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2009年3月 アーカイブ

2009年3月 2日

テストはテストでしかない

 生きてます(挨拶)。

 さてしばらくほっぽらかしてる間に、コンサドーレ札幌はプレシーズンマッチを含む2試合のテストマッチを消化しました。まずは2月22日に沖縄で行われた対FC東京との「シーサーマッチ2009」は、前半梶山陽平のゴールで先制されるものの、後半に新助っ人ダニルソンの2ゴールで逆転勝利を収めました。FC東京は城福浩監督を含め昨季J1で6位と上位の成績を挙げた陣容とほとんど変わっておらず、FWカボレがブラジルに帰国中、守護神塩田仁史が虫垂炎で入院中ではあるものの、日本代表にも名を連ねる今野泰幸、赤嶺真吾、長友佑都らは健在。昨季の対戦成績でも2戦して札幌の2敗、というか公式戦での対FC東京戦って、サテライトリーグでは勝ったことありますけど、トップチームとなると最後に勝ったのは1999年10月17日の江戸川区陸上競技場までさかのぼらないといけません。プレシーズンマッチも一応扱いとしては公式戦ですので、要するに約10年ぶりの公式戦での対東京戦勝利ということになります。ええ、吉原宏太が札幌での最後のゴールを決めて勝った試合ですね。当時自分はハタチでした。あれから10年も。この先10年もハタチです。
 札幌もDF趙晟桓が怪我で居残り組となり結局助っ人カルテットの揃い踏みは実現せず、また選手が乗る予定だった福岡空港からの那覇行きの飛行機が機材整備の関係で遅れに遅れ、選手も7時間以上空港に缶詰となっていたそうです。熊本から福岡への移動時間を含めればほぼ半日を移動に費やしたことになりますから、コンディションにも影響が出ただろうと思います。そんな不利の中、格上であることは間違いがないチーム相手での逆転勝利は、少なからぬ自信にはなったでしょう。
 ところで「北谷」は「ちゃたん」と読むそうですね。地名については内地でも「各務原(かがみはら)」とか「酒々井(しすい)」、「坂祝(さかほぎ)」などというような「知らなきゃ読めん」というようなものも少なくないですし、そもそも北海道だってそのほとんどがアイヌ語由来の当て字なので、漢字力とは関係なく読めんモンは読めん地名だらけです。「積丹(しゃこたん)」とか「占冠(しむかっぷ)」とか「撲針愚(ボクシング)」とか、初めて見て読める人なんてたぶんいません。最後のは関係ありませんけど。

 2試合目は3月1日に熊本市内の水前寺競技場で行われたJFLニューウェーブ北九州とのテストマッチですが、趙晟桓は復帰したものの紀梨乃とダニルソンの2人はまたしても欠席。この試合が開幕前最後のテストマッチということで、結局最後まで助っ人揃い踏みでの実戦の機会のないままリーグ戦に突入することになりますが、まぁ開幕までに焦って仕上げる必要は必ずしもないですし、それよりも怪我そのものを引きずるほうが怖いですから、逆に彼らが戻ってくればポジションの保証はない若手選手の競争意識が高まったことのほうが重要だ、といいほうに考えることにします。
 さて相手のニューウェーブ北九州はJFL加入は昨シーズンからで、初年度となった2008年の成績は18チーム中10位と振るわなかったものの、懐かしのFW藤吉信次をはじめ、MF小野信義や佐野裕哉などがいるほか、タチコというブラジル人DFがとても足利尊氏の肖像画っぽくて気になります。先日の北九州市長杯では、J2のサガン鳥栖やファジアーノ岡山にも勝利していることから、骨のある相手であることは間違いなさそうですが、結果は2-1でなんとか勝利。見てないので何とも言えませんけど助っ人2人抜きということを考えればまあこんなもんでしょうか。

 ところで話は変わりますが、開幕戦のベガルタ仙台戦にT-SQUAREの伊東たけしさんがいらっしゃるそうです。コンサドーレ札幌のホームゲームではT-SQUAREの「MOON OVER THE CASTLE」を入場曲として使用していますが、開幕戦では特別に生演奏を行うとのこと。T-SQUAREといえば高校時代にコピーバンドをやってた(といってもラッパの出番はあまりないのでスポット的な参戦でしたけどね)ものとしては(アルバムでいえば「YES, NO」や「WAVE」の頃)伊東さんや安藤まさひろさんはものすごい人だったわけですが、そういった大物がまさかローカルサッカーチームの試合に来てくれるとはびっくりです。クラブもなかなかやるなぁと思いつつ、普段使ってるのがT-SQUAREの曲で良かったと思います。ドリフの「盆回り」とか使ってたらもう呼べないですからね。物理的に。

2009年3月 7日

今年も開幕前夜

 長かったオフもようやく終わり、2009年のJリーグが開幕しました。既にJ1で7試合、J2が2試合行われ、昇格組のサンフレッチェ広島とモンテディオ山形がそれぞれ横浜Fマリノスとジュビロ磐田というJ1優勝経験のあるチームに圧勝するなど波乱含みのスタートとなっています。
 そしてコンサドーレ札幌の試合は明日3月8日に行われます。相手は昇格候補の一つ・ベガルタ仙台。昨季J1にいたとはいえ異次元の弱さで降格した札幌にとっては、ホームでの開幕戦にいきなり難敵との対戦となります。つっても相手がどこであろうと負ける時はころっと負けるのがわれらがコンサドーレ札幌。むしろ相手にこちらの手の内を明かしていないうちから当たっておくのは悪くないかも知れません。もちろんこっちも相手の手の内が見えないと言うことでもありますが、仙台は昨季と監督もメンバーもほとんど替わっていないですし、こちらには沖田コーチという専門家がいる分、情報戦という意味ではこちらに多少分があるかもしれません。まぁそうはいってもどんなに有利な情報を握っていても圧倒的な戦力の差はそうそう埋められるものではないことは去年で証明されちゃってはいるのですけど、仙台とはそこまでの差はないとは思いますので、分析は沖田コーチがジェバンニみたいに一晩でやってくれたるするでしょう。
 で、札幌の開幕スタメンは果たしてどうなるのかということですが、北海道新聞によれば、どうやらシステムは紀梨乃を1トップに置いた4-2-3-1が基本となりそう。2列目は右に石井謙伍、左に岡本賢明、トップ下にクライトンということですので、おそらくは3トップに近い形にしてクライトンがやや下がり目の位置で前線を自由に操るという形になるかと思いますが、ボランチはダニルソンと上里一将、4バックは真ん中に趙晟桓と吉弘充志、左サイドバックに西嶋弘之が入り、右サイドバックは西大伍になりそうだということです。右のサイドバックの一番手と見られていた藤田征也ではないのは「けがによる別メニュー調整が多く、状態が万全でない」ことが理由のようですが、昨季もFW、サイドハーフ、ボランチと様々なポジションをこなしてきた大伍が今度はサイドバックに挑戦。ユーティリティプレイヤーとして大きく成長したのだな、と思います。ユースの頃はバリバリのファンタジスタだったことを考えれば、こんな成長の仕方をするとは思いませんでしたが。実際のスタメンは明日フタを開けてみないとわからないことではありますが、もしこの通りのポジションで出場することになれば、攻撃ではオーバーラップして高い位置でボールを受けたらもともと得意のはずのドリブルでガンガン勝負を仕掛け、ディフェンスでは相手が来たら画伯直伝のサイレントエルボーやサイレントチョップで相手を仕留め、サイドを支配して欲しいと思います。

2009年3月10日

ホーム開幕飾れず

2009年Jリーグディビジョン2第1節
コンサドーレ札幌 0-1 ベガルタ仙台
得点者:札幌/なし
     仙台/菅井

 いよいよ開幕した2009年のJリーグ、コンサドーレ札幌は2004年以来5シーズンぶりとなるホームでの開幕戦。相手は昇格候補の最右翼といわれるベガルタ仙台と、いきなり難敵を迎えての試合となりました。昨季入れ替え戦で涙を呑んだ悔しさを晴らすべく、手倉森監督体制2年目となる今季は昨季からのメンバーを中心に、アジア枠として韓国Kリーグの水原三星から朴柱成を、ポンチ・プレッタからFWソアレスを、横浜FCからエリゼウを獲得。上積みという意味では理想的な戦力で開幕を迎えました。
 迎え撃つ札幌はご存じの通りエースストライカーのダヴィが名古屋グランパスに移籍したものの、その際に発生した3億円ともいわれる「D資金」で大黒柱クライトンの残留に成功しただけでなく、元U-20ブラジル代表FW紀梨乃と元コロンビア代表MFダニルソン、さらにはアジア枠で元韓国代表DF趙晟桓を獲得。昨季川崎フロンターレから期限付き移籍となっていた箕輪義信も完全移籍となり、札幌がJリーグに参入してから初めてレンタル選手なしの陣容となりました。日本人は若手主体で未知数な部分が多いながらも、経験豊富な石崎・ノブリン・信弘監督を迎え入れた札幌を昇格レースのダークホースとして挙げる声も少なくなく、これからのシーズンを占う上でもこの札幌対仙台は重要な一戦です。

 その注目の試合にスターティングメンバーとして名を連ねたのは、GK佐藤優也、DFは右から西大伍、趙晟桓、吉弘充志、西嶋弘之。MFはボランチにダニルソンと上里一将、紀梨乃の1トップにやや下がり目で左に岡本賢明、右に石井謙伍と並び、そしてトップ下でピッチを支配するのはもちろんクライトン。平均年齢は23.64歳というもぎたてフレッシュな布陣を象徴するかのように、キャプテンマークを巻くのは史上最年少で主将となった22歳の上里一将です。
 その上里がコイントスをすっかり忘れてレフェリー全員から苦笑されるほほえましいアクシデントで始まったこの試合、立ち上がりの1分にセンターサークル付近で得意の尻技で相手からボールをふんだくったクライトンがすぐさまオープンスペースにパス、そのパスに自慢の快足を生かして追いついた紀梨乃が絶妙なクロスを上げるとニアサイドに飛び込んだ謙伍が頭で合わせます。惜しくもサイドネットになったものの、1人がニアに飛び込むという形はキャンプでもやっていましたので、石崎サッカーの一つの形ということなんでしょう。
 その後もクライトンを中心に何度も仙台ゴールを脅かしますが、枠を捉えきることができず。序盤ペースを握られていた仙台も、中を固めながらも高いラインを保ち、ボールを奪ったら一気にカウンターを狙うシーンが出てくるようになります。それでもペースとしては札幌ながらも、エリゼウを中心とした堅い守備で仙台もゴールを許しません。クライトンがJ2で反則クラスなら、このエリゼウも充分J1でやっていけるレベルでしょう。そんな助っ人たちのプレイを中心にして、まさにがっぷり四つといった感じの攻防が繰り広げられます。第三者視点で見ればきっと楽しい試合じゃないでしょうか。J2だって捨てたもんじゃない。
 その一方で、大伍のポカから生まれたピンチをファインセーブで救った優也がそのCKでかぶって斎藤にどフリーで合わせられるという、忘れた頃にやってくる札幌らしさも見られ、危なく失点は免れたもののこればっかりはそうそう治るもんじゃないんだなぁと思わせられもしたわけで。点が取れそうで取れない中前半はスコアレスのまま終了。

 両者のこの試合にかける気合からすれば、おそらく1点が勝負になるだろうと思われた後半、それだけに先制点こそが重要というのは札幌もわかっており、現時点でさほど多いとは言えないものの、それでも持てるあの手この手で仙台ゴールをこじ開けようとしますが、やはりここでも立ちはだかったのが仙台のエリゼウ。ちなみに仙台エリはミルキィローズの中の人であり、そのミルキィローズは主人公のはずのプリキュアが5人揃ってなんとか倒すような敵を1人でひねり潰すようなキャラでしたが、そんなミルキィローズのごとく紀梨乃とのマッチアップを制しつつサイドからのクロスもことごとく跳ね返し続けます。
 前半以上にじりじりとした展開が続くなか、先に点を取ったのはアウェイの仙台でした。66分、札幌の右サイドでのペナルティエリアやや外からの直接フリーキック、梁勇基が蹴ったボールは逆サイドに流れたそのボールにピンポイントで菅井に合わせられ、ついに均衡が破れてしまいました。
 ビハインドを負ったノブリンは立て続けに選手交代を行い、ノブリン信者のオレから見ればこれがもういちいち納得できる素敵采配。しかし選手もどうにかして点を取ろうとはしているのですが、「大事にいこう」という気持ちが強すぎるのか打ってもいい場面でパスを選択してしまうことが多く、逆にそれで手詰まりになってから無理目のシュートを打たされるという悪循環。林の弱点はアゴが汚れたら力が出ないことなのですが、結局攻めてはいるもののその弱点を突くことすらできず、慌てさせるようなシーンはほとんど作ることができないまま試合は終了。開幕白星スタートを飾ることはできませんでした。

 さて、全体としてはやっぱりチームの熟成と経験の差が出たのかな、という感じでしたね。そういった面をひっくるめた完成度でいえばやっぱり仙台のほうが上といわざるを得ません。まぁ新チームとなってからまだ2ヶ月も経っていませんから、逆にいえばその状態で仙台を相手にあそこまで(ホームアドバンテージもあるにせよ)やれたというのは決して悲観することではないと思います。まだまだ課題も多いですが、楽しみなシーズンになりそうだな、という予感はありますね。2004年の開幕戦でも同じことを感じたというのはなるべく考えないことにして。

 というわけで新戦力についての感想ですが、紀梨乃はこれまでのテストマッチでもまだ得点を挙げていないこと、そしてこの試合を見てもどうやら純粋なストライカーという感じではなさそうですが、それでも67分の決定的なシュートは紀梨乃ならではのものではないかと思います。入らなかったのは林を褒めるしかないでしょう。うちにいた時やってくれよというのはまぁおいとくとして、ダヴィのようななんか人じゃない感じの強さはないものの、ダヴィと同じように前線から積極的にプレスをかける様は、ワントップというよりはワンワントップ。そういえば走り方が何となくビジュに似ています。でもポストは結構うまかったですね。
 ダニルソンは攻撃面に関してはイマイチなところが多かったものの、守備に関してはほぼ合格点と言えるでしょう。得意のミドルシュートも不発…いや厳密に言えば正確に紀梨乃をヒットしたのがありましたが、まだその実力の全てを見せているわけではない感じです。こちらも日本のサッカーに慣れてくればもっといいパフォーマンスを見せてくれるでしょう。
 最後に趙晟桓は、落ち着いていましたね。鹿児島での清水エスパルスとのテストマッチの時は戦術的なトレーニングをあまりしていなかったせいもあるのかあまり感じなかったのですが、最終ラインからのビルドアップの意識がとても高く、ただ単にクリアするのではなくなるべくいい形で味方に繋げようというプレイが随所に見られました。しかし、それでも最終ラインでボールを持っているととても怖く感じるのはきっとオレがコンサドーレに慣れすぎているせいだと思います。元韓国代表というのは伊達じゃないということですね。

 ところで、ゴールのあと看板を超えてホヴァリングステージから落ちてしまった仙台の菅井選手は本当に大丈夫だったのでしょうか。下はコンクリートだしけっこうな高さはあるし、コンサドーレ札幌が札幌ドームを使用し始めた2001年夏から、同スタジアムで行われたコンサドーレの試合はほとんど見てきましたけど、看板超えて落ちていった人は初めて見ましたね。ケガがなくて何よりだったと思いますが、ひとまず今後コンサドーレがやるべきこととしては、安全対策という観点から「札幌ドームでは看板を飛び越えないでください」ということを徹底してもらうと同時に、「ゴールを決めて喜びのあまり看板を飛び越えて札幌ドームの奈落の底に落ちていく菅井さん」を罰ゲームのネタとして取り入れることが重要だと思います。

2009年3月19日

初勝利

2009年Jリーグディビジョン2第2節
サガン鳥栖 1-2 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/砂川、紀梨乃
     鳥栖/島田

 ホームでの開幕戦を落とした札幌は、今節はアウェイでのサガン鳥栖戦。ヴァンフォーレ甲府、横浜FC、コンサドーレ札幌と2004年までに最下位を経験したチームはその後J1に行っているのですが、2002年に最下位だった鳥栖だけは2006年の4位が最高順位。モンテディオ山形がJ1昇格を果たし、1999年の2部制導入時点でのJ2、いわゆる「J2オリジナル10」の中で唯一J1未体験のチームになってしまいました。もっとも、甲府も横浜FCも札幌も結局仲良くJ2にいるのですけど、なかなか壁を突き破れない理由はやはり資金的なもの。選手の育成については定評のあるチームながら、活躍した選手はすぐに引き抜きに合ってしまい継続的な強化ができないことが大きく、今季もFW藤田祥史が大宮アルディージャに移籍となり、得点力ダウンが懸念されています。ただし守備陣は柳沢将之(セレッソ大阪)、磯崎敬太(ベガルタ仙台)、山田卓也(横浜FC)と実績のあるベテラン選手を補強、攻撃陣は大宮からマジカルレフティー島田裕介を、ブラジルのコリンチャンス・アラゴアナからトジンというアルゼンチン顔のブラジル人選手を期限付きで獲得しています。開幕戦ではセレッソ大阪を相手に1-4と大敗しましたが、相手は優勝候補の一角ということで、切り替えてホーム開幕戦のここは初勝利を挙げたいところでしょう。
 そして開幕戦は終始押し気味に進めながらもセットプレイでの一発に泣いた札幌は、前節から少しスタメンをいじり、仙台戦では紀梨乃の1トップだったFWを宮澤との2トップにし、2列目には大伍とクライトン、右サイドバックに征也という布陣。ポストのうまい宮澤を紀梨乃の相方において紀梨乃になるべく前を向かせてプレイさせようという狙いがあるのでしょうが、札幌に戻っての練習はいきなり大雪に見舞われろくすっぽ練習すらできず、結局まともな練習は11日からの熊本でのミニキャンプから。泣きっ面に蜂といいますか、グラップラーに刃牙といいますか、とにかくコンディション的にも戦術的にも万全とは言い難い調子でベストアメニティスタジアムに乗り込んだ札幌は、開始からやはり何となく身体が重そうな感じ。クライトンがボールを持っていればそうそうボールを奪われることはないですし、散らしのパスも正確なのでボールキープは札幌が優勢なのですけど、じゃあどうやって鳥栖のゴールをこじ開けるのかというと何をどうしようというのがあまり見えず、2トップでの練習があまりできなかったためなのか、それとも謙伍とヤスがいないからなのか、どうにもこうにも紀梨乃ワンワントップの時よりもあまり打つ手が多くないように思います。謙伍はボールを持ってない時の動きがいいですし、ヤスはボールを持った時の動きがいいですからね。ボールを持った時の謙伍とボールを持ってない時のヤスについてはあまり詮索しない方向で。何度か惜しいシュートシーンはあったものの、鳥栖のGK室の攻守に阻まれ得点ならず。
 守備のほうはさりげなく危険なスペースを埋めるポジショニングをはじめ、随所に落ち着いたプレイを見せる晟桓を中心に地味に安定。決して派手ではないですけど、そもそもDFが派手に目立つような試合運びをするほうがやばいっちゃやばいので、チームとしての守備はそれなりにしっかり出来ているということだと思いますが、前半はともに得点なく0-0で終了。

 じりじりとした試合展開にノブリンは後半3バックに変更。征也を上げてより前でボールに絡ませる作戦を採りました。よっぽどまずい形のカウンターじゃなければ晟桓とミツと大ヒロでなんとかできるという目算もあるでしょうし、中盤でボールをキープできていれば征也が高い位置に張ることによって鳥栖のサイドバックを押し込むことができます。狙いとしてはわかるのですが、さりとて紀梨乃がサイドに流れることが多いため中央からの攻撃があまり迫力がなく、実質的にサイド攻撃一辺倒な札幌に対して鳥栖がケアするポイントはそう多くはないため、試合の流れを引き寄せるには至らず、逆に鳥栖の廣瀬に決定的なシュートを打たれてしまう有様。去年の清水エスパルス戦で西澤に決められたゴールを思い出しましたが、あそこで枠に行くか行かないかがJ1とJ2の差なのでしょうかね。
 そんなわけで今度は選手交代で打開を図ります。まず後半23分に砂川を投入してドリブルでの仕掛けを加え、続いて31分には長いこと消えっぱなしだった宮澤に変えて石井謙伍を投入。逆に鳥栖は後半40分にDF磯崎に変えて谷田を投入したことが勝負の分かれ目だったかも知れません。仙台時代にもけっこう苦しめられた磯崎がいなくなったその1分後、征也のクロスに走り込んでいた砂川がペナルティエリアのやや外から見事なボレーシュートを突き刺します。忘れた頃にスーパーシュートを決める俺たちの砂さんの今季初ゴールでついに札幌が先制しました。
 残り時間を考えればあとは守りきるだけ、というところなんですが、先制からわずか2分後の後半43分、ペナルティエリア正面すぐ外で与えたフリーキックを島田に直接決められてあっという間に同点に追いつかれてしまいます。確かに島田のフリーキックは素晴らしかったのですけど、優也としてはあえてゴールの片方を空けて揺さぶりを狙ったのが裏目に出た感じです。優也の場合は駆け引きよりも動物的勘で勝負したほうがうまく行くような気がしますね。
 さて、ようやくもぎ取った1点を簡単に返されたことで苦労して大富豪になった途端に革命を起こされた気分になってしまいましたが、人一倍負けず嫌いなクライトンが無理矢理コーナーキックを奪います。何度かクリアされた後のメインスタンド側からのコーナーキック。上里の蹴ったボールに紀梨乃が頭で合わせゴールネットを揺らしました。テストマッチを含めた紀梨乃の来日後初ゴールで逆転に成功し、劇的な幕切れで今季初勝利を挙げたのでした。

 ところで開幕の仙台戦でも思ったんですが、少し前まではJ2だとちょっと接触があってこけただけで笛が鳴ってたのに、今年はフィジカルコンタクトではあまり笛が鳴らない気がします。まだ2戦しか見てないですし仙台戦での田辺主審も鳥栖戦での柏原主審もJ1でもよく笛を吹いている方というのもあるかも知れませんが、そのJ1でも鋼の肉体を持つクライトンあたりはぶつかってきた相手が勝手に吹っ飛ばされてもなぜかクライトンのファウル、というなんてシーンもけっこうありましたから、全体的な基準が変わったのかもしれません。クライトン本人はもとより、何度かクライトン直伝の尻技を見せていたカズゥにとってもいい傾向ですね。

2009年3月24日

風魔の小次郎

2009年Jリーグディビジョン2第3節
ヴァンフォーレ甲府 2-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/西嶋
     甲府/大西x2

 関東地方に強風が吹き荒れた22日、ヴァンフォーレ甲府対コンサドーレ札幌の試合が行われた山梨県甲府市も強い風に見舞われました。サッカーに限らずおよそ屋外で試合をするスポーツにおいては自然現象による影響を避けることはできませんが、中でも「風」による影響はもっとも厄介なものの一つ。練馬区の自宅で試合を見ていたオレも数分おきに風に煽られ方向が変わり受信不能状態に陥るスカパー!のパラボラアンテナと格闘しておりましたが、選手もその風にはだいぶ苦労したようです。前半21分にGK佐藤優也が甲府MF大西のフリーキックの目測を誤って喫した失点は、かつて声援を受けていた甲府のサポーターの前であんまり変わっていない姿を見せたとも受け取れますが、優也本人は「向かい風でボールが失速すると判断し、あらかじめ前方へ移動した」(日刊スポォツ)とのこと。ただ一見不運なゴールとも思えますが、「(ボールは)止まると思った」という優也には、単純なロングボールならまだしも「向かい風の場合は回転がかかったボールの変化が大きくなる」ということを教えてあげたほうがいいのではないかと思いました。
 そもそもボールが曲がるのは回転によって気流の速度の差が生まれ、それによって発生する気圧差によりボールが気圧の高いほうから低いほうへ押されるからです。この時、空気の流れが速いほど圧力は低くなります。「マグナス効果」と呼ばれるものですが、ボールの進行方向に対して向かい側から風が吹いた場合、この空気の流れが相対的に速くなりますから、発生する気圧差も大きくなりボールの変化も大きくなるということになります。ロッテ時代の小宮山がバックネットからセンター側に向かい風が吹く千葉マリンスタジアムでの登板では変化球を多投してたのもこれが理由ですが、この試合くらいの風は日常茶飯事である厚別競技場をホームにしているチームの正ゴールキーパーの座にいるのであれば憶えておいたほうがいいと思います。

 まぁ優也がやらかすのは既に織り込み済みなんでいいとして、問題は2失点目。1失点目からわずか3分後という時間帯に喫してしまったこと、それと今季初めて流れの中から失った点であることを考えると、非常に大きな、痛い失点だったと思います。痛さレベルでいえば口内炎ができてるのにうっかりみかんを食べてしまった時くらい。奪われ方もまずかったのですが、サイドをドリブルで上がるマラニョンに晟桓が釣り出されてしまった上に、吉弘までもがフォローにいってしまえば中がすっからかんになるのは当たり前の話なわけで、おかげでゴール正面でマラニョンからのパスを受けた大西にはFF4ならメテオを唱え終わるくらいの時間の余裕がありましたからね。一応ゴール前には大ヒロが1人残っていましたけど、あそこで一か八かで当たりに行くのはリスク高すぎました。一発で飛び込んでも交わされるか、その前にどフリーだった金信泳にパス出されておしまいですからね。
 おそらくノブリンサッカーの守備の約束事として、「ボール保持者にはなるべく2人以上でプレスに行くこと」というのがあるのだろうと思いますが、それでミツが中を捨ててまで律儀にも約束事を守る融通の利かない選手である、と考えるよりは、「ソンファンが危ない! 俺が! 俺が! 俺が助けなきゃ!」と正義感を燃やして光の速さで明日へダッシュする宇宙刑事ばりに熱いナイスガイだと思ったほうが健康的かも知れません。サポーターの心的に。ま、若さとは振り向かないことですからね。
 そしてもうひとつ、札幌のリズムの時間帯もそれなりに多かったのに1点しか取れなかったことも気になるところです。去年はもうなんか得点の予感なんてこれっぽっちもしなかったので「セットプレイでも何でも1点取れればもうけもの」くらいな心境だったのですが、今季はボールキープ自体はできてることが多いですし、得点の匂いはプンプンするにもかかわらず、結局終わってみれば札幌の得点は後半15分の大ヒロのヘディングによるゴールのみというのはやっぱり寂しいものがありますし、そもそも後半はほとんど札幌のターンだった気もしますけど、その割にはシュート数は90分で8本だけ。仙台戦でも鳥栖戦でも思いましたが、なんというかやっぱり強引さが足りないなぁという気がします。なんかキレイに勝とうとしているというか、もっとゴリゴリやってくれてもいいような気がするんですけどね。より確実そうな選択肢をとるのはわからないでもないですけど、打っていい場面でも打とうとしないのははっきり不満ですね。謙伍にしろ宮澤にしろ紀梨乃にしろ、エメや俺王様やフッキみたいな、溢れ出んばかりの俺っぷりを隠そうとすらしないようなタイプの俺様ストライカーではないのはわかってますけど、だからといってやらんでいいという理屈にはなりません。性格的なものはあるにしても、「俺が点を取って勝つ」くらいの気持ちの強さは、持ってたって損はしないと思うのですよ。ダヴィだって無茶とも言える突破やシュートを繰り返してJ1でも有数のストライカーに成長したんですからね。
 ダニルソンもそうですが、今のところはノブリンとしても能力の高さは認めながらも、それを生かすためのしっくり来るポジションを未だ決めかねている、というような感じですね。熊本キャンプでも別メニューが多かったこともあるでしょうし、クライトンはともかくとして、札幌がそんなにスーパーな助っ人を雇えるわけもないですから、紀梨乃も含めて長い目で見たほうがいいのかも知れませんけど。ダヴィだって、札幌に加入した年の熊本キャンプで初めて見た自分に「あの選手は3年後には3億円で売れてJ1得点王争いを繰り広げるくらいの選手になってるよ」なんてことを未来のオレが教えてくれたりしたら、たぶんこの人はきっと頭がかわいそうな人だと思っていたでしょうからね。

 ただまぁ、現実としてリーグ戦は既に始まっており、あまり悠長に構えていられない、というのも事実ですし、3試合戦って1勝2敗と黒星が先行してしまっているのもまた事実。現状未完成であったとしても、目の前の試合に何が何でも負けんぞ、という強い気持ちを以て戦っていかないと先はないと思いますから、明日の湘南戦は気合いを入れ直して臨んでもらいたいと思います。

2009年3月28日

ゅぅゃ対決

2009年Jリーグディビジョン2第4節
コンサドーレ札幌 0-1 湘南ベルマーレ
得点者:札幌/なし
     湘南/中村ゆうや

 前節ヴァンフォーレ甲府を相手にミスの連発で痛い敗戦を喫した札幌は、中2日で開幕戦以来のホームゲームを戦います。相手は湘南ベルマーレ。ベルマーレ平塚時代に天皇杯を獲得している湘南は、チームとしての実績でいえば札幌のほうが下なのですが、湘南がJ2となった2000年から今年までの間、札幌ですら2回も昇格しているのに湘南は1度も昇格することなくJ2生活も気がつけば10年目に突入。ここ2年は昇格争いにも絡みながらも最後には息切れしてあと一歩二歩のところで及ばないパターンが続いた今年、北京五輪代表監督を務め、ベルマーレOBでもある反町康治氏を監督に迎えました。北京五輪では結果を残せなかったものの、アルビレックス新潟をJ1に昇格させ、そして定着させた手腕は健在で、その新潟時代に手塩にかけたGK野澤洋輔やMF寺川能人を呼び寄せ開幕から3連勝とスタートダッシュに成功しています。
 逆に札幌は開幕から1勝2敗とダッシュどころかいきなり石に躓いて転んだような感じで、たいしたことないぜ~などとかっこつけて起き上がろうとしたら肩が反対になっていた、くらいの感じの今日この頃。「ホームではおもろいサッカーを見せる」というノブリンの宣言の通りに湘南に今季初黒星をお見舞いし、巻き返しのためのエサになってもらおうという魂胆だったのですが、結果は後半ロスタイムに中村祐也にプロ初ゴールを決められ、逆に相手の首位固めのエサになっちゃいました。

 内容では勝っていた、なんて何の慰めにも腹の足しにもならないわけですけど、それでもまぁ試合内容は悪くありませんでした。とはいえ、14本ものシュートを放っておきながら結局ただの1度すらゴールネットを揺らすことはなかった、というのも哀しい結果です。まぁ正確に言えばサイドネットを外から揺らしてはいたんですけど、内容が良くても勝てない、というのはなかなかに気持ちの整理の付け所が難しいですね。内容が悪い上に負けたのなら、あきらめがつくというかきれいさっぱり忘れる方向に全力を尽くすことができるのですが、今回みたいな負け方だとあの時のアレが決まっていればなぁとか、もう少し守備踏ん張れたんじゃないかなぁとか、早い話がとってもくやしい思いをするわけです。
 そんなわけで敗因としては、前節の甲府戦や開幕のベガルタ仙台戦でもそうだったのですが要するに「点が取れない」ことに尽きるわけです。ただまぁ、ここで簡単に決定力不足などという月並みな言葉でまとめてしまうのも少し違うような気がします。なんのかのといってJ2は守備のリーグと言われており、札幌には晟桓がいるように、J1昇格を目指すようなチームはたいていセンターバックに対人・対空に強い助っ人選手を置く傾向にあります。湘南もご多分に漏れずジャーンという優れたセンターバックがおりますから、いくら札幌の攻撃の基本線がサイドアタックであるところのいわゆる藤田征也だとはいえ、経験豊富で高さのあるジャーンと、そして守備範囲の広い野澤が守る湘南ゴールに対して、律儀にもサイドからクロスを放り込むだけでは簡単に破れるものではありません。それはさすがに札幌の選手たちもわかっていたようで、ニアを狙ったりファーを狙ったり、低くて速いクロスを狙ったりセンターバックとGKの間のスペースを狙ったりとそれなりに工夫はしてはいましたが、相手だって当然いろいろとこちらの手を想定して手を打ってきます。相手がこちらの手の内をわかっていればたやすく対処されてしまいますから、そこをくぐり抜けてゴールを決めるには、相手のその予測の裏を掻くか、もしくはその予測を上回るような、具体的にいえばエメルソンみたいな超絶スピードとか、ダヴィみたいな異常な身体能力とか、俺王様みたいな驚異的なボールコントロールテクニックとか、フッキみたいなシュート力など「わかっていても止められない」プレイをしなければいけません。しかしながらそんな人外レベルのストライカーは残念ながら今の札幌にはいないのが現実。紀梨乃のスピードはそれに近いとは思いますが、その紀梨乃は上里とウルトラマンエースに変身するための合体に失敗して前半7分にともに負傷退場しています。であれば相手の裏を掻くようなプレイをするしかありません。しかし一口に相手の裏を掻くといっても様々なやり方があります。とばかりに目を光らせながらズボンのチャックを開けたり、両手を後頭部で組んで「うっふ~ん」といいつつ腰を振ったりするワザによって相手の隙を作り出す方法もありますが、残念ながらサッカーの試合でのセクシーコマンドーの使用はFIFAによって禁止されています。なので、あと考えられるのは相手に考える隙を与えないか、あるいは相手が迷うくらいいろんな手札を持つべきだと思います。
 しかしながら、今の札幌はサイドアタックと決めたら何が何でもサイドアタックという感じで、クロスがダメならラインの裏を狙えばいいじゃない、みたいな形がほとんどなく、相手が迷うどころか自ら選択肢を狭めているような感じなのが現時点での課題なのかも知れません。最後の最後に湘南が裏を狙う形で得点に結びつけたのと対照的に、裏に抜けて欲しいところでも頑なにポストで待っている姿ばかりが目に付いたように思います。一応それでも相手の隙をかいくぐって決定的なチャンスを作ったりもしましたし、その中でも普通入ってるだろこれ、というようなシュートすら野澤のファインセーブに何度も阻まれたのは札幌にとって不運と言えば不運であるとは思いますが、その一方でペースを握っていた時間が比較的長かったことを考えれば、そういったチャンスの数自体ももう少しあっても良かったような気もします。なので札幌の場合、不足しているのは決定力ではなく持ち札不足という感じですね。
まぁ持ち札のうち比較的強い札である上里の長距離砲も使えなかったですし、ダニルソンも途中で交代してしまいましたから、この試合は特に持ち札が少なかったのは事実なんですがね。このあたりは今までどの監督のもとでもそうだったように、札幌の選手は教わったことしかやらないやれないというかその辺のことが影響している気がします。まぁここまでの試合はけっこう骨のある相手ばかりでしたし、試合に対する気合そのものはそれなりに感じられてはいるのであまり悲観はしていませんが、気合入りまくりで味方同士で自爆されると困るということがこの試合で判明してしまったんで、あとはもう少しいい意味で余裕があればいいように思いますね。いわゆる心はホットに頭はクールにってやつですね。そうすればボールはゴールに、坊主は屏風にとなること請け合いだと思います。

2009年3月31日

遙かなる岡山

2009年Jリーグディビジョン2第5節
ファジアーノ岡山 1-1 コンサドーレ札幌
得点者:札幌/上里
     岡山/西野

 前節湘南ベルマーレを相手に痛い星を落としたコンサドーレ札幌は、ファジアーノ岡山とのアウェイ戦となります。今節は今季からの新規参入組3チームのうちの一つである岡山とは初対戦。出不精の自分にとっては日本国内でもまだ行ったことのない県というのが多数存在するわけですが、中でも中国地方は地域全体としても源平討魔伝の山陽ルートくらいでしか行ったことがありません。そんな感じなので当然岡山という県に対しても、宇喜多秀家とか玄田哲章とか甲本ヒロトとか都井睦雄とか、ものすごく偏った知識しか持っておりません。 それはともかく、広島市に次ぐ中国地方第2位の人口を擁する岡山市を本拠地とするファジアーノは、岡山県の伝承である桃太郎に登場し、県鳥でもあるキジを意味するイタリア語です。チームの誕生は2003年。Jリーグへの準加盟を果たした2007年に中国リーグと地域リーグ決勝大会を制しJFLへ昇格、その翌年の2008年には4位でJリーグへの参入条件をクリアし、とんとん拍子でJ2まで駆け上がってきました。
 1999年のJリーグの2部制移行に伴い、実質的にはJ2の一つ下のカテゴリに当たるJFLも新しくなりましたが、その新JFLからJリーグに参入した昨季までの7チームのうち、J1昇格を果たしたのは横浜FCただ1チームしかありません。そればかりか、全チームを通じて順位表の半分から上でシーズンを終えたことは、その横浜FCが優勝した2006年以外になく、昨季にいたっては9位から15位が新JFLからの参入組がきれいに並んでいました。新規参入チームは予算的な問題であまり大きな補強ができないことや、ハード面での整備が追いつかないことなどが主たる原因でしょうが、栃木SC、カターレ富山、そして岡山という今季からの参入組3チームもご多分に漏れず開幕から苦戦を続け、第4節まで終了の時点で3チームともまだ1勝すらできてない状況です。
 今回対戦する岡山も今季の予算をJFL時代の倍以上にまで増やしたものの、その額は約5億円とJ2平均(約12億円)に遠く及びません。チーム全体の選手構成を見ても登録選手数こそ多いもののほとんどが将来を見据えた若手選手であり、助っ人選手もおらずまさに身の丈経営といった感じです。しかしこれまでの試合では勝利こそないものの4試合中スコアレスドローが3つ、その中にはベガルタ仙台やヴァンフォーレ甲府といった昇格候補のチームも含まれている上、点を取られたのは開幕から連勝を重ねる湘南ベルマーレのみと、その守備の堅さは決して侮れるものではありません。

 そして、今季のトップチーム人件費だけでその岡山の年間予算を余裕で上回るわれらがコンサドーレ札幌は、たとえ前節終了時点の順位表では岡山と富山の間にいるとしても、実績や立場上では格上となります。特に岡山は昨季のJFLでは4位と新規参入組の中では一番下の成績ですから、サポーターにも「(新規参入組には)勝って当然」という思いが当然あるわけで、また札幌が昇格を目標としているチームである以上は勝たなければいけない相手だったわけです。
 ところがどっこい、試合は前半21分に上里がどえらいミドルシュートを決めて先制したものの、その後は拙攻の連続で追加点を奪えず、後半23分にもうなんかやっぱり和波智広にしか見えない西野晃平にゴールを決められて追いつかれると、その後は突き放すどころか完全な岡山ペース。危ないシーンもたびたび作られなんとか引き分けた、という感じの試合でした。まぁこっちも決定的なチャンスはいくつかありましたから、引き分けという結果は妥当ではありますが、かといって引き分けという結果そのものが妥当かどうかはまた別問題でして、目論見ではJ1にもいたことのあるチームが新参者にJリーグの洗礼を浴びせる、たとえていうなら大学での下っ端扱いに耐えかねて呼ばれもしないのに高校に来て新入生に幅をきかせるOBみたいなつもりだったのが、この試合だけを見るならどちらが元J1かわからんような残念な試合だったと思います。
 まぁ表向きはどうあれJ1昇格を現実的な目標として捉えていないチームにとっては、リーグ戦で何位になるかというよりかはとにかく目の前の試合に勝利することが重要です。それが格上のチームに対する勝利ならなおさらですし、しかも地元やサポーターへのアピールを考えれば、そんな試合をホームでできればなおのことよしです。たとえ札幌が昨季J1で異次元の弱さで降格したチームであっても、初めてのJリーグに臨むチームにとっては強豪であることには変わりなく、とりわけ未だホームで得点を挙げていない岡山の選手たちにとって、この試合にかける気合いというのは並々ならぬものがあったでしょう。札幌の選手たちが侮っていたとは決して思いませんが、そういう相手に決定的なチャンスを外し続けていればあっという間に流れを持って行かれるのは当たり前の話。ホーム初得点もしっかりプレゼントした札幌は、少なくとも今時点ではそういった格上チームを食らう気満々なチームを真正面から力でねじ伏せるようなラオウでもないし、かといってそれを流水のように受け流して痛みすら感じさせずに葬り去るトキでもないということですね。だったら目指すはジャギ様しかあるまい、とはいいませんが、昇格への道のりは思った以上に険しいようです。

 ノブリンの選手交代も本人が暗に認めているとおり、珍しくどうかなぁと思うものが多かったですね。特に後半頭からダニルソンを下げてしまったのがひとつの分かれ目のような気がします。前半でイエローカードをもらっていたこともあるんでしょうし、確かに攻撃面ではいまいち、というよりかはチョロパス癖が抜けきらずにさっくりをボールを取られてしまうシーンがこれまでの試合でも多く、今のところは「コロンビアのビジュ」の域を脱してないわけですけど、それでも前がかり気味で攻めている中でカウンターを食らった時に、すっ飛んでいって単身で潰せるのはダニルソンだけですから、枚数をかけて攻めたい時こそ残しておくべき選手のような気がするんですけどね。

 まぁそれはそれとして、先制点を挙げた上里のミドルシュートはものすごかったですね。蹴った瞬間、「ああ、また宇宙かよ」と思った弾道だったのに、そこから急激に落ちてゴールに突き刺さるなんて、かつての三原さんのフリーキックを見るようでした。あのボールが蹴られるなら、まだJリーグでは決めていない直接フリーキックを決めるシーンも珍しいことではなくなりそうです。お元気ですか三原さん。

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