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2008年7月 アーカイブ

2008年7月 1日

悲しい色やね

2008年Jリーグディビジョン1第14節
ガンバ大阪 4-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/西嶋、柴田
     名古屋/バレー×2、ルーカス、山口

 J1再開となる第14節、コンサドーレ札幌はガンバ大阪とのアウェイ戦となります。Jリーグ開幕時からの仮名チーム、通称「オリジナル10」の一つであるガンバは、黎明期は下位に低迷することが多く、当時同じく激弱だった浦和レッズと共に「Jリーグのお荷物」などと呼ばれていました。しかしその浦和と同じように近年は力をつけ、2005年に初優勝(関西のクラブとしては初)を果たすと、昨季はリーグ戦こそ3位に留まったもののナビスコカップを制覇しています。前線に構えるルーカス、バレーという日本でも高い実績を持つブラジル人2トップに対し、中央からは二川孝広と遠藤保仁がパスを供給し、サイドからは安田理大、加地亮の新旧日本代表選手がクロスを供給、ディフェンスは橋本英郎と明神智和がどっしり構えるという布陣は、これといったスキが見当たりません。まさに強豪チームとも言えるもの。
 そういえば今更ですがいつの間にやらガンバも助っ人補強をブラジル路線に変えたんですね。しかも最近はバレーやルーカス、マグノアウベスのように日本で活躍した選手を引っ張ってきていることもあってほとんど外れがありません。まぁお金があるからこそできる芸当なんでしょうけど、東欧路線だったころの、バブンスキーとかピオトルとかドロブニャクとかプロタソフとかツベイバとか微妙な活躍をする選手を連れてきてた頃が懐かしいですね。
 で、そのガンバは今季も優勝候補の一角として挙げられ、この試合の前までの成績は6勝3敗4分、勝点22で5位につけています。首位の浦和レッズとの勝点差はわずかに4で、その浦和が前日の試合で柏レイソルに1-2で敗れておりますから、17位の札幌が相手のホームゲームは確実にものにしたいところ。

 そして現在17位の札幌は、少ない予算でそれでも降格圏内から抜け出すため、中断期間にFWアンデルソンとDF箕輪義信を補強しましたが、松下マネーを背景に毎年派手な補強を見せるガンバに比べれば、カレーライスに肉が入っているだけでうれしいレベルの補強でしかありませんが、これが今の札幌の精一杯。それでも何が起こるかわからないのがサッカーです。つってもこのガンバ大阪対コンサドーレ札幌がJ1第14節最後の試合なんですが、16位のジュビロ磐田、15位の清水エスパルス、14位のアルビレックス新潟といった当面のライバルと目されるチームがいずれも勝利を収め、FC東京と対戦したジェフユナイテッド市原千葉も引き分けで勝点を9にし、勝点10の札幌のすぐ後ろにつけてきました。優勝候補が相手とはいえ、せめて引き分けに持ち込んでおくくらいはしないとかなりつらい状況となってしまいます。その目論見はわずか5分で脆くも崩れ去り、終わってみれば大量4失点という大笑いな結果に終わってしまいましたが。

 まぁ敗戦という結果については、ガンバにアウェイで勝つことは難しいと思っていましたので仕方がない部分もないわけではないんですが、さりとて内容についてはどうだったかというと、これまたとても微妙な感じで評価に苦しみます。
 まず注目はもちろんアンデルソン。「ポルトガルの強豪・ベンフィカリスボンにかつて所属していた」という触れ込みではあるものの、かといってベンフィカで活躍していたかと言えばそういうわけでもなし、ベンフィカでは試合にもほとんど出ていなかった模様ですから、逆に言えば「ベンフィカにいたこと」以外にはこれといった実績面でのアッピールポイントもないとも言えるわけで、黄金聖闘士でいえばアルデバランのポジションです。タイプ、スタイル、得意なプレイ、苦手なプレイ、好きな食べ物、嫌いな食べ物、らき☆すたでいえば誰に近いかなど何もかもがわからないという文字通り未知数な選手ですから、どれだけやれるのかが一つのポイントでした。
 で、結論から言えば思った以上にはやれそうだという印象です。歴史的な理由もあってポルトガルリーグではブラジル人選手も多く活躍していることはあるにせよ、さすがにヨーロッパでも名の知れた名門クラブであるベンフィカが並の選手にオファーを出すはずもないということでしょうか。まだ実戦感覚が取り戻せていない上、ダヴィと組んでまだ日が浅いこともあって、コンビネーションはあまり合っていませんでしたが、視野も割と広そうですし、キープ力もそれなりにあるようです。何よりも、クロスに対して相手より先にボールに触ることができるという点で、得点の可能性はだいぶ上がってくるだろうと思いました。まぁダヴィからのグラウンダーの折り返しをフリーでふかしてしまったのは残念でしたが、これもピッチが滑りやすかったのと、戻りながらのシュートで見た目以上に難しい体勢だったせいもあるでしょうね。スーパーではないものの及第点以上の活躍はできそうな感じでした。

 一方でディフェンス面に関しては、箕輪を補強し、さらに西嶋も復帰したにもかかわらず4失点というのは正直いただけません。もちろん箕輪もまだ合流して日が浅いですし、箕輪個人の力で失点を防いだに等しいシーンもあったにはあったのですけど、現時点で「箕輪効果」を実感するまでには至っていないと言わざるを得ません。まぁ3点目に関しては遠藤を褒めるしかないとは思うのですけど、4点目はほんとに情けない失点でしたし、それ以上にバレーの2得点はショックでした。1失点目はうまく入れ替わられたのを西嶋がスライディングでカバーしてたのに、そのクリアしたボールが再びバレーの前に転がってきたもの、2失点目も明らかに当たり損ねたのが幸いしてGK高木の意表を突いて逆サイドのゴールネットを揺らしたもの。いずれも札幌にしてみれば「不運」とも言える失点ですが、ミスキックだろうがたまたまだろうが、キレイな形じゃなくてもゴールに入ってしまえば1点は1点。ガンバは入ったのに同じようにチャンスがあっても入らなかった札幌、この先の戦いを考える上でこのあたりの一見小さな違いが最終的に大きな差になってくるように思います。要するに、もっとガンガンクロス上げてもっとガンガンシュート打てってことなんですがね。下手な鉄砲も数打ちゃ当たるんですから。この日2得点を挙げたようにセットプレイはJ1の強豪相手でもある程度は通用するんですから、あとはいかに流れの中からの得点力を上げるかということだと思うのです。
 この先は残留争いのライバルと目される下位チームとの対戦が続きます。ここからが正念場とも言えますから、しっかり勝ち点を挙げられるよう修正して欲しいと思います。この際ですからZガンダム的な「修正」もありだと思います。

 ところで、この日ガンバのゴールマウスを守っていたのは、かつて札幌に所属していた藤ヶ谷陽介です。2005年に札幌からガンバへ移籍した藤ヶ谷とは、2006年の天皇杯準決勝、そう、西澤画伯をして「まぁ、宮本だし」と言わしめた疑惑の判定で札幌が敗れた試合では藤ヶ谷はベンチだったため、この試合が移籍後初対戦となります。その藤ヶ谷、俺たちの知ってるままの藤ヶ谷でした。ダヴィへのびっくりどっきりパスは、とても懐かしかったです。

2008年7月10日

厚別開幕

2008年Jリーグディビジョン1第15節
コンサドーレ札幌 2-2 清水エスパルス
得点者:札幌/ダヴィ、池内
     清水/西澤(偽)、マルコスパウロ

 既に今更な感がありますが、清水エスパルス戦。サミットストアが店舗を展開してないのに洞爺湖でサミットが行われる北海道。そのサミット開幕を目前に控え、札幌では遅まきながらの厚別開幕戦が行われました。札幌がメインで使用するスタジアムはこの厚別公園競技場と札幌ドームの2つがあり、より多くの観客動員が期待できるのは駅からのアクセスも便利で天候に左右されず、キャパも厚別の約2倍の3万8千人まで入る札幌ドームのほうで、実際昨季のドームと厚別それぞれの平均入場者数を比べると、ドームのほうがだいたい2倍くらい入っている実績が出ているのですが、ドームは厚別に比べると会場使用料が桁違いに高く、さらに観客が2万人を超えるとさらに超過分に応じて使用料が加算されるという方式のため、ドームでやれば利益もにばいにばーいと高見山っぽく言えるかというと実はそういうわけでもないのが実情です。
 そのため、春先や初冬など雪に埋もれて使用できない時期はもちろん、照明施設が常備されていない厚別では、日本ハムファイターズの試合と重なったりなどで札幌ドームが使えない「どうしても」の場合ではドームを使うことが多いのですが、これまでは前記の理由からそれ以外の場合では原則として厚別を使用していました。例年、厚別が使用可能になるのは雪が完全に融けて芝の養生も終わった頃、時期で言えばだいたい5月のゴールデンウィークのあたりとなるため、厚別の開幕戦もこの頃になることが多かったのです。
 しかし今季はJ1ということでいろいろと頑張らないといけないためか札幌ドームでの開催が増え、それに伴って厚別の開幕戦もこの時期までずれ込んだのですが、コンサドーレが誕生してから札幌ドームが出来るまではメインスタジアムとして使用され、多くの試合が行われる中で数々の名勝負の舞台ともなったこのスタジアムには、古くからのサポーターを中心に特別な思いを持つ人も少なくありません。まぁ逆に2001年のアビスパ福岡戦とか2002年のFC東京戦とか思い出したくもない試合も少なからずあるのですけど、それでも全体的な勝率もいいこのスタジアムでの試合を待ち望んでいた方も多かったでしょう。

 その試合に迎える相手は清水エスパルスです。2005年から就任した長谷川健太監督のもと、初年度こそ15位とぎりぎり降格ラインを回避したものの、2年目以降は2年連続して4位という好成績をキープ。ところが今季は鹿島アントラーズを完封して勝ったと思ったら東京ヴェルディにボロ負けしたりと不安定な戦いぶりで、この試合前までの順位は5勝6敗3分で12位。16位のヴィッセル神戸とは勝点で2の差しかなく、降格圏内を脱出したとはまだまだ言い難い状況ですから、アウェイとはいえ札幌相手に負けるわけにはいかない試合です。
 つーか、負けるわけにはいかない度に関してなら、最下位のジェフユナイテッド市原千葉がもうほんとすぐ背後に迫ってる17位の札幌のほうが深刻なわけで、正直四の五の言ってられない状態ですから是非とも勝点3が欲しいところなのですが、清水との対戦成績は少し、というかかなり分が悪く、ここまでの対戦成績は1勝5敗で、その1勝も延長Vゴールでの勝利でのもの。まぁ勝ったことがあるだけマシかもしれませんけど、とにかく苦手なチームであることは間違いありません。
 その札幌は復帰したばかりの西嶋がまたしても怪我で離脱。左のサイドバックには坪内が周り、右のサイドバックには開幕前の手術による長期離脱を経てナビスコカップ柏レイソル戦で復帰した途端に退場するという、1ミリたりとて変わらぬ健在っぷりを発揮した西澤画伯が入りました。そしてサイドハーフとして本来はFWの中山元気を起用。「とにかく大きいのを並べてみました」といった感じの布陣です。

 試合は札幌が風下に立った割には五分五分の立ち上がりを見せ、細かいパスとドリブルを織り交ぜてくる清水の攻撃を注文通りに中盤で食い止めますが、しかしせっかくいい位置でボールを奪っても、考えなしに前線に放り込んだり、微妙にパスがずれて攻撃がスピードダウンしてしまい相手が陣形を整える時間を与えてしまったりでなかなか有効な攻撃チャンスを作ることができません。前半12分にコーナーキックのこぼれ球から再び上げられたクロスに、DFの死角から入り込んできた清水のほうの西澤にバッチリ合わせられて先制を許すまで。クロスもそれに合わせた清水のほうの西澤も確かにうまかったのですが、オフサイドポジションにいたマルコスアウレリオに気を取られて足を止めてしまったのが最大の要因。もったいない失点だと思います。
 ここからは追いつきたい焦りがあるのか、札幌の攻撃はなおいっそうちぐはぐに。左のサイドハーフに元気を置いている以上、左サイドから崩すのはほぼ望み薄。ただ逆に右サイドからクロスを上げた場合、ファーサイドに元気が飛び込むことによってシュートチャンスは増えるでしょうから、札幌としてはいかに征也にいい体勢でクロスを上げさせることができるかが鍵となります。で、実際征也がフリーでサイドのスペースに抜ける機会もそれなりにあったのですが、風の影響もあってか中の味方に合いません。
 しかしそれでもその征也のクロスから得たコーナーキックから、信じられないほどどフリーだったダヴィがヘディングで押し込み同点に追いつきました。
 振り出しに戻して気がよくなかったか、その後もチャンス自体は作れるようになった札幌ですが、相変わらずディフェンスはちぐはぐなまま。清水のボックス型の中盤に対するミスマッチに加え、クライトンが上がってできたスペースのケアをどうするのか、という修正ができず、特に縦に入る速いパスに対して対応が後手に回るシーンが目につきます。後半は風上にエンドを取る札幌が若干有利になりますから、前半1-1で終わっておきたい、というよりは全員引いてでも1-1で終わらなければいけないはずなのですが、それができないのが札幌。終了間際の44分、その速い縦へのパスを止めきれずにマルコスパウロにゴールを許し、再びリードされてしまいました。

 後半、いまいちプレイが不安定だった柴田を外して右サイドバックに池内を投入。右サイドバックに入ってた画伯がセンターに周り、真ん中2枚は西澤と箕輪、合わせてプロ歴26年という経験豊富なコンビです。これに大塚が復帰すれば、まさしく2000年後期型川崎フロンターレですね。まぁ、この年の川崎は降格してるんですけど。
 で、風上を生かして早めに追いつきたい札幌ですが、やはり前半のポジションギャップの修正ができておらず、ワンツーで簡単に抜け出されフリーでシュートを許す状態。つーか清水の選手は簡単そうにワンツーやってるのに、札幌は全然ワンツーにもならないのはこの際言ってはいけないことなんでしょうか。ガンバ戦では割といいプレイを見せていたアンデルソンも、ポストプレイは悪くないのですが前を向く意識はあまりないようで、相手に脅威を与えているとは言えません。三浦監督は後半16分にそのアンデルソンを下げて砂川を左サイドに投入、左サイドに入っていた元気をFWに戻しました。さらに後半25分に征也に替えて西谷を投入。右に砂川、左に西谷という布陣とします。
 これでとりあえず左右両サイドで攻撃の起点ができるようになった札幌は、とにかくクロスを入れて最悪でもコーナーキックを取れば得点のチャンスは増える…というよりはヘタに流れでシュートを狙うよりもそっちのほうが得点できる気がするのですが、その西谷投入から4分後、ほんとにその通りにショートコーナーでのクライトンからのクロスを池内が頭で叩き込んで再び同点に追いつきました。「とりあえず大きいの並べてみました」というのが一応奏功したわけですね。
 その後、得点こそなかったもののそのちょこまかした動きに札幌が手を焼いていたマルコスアウレリオが既にピッチを退いていたこともあり、試合は完全に勢いに乗った札幌のペースとなったのですが、いくつかあったチャンスも決めきることができずそのまま試合は引き分けで終了しました。

 さて、この試合も2失点を喫した札幌は、これでリーグ戦連続失点記録を15試合にまで伸ばしました。J2での連続得点試合記録を保持している札幌としては、ここまで来たら連続失点記録も狙ってみようかと思いたいところですが、Jリーグの記録は1997年7月16日のセレッソ大阪戦から1998年10月17日の横浜フリューゲルス戦まで、足かけ1年以上に渡ってヴィッセル神戸がこつこつと積み上げた45試合。まだまだひよっこです。その偉大なる記録に近づくためにも、今年は是非失点しながら残留しましょう。

2008年7月15日

ミラー対ミウラ

2008年Jリーグディビジョン1第16節
ジェフユナイテッド市原千葉 0-3 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/元気、ダヴィ×2
     千葉/新居は決めませんでした

 前半戦のひとつの大きな山場となるであろう、「裏天王山」の決戦。17位のコンサドーレ札幌は、最下位のジェフユナイテッド市原千葉とアウェイで対戦します。両チームの勝点差はわずかに1。負ければ順位は逆転され最下位に転落する札幌と、勝たなければいよいよもって初の降格が現実味を帯びてきてしまう千葉。どちらも負けられない試合です。「だったら引き分けでいいじゃん」と生きたいところですが、ここのところなぜか16位から上のチームが仲良く手を繋いで下2チームから離れて行ってしまっている状況では、まだリーグも半分以上を残しているとはいえ引き分けは単なる共倒れ以外の何物でもありません。まさに血で血を争う対決…と書けばカッコイイ感じですけど、まぁ実際はなんつーか、はなくそのなすりつけ合いに近いです。
 ともあれ大事な試合なことは間違いないのですが、札幌はチームの要であるクライトンが累積警告で出場停止。ここまでのところでチームのアシスト王…というよりはほとんどの得点が何らかの形で彼を経由している札幌にとって、クライトンを欠くのは南葛SCが翼くんを欠くのと同じこと。相手の千葉も中断期間にイングランド・プレミアリーグの名門リバプールでヘッドコーチを務めていたアレックス・ミラー氏が監督に就任。それまでナビスコカップを含めて14試合で1勝しか出来なかったチームが、ミラー監督就任以降は8試合で負けたのはわずかに2試合。札幌もまた、5月25日に函館で行われたナビスコカップ予選でミラー監督率いる千葉と対戦し1-2で負けております。しかも相手にはこの試合でも2ゴールを挙げたように、札幌戦をやたら得意としている"King of 房総"新居辰基がいます。
 そんな札幌にとって唯一の救いは、ここフクダ電子アリーナ、通称「フクアリ」では未だ負けなしであること。ナビスコカップでの千葉とのアウェイ戦でも、勝てはしなかったもののスコアレスドローと、ここまでのところただひとつだけの無失点試合を見せているスタジアムです。というか、今まで行われたフクアリでの試合で失点したのは第86回天皇杯(2006年)のアルビレックス新潟のみ。つまり優也のチョンボでしか点を取られていないのです。
 で、この試合でも開始に2分でセットプレイからのこぼれ球を中山元気が押し込んでとっとと先制しました。普段はセットプレイのキッカーを務めるクライトンがおらず、二番手の砂川誠もベンチスタートということで、この試合でセットプレイのキッカーを務めたのはトップではほとんど記憶にない藤田征也。その最初のフリーキックで、しかも場所もゴールまでは40メートル以上という遠い位置から。もちろん征也のキック精度はユース時代を見てても決して悪くはないですし、札幌のセットプレイだけはJ1でも通用するのはわかってましたけど、それでもお世辞にもビッグチャンスとは言えない状況でしたから、まぁファーストシュートまで持っていって勢いをつけられればいいな、くらいにしか思ってなかったんですよ。相手がクリアしきれずボールが元気の前に転がってきてすら、これまで何度も見たように焦ってクロスバーの上に飛んでいくボールのイメージが自分の中にあったわけです。それが入っちゃうんだもんなぁ。
 ただ先制したとはいえその後は早めに追いつきたい千葉のペースで試合が進みます。が、フクアリの女神(メガネっ娘)は守備面でも札幌に微笑んでいたようで、フリーでボールを持った新居が狙い澄ましてアウトにかけたミドルシュートや、大きな展開から青木が放ったシュートはギリギリでゴールを逸れていきます。逆に13分、自陣からの平岡のパスを受けたダヴィがマークに突いたボスナーをワンフェイクで置き去りにして放ったグラウンダー気味のミドルシュートがゴール枠ぎりぎりに決まり、札幌が追加点を得ました。つーかこの時も自分はてっきりサイドネットに突き刺さってゴールを外れたと思ってたんですけどね。「あ~残念」とか思ってたらなんかダヴィは喜んでるし、岡田主審はなにやら書き込んでるし、アシスタントレフェリーはセンターサークルに戻っていってたので、どう見ても得点が認められたということなんですけど、この時間帯で2得点なんてぶっちゃけありえないという先入観のせいか、電光掲示板の得点表示が「0-2」と変わるまでのオレは、きっと豆が鳩鉄砲食らってたような顔をしていたと思います。
 とにかく望外のリードを得た札幌。こんな展開になるとはつゆほども思ってはいませんでしたけど、2点を追う千葉もおそらくはそうだったのでしょう。前述の通りミラー監督になってから2試合しか負けていない千葉ですが、その2敗というのはナビスコカップの準決勝名古屋グランパス戦(0-1)と、前節の東京ヴェルディ戦(0-3)。つまりここ2戦は連敗しているということです。2点リードしているとはいえ札幌が終始押しているという展開でもなかったですから、もし連敗中じゃなければ、あるいはこの展開でも「落ち着いて1点ずつ取り返そう」という心境になっていたかもしれません。しかし気持ちが後ろ向きの時はなかなかそう切り替えが出来ないもので、焦りばかりが募っているのか、攻撃にもまったく迫力がありません。札幌の「フロンターレ2000年後期型センターバック」は空中戦と肉弾戦にはめっぽう強い反面、スピードへの対応は苦手なので、新居をしつこく使われてきたらいやだったんですけど、あくまでレイナウドへのロングボールにこだわり、結果箕輪に吹っ飛ばされるだけ。その後レイナウドは箕輪のマークから逃げたら西澤画伯にぷちっとやられてあえなく途中交代となりました。
 逆にこの1点で精神的にはぐっと楽になったであろう札幌は、別段無理をせずカウンター狙いに徹します。守備の出来自体は普段より格段にいいというわけではないのですが、精神的な余裕のぶんだけ守り方にも余裕があるのに加え、千葉が攻撃に迷いがあって展開が遅いこともあるのか、インターセプトがよく決まります。リーグ戦での順位が示しているとおり、どちらもあまりうまくいっていないチーム同士の対戦ではありますが、ここまでのところ千葉のほうがよりうまくいっていないという感じで、うっかり2点をリードしてしまい、余裕どころかむしろオロオロしていたサポーター(主にオレ)もようやく落ち着いてきた頃でした。なにやら札幌のベンチで交代の準備をしているところが目に入りました。既にビブスを脱いでユニフォーム姿になっているその背番号は29番。ディビットソン純マーカスです。なんですと?
 いくら何でも前半もまだ終わってないうちから守備固めに入るとは思えませんから、きっと何かアクシデントがあったに違いはありませんが、サッカーではそういったアクシデントをきっかけに試合の流れが変わってしまうことも珍しくない上、交代準備をしているのは試合の流れを変えてしまう最も大きな要因である「やらかし度」で不動の評価を得ているマーカス。アンパンマンの予告編風にいえば「そんな時、純マーカスが現れて大変なことに!」って感じです。
 結局怪我をしたらしいアンデルソンと交代で投入されたマーカス。やらかしてしまうのは別にマーカスに限ったことではなく、この試合でも芳賀主将が一発とってもヤバいのをやらかしましたし、吉弘やぎーさんも直接失点に繋がるようなミスをやらかしてきてるんで、やらかすこと自体は別にいい(ほんとはよくないけど)し、カウンターを潰したりいい守備もあったんですけど、とりあえず出てきて早々にカードもらうのだけはやめてくんないかなぁ…。つーかあとから公式記録見てみたらC2(ラフプレイ)じゃなくてC4(繰り返しの違反)って、防げるカードじゃないですか。
 まぁそんな感じでアクシデントもあり、終了間際にはボスナーの直接FKがクロスバーを叩きましたが、元気のシュートはゴールに入れたフクアリの女神(メガネっ娘)はボスナーのシュートは外に出して事なきを得、前半は2点リードで終了します。

 後半、2点を追う千葉がいっそう前がかりになって来るでしょうから、札幌はこれまで通りしっかりディフェンスをして、そして出来れば早い時間に追加点を奪い、千葉の心を折ってしまうことがベスト…なんですけど、そんな戦い方が出来るなら今頃こんな順位にはいないよね…と思ってたらそれやっちゃうんだもんなぁ…。レイナウドのドンピシャのヘディングをぎーさんがファインセーブで何とか防いだり、画伯がやらかしたりと何度かピンチを招いたあとの後半15分、坪内がヘディングで前に送ったボールに抜け出したダヴィが右脚で決めてこの試合2ゴール目となる3点目をゲットしました。
 この得点は単なる3点目という以上に大きかったと思います。この得点の少し前、千葉が巻と米倉を2枚同時に投入し、仕切り直しと共に勝負をかけようとしたその出鼻を完全にくじいた格好になりましたからね。千葉にとってはまさに「つうこんのいちげき」といった感じでしょう。なんですかこれ。なんか強いチームみたいじゃないですか。
 まぁダヴィの個人突破があったとはいえ、クライトンなしで3点を取ったことは紛れもない事実。これは攻撃面で大きな自信となるでしょう。そうなると次に札幌に求められるのは、当然守備面での自信です。つまり「無失点」で終えること。ここまでリーグ戦全ての試合で失点してきた札幌ですが、この試合を無失点で終えると、画伯と箕輪が組んだ清水エスパルス戦の後半から、まだ失点していないということになります。フロンターレ2000年後期型センターバックはけっこういけるんじゃないかという気になれます。
 その後はやけくそになった千葉に攻め込まれる展開が続きますが、攻撃が迷走気味の千葉は巻も惜しいシュートを放った以後はすっかり試合からいなくなり、谷澤や米倉が時たまいいところを見せるのみ。
 試合の大勢は決した中、三浦監督のやるべきことはただひとつ。そう、池内友彦を投入することです。ここまで共に1勝ずつを挙げている当別王者決定戦の第3ラウンドを開催するべきなのです。そして監督はもちろん最後の交代カードとして池内を送り出し、ちゃんと空気を読んでくれたのですが、時間が短すぎてノーコンテスト。対戦成績1勝1敗のまま、勝負はいよいよ最終決戦にまで持ち越されました。会場はお互いの家族が見に来るであろう厚別競技場。これ以上ない舞台です。
 というわけで試合はこのまま注文通りに無失点で凌ぎきり、3-0で終了。試合後の会見で三浦監督が不満を口にしていたとおり、内容的には決してよくはありませんでした。シュート数19本対9本というスタッツが示すとおり、全体的に攻めていたのは千葉ですし、決定的なシーンも決してなかったわけではありませんでした。しかしそのうちの1本すら決まらなかったのに対し、それほど多くのチャンスを作ったわけでもない札幌は、9本のシュート中3本を決め勝利。サッカーではこういうことは珍しくないですが、ここまでうまく行っちゃうとやはり蘇我と蝦夷は相性がいいのではないかと思ってしまいます。ダヴィもJ1では初となる1試合2ゴールはもちろん、ミドルシュートとGKとの1対1というこれまではどちらかといえば苦手としていた形からゴールを決めたのも、蘇我馬子ってことだったんだと思います。

2008年7月19日

無得点だけど無失点

2008年Jリーグディビジョン1第17節
コンサドーレ札幌 0-0 大分トリニータ
得点者:札幌/いない
     大分/なし

 前節ジェフユナイテッド市原千葉とのアウェイ戦で、念願の4勝目を手に入れた札幌は、今節はホームに戻って大分トリニータとの対戦となります。大分は札幌がJ2に降格した2002年に入れ替わりでJ1に昇格。それ以降はずっとJ1にいるため、天皇杯やナビスコカップでは何度か対戦しているものの、リーグ戦での対戦は共にJ2にいた2000年以来実に8年ぶりということになります。J1昇格以降のホームゲームの入場者数は毎年1試合平均で2万人前後と決して少ないほうではありませんが、予算規模としては決して大きいほうではない、というよりはむしろ毎年のようにスポンサー不足が話題になるほどお金のないチーム。選手のレベルも大分ユースが生んだ最高傑作であるGK西川など素晴らしい選手もいますが、全体的にはそれほど選手が揃っているほうではない、というよりはむしろあまり名の知られていない選手が多い、言ってしまえばとても地味なチームです。まぁよそ様のことは全く言えないんですけど、そんなチームが群雄割拠のJ1に留まり続けているのは、ひとえに大分の監督を務めているシャムスカ氏の手腕によるところが大きいでしょう。マグノアウベスや梅崎司など主力を引き抜かれることも多く、戦力的には前年よりダウンすることも少なくないにも関わらず、です。
 今季も中心選手としての期待をかけてガンバから期限付き獲得した家長も開幕前に十字靱帯損傷の大怪我を負い、松橋章太がヴィッセル神戸に移籍するなど開幕前から不安が囁かれながらも、この試合前の順位は7勝6敗3分、勝点24の7位と一桁台の順位につけています。特筆すべきはその守備力で、前節までの16試合で失点13はなんとリーグトップです。その代わり得点17はリーグで4番目に少ないのですが、「守備が硬ければなんとかなる」ということについては、その予定でJ1に臨んだついこの間まで失点リーグワーストだったチームは見習うべきだと思います。
 その見習うべきチームのスタメンですが、千葉戦で出場停止だったクライトンが復活。ただ前節負傷交代したアンデルソンが欠場のため、クライトンがFWに入りました。ここのところサイドハーフを務めている中山元気か、もしくは前節のアンデルソン退場後にFWに入った西大伍をFWに入れるかと思いましたが、清水戦では中盤のバランスが悪く簡単に崩されるシーンが目についたのに対し、クライトンがいなかった前節はさしたる破綻も見せず無失点。キープ力の高いクライトンがボランチに入ると中盤でボールの落ち着くポイントが出来る反面、ポジションを前に取りたがってどうしても中盤にスペースが出来てしまうことも多いため、ある意味諸刃の剣と言えるものです。ただ、ここまでリーグ戦、カップ戦通じてクライトンをボランチとして使った試合は10試合あって、4勝5敗1分、11得点17失点という成績なのに対し、クライトンをFWで起用した試合は、途中交代でFWに入った鹿島アントラーズ戦を含めて11試合あり、その成績は0勝8敗3分、9得点21失点(鹿島戦での交代前の2失点は除く)。勝ってないどころか守れてもいないような気もしますが、無失点で終えた千葉戦からのいい流れを止めたくなかったこともあるでしょうし、アンデルソンの負傷で30分程度しか見られなかったものの、大伍のボランチがそれほど悪くなかったこともあって、結局はバランスを取ったということになるのでしょう。

 さて、前述の通りリーグ戦では2000年以来の対戦となる両者だけに、対戦履歴自体はさほど多くないのですが、思い起こせば大分戦はなぜだかいろいろと印象深い試合がとても多いように思います。小松崎が前半で退場したり、大分の選手に負傷者が続出して前半で交代枠を使い切ったり、森くんが自分とこのゴールにボール叩き込んで連勝記録止めちゃったりと、ネタ的に強烈なカードでもありましたが、しかし試合そのものは0-0とか1-0のロースコアで終わったり、延長戦までもつれ込んだと、なんだかんだでシビアな試合になることが多かった記憶があります。方やエメルソン、方やウィルという、お互い後にJ1で得点王に輝くことになる希有なストライカーを抱えていた2000年ですら、点の取り合いになったことはありませんでした。その頃から8年が過ぎた今では、さすがに両チームともベンチメンバーを含めて当時を知る選手は池内友彦のみしかおりません。その池内も2000年はほとんど試合に出ていませんでしたから、当時しのぎを削った選手たちはもう残っていません。その当時J2でプレイしていたのも大分のベンチに入っている西山哲平がモンテディオ山形でプレイしていたくらい。関係ないけど山形時代の西山の応援ソングのニューラリーXのテーマが好きだったんですけど、それは置いておくとしてやはり8年という時間は長いものです。
 しかし8年経っても札幌対大分の試合はそんなに変わっていないようで、結果はスコアレスドロー。中2日ではるばる札幌までやってきた大分はさすがにしんどいようで、全体的に動きは鈍く、パスミスもかなり目立ちます。札幌はパスミス仕様をデフォルト設定で備えていますのであまり関係ないといえば関係ないのですけど、ホームゲームだけにフィジカル的には大分に比べればいくぶんはマシのようで、試合はどちらかといえば札幌ペース。おそらくシャムスカ監督は試合前からコンディション的には分が悪いのは承知の上で、無理に勝ちに行く必要はないと考えていたのか、大分の攻撃自体にはそれほどの怖さを感じませんでした。それでも相変わらず札幌は右サイドのディフェンスが怪しかったり、箕輪がオノレのポストプレイでウェズレイのシュートをアシストしたりと鉄壁という感じではなかったのですが、そのウェズレイも最初見た時「ノナト?」と思ってしまったほどの太りようでかつて「猛犬」と呼ばれた面影は既にありません。とはいえ、攻撃はともかく大分のJ1最少失点の看板はダテではなく、疲れてはいてもとにかく球際に強く、GK西川もJリーグでもトップクラスの実力の持ち主。そういう守備の強いチームが守ると決めたらそうそう点を取れるものではありません。前節2得点を決めたダヴィもフクアリでの活躍がウソのようにシュートが入らず、前半を0-0で折り返した時点で「今日はこのままで終わるかもしれない」というような雰囲気でした。

 後半になるとさすがにお互い少しずつチャンスも増えてきましたが、それでも試合はほぼ膠着と言っていい内容で、前半に比べれば両チームともチャンスは増えましたが、どれもゴールの枠を外れるかGKの正面だったりと、ゴールネットを揺らすことが出来ず。36歳、86kgというウェズレイはやはり往年のキレはありませんでしたが、それでも一番警戒すべきなのは「ウェズレイに止まってるボールを蹴らせる」こと。案の定いくつかFKを与えるシーンもありましたが、GK高木を中心になんとか守りきります。札幌も得意のセットプレイから箕輪がシュートを放ちますが枠を捉えることが出来ず、結局0-0の引き分けに終わりました。
 印象としては勝てた試合だったような気もしますが、かといって危ないシーンもないわけでもなかったので、結果としては0-0というのは妥当と感じましたが、ともかく2試合連続無失点というのはある程度自信にもなると思いますから、ここに来てようやく噛み合ってきたかなと思います。あとはまぁ、セットプレイの精度を高めることでしょうかね。セットプレイというのは流れの中の崩しに比べればチームの実力差というのは出にくいもの。三浦監督が高さのある選手を好んで使うのも、実力の上回る相手にいかに得点を取っていくかということに対してのひとつの回答なのでしょう。あとは「クライトンFWだと勝てないの法則」をいかに打ち破るかですかね。

 それにしても、あまりこういうことは言いたくないんですけど、主審の家本さん、相変わらずですね。問題ジャッジを連発して海外研修、帰ってきても問題ジャッジ連発して無期謹慎、そういう流れを経て復活したわけですけど、ジャッジ云々よりもとにかく威圧的な態度は変わっておらず、何が問題でああなったのか自覚されていないのではないでしょうか。穴沢努審判員や東城穣審判員のように、かつてはそのレフェリングを批判されて吐いたものの現在では一定の評価を受けている審判員もいる中、何度もチャンスを与えられてなお問題を改めようとしないことについては、本人の問題もそうですがそれ以上に協会の姿勢に疑問符をつけざるを得ません。かつて同じように不可解なレフェリングを繰り返し、同じように大きな批判を浴びていた恩氏孝夫審判員や唐紙学志審判員は、その後Jリーグの主審を外されたまま未だに復活していないのですから(恩氏審判員は現在J1副審)。
 まぁ、警告累積4枚にリーチかかってるダヴィがカードをもらわなかったのは幸いでしたけどね。何度か普通の競り合いでファウルの判定になったのも何とか我慢している姿は、山王工業戦で流川に「おめーのヘマはもともと計算に入れてる」と言われてぶち切れそうになったのを必死で耐える桜木花道を思い出しました。

2008年7月24日

牛馬のごとく第2章

2008年Jリーグディビジョン1第18節
コンサドーレ札幌 1-1 ヴィッセル神戸
得点者:札幌/ダヴィ
     神戸/ボッティ

 J1リーグも今節から折り返しに入ります。つまり試合も残り半分となったということ。未だ降格圏内の17位に留まっている札幌にとっては、タイムリミットが刻一刻と近づいているということでもあります。まだ半分あるとはいえあまりのんびりもしていられないですから、何とかして少しでも上の順位を目指さなければいけません。聖戦です。テイセンはボウリング場です。
 そんなわけで後半戦の緒戦の相手はヴィッセル神戸。前半戦…思わず「第1クール」と言ってしまいそうになりますが前半戦のアウェイゲームでは、ダヴィの必殺ひづめシュートが炸裂して先制するも、その後石櫃のものすごいミドルシュートを突き刺され引き分けに終わっています。神戸に雨あられのような猛攻を仕掛けられていたことを考えれば負けなかっただけ上出来ではありますが、聖地厚別でのホームゲームとなるこの試合、神戸はその石櫃が遠征メンバーには加わっていたものの、試合開始前に怪我をして急遽欠場。石櫃のごつそうな見た目通りの強烈なシュート力はもちろん、ごつそうな見た目とは裏腹な中距離からの繊細な精度のクロスボールは神戸にとって大きな武器だっただけに、彼がいないことは神戸にとっては大きなマイナスでしょう。札幌は引き続き欠場となったアンデルソンをはじめ怪我人は多く、大分戦と同様にFWはダヴィとクライトンの2トップ。サイドハーフは右に征也と左に元気、ボランチは大伍と芳賀主将、DFラインは右から平岡、箕輪、西澤画伯、ガッツゥーボこと坪内、そしてGKは高木と、要するに大分戦と同じメンバーです。

 そんなわけで試合開始なんですが、立ち上がりからろくすっぽ攻撃の形にならない札幌。もともと中盤を経由してゲームを組み立てるなんてこれっぽっちも考えていないチームではありますが、そうは言っても中盤抜いてサッカーが出来るかと言われればそういうわけでは決してなく、かといって札幌の場合は中盤入れてサッカーが出来るかと言われればそういうわけでは決してなかったりもするわけです。左サイドハーフの元気は身体を張れる選手ですし、守備の意識も高いのですが、サイドアタッカーという意味ではどうしても物足りなさは否めないですし、右の征也もここに来てようやくJ1でのプレイに慣れてきたとはいえもともとドリブラーではないですし、それだけの選手じゃないと個人的には思ってるのですが、とにかく現時点では使われて初めて生きる選手。ボランチの芳賀も潰しはともかくゲームメイクは苦手で、大伍もボール扱いそのものはうまいのですが視野が狭いのか何でもないパスをミスすることが多く、要するに中盤でボールを持って前線や左右にパスを配球できる人が誰一人としていやしないわけですから、組み立てようと思っても組み立てられないというのが本音。中盤で唯一ボールを持てるのがFWに入っているクライトンなんですけど、これまでも言われているとおりあまり守備は得意ではないため、守備に主眼を置くのであればボランチの位置で使いにくいということなんでしょう。それはわかるんですど、やっぱりクライトンは前を向いてボールを持ってなんぼの選手ですし、ヴェルディ戦みたいにぶち切れてオラオラモードに入った時は別ですけど、基本さほどシュート意識の高い選手ではありません。ダヴィとの2トップは確かに見た目の迫力は充分なんですけど、それが攻撃に有効に作用してるかと言えばそうでもないというのが本音。
 まぁ、とりあえず何とか堪え忍びつつセットプレイで点を取る、という戦略それ自体は間違いではないんですけど、それでも点を取られる時は取られるもので、前半22分、レアンドロのシュートがボッティに当たってコースが変わり、そのままゴールインしてしまうというアンラッキーな失点で先制を許してしまいました。
 ホームでリードされてしまった札幌は、風下ということもあって相変わらず攻撃の形すら作れません。虎穴に入らずんば虎児を得ずと言うように、攻められないってことはセットプレイのチャンスもそうそう得られないわけで、セットプレイのない札幌なんてシンデレラハネムーンを歌わない岩崎宏美みたいなもの。神戸の拙攻もあり追加点こそ許さなかったものの、それにしても全く得点の予感もしないまま終わるかと思われた前半終了間際、ようやくペナルティエリアやや手前という絶好の位置で直接フリーキックのチャンスを得ます。
 しかし、位置はよくても何しろ直接蹴れる人がいないのもまた札幌。クライトンも人に合わせるのはうまいが直接入れるのはあまり得意ではないですし、ガンバ大阪戦で一本いいフリーキックを打ったアンデルソンは怪我でいません。一番可能性のあるのが上里一将ですけど彼もベンチにいますし、砂川さんもベンチだし、それ以前にスナさんの場合確実に壁当てしますし。そういえばよく考えてみたらフリーキックを直接ゴールにねじ込んだ人ってフッキ以来いないような。そんなわけでだいたいいつも「もしかしたら」という期待を2%くらいしてやっぱりダメだったというのがパターンなのですが、果たして今回もクライトンの蹴ったボールはクロスバーの上をイスタンブールまで飛んでいき、チャンス潰えたかと思いましたが、なにやら登場主審がペナルティスポットを指差しています。え? PK? PKですか?
 スローで見ると、どうやらキムナミルがクライトンのボールを手でブロックしてしまった模様。手を上に挙げてしまった以上、故意じゃないという言い訳は効かないですね。まして愛じゃない。風が吹くたび気分も揺れる年頃なもんで、立派にPKですね。ブロックなんてしなくても入ってなかったと思いますけど。
 さて、望外のPKを得たはいいけど、じゃあ問題は誰が蹴るのかと。普通に考えればクライトンですが、彼もマリノス戦で1回外していますし、ユースでPKキッカーだった征也かなぁと思っていたら、ボールの近くには蹴る気マンマンのダヴィ。ダヴィのPKといえば、昨季昇格のかかった京都サンガFC戦で思いっきりコースを読まれて失敗したことが昨日のことのように思い出されます。ヤバい。入る気がしねぇ。
 しかし、おそらくサポーターの誰もが心底祈りながら見守る中、今度はちゃんと決めました。思った通りドンピシャにコースを読まれてましたけどね。とにかく札幌は1-1に追いつき、理想的な形で前半を終えました。

 追いつきはしたもののほとんどいいところがなかった前半でしたが、それでも風上となる後半に札幌の巻き返しを期待したいところ。その通り少しは流れをつかみ始めたかなと思い始めた後半10分、ペナルティエリアの外に飛び出して手を使ってしまったぎーさんが一発退場。一転して数的不利に陥ってしまいます。
 さてGKが退場したとなると、だいたいはFWのどちらかを外して替わりのGKを入れるのがセオリーです。しかしダヴィもクライトンも替えの効く選手ではないですから、考えられるのは大伍を外してクライトンをボランチにするか、もしくは征也を外して大伍を右に回し、クライトンをボランチにというパターンでしょうか。三浦監督のチョイスは後者でしたが、ひとつ違ったのはクライトンをボランチに下げなかったこと。まぁどのみちクライトンがボールをもらいに下がってくるだろうことを見越しての策でしょうが、どちらにしても中盤のスペースを3人でカバーしろというハードワークに輪をかけた、言ってみればハードコアワーク。しかし多少のほころびを見せつつもそのタスクに見事に応え、数的不利を感じさせない働きを見せつつ反撃のチャンスをうかがっていましたが、しかしそれも後半35分まで。今度はシミュレーションの判定で2枚目のイエローカードを受けた芳賀まで退場となってしまいました。 この試合の東城主審、厳しくはありましたけど基準自体はさほどブレていませんでしたし、キムナミルのハンドもぎーさんのハンドも妥当な判定だったと思いますが、この芳賀のイエロー自体は、既に1枚出していたことを忘れていたような感じでしたね。確かに芳賀の転び方はシミュレーションくさかったですけど、ペナルティエリア内でやらかしたのであればまだしも、倒れたのは外でしたから、少なくともカードを出すべきプレイではなかったように思います。つーか前回のエントリであんなこと書いたオレ涙目。
 とにかく9人になってしまっては、もはや同点で終わることだけを考えなくてはならなくなった三浦監督は、クライトンを池内友彦と交代させました。当然これは明確な「守り切れ」というメッセージに他なりません。まぁそうは言っても池内を入れるというのは点を取ってこいというメッセージにも受け取れなくもないのですけど、あとはもう全員で守ってあわよくばダヴィが1人でなんとかしてくれることを祈るしかないような感じになりました。「戦場の狼」状態のダヴィはそれでも何とかしようと頑張りますが、さすがのダヴィも疲れて本来の馬力は半減しており何ともならず。結局1-1のまま試合は終了し、厚別連戦は勝ち点2を得るに留まったのでした。

2008年7月30日

広橋涼対水橋かおり

2008年Jリーグディビジョン1第19節
アルビレックス新潟 2-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ダヴィ
     神戸/マルシオ・リシャルデス、アレッサンドロ

 マルシオリシャルデス選手のコメント「立ちあがりはプレーが速く、ボールの動きも速く、いろんなものが速かった。

 いろんなものが速かったならしょうがないなぁ…。

 そんなわけでアルビレックス新潟とのアウェイ戦です。前半戦の札幌ドームでの試合は、ダヴィが千代反田にヘッドバッドをお見舞いして一発退場したことが響き、新潟DF松尾のクロスがそのままゴールに入っての失点を取り返すことが出来ず、結局0-1で破れています。その頃の新潟は1勝4敗2分で16位と絶不調で、その試合でも10人の札幌に対してほとんど攻撃の形を作れないどん底の状態でしたが、この勝利をきっかけに息を吹き返し、その後は5勝2敗3分で10位にまで順位を上げています。対して敗れた札幌は、2試合出場停止となったダヴィの不在もあって2勝5敗3分とほぼ対照的な成績。ここ4試合は負けはないものの、未だに降格圏内から脱出できていません。なぜだかFF7のバレットの「どんなに汚されていても地ベタが好きなのかもな」というセリフが思い出されますが、この試合で勝てば16位の横浜F・マリノスと勝点が並ぶことになります。得失点差で順位こそ変わりませんが、残留に向けて大きな弾みになることは間違いないでしょう。
 しかし状況はそう簡単ではありません。札幌は芳賀主将とGK高木貴弘が共に前節のレッドカードで出場停止。潰し屋と守護神を欠く事態に、三浦監督は高木の代わりに佐藤優也を、芳賀の代わりにディビットソン純マーカスを入れてきました。まぁ予想された布陣ですが、15%くらいスケールダウンは否めません。しかも新潟にとってここビッグスワンは、地元の大観衆の声援をバックにできる名実共にホームスタジアムであり、J1に昇格してからここまでリーグ、カップ、天皇杯を含めて通算で91試合を行い、38勝27敗26分。勝率は4割1分、引き分けを含めた「負けない率」はなんと7割となり、新潟のチーム力から考えれば異常なまでの強さを誇っています。札幌はJ2時代の2003年、第26節で1度だけここで試合を行っていますが、オウンゴールで先制したはいいもののその後マルクスの4点を含む5点を叩き込まれる惨敗を喫し、当時のジョアンカルロス監督が試合後に辞任。昇格の夢が事実上潰えた試合として、当時の反町康治監督の「札幌はギャンブルサッカー」というコメントと共にサポーターの記憶に深く刻まれることとなりました。
 その時戦ったメンバーは新潟は誰1人として残っておらず、札幌もその試合でベンチスタートだった砂川と西澤画伯(出場はせず)の2人だけで、あとは怪我で戦線を離脱しているソダンがスタメンで出て、そしてGKがその時も「佐藤」という苗字だったという、一見関係ありそうで全然関係のないことくらいです。

 そんなわけで試合ですが、開始1分も立たないうちにぽんぽんと枠を繋がれ、田中亜土夢からのグラウンダーのクロスをマルシオ・リシャルデスに押し込まれ先制されてしまいました。何となく点を入れられてしまった格好ですが、よくよくこの失点シーンを見てみると、これ完全に取られるべくして取られた点だったと思います。
 まずシュートの1つ前のプレイ、クロスを入れた田中亜人夢に対してくさびの縦パスを入れたのは、左サイドでオーバーラップしてきた松尾からパスを受けた右サイドバックの内田潤でした。そして、最後詰めて得点を挙げたのがボランチのマルシオ・リシャルデス。本来、このような相手のポジションチェンジに対して柔軟な対応が出来るのがゾーンディフェンスの強みのはずなんですけど、そのゾーンディフェンスもマークの受け渡しがうまく行かなければゾーンでもマンツーマンでもないものすごい中途半端なディフェンスになってしまいます。そしてまさにこの時の札幌は非常に中途半端なディフェンスでした。中に切れ込んでいった内田に元気がずっとマークについていっていながら、左サイドのスペースをケアしなければいけないはずの征也が松下のマークをするために中に絞ってきてしまい、結果ゾーンが大伍とかぶってしまっていました。そしてオーバーラップしてきた松尾にボールが渡った時点で、その松尾に征也だけじゃなくなぜか大伍までチェックに行ってしまっており、さらには松尾にパスが出た時点で内田のマークに付いていたはずの元気が彼のマークを捨ててゾーンに戻ってしまっているんですね。で、中に切れ込むと見せかけて征也と大伍を引きつけた松尾から再びパスを受けた内田は完全にフリーの状態で、マーカスと大伍の間のスペースをダイレクトで通されてしまっています。ゾーンディフェンスが機能していれば防げたかどうかは、そのダイレクトパスを受けた田中の位置は、去年から散々弱点とされてきた「4バックの選手と選手の間」でしたし、最後のマルシオ・リシャルデスのシュートの時はゾーンとかマンツーマンとか名たんていカゲマンとか関係なく完全にボールウォッチャーだったのでわかりませんけど、せめてオノレの縄張りくらいオノレで守れと言いたくもなります。恥ずかしいディフェンス禁止。

 で、とにかく一点を追う展開となってしまった札幌。幸い時間はまだほぼ1試合ぶんは残されているわけですから、気持ちを切り替えて早めに追いつくことが重要なんですが、追いつくどころか中盤で試合を作れず、可能性の少ないロングボールを前線に蹴っては跳ね返される有様。新潟の守備にスキがないというよりは攻撃の形にすらならないと言ったほうがよく、たとえれば賽の河原で小石の上にどう考えても無理そうなでかい石を積もうとして勝手に崩れて鬼の出る幕がない、といった感じ。中盤でゲームを作れない理由は、札幌のスタメンでただ1人と言っていいタメを作れるクライトンが前線にいるから、という理由がやっぱり大きいのでしょうね。何度も言っていますが彼は前を向いてボールを持ってなんぼの選手ですから、ボールを持って前を向けば相手の選手も怖いと思うのですよ。見た目も含めて。しかしFWだとどうしても後ろ向きでボールを受けることが多くなりますから、あまり相手に恐怖は与えられないですよね。見た目も含めて。
 その一方であまり守備が得意ではないため、中盤に置くと守備面でのデメリットが増える、という側面があり、それこそがクライトンをFWで使う理由なのでしょう。ただしそれもイーブンかリードしていることが前提であり、ビハインドの状況で攻撃面でのメリットを捨ててしまうのはやはりもったいない気がします。もちろん、焦って前がかりになって逆に追加点を許してしまうようでは本末転倒ではありますし、札幌得意の、というよりは唯一無二のストロングポイント、のび太でいえばあやとりにあたる「セットプレイ」であれば、クライトンのポジションがどこであろうとも関係ないわけですけど、いくら得意とはいってもさすがに百発百中とまではいきませんから、得点の確率を上げるためにはより多くのセットプレイのチャンスを得る必要があります。で、そのセットプレイを得るには当然相手ゴール近くまで攻め込まなければいけないのですが、そもそもそこまでボールを運べないので有効なセットプレイすら得ることが出来ません。追いつくことはおろか前半に打ったシュートはわずかに2本。そのうちの1本はダヴィのゴール至近距離でのシュートが新潟GK北野の身体に当たってしまうとても惜しいシュートではあったんですけど、どんなに惜しくても入らなければスナさんの大宇宙開発エビぞりシュートと同じです。実質何も出来なかったと言ってもいいでしょう。

 もともと札幌は相手を圧倒して力でねじ伏せるサッカーではありませんし、去年も勝った試合でも内容自体はむしろ良くない試合が多く、先制された試合でも相手の運動量が落ちてきた後半に一気に逆転、という試合も少なからずありました。しかし新潟が早い時間に先制し、かなり余裕を持って試合を進めることが出来ており、相手の運動量が落ちることもあまり期待出来そうになく、るで得点の予感がしない前半の内容のままでは逆転どころか追いつくことすら難しそうな感じでしたから、後半は多少なりともテコ入れをする必要があるでしょう。問題はそれをどのタイミングでどのように行うかですが…。後半12分に行われたテコ入れは、大伍を下げて鄭容臺を入れるというもの。いやまぁ確かに大伍は守備面ではあまり効いていたとは言えませんので、最終ラインでなんとかボール奪取をしているような状態から、もう一列前でボールを奪うことを期待しての容臺投入だとは思うんですけど、それなら元気をFWに挙げて前線からプレッシャーをかけていく方法も考えられたわけで、何となく腹が減ったことの解決策として「とりあえずそれを忘れるために寝てみました」という感じにも思えます。
 で、その6分後にようやく征也に替えて砂川を投入。ここからようやくサイドからの攻撃が形になってきます。サイドをえぐることができればコーナーキックを得られる機会も増えます。それはすなわち札幌にとっては得点チャンスが増えるということ。そして後半26分にその砂川の突破から得たコーナーキックから、箕輪が競り勝って落としたボールをダヴィが右脚で押し込んでようやく同点に追いつきました。
 これで遅まきながら札幌が勢いづくかと思われましたが、同点からわずか3分後、今度は新潟のコーナーキックからのクリアボールにダイレクトで合わせた内田のシュートがゴールポストに当たり、ちょうど跳ね返ったところにいたアレッサンドロが頭で押しこんで再び突き放されてしまいました。失点自体は特に札幌側のミスはなかったと思いますが、とにかくこの失点で札幌の「いけるかも」という目論見は完全に潰えてしまいました。
 その後西谷を入れるも一度止まった勢いを再び取り戻すことはできず、そのまま敗戦。この試合でイエローカードを受けたダヴィと元気は2人揃って次節出場停止。いろんなものを失った試合でした。

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