2008年Jリーグディビジョン1第3節
柏レイソル 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/ヒロユキ、ダイゴ
柏/ジロー
ナビスコカップ川崎フロンターレ戦で今季初勝利を挙げたコンサドーレは、リーグ再開となった第3節は柏レイソルとのアウェイゲームを戦います。柏は2005年にJ2に降格し、翌2006年同じリーグで対戦したものの、わずか1年で卒業していったため2年ぶりの対戦となります。ここ日立柏サッカー場は対戦成績としては苦手な部類のスタジアムですが、一番最近の対戦(2006年第51節)で0-2から立て続けに3ゴールを叩き込んでうっちゃるというびっくりどっきりショーを開催していますし、柏とは今季ナビスコカップで対戦して1-1で引き分けており、イメージとしては悪くありません。
柏も怪我人が多く苦しい状況が続いており、フランサが長期離脱中、石崎監督の「申し子」とも言える山根も怪我で欠場と要の選手がいません。助っ人のアレックスやポポもベンチスタートでオール日本人のスターティングメンバー、かつリーグ戦では初スタメンとなる大津祐樹、鎌田次郎とルーキーも2人いたりと、チーム事情は決して楽ではないことを伺わせます。もちろん、彼らがJ1でスタメンを張るに充分なパフォーマンスは充分に発揮していたのですが、こと札幌に関しては柏の選手にプロ初ゴールを献上するのが得意なチームだけに、何をしてくるかわからない大津あたりに決められるような予感はしてたんですよね(決められたのは鎌田でしたが)。もっとも、柏で一番何をしてくるのかわからないのはゴール裏のサポーターだったりするんですけどね。この日も恒例の「柏バカ一代」の熱唱後、ゴール裏から聞こえてきたのは、
「ナ~ウ・ゲッタ・チャンス!」
「正解は…ニン!」
…伊東四朗さんまでご来場されていました。俺一人が大喜び。
そして札幌はいよいよ「ネ申」こと曽田雄志が復活。彼の不在の間、「曽田がいれば勝てた」と言われる試合があったと思おうとしてやっぱり思えませんが、それでもJ2時代はほぼ札幌が掌握していた制空権を相手に握られることも多かったですから、待ち望んでいた復活です。そしてその天空の覇者の相方としてコンビを組むのは、予想された吉弘ではなく大卒ルーキーの柴田慎吾でした。先日のナビスコカップ川崎戦でプロ初先発を果たし、フル出場で勝利に貢献した187cmのビッグマンを起用した三浦監督。柏はさほど空中戦に強いチームではなく、むしろ李忠成や菅沼などスピードのある選手が多いのですが、雨の予報でピッチコンディションが悪くなり空中戦が多くなると読んでいたのでしょうか。
そしてもう1人、「ぎーさん」こと守護神高木が腰のリハビリから復活。こちらもナビスコカップでは既に出場していますが、リーグ戦では初となります。その他のメンバーは坪内・西嶋のサイドバックとクライトン・芳賀のボランチは前の試合(ナビスコカップ川崎戦)とは変わらないものの、今季猛威を振るっている「チーム・ザ・怪我人」から戻ってきてその川崎戦で初スタメンとなったと思ったら、わずか45分で交代した上に今度は腰だか腹だかを痛めたとチーム・ザ・怪我人に戻っていったノナトの代わりに、柏戦では例の大逆転劇での決勝ゴール以上に、あの函館でのロケットシュート(射出角度が)のイメージのほうが強い中山元気がスタメン。そして新しく靱帯を痛めた藤田征也もチーム・ザ・怪我人に移籍してしまったため、右サイドに岡本賢明がリーグ戦今季初スタメンとなりました。
さて試合は、以前「キックオフで何も考えずに前に蹴るのやめれ」と書いたためではもちろんないでしょうが、札幌のキックオフから始まった試合はいきなりクライトンのドリブルから始まりました。止めに来た柏の選手が逆に吹っ飛ぶくらいの異次元の肉体を持つクライトンに脱帽していると、あれよあれよといういう間に相手陣内に攻め込み、はやばやとコーナーキックをゲット。このコーナーキックからわずかにゴールを外れたもののソダンがシュートを放ち、これでリズムを掴んだ札幌がペースを握ります。
ところがどっこい、快調な出だしだった札幌ですが、12分に相手の最初のコーナーキックからDF鎌田にプロ初ゴールを決められてしまいました。鹿島戦、マリノス戦、川崎戦と今季ここまで行われた4試合のうち3試合でセットプレイから失点していますが、またしてもセットプレイで失点。このチームはいくつ伝統芸を持てば気が済むんでしょうか。ところでどうでもいいですけどこの鎌田次郎という選手、いい選手なんですがとてもサッカー選手とは思えない名前ですね。名前のイメージはなんとなく武士っぽい響きですよね。尊皇派? 攘夷派?
さてこの失点をきっかけにイケイケっぽかったのがちょっとしらけムードになってしまい、柏に攻め込まれペースとしてはやや劣勢の展開が続きます。しかしボールを持たれてはいるものの実際はシュートまでは許さず、アウェイゲームということを考えてもほぼ互角の戦いができています。それだけに最初の失点が悔やまれますが、札幌としては早めに追いつきたいところでクライトンとダヴィを中心にそれなりにチャンスを作れていますが、持ち前の意味不明な動きでダヴィが何度かGK南との1対1となるも、ことごとく南にぶち当ててゴールに入れようとしてくれません。
しかし前半38分、そのダヴィの突破で得た直接フリーキックのチャンス、ペナルティエリア右サイドやや手前からクライトンが蹴ったボールに飛び込んだ西嶋がヘッドで叩き込みました。西嶋はこれでナビスコカップ川崎戦から2試合連続ゴール。2004年の途中に移籍してくるまでただの1試合も出場がなく、プロとしてのデビュー戦でおばあちゃんと一緒に入場した男は、今では札幌には欠かせない男になりました。
前半のうちに追いつくことに成功した札幌ですが、後半は開始から柏のペースとなります。降り続く雨にだいぶピッチコンディションが悪くなってきたせいもあってか柏が前半のパスを繋ぐサッカーから早めにトップに当てる作戦に切り替えてきたこともありますが、積極的に飛び出してくる2列目の選手を抑えるのに四苦八苦。しかしそんな中でもクライトンがすごい。その異名の由来である映画「プレデター」は、1作目では水に濡れて光学迷彩装置が故障してしまい、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるシェイファー少佐に倒されますが、うちのプレデターは雨に濡れても平気平気。持ち前の運動量でパスコースに必ず顔を出すので、味方からもよく見えるようです。まぁみんなから見えないという別の意味でプレデターな助っ人はもう間に合ってるんで、これ以上見えない人が増えても困っちゃうわけですけど。そのクライトンのパスから突破したダヴィが「必殺ひづめシュート」を繰り出したりと、劣勢の中でもいくつかチャンスを作り出すことができていたのですが、そのわずかなチャンスが実を結んだのもやはりクライトンから。後半21分、相手からボールを奪い取ったクライトンは、大伍が自分を追い抜いたことを横目で確認しつつ、おそらく意識的にその大伍が自分を追い抜けるくらいのスピードのドリブルで攻め上がると、ゴールに向かって走り込む自分のスピードに合わせたクライトンからのふわりとしたループパスを胸で落とした大伍は、若干トラップは大きくなったものの雨でピッチが重かったことが幸いし、「昨日、夢で見た」という通りに一瞬飛び出しの判断を迷ったらしい南の股を抜いてゴール。札幌が逆転しました。
試合時間は残り20分以上、守りきるにはちょっと長い時間ですが、かといって追加点を奪いにいく展開でもありません。マリノス戦ではホームゲームと言うこともあって、このくらいの時間から攻めるのか、守るのかの意思統一がはっきりせず、結果わずか2分で逆転されてしまいましたが、今回はアウェイ戦。カウンターが決まれば儲けものくらいの意識で守りに徹するのが(守りきれるかどうかはともかくとして)モアベターという感じでしょうか。得点の5分後には疲れの見えた岡本を下げて砂川を投入、これは予定通りの交代でしょうが、その7分後には中山元気を下げてマーカスを入れ、明確に守り固めの意志を伝えます。まぁその割にはマーカスがピンチメーカーになってたような気もしないでもないですが、42分に1枚カードをもらったダヴィを下げて池内を入れて、もはや完全に亀モード。その割には池内もピンチメーカーになってたような気もしますが、何とかかんとか守りきり、アウェイで貴重な貴重な勝点3をゲットしました。
さてさて、またしても貴重なリーグ初ゴールを決めたユース出身の大伍に目を奪われがちですが、個人的に目に付いたのは柴田ですね。高校時代は柏ユースに所属しており、この日スタメン出場を果たした石川直樹やベンチスタートの菅沼実と同期で、トップ昇格かなわずに浜松大に進学してコンサドーレ札幌に入団、おそらくユース時代に慣れ親しんでいたであろう柏サッカー場での「古巣」との対戦、燃えないはずがありません。しかしうちにある2003年の全日本クラブユース選手権のパンフレットには、菅沼と石川はいるのに柴田の名前がどこにもありませんでした。その年の冬のJユースカップでは全試合スタメンで出ているので、その当時は怪我でもしてたのでしょうか。もしそうなのであれば、本人としては悔しい思いをしたでしょうから、なおさら期するものがあったかも知れません。いずれにしても、コンサドーレの一員として帰ってきた日立台でできることとしては、同期の選手やお世話になった人たちに、プロでも立派にやれることを見せることだったでしょう。そういう意味では、申し分のない「凱旋」だったと思います。正直、キャンプでの水原戦を見たときは、水原のブラジル人選手にいいようにやられていましたので、即戦力として活躍できるとは思っていなかったのですが、その時とはまったく違っていましたね。頭のいい選手なんだと思います。ごめん。
あと「古巣」と言えばやはりこの人砂川誠。2006年第18節、今年のナビスコカップと柏戦で2つの「恩返しゴール」を決めています。この試合では交代出場した時間帯はチームが柏の猛攻に晒されほとんどボールが回ってこなかったため、あまり見せ場を作ることができませんでしたが、プロとしてのスタートを切って7シーズンを過ごした、慣れ親しんだスタジアムでの試合終了後、優也から「スナさん、飲み物の自販機ってここにしかないんだっけ?」と訊かれた元柏選手は、質問してきた高校の後輩に対して一言、
「知らない」
俺たちのスナさん、にべもなし。
とにかく、柏がだいぶメンバー落ちだったとはいえ、勝点3を得たという事実は大きいと思いますし、ナビスコカップに続き「自分たちでもやれるんだ」という自信は大きいのではないでしょうか。強豪チームに力でねじ伏せられるのは仕方がないと思いますが、少なくとも残留争いのライバルを相手にこういう試合ができれば、このメンバーでも15位は決して実現不可能ではない、と思わせるないようだったと思います。あとはまぁ、みんな出場停止はともかく怪我だけはしないことを祈るばかりです。