たまにはいろいろ考える
コンサドーレの降格に際して、各界の著名人から続々とコメントが寄せられています。
○ユパ様
「またチームが一つ死んだ。行こう。ここもじき2部に沈む」
○クシャナ殿下
「我がチームのサポとなる者はさらにおぞましきものを見るだろう」
○リュシータ・トエル・ウル・ラピュタさん
「今はコンサがなぜ落ちたのか、私よくわかる。羊ヶ丘の歌にあるもの。2部に根をおろし、水戸ともに開幕しよう。鳥栖とともに夏を越え、仙台とともにシーズンを終えよう。どんなに有能な監督を呼んでも、どんなにたくさんの有望な選手を売り払っても、2部から離れては生きられないのよ!」
○バカボンのパパ
「昇格の昇格は降格なのだ」
まぁそんなわけで、2日に行われた天皇杯も何の波乱もなく横浜F・マリノスに敗戦して終了。リーグ戦がとっとと今季終了してしまった手前、せめて天皇杯くらいでは意地を見せてもらいたかったのですけど、主力を落としたマリノスにミス絡みで失点して完封負けといういつもの通りの試合だったみたいですね。まぁ見ていないので何とも言えませんが、前に降格した年は当時まだJ2だった大分トリニータ(この年に昇格)を相手に、J1の意地を見せるどころかアンドラジーニャにハットトリック食らって0-5のボロ負けという素敵な結果に終わってることに比べれば、まだマシだったと言えるでしょうか。何の慰めにもなりゃしないけどな。
さてさて、「KY」というと我々の世代(ハタチ)は朝日新聞の例のアレを思い出しますが、最近だとこれは「空気(K)が読めない(Y)」ことなんだそうです。「協調性がなく身勝手な振る舞いをする」というような意味でも用いられることもありますが、一般的には「場の雰囲気に合わせることができない」という意味で使われることが多いみたいですね。たとえば何人かで食事にいく時、「焼き肉でも行こうか」という流れで一人だけ「イタリアンがいい」と主張するとか、会議が長引いていい加減みんなもう飽きて早く終わらせたいと思っているところに延々と自らの主張を繰り返すなどです。それは別に悪いことではまったくないと思いますし、周囲の顔色をうかがって言うべきことも言えないようなことがいいことだとは思えないのですけど、「和を以て貴しとなす」ということを重んじる日本では、「周りの期待する行動を取れない」というのは往々にして煙たがられる要因となるようです。周囲の迷惑を顧みずに好き勝手やるとか、頼んでもないのに勝手に会いに来るさかなの子とかなら話は別ですけど、そうじゃないなら人間それぞれ意見も好みも異なるのは当たり前なのに、「空気読め」って言ったモン勝ちというか言われたモン負けというか、要するに「こっちに従え」ってことですよね。あまり好きな言葉ではないのですけど、そんな中、世間の予想をまったく裏切ることなくあっさり降格を果たした札幌はある意味空気を読んだということになるでしょうか。
ただし、投了を宣言すればその場で終了する囲碁や将棋などとは違って、サッカーのリーグ戦の場合はギブアップしたって残りのリーグ戦を放棄することなんてできません。そして札幌の場合、降格後既に1つ試合を消化したにもかかわらずなんと! 4試合も! 今季のリーグ戦が残っちゃっていやがるわけですけど、サポーターの心理としては残りのシーズンの文字通りの消化試合の結果よりも、どうしても来年の話に敏感に反応してしまうもの。そのひとつとして、ここ最近取り沙汰されているのが「クラブのビジョン」についてです。ビジョンが示されていない、あるいは今示せないならいつ示すのかをはっきりして欲しいということで、ゴール裏の中心団体であるウルトラスサッポロがスタジアムでの応援活動の自粛をしているようです。
そのこと自体の是非を論じるつもりはないですし、そもそも応援についてはゴール裏を引退して久しい自分が口を挟む権利はないのですが、その「ビジョン」について少し思ったのが、「そもそもビジョンって何だ?」ということです。「デスクリムゾン」という伝説のゲームに「ビゾン」というとってつけたような名前のゾンビキャラが出てきましたが、たぶんそれとは似ているようで全然違うと思います。
いや言葉自体の意味を知りたいんじゃないんですけどね。ビジョンを示せとはいうけど、それを示すだけで果たしていいのかってことなんですよね。そりゃまぁ、J2に降格するとなれば予算も減るでしょうし、戦力だって少なくともいなくなる可能性が高いダヴィやクライトンの他に、どの程度の流出があるのかまったくわかりません。監督だってどういう人が来るのかわからない。そんな先行きの見えない状況でいったい何をどうしていくのか、はっきりさせて欲しいというのはよくわかります。しかしそうはいっても、そんな状態で出せるようなビジョンなんてたかが知れているんですよね。
J1に上がれたことだって、もともとは「J2でも中位程度」と言われていた予算と戦力で、リスクマネジメントに徹した戦い方を貫いたのが大きな要因でした。そんな戦力を並み居るJ1チームと対等に渡り合えるような陣容にまで持っていくには、代表クラスの選手とか相当の補強をする必要があったわけですけど、当然のごとくそんな無茶をできる予算があるわけもなく。今年だってどちらかといえば無謀に見えた観客動員見込みで組んでなお今のメンバーを揃えるのが精一杯だったのですから、代表選手を何人も獲ろうと思ったら予算計画に「株が大当たりしてウン億円ゲット」とか人生ゲームみたいな記述をする必要があります。普通の会社なら「アホかお前は」で終わりですね。
まぁ万が一そんなのが通ったとしても、J1のベンチ入りが7人に増えた現在は、2001年のように「チーム事情でベンチ外でも力はある」ような選手をとりあえずレンタルで借りてくることも難しくなってきています。箕輪なんてほんと特殊な例でしょう。そもそも、見た目からして明らかな泥船に好きこのんで乗りに来るような奇特な人もなかなかいないでしょうし。
結果として戦力的には大幅な上積みもできず、加えてJ2ではなんとかなかってたリスクマネジメントも通用しないとなればそりゃどうしようもないわけで、言ってみれば多少のパワー不足をチューニングとセッティングで補ったF3000マシンでそのままF1に挑むようなもの。やりようによってはまた少し違った結果が生まれたかもしれませんけど、それも含めてもこういう結果に終わったということは、まだまだ札幌はJ1で戦っていけるだけの力を持ったクラブではなかったことを身を以て証明したということに他なりません。
さらに言えば、1999年に2部制が施行されてからのこれまで、コンサドーレ札幌のJ2での成績は1999年10チーム中5位、2000年11チーム中1位、2003年12チーム中9位、2004年12チーム中12位、2005年12チーム中6位、2006年12チーム中6位、2007年13チーム中1位。J2にいた7シーズンのうち、優勝した2シーズンを除いてすべて中位以下でシーズンを終えています。要するに、サポーターがどう考えていようとも過去の結果からは「札幌のチーム力はJ2で中位程度」でしかないのです。オレ自身としても、応援するチームにはつねに強くあって欲しいですし、かつてはJ2でしのぎを削ったFC東京や大分トリニータがカップ戦王者に輝いたのを見て、ああなりたいと思う気持ちは当然あります。しかし過去のデータからは現実はあらゆる面においてJ1タイトルどころかJ2でもせいぜい連候補程度の力しか持っていないわけです。かつてクラブが「ビジョン」として打ち出した「五段階計画」にしても、計画創始者の佐々木元社長の退陣とその後の柳下監督の退任、そしてその後任としての三浦監督の就任で事実上消滅していたと判断せざるを得ませんから、そういった様々な状況を鑑みて、今の時点でクラブに出せるビジョンなんてたかが知れてる、具体的に言えばとりあえずJ2大将を目指しますくらいしかないですよね。それでもやり方次第ではJ1を味わえるということを多くのサポーターが知ってしまった今、それで果たしてどれだけの人が納得するでしょうか。
もちろん、チームとしてつねに上を目指す必要はあると思いますし、現状でよしとする気はさらさらないですけど、クラブとそれを取り巻くすべてにJ1でやっていく資格が多少なりともあるならば、少なくともこんなざまで終わるような結果にはなっていなかった、ということを冷静になって考える必要があると思うのですよ。そういう意味では自分としてはJ2大将上等なんですが、J1に上がったことを無駄にしないためにも、今の自分たちに具体的に何が足りず、何ができていたか、それを突き詰めて足りないところを少しずつでも埋めていく、それが当面取るべき道なのではないかと思います。そして、クラブが月並みなものではなく自分たちの言葉で説明できるか、そしてサポーターがそれを納得することができるか、でしょうかね。とりあえず「だんまり」って状態は一番良くないとは思いますので、最低限何らかのレスポンスがあったほうがいいとは思いますけどね。スポンサーやら株主やら自治体やら、クラブにはサポーター以外にも向き合わなければいけないところがたくさんあると思いますので、減資を強行してしまった手前、今更「また五段階計画に戻りますね、てへっ」なんて言えないし、かといって風呂敷広げちゃったらあとからたたむのに苦労するのは見えていますから、大人の事情的に簡単にはいかないことだとは思います。ただどんな結論であれまずは真摯な態度だと思いますので、そのあたりはちゃんとやっておかないといけないですね。しっかりしていってね!