とさせる見事なジャンプシュート。このボールは川口がよく反応しますが、こぼれ球を詰めていたルーキー柴田が決め追加点をゲット。柴田はもちろんプロ入り初ゴール…というか「大卒新人選手の加入初年度ゴール」で初ですかね? 河端和哉もソダンも初年度はゴールしてませんし、権東勇介は初ゴールしたとき在学中でしたし、吉川京輔は初年度は試合出てませんし、徐暁飛はぶちこんだのは味方のゴールでしたし。

 とにかく前半で一気に2点をリードする展開となった札幌は、あとはじっくり守ってカウンター、という展開に持っていくのが理想なわけですが、どっこいそんなつまんない試合なんて他の誰が望んでも選手たちが望んでおらず、後半開始早々にコーナーキックから失点して自らを追い詰める札幌。巧です。まぁ結果的には早い時間帯で失点したことが却ってプラスに働いた…なんてことはたぶんないとは思いますが、札幌としては1点差だろうが2点差だろうが特にやることは変わらず、隙をうかがってカウンターをお見舞いする、という1点。そんなわけで「北の暴れ馬」を中心に何度か鋭いカウンターを繰り出しますが、相変わらず1対1を決められないダヴィ。シュートモーションが去年に比べて明らかに小さくなり、かつシュートのスピードも上がってるのでそのぶんGKもシュートコースを読みにくくなっているはずなのですが、それでも正確にGKにぶち当てるのは何かの呪いでもかかってるのでしょうか。相手GKに。
 しかしそれにしてもクライトンはすげえ。2人くらいなら囲まれてもフットサルのようなボールコントロールで軽くいなせるし、そっちに出せるのかよ! という方向にパスが出てくるし、相手がファウルを覚悟で当たってきてもびくともしない体躯の強さ、そしてそれに頼りっきりというわけでもなく、イーブンのボールを身体の入れ方ひとつでマイボールにしてしまう使い方のうまさ。左足はあまり得意ではないみたいですが、独りよがりのプレイもなく、札幌にはもったいないくらいのレベルの選手。間違いなく歴代トップクラスの助っ人でしょう。FF7の召還獣で言えばバハムート零式。ちなみにノナトはオーディン(斬鉄剣不発)。
 ところで、磐田といえば2004年から2006年までの3シーズン指揮を執った柳下正明ヘッドコーチや、守護神としてゴールマウスを守り続けた佐藤洋平さん(チーム事情により期間限定で現役復帰中)、大伍を育てた森下仁之さん、「俺達のモリゲ」としていろいろと親しまれた森下仁志さんらユーススタッフ、強化部長を務めていた石井肇さんら、いつのまにか縁の深いチームとなりましたが、その中でも注目となるのはやはり2005~2006年に期限付きで札幌でプレイしていた加賀健一でしょう。札幌で2シーズン主力としてプレイして自信をつけた加賀は、磐田復帰後は持ち前のスピードと鋭いスライディングタックルでレギュラーの座を勝ち取り、この日も右サイドのストッパーとしてスタメン出場。今だから言いますが、2006年の開幕前のキャンプでのロッソ熊本とのテストマッチのあった夜、熊本の某有名馬刺し屋で馬刺しに舌鼓を打っていると、翌日オフだった札幌の選手たち数名もやってきたことがありまして、その中には当時札幌にいた加賀の姿もありました。せっかくなので焼酎の一本でも差し入れてあげようかと思いましたが、ただ差し入れるのでは面白くないので、お店の人にペンを借りて「白岳しろ」という熊本の米焼酎のラベルを「白岳昇格しろ」に変えて差し入れたことがあります。結果はご存じの通り、加賀一人だけラベルの通りになったことになりますが、札幌時代と同じ背番号15をつけた加賀は、当時からサポーターを沸かせた「わざと(かどうかは不明ですが)抜かせてすぐさま追いついてスライディングで止める」という桜木花道ばりの破天荒なプレイスタイルはそのまま。テクニックでも緩急でもなく行き当たりばったりで抜こうとするダヴィとの変態対決は見応えがありましたね。
 あと、今季磐田に復帰してこの試合後半から出場した名波浩ですが、今年36歳になる彼が黄金時代の磐田の象徴として、そして日本代表の主力として活躍していたのは、この日もスタメンで出場した大伍がまだ小学生だった頃。当時はまだごくごく普通のサッカー少年だった大伍は、おそらく青いユニフォームは夢のまた夢だったでしょうし、その10番を背負っていた選手なんて雲の上の存在だったに違いありません。時は流れ、共にプロとして同じピッチに立ったその大先輩を何食わぬ顔で削った大伍を見て、やっぱりただ者ではないと思いました。
 まぁそんなわけで名波を入れるのはともかくとしてもジウシーニョを下げるという札幌にとっては好都合な選手交代をしてくれたおかげで札幌はなんとか逃げ切りに成功。ジュビロ磐田から初勝利を挙げたことによって、ロアッソ熊本とFC岐阜を除く全チームから勝利を挙げることができました。もちろん、磐田に勝ったからといってJ1残留が保証されたわけではありませんが、結果としてJ1残留という夢が潰えたとしても、我々は胸を張って熊本と岐阜を倒しに行くんだと思えば少しは哀しみも紛れるかも知れません。あるいは熊本や岐阜戦で「べ、別にあんたに会いに来たわけじゃないんだからね!」と言ってみるとか。まぁそんなことは今は考えますまい。

2008年4月17日

蘇我蝦夷

2008年Jリーグナビスコカップ予選リーグ第3節
ジェフユナイテッド市原千葉 0-0 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ひみつ
     千葉/ひみつ

 川崎フロンターレの場合は「蘇我のイルカ」ということですね。

 先週末で第6節までを消化したリーグ戦はいったん中断し、4月16日はヤマザキナビスコカップの予選リーグ第3節が行われました。といっても次の第7節は今週末なので、中断というよりは無理矢理当てはめたという感じではありますが、Cグループ2位につけているコンサドーレ札幌は、首位のジェフユナイテッド市原千葉とのアウェイ戦に臨みました。
 最下位とブービーのチームは自動的に落第、下から3番目のチームには追試が待っているリーグ戦とは異なり、ナビスコカップはたとえ最下位で予選リーグ落ちしたところで特にペナルティがあるわけでもない上、全Jリーグが対象だったかつてと違って今はJ1限定の大会なので、天皇杯のように下のカテゴリのチームに負けて指差されて笑われるようなこともありません。大会で活躍した「開幕時点で満23歳以下の選手」に対して記者投票によって選ばれる「ニューヒーロー賞」という、どうしてもとってつけた感を拭うことのできない名前の賞が存在しているように、もともと大会の位置づけとしては若手選手の登竜門みたいな意味合いも強いため、最初から三冠を視野に入れてるようなチームはともかく、リーグ戦に全力集中せざるをえないチームにとってはどうしても優先度は低くなりがちで、ほっといたらホントにサテライトチームを出してきたりするチームが出てきて、それだと大会権威とか注目度とか大人の事情とかいろいろ不都合があるため、一応「ベストメンバー規程」なるものが存在します。まぁ要するに「あんまり極端なことすんな」ってことなんですけど、それでも各チームの意識がまちまちであることは否めません。
 で、今はリーグで降格圏外の14位にいるとはいえ降格候補一番人気の札幌にとっては、ここで消耗してリーグ戦に影響が出てもらっては困るわけで、ましてや中2日の試合で怪我でもされたらへのへのかっぱどころの話じゃないですから、できれば主力は休ませてあげたいのがサポーターとしての正直なところ。この日のスタメンも磐田戦から6人が入れ替わりましたが、一番休ませたかったダヴィとクライトンは揃って出場。三浦監督の頭の中には「変な負け方をして磐田に勝った流れを止めたくない」というのもあったようですし、実際第3節のアウェイ柏戦でリーグ戦初勝利を挙げることが出来たのも、その直前に行われたナビスコカップ川崎フロンターレ戦で今季初勝利を飾ったことと無関係ではないでしょうからね。それに、現在予選リーグ2位につける札幌にとって、決勝トーナメントに進むチャンスをみすみす逃すのももったいない気もしますし、他のチームがそんなに気合いを入れてこないのであれば、空気読まずにはっちゃきこくのもいいかもしれません。賞金の出るベスト4はちょっと遠いかも知れませんけど、ホームゲームが増えればそのぶん収入も増すわけですから、それらを考慮しての助っ人起用なのでしょう。もっとも、「単にこの2人がいないと話にならないから」という可能性のほうが高いような気もしますけど。

 さて、試合会場であるジェフユナイテッド市原千葉のホームスタジアム・フクダ電子アリーナは、リーグ戦・カップ戦を通じて札幌が試合をするのは初めて。ただし天皇杯では過去3試合を戦っており、PK戦含むその全てで勝利とアウェイでは数少ない相性のいいスタジアムです。その天皇杯アルビレックス新潟戦で見るもの全てを唖然とさせた佐藤優也がGKで、DFラインは右から池内、曽田、吉弘、坪内、ダブルボランチにディビットソン純マーカスと鄭容臺、サイドハーフは右が岡本で左が今季初スタメンの西谷、2トップにダヴィとクライトンという布陣。
 ホームの千葉はナビスコカップの予選リーグこそ得失点差で札幌を上回っての首位ですが、リーグ戦は未勝利で17位と低迷中。原因は主力の大量移籍に加えて、残った数少ない選手も怪我で出遅れてしまったためですが、ここに来てようやく怪我人も復帰し始めています。その中でも個人的な注目はやはり新居辰基。このサイトをご覧のかたにはもはや説明の必要はないかも知れませんが、かつて札幌ユースでぶいぶい言わせ、昇格しデビュー戦で初ゴール。このサイトのドメインの由来でもある「キングオブ札幌」としてチームを背負うことを期待されながらバカなことをしでかして解雇されてしまいましたが、その後立ち直ってサガン鳥栖に加入すると、「キングオブ有明」として2年で40ゴールもふんだくって、昨シーズン千葉に移籍。初年度は途中出場が多いながら5ゴールを上げ、今季は「キングオブ房総」として君臨しようとした矢先に怪我をしてしまい、前の試合でようやく戦列に復帰しています。そのジェフのメンバーはGK岡本、DFは右から益山、斎藤、ボスナー、ダブルボランチに下村と米倉、巻の1トップに馬場とフルゴビッチの2シャドウという布陣。

 いねえじゃん、新居

 実は札幌を退団してから直に新居を見るのはこの試合が初めてだったのでちょっと…というかけっこう楽しみにしていたのですが、残念ながら新居はベンチ。怪我明けでコンディションもまだまだでしょうからしかたないんでしょうけどね。コンサドーレサポーターとしてはまぁいてくれないほうが楽なんですけど。少なくとも巻よりよっぽど怖いし。

 そんなわけでキックオフですが、予想に反して西谷を中心に軽快に攻め込む札幌。ジェフはさすがにリーグ戦で低迷しているだけあっていまいちパッとしません。DFラインを統率していると思われるボスナーが低めのラインが好きなのか、ラインは中途半端に間延びしている上、フルゴビッチが引いてボールを受けることが多いため1トップの巻が孤立しがで攻撃もほとんど形になりません。しかし札幌も攻めているようには見えても、とりあえずまずは失点をしないことが優先なのか、磐田戦ではがんがん上がってきていたサイドバックもあまり上がってこず、サイドの攻撃に厚みが出ません。マーカスと容臺のボランチコンビは守備はともかく攻撃を期待するのはリックドム12機を3分で墜とせとガンタンクに言うようなもんですし、西谷はともかく岡本に1人で何とかしてこいというのは酷ってものです。そんな感じですからあとは(いつものように)クライトンとダヴィに頼るほかないわけですけど、その頼みの2人も疲労気味で身体が動かないのか手抜きをしてるのかは判断尽きかねますが、とにかく磐田戦の文字通り奇人…いや鬼神のようなプレイには程遠い状態。前半けっこう多かったセットプレイのチャンスでも、クライトンのキック精度がいまいちで惜しい形すら作れません。
 まぁそんなこんなで自分たちのパスミスや連携ミスでボールを失い、その失ったボールが相手のパスミスや連携ミスで戻ってくるといういかにもリーグ戦下位同士の対戦という感じの内容。「こんなチーム相手に負けるわけにはいかない」とたぶんお互いのサポーターがそう思ったことと思います。というわけでどっちも数少ないチャンスで惜しげもなく枠を外す太っ腹なところを見せつつ前半終了。

 さて後半。中2日でのアウェイ戦、さらに土曜日にはリーグでのアウェイ神戸戦が控えている以上、札幌にとっては残り45分をとりあえず守りきって0-0で終えたとしても及第点と言えます。しかしここで勝点3を奪えれば札幌が首位に立ち、グループリーグ突破に大きく前進することになります。前半の内容的にはどっちにも勝利が転がってくる可能性があっただけに、勝ちに行くのか、それとも負けないことを優先するのか微妙な感じですが、是が非でも勝たなければいけない試合ではないですし、前半はいろんなところから時たま繰り出されるびっくりどっきりパスや、池内の「やっちゃいけない場所でドリブル突破しようとしてものの見事に失敗して相手を引きずり倒してカードもらったでござるの巻」とかはともかく、全体的なバランスとしてはさほど悪くはなかったですから、とりあえずポジションはいじらずに元気な選手を入れてあわよくば得点を奪おうという算段だったと思います。そんなわけで岡本に代えて砂川を投入したわけですが、思った通り前半から飛ばしていた西谷の電池が赤ランプになったのを始めとして札幌の選手のプレスもなかなかかからなくなり、千葉に攻め込まれるシーンが続きます。札幌はクリアするのが精一杯というシーンが増え、破られるのは時間の問題かも知れない…という時に打たれた谷澤の鋭いミドルシュートで一瞬やられたと思ったのですが、この最大のピンチも優也が左手一本でファインセーブ。優也はこれ以外にもファーへのボールに飛び出して触れないとか、ハイボールの怪しいキャッチングなどのおなじみのシーンがほとんど見られませんでしたし、どうやらフクアリは優也にとって能力が4倍になる時空らしいです。いつもならどうやっても味方のところには行かないはずのパントキックですら、鋭いカウンターの起点になったくらいですから。実はミスキックっぽかったのは黙っていることにしましょう。
 札幌のチャンスはといえば、西谷のパスからダヴィが豪快に枠をぶっぱずした(右足)のと、右サイドで作ってフリーの西谷がシュートを打って相手に当たったのが記憶にあるくらい。というか、枠に飛んで得点の可能性がありそうだったシュートって両チーム含めて例の谷澤のシュートだけだったような気がします。結局0-0のまま試合終了。まぁ中2日のアウェイで勝点1は、札幌にとっては悪くない結果といったところでしょうか。

 で、新居。後半24分に今季FC東京から移籍しこの日スタメンで出場していた馬場憂太との交代で登場。実はこの2人、2001年の日本クラブユース選手権の決勝で戦っています。その決勝で2ゴールを挙げMVPとなったのが馬場で、MIPを獲得したのが新居でした。大会得点王も分け合っているその2人が、ユース時代とは別の同じチームで戦っていることに、ちょっとばかし複雑な思いがありました。ちなみにその時の東京ユースには尾亦弘友希や梶山陽平がいて、札幌ユースには鈴木智樹がいました。
 話がちょっとそれましたが、途中出場した新居は、入って2分後にいきなりイエローをゲット。たぶん生来と思われる負けず嫌いはそのまま気性の荒さに現れているのをこちとらヤツが高校生の時代から見ているわけですから、技術やフィジカルは札幌時代に比べて格段に進歩しましたが、中身は1ミリたりとも変わっちゃいないということなんでしょうか。試合終了間際に札幌のゴール近くで千葉の選手と札幌の選手がなにやら悶着があって、千葉のほうが新居だとわかって時は「ああやっぱり」としか思わなかったのですが、さて札幌のほうはといえば…止めに入った吉田主審に引きはがされその場を離れていくのは背番号5。なんだ池内じゃん。ああ、当別王者決定戦だったんですね。別に止める必要なかったのに。この試合は地上波はもちろん衛星放送ですら中継がなかったのですけど、もしあったらお互いの両親が同じテレビで一緒に見ていたかもしれない世紀の一戦の結果は、どうやらヒジ打ちで池内の勝利だったようです。ちなみに第2ラウンドは5月25日、函館千代台で開催予定です。
 まぁそんなわけでゴールも生まれず、はっきり言ってしまえばショッパい試合だったのですが、この当別王者決定戦に加えてキャプテンマークを巻いていたのが札幌はソダンで千葉はこれまた札幌出身の下村と、ある意味北海道サンクスマッチで道産子にとっては割と楽しい試合でした。

2008年4月21日

牛馬のごとく

2008年Jリーグディビジョン1第7節
ヴィッセル神戸 1-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ダヴィ
     神戸/石櫃

 0-0の引き分けに終わったナビスコカップ・ジェフユナイテッド市原千葉戦を挟んで、コンサドーレ札幌はヴィッセル神戸とのアウェイ戦を迎えました。水曜日のナイトゲームから中2日での試合ということで、試合の翌日に札幌に帰ってもすぐまた翌日に出発しなければならないことから、千葉戦のあとは帰札せず直接神戸に向かって現地調整した札幌は、千葉戦で入れ替えたメンバーを元に戻し、靱帯を痛めて戦列を離れた中山元気の代わりにFWにクライトンが入り、空いたボランチにディビットソン純マーカスが入った以外は第6節の磐田戦と同じメンバーで臨みます。
 同じくナビスコカップでは主力を外していたホームの神戸ですが、リーグ戦では前節までで2勝2敗2分の9位。まずまずの成績ではありますが、4節までは2勝2分と負けなしだったのが、第3節ジュビロ磐田戦で負傷し戦線離脱したレアンドロの穴を埋めきれず、第5節東京ヴェルディ戦、第6節京都サンガFC戦と昇格組に連敗。これまた昇格組であり、かつその中ではもっとも戦力的に劣るチームに負けて3連敗を喫するようなことがあれば、さすがに松田監督の首筋も冷たくなってくるというもの。神戸としてはいろんな意味で負けられない試合でしょうし、実際札幌が安牌なのは事実なんでそう思われるのは仕方がないのですけど、去年はそっちだってJ2上がりだったじゃんと思うと、なんとなくいつのまにかテリーマンがジェロニモとコンビを組んでいたのを知った時のような気持ちになります。

 それはいいとして試合は、キックオフから両チームとも主導権を握ろうと積極的に攻撃に出る展開。まず札幌が開始早々に神戸から期限付き移籍中の坪内のオーバーラップからコーナーキックを得ると、神戸もルーキー馬場の落としからボッティがフリーでシュートを放ちます。札幌も負けじとカウンターからクライトンのパスでダヴィが抜け出しGKと1対1になる大チャンスを作り出しますが、大方の札幌サポーターの予想通り、当たり前のようにキーパーにシュートをぶち当てるダヴィ。毎度のことながら物理法則をまるで無視するかのように相手DFを振り切って抜け出すダヴィがシュートをGKにぶち当てるまでのわずか数秒の間に、札幌サポーターの「大チャンス?」→「いやでもダヴィだし」→「でも今度くらいはもしかしたら…」→「ああああああやっぱり」という心中の流れももはや恒例。ここまで来るともうひとつの芸と言ってもいいかもしれません。まぁそんなこんなでお互い決定的なチャンスを1つずつ外したあと、ここからしばらくは神戸のペースで試合は進みます。札幌は要のクライトンが本調子になく、いつもなら2人くらいに囲まれても平気な顔してマイボールにし続けるクライトンが、相手のタックルにあっさり屈する場面も目につきます。中2日続きではさすがのプレデターも疲れるのかといった感じですが、クライトンのところでキープできないため押し込まれる時間帯が長く続きます。それでも守備陣の集中した守りで神戸の攻撃を食い止め、このままスコアレスで終わるかと思われた前半アディショナルタイムに突然やってきた今週の山場。相手のゴールキックからの流れで繋がれたボールを止めようと次々と札幌の選手が相手にスライディングタックルをかますものの、相手は屠れどボールは止められず、ペナルティエリアの中で柴田がボッティを倒してしまいPKを献上。神戸選手の屍の山を築いた上でペナルティキックとは、まさに神罰の地上代行者。
 アウェイで先制されるのはまぁ展開としては予想の範囲内ながらも、前半0-0で行けそうな流れで失点してしまうのは心理的ダメージはさらに大きいわけで、そんな絶体絶命のピンチを救ったのは、守護神ぎーさんでした。ボッティが自ら蹴ったキックをドンピシャで読み切って阻止しました。

 ぎーさんのPK阻止は大ファインプレイには違いないのですけど、冷静に考えればPKを与えて防ぐなんて、いわば自分のおならで昇天しそうになったのをかろうじて川の手前で引き返してきたようなもんで、結局PKを与えること自体が問題だったと思うのですけど、そんなことはおくびにも出さず気をよくした札幌は、後半開始からわずか1分、相手のクリアミスを拾ったクライトンが、走り込んだフリーの砂川にパスを出すと見せかけて逆から突っ込んできたダヴィにパス。うまく抜けたダヴィがこれまた人体構造を完全に無視したかのような無理矢理な左足の「必殺ひづめシュート」でゴール隅に流し込み、なんと札幌が先制します。
 しかしここから試合はほぼ完全に神戸ペース。札幌はさすがに中2日のアウェイ連戦が効いてきたのか、ここから運動量ががくんと落ちます。普段なら執拗にボールを追い回すダヴィもあまりボールを終えなくなり、前線からのプレスが効かないのでラインもなかなか上げられず、中盤にできたスペースを自由に使われ始めます。選手交代に活路を見いだしたい三浦監督はまず砂川に替えて西谷を投入。これはクライトンがいつもの半分程度の稼働率なだけに、前線でタメを作れる選手を入れたかったのが理由だと思いますが、その交代の意図を選手たちがくめなかったか、西谷へボールがあまり集まらず。まぁ実際いつやられてもおかしくないような状況を、ホントにぎりぎりのところで止めていたので、「わかっちゃいるけどそれどころじゃなかった」というのが正解なのかも知れませんがね。なんとか踏み止まっていたとはいえ、もう徳俵に足がかかっている状態を打開するため、次いで疲れの見えた大伍を下げて当別暫定王者の池内を投入。しかし、磐田戦のように平岡を1列上げて池内をサイドバックに入れるのかと思いきや、ポジションはそのまま。おそらくは松橋を入れて3トップにしてきた神戸のシステムに対抗する、というよりはその3トップの背後からボールを供給する古賀を止めるためだったのでしょうけど、これが逆に仇となったか、その警戒してきた左サイドではなく、コーナーキックからのこぼれ球を前半から再三タイミングの良いオーバーラップと質のいいクロスで札幌を脅かしてきた右サイドバックの石櫃に見事なミドルシュートを叩き込まれ、ついに追いつかれてしまいました。

 その後は絶好のカウンターのチャンスもありながら決めきれず1-1で試合終了。3対1という状況だっただけに決めていればという思いもありますが、24本ものシュートを打たれながらも1失点で済んだという見方も出来ますから、結果として勝点1は悪くない結果だったという感じでしょうか。

2008年4月30日

自滅

2008年Jリーグディビジョン1第8節
コンサドーレ札幌 0-1 アルビレックス新潟
得点者:札幌/いません
     新潟/誰かいた

 世間はゴールデンウィークとなり、Jリーグの試合もゴールデンウィークシリーズに突入一気に行われます。4月26日に行われる第8節を皮切りに、ゴールデンウィーク終了の5月6日に行われる第11節まで、11日間で4試合という強行日程。多くの学校や会社、官公庁が休みになるこの時期はJリーグにとっても「かき入れ時」となるのでしょうが、ここ3年間の観客動員数のデータを見る限り、この期間中に行われた試合の平均観客数をそれ以外の平均と比べると、2006年に約5,000人ほどアップした以外は1,500人~2,300人増程度に留まっており、客足が如実に伸びるかと言われると決してそうではなさそうです。カードとか試合会場のキャパシティとかいろいろな要素も絡んでくるとは思いますが、要するに世間一般の人はゴールデンウィークにわざわざサッカーなんて見に行かないってことなんでしょうか。せっかくのゴールデンウィークなんですから、もっとお客さんが足を運びやすいカードを集中して組めばいいと思うんですけどね。実際、平均で28,286人を集めた2006年の第12節(5/6~5/7)は、浦和レッズ対鹿島アントラーズを始めとして近場同士の試合が多かったですから。
 まぁそうは言っても近場のチームがないコンサドーレのゴールデンウィークシリーズ緒戦は、これまた(世間的には)地味なチームであるアルビレックス新潟との対戦。観客動員は13,000人強と寂しい入りでした。とはいえ、前節終了時点で16位と下位に低迷する新潟を相手に、ホームで退場者を出して0-1で敗戦、というみったくない試合を、新潟サポーターをおおざっぱに1,000人として、ドームにいた12,000人に加えてスカパー!などで中継を見ていた人のカズヲ考えると、被害レベルとしてはポケモンショックと同等と言えるかも知れません。実際、「矢野貴章の人を小馬鹿にしたような仕草で気分が悪くなった」という人が少なくとも約1名はいましたからね。

 さてもう思い出したくもない試合ではありますが仕方がないので書きます。前述の通り新潟は前節までで1勝4敗2分の16位。前節退場者を3人出した京都にようやく初勝利を挙げたものの、チーム総得点は貧弱な攻撃力の見本とも言えるコンサドーレ札幌の6得点よりも少ない5得点と、深刻な得点不足に悩んでいます。しかし開幕4連敗を喫したあとはここ3試合は負けがなく、また怪我で出遅れていたマルシオリシャルデスがようやく復帰し、ここからの巻き返しを図りたいところ。
 一方札幌も前節神戸と引き分け、今のところは14位とまずまずの位置には付けておりますが、ゴールデンウィークシリーズは浦和レッズや京都サンガFCとのアウェイ連戦が控えているため、残留に向けてホームでは確実に勝点3を稼いでおかなければいけませんし、おそらく残留争いのライバルとなるであろうこの新潟とのホームゲームは落とせない試合です。
 共にここまで12失点とどっこいどっこいの守備力を誇る両チームの対戦は、開始から案の定なんだかよくわからないミスの頻発するJ2的展開を見せます。新潟期待のマルシオリシャルデスはまだ試合勘が戻っていないのか、本人のプレイからはあまりキレは感じられませんでしたし、新潟のほうのダヴィはいるのかいないのかよくわからない感じ。少なくともめんこくはないようですが、勝負してこない2トップともども新潟の攻撃に全く怖さを感じなかっただけに、「ドーム馬」である札幌ダヴィにかかる期待は大きかったのですが…。前半34分、ゴール前での競り合いをきっかけに激昂したダヴィが、岡田主審の目の前でダヴィのマークについていた千代反田に頭突きをかまして一発退場。この試合を語るに当たって、このダヴィの退場が全てですね。
 確かにああ見えてダヴィは試合中けっこう熱くなりやすい選手ですし、昨季のイエローカードゲット数は17枚と、堂々リーグトップの数字を残していますので、それだけ見ると気性難でダーティーな選手というイメージを持ってしまいますが、その数々のイエローカードも半分以上がC1(反スポーツ的行為)、それも「止まれずに相手を潰した」とか「タックルかましたら相手が吹っ飛んでった」とか、どっちかというと反人類的行為によるもので、C2(ラフプレイ)の数だって元気のほうが多いですし、C3(異議)もただの1度もありません。一発レッドはもちろん2枚警告での退場もありません。もちろんどんな理由があろうともあれはやっちゃいけない行為ですし、ダヴィが退場するということは、単にフィールドプレイヤーの人数が1人減る以上の意味を持つのですから、エースとしての自覚が足りなかったと言わざるを得ませんけど、そんなダヴィがあれだけ怒るというのは、一方でいったい何があったのか気になるところです。千代反田に「お前のドラゴンボールDVDをMUSASHI GUN道にすり替えたのオレだから」などと言われたのかもしれません。怒るのも無理ないですね。
 とにかくエースストライカーを失った札幌は、1人少ない中それでもニュータイプとして覚醒した大伍を中心に攻め込みますが、決定的なチャンスをモノにできず、逆に新潟にラッキーな形で先制点を奪われそのまま0-1で敗戦となりました。

2016年2月

  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29          

アーカイブ